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オリジナルBL小説です。主に高校生の恋愛(R-18)。管理人は2人で文と絵、基本ハピエン。毎日更新

CP傾向はドS×ネガティブ天然・後輩×先輩・弟×兄中心に展開です。 どんな形であれ受け溺愛。 S/鬼畜/わんこ/ツンデレ/ネガティブ/天然/不憫/小悪魔/クール/男前/など

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2012/05/08

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  • ABOUT

    ■■ はじめに・・・ ■■  *当ブログは2人組で運営しております。*内容は男性同士の恋愛等をメインに取り扱った一次創作です。 BLなどのご理解を頂けていない方、嫌悪感を抱かれる方は回れ右でお願い致します。 ま

  • 水晶の涙132

    数日滞在し、その間フォルアは一日何度か例の曲を弾き歌っていた。それが人づてで広まったのか、店はわりと盛況している。「あなた方は私の神様だ」 オーナーは心底嬉しそうにしていたし、宿泊や飲食がただどころか、報酬も上乗せしてくれていた。そろそろ

  • 水晶の涙

    ◆水晶の涙◆ ── とある王国 神の子が禁忌を犯し、居なくなってから長い年月が過ぎ去った……。 辺境の村で少年2人は、いつも通り平穏に暮らしていたはずだった。 *赤&ra

  • 水晶の涙131

    今のファインとしては、どう考えても自分の都合いいように考えてしまう気もする。 だってそうだろ。家族みたいであって、オレとアルスは実際本物の家族じゃねぇし……もしかしたらオレだってアルスとカースが急にやたら親密に

  • 水晶の涙130

    アルスと反対側で眠っているカースを気にしながら、ファインは背を向けていたアルスへそっと向き直った。くっつかれていたので寝返りを打ちにくいかと思ったが、ファインが動くとアルスは素直に腕を緩めてくる。 ……目は覚め

  • 水晶の涙129

    ファインがカースと言い合っていたら「もういいよ。とりあえず寝よう」とアルスがため息つきながら遮ってきた。「お、おぅ」 呆れられたのだろう。そういえばカースにアルスへの気持ちがばれてから、というかとっくにばれていたことを知ってから、ファイン

  • 水晶の涙128

    「演奏したがってた、ってよりはさ。ほら、フォルアって真実とやらを伝えるために吟遊詩人をしてるみたいなこと、セルゲイさんも言ってただろ」 ファインの言葉でアルスも思い出した。しばらく滞在させてもらっていた辺境伯セルゲイがモーティル教の話と共に

  • 水晶の涙127

    捕まった者たちをアルスもこっそり見せてもらったが、二人はファインやカースが言っていたようにその辺に溶け込みそうな目立たないおとなしそうな外見をしていた。こんな外見の人が人身売買のため誘拐を目論見、実行しているなど、実際捕まっていても信じら

  • 水晶の涙126

    「ぶは」 ファインの説明を聞いてカースはおかしげに笑っている。「そりゃアルスが疑うのも無理ないね」「いや、何でだよ。オレにその気ねぇっつーの」「でも、何でファインってそういう人から興味もたれやすんだろ」 ファインにその気がないというのなら何

  • 水晶の涙125

    いい話が聞けたのもあり、ナージフが帰る時も店の入口までファインは見送った。「オレはもう多分あなたにつくことはないと思うけど、会えてよかったよ」 見送る時には声も戻っていたのもあり、ファインは敬語も取り払ってナージフに笑いかける。「&hel

  • 水晶の涙124

    「変な客? 最近よく来ていたごろつきのことですかね」 客の言葉にファインは首を傾げ聞いた。「最近来ていたとかは初めて来店しただけにわからないけど……姿は見えてないんだ。ほら、半個室のようなものだろう、ここって」「

  • 水晶の涙123

    本当なら裏方の仕事はファインがしていた。そして仕事しつつ聞き込みなどをするつもりだった。 だが実際は接客する羽目になり、裏方はアルスとフォルアだ。そちらからの情報は申し訳ないがあまり期待しないほうがいいだろうとファインは早々に諦めた。 ど

