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2012/07/08

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  • 若菜 上/源氏物語 中 角田光代 訳/日本文学全集 5

    「若菜 上」は、前の帝であった朱雀院(光君の異母兄)と藤壺の宮(光君の父 桐壺院の後妻、光君と関係があり、冷泉帝が生まれる)の異母妹である藤壺女御との間に生まれた姫 女三宮が、光君に降嫁するという話が描かれている。 女三宮は、まだ十三歳という若さ。一方、光君は四十歳という年の差で...

  • ETV特集 膨張と忘却~理の人が見た原子力政策~

    番組では、1990年代から20年にわたり、日本の原子力政策にかかわってきた吉岡 斉(ひとし)氏の主張であった「熟議」や「利害を超えて議論を尽くすこと」が、国や政治家、電力会社の利益関係者によって、蔑ろにされ続け、原子力政策推進という結果ありきの決定を行い続け、3.11の福島第一原...

  • 梅枝・藤裏葉/源氏物語 中 角田光代 訳/日本文学全集 5

    梅枝は、須磨に都落ちした光君が、その時に結ばれた明石の君(この時には明石の御方)との間にできた娘 明石の姫君を東宮妃として入内させるため、裳着の儀の準備をする六条院の様子が描かれている。 明石の姫君に持たせる香壺に入れる薫物(たきもの…調合した香)を、六条院の女君である朝顔、紫の...

  • 行幸・藤袴・真木柱/源氏物語 中 角田光代 訳/日本文学全集 5

    この三篇も、玉鬘をめぐっての物語だ。 玉鬘は、光君が一時逢瀬を交わした夕顔と、内大臣となった頭中将との間の娘である。 光君としては、かつて愛した女性の忘れ形見として彼女を引き取り、自分の手元に置き、娘同様に育てるつもりだったのかもしれないが、彼女を取り巻く若い貴公子からの求愛にど...

  • 戦争語彙集/オスタップ・スリヴィンスキー 作 , ロバート キャンベル 訳著

    ウクライナの人々が戦争を体験し、語った言葉を集めた本。 読んでいて、ウクライナの人々の強さとともに、戦争によって一変してしまった彼らの生活や”言葉”が感じられる。 ロシアによるウクライナ侵攻については、様々なメディアをみるが、現地の人々のこうしたリアルな思いを感じることができる情...

  • 篝火・野分/源氏物語 中 角田光代 訳/日本文学全集 5

    久々に、源氏物語の続きを読みだした。 前の投稿を改めて読んで、中年男になった光君の玉鬘に対する邪心が嫌になって読むのを止めたのかなと、多少物語のせいにしたくもなった。 実際、続きの「篝火」においても、玉鬘の部屋に入りびたり、和歌を教えたり、添い寝したり、自分の恋心を篝火にたとえた...

  • 陥穽 陸奥宗光の青春/辻原登

    日本経済新聞 朝刊で昨年3月から掲載されていた物語が、今年1月末をもって終了した。 私は、今まで陸奥宗光というと、坂本龍馬の子分的存在で、明治維新後は、外務大臣として、外国との不平等条約撤廃に取り組み、カミソリ大臣と呼ばれていたぐらいの知識しかなかった。 この物語では、陸奥が西南...

  • ボヘミアの醜聞 / シャーロック・ホームズの冒険/シャーロック・ホームズ全集3 アーサー・コナン・ドイル/小林司・東山あかね 訳

     この「 シャーロック・ホームズの冒険」は、もっとも多くの日本人が読んだイギリス文学かもしれない。十二作の短編小説が収められ、前二作「緋色の習作」「四つのサイン」で感じられた物語後半のまどろっこしさが解消され、すっきりとした仕上がりになっている。 「ボヘミアの醜聞」は、ボヘミア国...

