弊著「慶応三年の水練侍」は江戸時代にもバタフライに似た泳ぎはあったのではないか、という前提のもとに執筆しました。日本の古式泳法というと、非常にゆっくりした泳ぎを想像する方が多いと思います。たしかに日本の泳法は武具を付けて泳ぐことを前提としていることや、泳ぎ切ったあと疲れてしまっていては戦いにならないので、体力の消耗を防ぐ観点から、ゆったりした泳ぎが多いのは事実です。また、敵から攻められることも想定しているので前方が見えるように顔を上げて泳ぐのが基本です。しかしながら、堀を泳いで敵を攻めようとした場合など、ゆっくり泳いでいたのでは城内の敵から攻められ、すぐに死んでしまいます。日本泳法であっても速く泳がなければならない時があるのです。日本は島国だけあって、泳法の流派は百花繚乱、それこそ百を超える流派があったと...古式泳法