  • 水晶の涙122

    実際店の手伝いをすることになり、アルスはファインが何故不満そうだったのか理解した。「ファインって俺からしたらそれなりに綺麗でかわいい顔してると思ったんだけどな」 カースがおかしそうに笑っている。「……うるせぇ。

  • 水晶の涙121

    「……かえってご迷惑をおかけして申し訳ない……。全額支払うのは難しそうだけど、払える限りは……」 困り果てたようなオーナーに、よそ行き用の顔になったファイン

  • 水晶の涙120

    叫び声などが聞こえた途端、今までのどかに飲み食いしていたアルスたちは剣を手にしていた。これはもう、習性と言うものかもしれない。 だが普通に考えてこういった店内に魔物が出るわけもなく、おそらくは酔っぱらった客が暴れたか何かだろうと次の瞬間に

  • 水晶の涙119

    ギルドでいくつか仕事も請け、四人は派手な照明が目に優しくない店の一つに来ていた。その店を選んだことに理由は特にない。この辺にあるどの店も似たような雰囲気だったので、正直どれも同じだとファインは思ったくらいだ。 カースに「俺がおごってやるか

  • 水晶の涙118

    ルナール王国には二日後に到着した。砂だらけの砂漠の中にある王国都市は城壁に囲まれ、緑に溢れている。そしてとても活気があった。「ねえねえファイン、見た? さっきのお姉さん。あんな恰好しちゃってさ。布面積少なすぎだよね最高。顔もスタイルもよか

  • 水晶の涙117

    ところでさ、とカースがファインに笑顔を向けてきた。 船でこちら側に着いてからルナール王国へ向けて歩いているところだった。ただその日のうちに到着というわけにいかず、今日はテントを張って休むことにしていた。 海の近くはまだ緑があったものの、内

  • 水晶の涙116

    トリンカから海岸沿いまで出るのに要した時間は一日くらいだったが、海に出てからはむしろフォルアやカースの魔法の力によっておそらくかなり早く向こう岸に着いた。距離だけだとはっきりわからないが、トリンカから海岸沿いへ来るまでよりあったかもしれな

  • 水晶の涙115

    「そのほうがいいんじゃない? もしフォルアがかかっちゃったら俺も悲しいし」「おいおい。オレらはかかっても悲しくねえってか?」 ファインが微妙な顔をカースへ向けている。「大丈夫だ、ファイン。ちゃんと悲しいから。でもフォルアはまた別」 相変わら

  • 水晶の涙114

    その後小さな町、トリンカというところに四人はしばらく滞在した。フィール王国もそうだったが、この辺りは地の精霊の土地だからか、もちろんトザットやアクアード、ヒュアード王国などの土地と比べものにはならないが、そこそこ寒い。ただ雷の土地に比べる

  • 水晶の涙113

    そもそもファインとアルスだけだったなら容易く倒せなかっただろう。頭は悪そうにしか見えないが、ディロッはかなり強かった。ファインすらよくわからないような魔法を使ってきて対応しにくかったのもあるが、魔力も相当強かったはずだった。初めて遭遇した

  • 水晶の涙112

    カースが共に旅をすることに、ファインもアルスも特に反対する理由はなかった。特にファインとしては普段突っ込み役というか、天然ボケとほんのりボケに囲まれ対応せざるを得ない状況が少々変わるかもしれないと期待さえした。カースの性格などはまだあまり

  • 水晶の涙111

    経験と言われてファインはまた少し怪訝な気持ちになった。もちろん一人旅をしている間にたくさんの魔物などと戦ってきたのかもしれない。だがファインたちとそう変わらない年齢のフォルアだけに、十歳そこそこから二人で旅に出るしかなかったファインたちと

  • 水晶の涙110

    カースは一旦フォルアに「知り合った頃のこととかお前のこと、話していい?」と聞いている。フォルアは迷うことなくコクリと頷いた。セルゲイの時も制限してくることもなく「セルゲイに聞いてくれ」と言っていたことを思い、今さらながらに自分たちのことを