  • 四つのサイン/シャーロック・ホームズ全集2 アーサー・コナン・ドイル/小林司・東山あかね 訳

    この小説も初めて読んだものだと思う。 シャーロック・ホームズの作品は、どうしても「少年もの」のイメージが付きまとうが、この物語では、冒頭、皮下注射器でコカインを打つホームズの姿が描かれている。 「ぼくは、ぼんやりと生きていくことに耐えられない。精神の高揚が必要なのだ。」 と語るホ...

  • 緋色の習作/シャーロック・ホームズ全集1 アーサー・コナン・ドイル/小林司・東山あかね 訳

      NHK BSの「シャーロック・ホームズの冒険」を見ていたら、段々、本物が恋しくなって、シャーロック・ホームズ全集 1「緋色の習作」を読んでみた。 なにせ 「緋色の研究」を読んだのは、中学生時代。(新潮文庫の 延原謙氏の訳だったと思う 。なお、 延原謙氏の訳もすごく読みやすい印...

  • 海の魚鱗宮/山岸凉子 自選作品集

    ◎海の魚鱗宮 冒頭、古事記にある兄の火照命の釣針を失くしてしまった弟の火遠理命に、兄がもとの釣針を戻せというエピソードが出てくるが、これは、もちろん、主人公の寿子が記憶の底に沈めた自分の帽子を失くした女の子との出来事に重ねている。 山岸凉子の作品では主人公が遠い記憶を呼び起こす際...

  • 詩歌川百景 3 /吉田秋生

    この巻は、人間の闇を取り上げていて、漫画とはいえ、読み応えのある内容だった。 とりわけ、びっくりしたのは、次の3点。 1点目 類の母親がカルト宗教にはまってしまったのだが、全く理解できないという類に対して、医師の“愛ちゃん先生”は、こういうのだ。 「ありえない形のジグソーパズルの...

  • 街とその不確かな壁/村上春樹

    読んでいて、切なくなる。 自分の大事なものを失った喪失感。村上春樹作品に一貫して流れる変わらないテーマ。 久々に深い井戸の底に降りてその世界観に浸ったような気持ちになった。 あとがきで、この作品の第一部は2020年コロナ禍の中で書かれたというコメントを読んで、確かにこの物語のよう...

  • 穴あきエフの初恋祭り/多和田葉子

     主人公が、プラハ帰りのナターシャ(那谷紗)と、キエフのアンドレイ(安堵零)坂のお祭りに参加する物語。 タイトルが、アナーキー…とも読めるが、魔女や不思議なお祭りが展開される。 しかし、今読むと現在の“キーウ”と重なるイメージが多く描かれているのが興味深い。 巨大なお化け屋敷に変...

  • 胡蝶、カリフォルニアに舞う/多和田葉子

    久々に多和田葉子の小説を読んだ。 Iというアメリカに留学した学生が十年ぶりに日本に戻ってきて、就職試験を受けるという話なのだが、アメリカの大学時代に女の子のナンパの仕方から学んだいい加減な会話で、高校の同級生だった優子とのかみ合わないコミュニケーションの様子や、日本の電車の異質感...

  • 犬神明①/平井和正

    まさか、この作品を読むとは思っていなかったが、Amazon kindleと、平井和正の文章力のおかげなのかもしれない。 私は、かなりこの作品を読まずして、たぶん読めば幻滅すると強い偏見を抱いていたが、一読して面白いと思った。 旧作 狼のレクイエム の流れを受け継ぎ、きっちり物語と...

  • O侯爵夫人/クライスト

    これは、彼の作品の中では、喜劇の部類に属する小説かもしれない。 イタリア北部の要衝M市に、未亡人であるが盛名をうたわれる貴婦人 O侯爵夫人がいたが、戦争が起きて、ロシア軍に攻め込まれる。 その際、O侯爵夫人は、ロシア軍の狙撃兵たちに暴行されそうになるが、一人のロシアの将校 F伯爵...

  • 決闘/クライスト

    本書も短編ながらクライストらしい劇的な運命の変化が人々を揺れ動かす。 十四世紀末頃のドイツ、大公の暗殺事件が起き、大公を殺した弓矢の細工から、容疑者として、異母弟のヤーコプ伯が疑われる。 ヤーコプ伯は告発されるが、法廷の場で、事件のあった夜、実は美しい未亡人リッテガルデ夫人と共に...