  • 水晶の涙109

    フォルアとのことを話そうとしたが客がやって来たのもあり、結局また改めて落ち合うことにして、アルスたちは一旦カースの店から離れた。ファインの「とりあえず宿とりに行くか」との言葉に頷き、三人はそのままいくつかある宿の中の一つに部屋をとる。そし

  • 水晶の涙108

    少し大きめの橋を渡り、右方向へ行けばコンティという町があるようだったが、ここはとりあえず左方向を目指した。森を抜ければフィール王国がある。 アルスたちがずっと過ごしてきたヴァレアグート郡のトーレンス王国領に比べると少し肌寒い時はある。とは

  • 水晶の涙107

    あれほど暑くてたまらなかった、加護のない土地は気づけばもうそろそろ春になろうとしていた。まだ冬の跡があちらこちらに残ってはいるが、ところどころで春の気配がする。季節そのままが気候にも出るからか、咲く花なども春に似合いそうなものが多い気がし

  • 水晶の涙106

    アルスとキスしてしまった。ファインの頭の中は今それでいっぱいだった。出発が明日でよかったと思う。とりあえず一人になって落ち着きたいと思ったファインはあの後適当なことをもにょもにょと口にして人のいなさそうな場所にまで来ていた。関係ないが戦時

  • 水晶の涙105

    アルスとキスしてしまった。 ファインの頭の中は今それでいっぱいだった。出発が明日でよかったと思う。とりあえず一人になって落ち着きたいと思ったファインはあの後適当なことをもにょもにょと口にして人のいなさそうな場所にまで来ていた。 関係ないが

  • 金木犀の夢45

     *R-18指定あり注意今回のお話は性的表現が含まれる部分がございます。18歳以上でR指定大丈夫な方のみおすすみ下さい。 

  • 金木犀の夢

    ◆金木犀の夢◆ 金木犀の香りはいつも何かが頭を過る。 それは大切な誰かのこと。 そして怖いという感情で…… 鳴海 秋李(なるみ しゅり)と星羽 悠犀(せわ ゆうせい

  • 金木犀の夢44

    気づけば秋李も悠犀も十八歳になっただけでなく、高校を卒業し大学生になる。秋李はふと「あの事件の時の桃史にいと同じ歳どころか、追い抜いちゃってるんだな」と思い、複雑な気持ちになった。 相変わらず捕まった男はあの事件に関してしらばっくれている

  • 金木犀の夢43

    かけがえのない人だった。 ずっとそばにいて、小さな頃から一緒に笑ったり怒ったりするのが当たり前だった。それこそ兄弟のように近しい人だった。だがいつしか友愛だけでなく恋愛として、航太は桃史をかけがえのない大切な人と見るようになっていた。それ

  • 金木犀の夢42

    秋李を襲おうとしていた男は捕まった。近所に親と住む無職の男だ。昔から住んでいる家なので秋李だけでなく悠犀も顔見知りではある。その上男は桃史や航太と同級生だった。小さかった頃はそれなりに姿を見ていたが、気づけば見かけることはなくなっていた。

  • 金木犀の夢41

    航太が病室から出て少し。悠犀は一人で待っていたが、やはり秋李のことが気になっていた。我ながら過保護だとは思う。秋李は別にか弱い子どもや女性ではない。一般男子だ。過去のことがあっても、記憶障害があっても、基本的に明るくて健康的な男子とも言え

  • 金木犀の夢40

    記憶回復してから悠犀に連れていってもらい、秋李は桃史の見舞いへはすでに一度訪れている。だが今だけとはいえ地元へ戻ってきているのもあり、改めて桃史の見舞いへ行くということで見舞い品をきちんと用意したかった。 悠犀には「何買っても桃史兄、食べ

  • 金木犀の夢39

    本当はあんなこと、するつもりなかった。それだけは嘘じゃない。 当時、近所に住む同級生のことが好きで仕方なかった。だがその人は優しくて明るくて人気者で、その人の周りにいる人間誰もがその人を好きなのではないかと嫉妬しない日はなかった。 思い切

  • 金木犀の夢38

    あっという間に気づけば二人は高校を卒業していたし、大学もお互い無事合格していて、春休みが終わると大学生だ。 せっかく高校で一緒の学校へ通えたというのに、大学はまた別の学校になる。それは悠犀にとって結構残念だが仕方ない。それに今は別の学校で