  • 聖ツェツィーリェあるいは音楽の魔力/クライスト

    聖像破壊運動が猖獗した十六世紀末頃のネーデルランド(現在の オランダ・ベルギー・フランス北東部を含む地域) の話である。 聖像破壊運動とは、 キリスト教を扱った絵画や彫刻といった聖像を否定し、破壊する運動のことで、 マルティン・ ルターによるカトリック教会批判をきっかけとして、カ...

  • 拾い子/クライスト

     クライストの小説では、登場人物たちが少なからず自分たちの運命を左右される事件が起きるのだが、この小説は、その事件がかなり多い。 1.疫病 ローマの豪商ピアキ氏が自分の息子を連れてラグーサに行ったが、そこではペストに似た疫病が蔓延しており、一人の感染した少年ニコロを助けたばかりに...

  • ロカルノの女乞食/クライスト

    クライストの小説は、登場人物たちの時代背景として、社会的に起きた大きな事件がベースとして描かれていることが多いようだ。 地震、人種間戦争、感染症、聖像破壊騒動など。 この「ロカルノの女乞食」では、物語最後に起きる火災と考えることもできるけれど、侯爵が古城を売る気になった原因である...

  • 聖ドミンゴ島の婚約/クライスト

    フランスの植民地 聖ドミンゴ島で、黒人たちが白人を大虐殺した時代…と、いきなり物騒な時代設定から始まるこの小説。 しかし、この人種間戦争は、終わりまで読むと背骨のようにこの小説の骨格を形作っている。 コンゴ・ホアンゴという白人の主人に可愛がられながら、その主人の頭に銃弾をぶち込み...

  • チリの地震/クライスト

    クライストの小説は、多和田葉子の新聞連載で「ロカルノの女乞食」を一読しただけだったが、ツヴァイクの書いたクライスト論を読んで、その小説を改めて読みたくなった。 ツヴァイクは、クライストの両極端の二面性を取り上げ、彼の過剰な狂気のような自我は劇作のほうに反映される一方、小説について...

  • デーモンとの闘争/シュテファン・ツヴァイク

    ツヴァイクが、ヘルダーリン、クライスト、ニーチェをテーマに、三人の生涯には、人間の力を超えた魔人的(デーモニッシュ)ともいうべき共通点があったことを取り上げている。 住み心地のよい生活を捨てて情熱の破滅的な台風のなかに突き入り、命数に先んじて精神の恐ろしい惑乱、感覚の致命的な陶酔...

  • 圧迫/シュテファン・ツヴァイク

     この小説は、数年前だったら、主人公がこんな心持ちになったのは、ツヴァイクの特別な個性によるところだろうと片づけてしまった気もするが、今の日本において読むと、戦争になるとは、こういう風に国家に追い詰められていくのだなという現実(リアリティ)を強く感じた。 1920年の作品だから、...

  • 女の二十四時間/シュテファン・ツヴァイク

    ツヴァイクの小説の特徴の一つとして、劇的な感情に一時支配されてしまい、それが原因でその後の人生に傷を負ってしまった人物の運命を描いているという共通点がありそうだ。 この「女の二十四時間」もその一つのようだ。 主人公の男が泊まっていた宿で、二人の娘を持つ貞淑そうに見える三十三歳ぐら...

  • 旅のネコと神社のクスノキ/黒田征太郎・池澤夏樹

    池澤夏樹と黒田征太郎が、原爆で破壊されなかった広島の旧陸軍被服支廠(広島市南区)の建物をテーマに描いた絵本。 陸軍被服支廠とは、陸軍の軍服などを作る工場と、軍服・軍靴のほか、民間に委託して作らせたマント・下着類・手袋・靴下・背嚢・飯盒・水筒・布団・毛布・石鹸・鋏・小刀・軍人手帖な...

  • チェス奇譚/シュテファン・ツヴァイク

    ツヴァイクが死ぬ直前に書き上げた最後の作品だが、非常に面白い小説である。 物語は、チェントヴィッチという田舎町出身の愚鈍そうな少年が驚異的なチェスの名人になる話から始まる。 彼には文字通りチェスを指すしか能がなく、文章もろくに書けない知性の持ち主でもあった。 そして最も特徴的なの...

  • 過去への旅/シュテファン・ツヴァイク

     多和田葉子の連載小説「白鶴亮翅」に、シュテファン・ツヴァイクの名前がちょっとだけ出ていて、それで気になったのが最初。  プロフィールをみたら、1881年生まれのユダヤ人のオーストリアの作家で、ナチスドイツの台頭を機に、イギリスに亡命し、ついで米国、ブラジルに渡り、旧日本軍による...

  • 映像のポエジア 刻印された時間/アンドレイ・タルコフスキー

     旧ソ連の映画監督 アンドレイ・タルコフスキーが、映画について、シナリオ、映像、俳優、美術、音楽、観客という要素を、主に自作を通して、自らの考え・信念を率直に述べている本だ。 私は、一時、タルコフスキーの映画に強く惹かれ、その映画を何度も見たが、タルコフスキーが映画、特に自作につ...

  • ナチスのキッチン 「食べることの環境史」/藤原辰史

     題名に面白さに手を取ってみたが、台所というどこの家にもある一見ありふれた場所が、どのような進化(変化?)を遂げてきたのかというテーマを、その変化に無視できない影響を与えたナチスドイツ時代の取り組みを紹介していて面白かった。 なぜ、ドイツかという点で言えば、ドイツは第一次世界大戦...

  • 中学生から知りたい ウクライナのこと/小山哲・藤原辰史

    この本で言っていることは、非常にシンプルだ。 マスコミ等の報道は、アメリカ・ロシアといった超大国のパワーゲーム史観、東西冷戦の構造、軍事戦略といった局面だけで、ウクライナ侵攻を語っている場面が多い。中学や高校で教わった歴史や地理の知識に戻り、ウクライナを知ると、狭い視野から抜け出...

  • 独ソ戦 絶滅戦争の惨禍/大木 毅

     本書は、1941年6月22日にナチスドイツが独ソ不可侵条約を破ってソビエト連邦に侵攻したことで開戦し、1945年まで続いた「独ソ戦」にフォーカスを当てている。  この戦争は、数千キロにわたる戦線において数百万の大軍が激突した空前絶後の規模となり、第二次世界大戦の主戦場となった。...

  • 興津弥五右衛門の遺書/森鴎外

    文語体で書かれているが、落ち着いて読むと文章は簡潔明瞭だ。 興津弥五右衛門景吉が、自分を取り立ててくれた主君(細川忠興)の死を受け、殉死するにあたり、自らの生い立ちを祖父の代から振り返り、細川家に召し抱えられるまでの経緯、景吉が主君の「珍しき品」を買い求めるようにとの命を受け、伽...

  • 魚玄機/森鴎外

    この作品は、晩年の鴎外の作品としては、異質な印象を受ける。 歴史小説ではあるが、タイトルにもなっているこの物語の主人公「魚玄機」は痴情に絡んで、自らの婢を殺しているからだ。 しかも、魚玄機は色町に生まれた美少女でありながら詩の天才で、同じく詩の天才であった温氏にも認められていた。...

  • 山椒大夫/森鴎外

    吉田健一の文学展示会に行った際、帰国して間のない吉田に、彼の師匠である河上徹太郎から、日本文学を学ぶのであれば、森鴎外の作品を読んだ方がいいと指導していたという展示物を読んで、確かに森鴎外の文章ははずれがないよなと思ったので、長く敬遠していた「山椒大夫」を読んでみた。 この「山椒...

  • チェルノブイリ 「平和の原子力」の闇/アダム・ヒギンボタム

    400ページにわたる本文は、膨大な巻末の注釈と参考資料のリストに支えられ、ノンフィクションを読んだという重みがある。 今、この時期にこの本を読み終えて心をよぎったのは、次の点だ。 1.原子力発電所のリスク 本書を読むと、チェルノブイリ原発事故は、決して作業員の過失によって生じたも...

  • 少女漫画家「家」の履歴書/文春新書

    少女漫画家の大家たちが、どのような家に住んできたか、その履歴をインタビューしてまとめている本。若い時の苦労話も多く載っている。 私が子どもの頃、読んでいた作家の名前が多くあったので読んでみた。 総じて共通しているのは、以下の点だと思う。 ・漫画家になるのは親に反対された ・家庭環...

  • 消えた国 追われた人々/池内 紀

    東プロシアの場所は、現在の、北部ポーランド、ロシアのカリーニングラード州、リトアニアのクライペダ(ドイツ名:メーメル)に重なるあたりにあった。 十二世紀末、聖地イェルサレム奪還を目指し出立したドイツ騎士団が、ハンガリー王に国境警備を乞われ、東方に進出したことを契機に、現在の北ポー...

  • エクソフォニー 母語の外へ出る旅/多和田葉子

     Wikipediaで、「エクソフォニー」を調べてみると、Exophony is the practice of (normally creative) writing in a language that is not one's mother tongue.とあった。 母語で...

  • いつか死ぬ、それまで生きる わたしのお経/伊藤比呂美

     詩人の伊藤比呂美がまとめたエッセイとお経、その現代語訳、著者朗読のCDが付いているという複合型の本だ。 伊藤比呂美は、自身の家族の死を通し、さまざまなお経を読むうち、お経というものは、その昔、ブッダの仏教から大乗仏教というものが派生して、人々が町々の辻々で語って広めて歩いたもの...

  • 詩歌川百景 2 /吉田秋生

    この第2巻では、寿子(妙の伯母で"若女将"と呼ばれている)の娘の麻揶子が登場する。 麻揶子の絵だけ見ると、妙のおばさんみたいに見えてしまうが、妙の母親の絢子の姉が寿子なので、彼女たちはいとこ同士なのだ。(寿子の息子の仙太郎も同様に妙のいとこ) 民子という人間のできた”大女将”の不...

  • 日本人にとって聖地とは何か/内田樹・釈徹宗・茂木健一郎・高島幸次・植島啓司

    内田樹は、「聖地」を「そこでは暮らせないところ」であり、「敬してこれを避ける」というのが基本であると説明しているのが興味深い。 そこに行くと、自分の感性がザワザワする、そのザワザワには、「よきもの」や「悪しきもの」に対する感知が含まれている。 巷で言う「聖地巡礼」とは異なる説明だ...

  • 言葉と歩く日記/多和田葉子

    この本は、多和田葉子の2013年1月1日から4月15日までの日記なのだが、この期間に彼女は自分の日本語の小説「雪の練習生」をドイツ語に翻訳していた時期でもあったらしい。 その「雪の練習生」で、多和田葉子は、主人公を人間なのか動物なのか分からないまま話を始めたかったのに、ドイツ語で...

  • 溶ける街 透ける路/多和田葉子

    多和田葉子の小説は、国境を越える言葉や人々の物語が多いが、この本を読んで、それは彼女の作家としての仕事でも全く同じであったことに、ある種の感銘を覚えた。 この本で、彼女は主に欧米諸国の四十八の町を旅しているが、ほとんどが作家をめぐる現地のイベントやフェスティバル、インタビューや朗...

  • コロナ後の世界/内田樹

    この本のまえがきが面白い。 作者は、今の日本社会で人々が、しだいに「不寛容」になってきており、「尖った言葉」が行き交っていることを気にしており、最も欠けているものはちょっとした「親切」であると述べている。そして、作者は「どうやったら親切になれるか」ということをずっと考えてきた。 ...

  • ETV特集 ドキュメント 精神科病院×新型コロナ/NHK

    精神疾患がある人たちが、コロナ禍の状況の中、非常に劣悪な環境で医療を受けている現状を知り、衝撃を受けた。 番組では、日本最大の精神科病院・都立松沢病院で、都内でクラスターが発生したX病院とY病院の患者を受け入れている事例を取り上げていた。 X病院では、コロナ陽性の患者を隔離するこ...

  • アメリカ 非道の大地/多和田葉子

    読者を二人称の“あなた”に仕立て、アメリカの色々な街を巡らせる手法は「容疑者の夜行列車」と同じだが、その雰囲気は、舞台をアメリカにしたせいで、より不安定感が増しているような雰囲気がある。 人工的な街で、見知らぬ人々が接触する。人々はフレンドリーだが本当には分かり合えない壁のような...

  • 古くて素敵なクラシック・レコードたち/村上春樹

    村上春樹氏が、自身が収集した様々なクラシックレコードの解説をしている。クラシック(古典音楽)をそれほど聞いていない私のような人間でも十分楽しめる内容になっている。 第一に、ほとんどが1950年から1980年までの一昔前と言ってもいいレコード群なのだが、様々なレコードジャケットの写...

  • 所有者のパスワード/多和田葉子

    木肌姫子という女子高校生。彼女は暇さえあれば本を読んでいて、月々の小遣い5000円では足りないぐらいの本(恋愛小説)を読んでいる。 最初のうち、漫画を読んでいたが読む時間のスピードが上がってしまい、たくさん買わなければ一日が持たなくなってしまい、読むのに時間がかかる本を購入するよ...

  • ヒナギクのお茶の場合/多和田葉子

    ボルドーの義兄でも見られた、ちょっと変わった女友達との親密な関係。 小説や戯曲を書き、あまり家から出たがらないわたしと、対照的に行動的な髪の毛を緑色と金色に染めたパンク風の舞台監督のハンナ。 お互い正反対な存在というのは、全く拒絶しあうか、惹かれあうものなのかもしれない。 青いジ...

  • 雪の練習生/多和田葉子

    この作品は、池澤夏樹編集の日本文学全集で一部「祖母の退化論」の章だけ読んでいたが、その後の2つの章「死の接吻」と「北極を想う日」を読み終わると、ホッキョクグマの三世代の物語としてスケールの大きさを感じた。 一人目の私(牝熊)は、サーカスで活躍していたが、自らのサーカスでの生い立ち...

  • 容疑者の夜行列車/多和田葉子

    タイトルが、まるで推理小説のようだが、この本では、作者が読者を、舞踏家を生業にした「あなた」という二人称に設定して、さまざまな都市の夜行列車に乗せて旅をさせ、ちょっとしたトラブルや奇妙な体験をさせるという構成になっている。 2001年頃の作品だが、このコロナ禍の中で読むと、よどん...

  • 献灯使/多和田葉子

    主人公は、無名(むめい)という少年。その無名を育てているのは、義郎という無名の曽祖父(ひい爺さん)だ。 無名は、立ったり、歩くことが困難で、パンを食べるのも口の中で出血してしまうほど、脆弱な体になっており、常に微熱をかかえている。これは無名だけではなく、この世代の子供たちすべてが...

  • 瀬戸内寂聴さんの死

    ついにその日が来たかというのが訃報に接しての感想だった。 朝日新聞に不定期に掲載される彼女のコラムを読んで、内容よりも、ああ、まだ元気に生きているという思いをもって、いつも、彼女の文章を楽しんでいた。 なぜ、彼女に惹かれていたのか、自分でもよく分からないが、この人は、出家をしなが...

  • 犬婿入り/多和田葉子

    これは、またユニークな小説だ。 学習塾「キタムラ塾」を開いている北村みつこという独り者の三十九歳の女性の家に、ある日、太郎という若い男が住み込む。料理や掃除をきちんとする一方、みつこの首や肛門を吸ったり、舐めたり、昼も夜もみつこと交わったり、みつこの体臭を1時間も嗅ぎ続けたりと、...

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