  • 金木犀の夢37

     *R-18指定あり注意今回のお話は性的表現が含まれる部分がございます。18歳以上でR指定大丈夫な方のみおすすみ下さい。 

  • 金木犀の夢36

    すごく大切で大事な人だというのは昔から変わっていない。残念ながら記憶障害があって忘れてはいたが、回復した今は昔と変わらず秋李は悠犀が大好きだ。 でも……今はそれにプラス、恋人としても大好きだ。 まさか自分が男を

  • 金木犀の夢35

    ぽかんとしている秋李に怪訝な顔を向けると「お前が怪訝そうに見るな」と言われた。「でも」「びっくりくらい、するだろ。何でいきなり自分のほっぺ殴んだよ」「これは……理性が崩壊しそうだったから」「え?」「秋李があんま

  • 金木犀の夢34

    秋李の前で泣いて以来、悠犀はようやく多少なりともふっきれてきたかもしれない。面と向かってあの時の罪悪感などと共に秋李に謝れたからだろうか。 悠犀も今までずっと自分が悪いのではないと理性ではわかっていながらも、感情で納得できなかった。後悔と

  • 金木犀の夢33

    「ご、ごめん。変なこと聞いた」「……いや。まあ何でそんなことって思ったけど……。あの、俺は秋李が好きです」「あ、は、はい」 好きですと言われ、思わず秋李もかしこまったような反応になった

  • 金木犀の夢32

    記憶が回復すれば自分はどうなるのだろうかと、秋李は昔から何度ともなく考えたことはある。誰しもが幼い頃のことを完璧に覚えているわけでなく、自分の場合はその覚えていない部分が人よりくっきりしているだけだと秋李は記憶障害のことをそう思ってみたり

  • 金木犀の夢31

    記憶が回復した秋李は、しばらくの間フラッシュバックに悩まされていたらしい。本人からではなく、秋李の母親から悠犀は教えてもらった。 あの頃のことを思い出したと知った秋李の両親や悠犀の両親は大喜びしたし、大人だということも忘れて大いに泣いてい

  • 金木犀の夢30

    一緒に入る、という秋李の言葉に、悠犀が動揺したように秋李を見てきた。「な、に言って……秋李も、冗談……」「冗談じゃないし。悠犀は一緒に入んの、い」「嫌じゃない」 嫌なのか、と言おうと

  • 金木犀の夢29

    桃史のことを聞いて、秋李は罪悪感とショックと恐怖に苛まれつつ、ほんの少しだけ安堵もあった。 生きてた……。 記憶を取り戻してまず浮かんだのが、あの瞬間だった。 桃史から落ちながら、目の前で橙と緑が赤へと染まって

  • 金木犀の夢28

    桃史のことを話しても大丈夫だろうかと心配はあった。だが秋李は真剣な表情で「教えてくれ」と頼んできた。頷くと、悠犀は主に桃史について、秋李が記憶を失った後のことを話した。秋李は時折苦しげな表情になったりしたが、黙って最後まで聞いていた。「こ

  • 金木犀の夢27

    何かが頬を伝った。悠犀の意識がそれへ行く。 眠って、た……のか? 目を開けると誰かの太ももを枕にしている自分に気づく。 ……は? え? え、いや、ちょ……

  • 金木犀の夢26

    無意識に悠犀をしみじみ眺めていた秋李はハッとなりテレビへ目を向ける。映画はエンディングどころかすべて終わっていてチャプター表示されていた。 はぁ……。映画も終わっちゃったし……この状

  • 金木犀の夢25

    料理は見た目だけでなく味もおいしかった。そして懐かしい味がした。母親の作った料理だから懐かしいもへったくれもないのだが、航太の料理も同じく懐かしさを感じる。以前にも食べたことあるような気がする味だ。 俺好みの料理だからそう思うのかな。 思

  • 金木犀の夢24

    何となく気になり、秋李は立ち上がってその写真を見に行く。いくつかの写真は無造作に壁に飾られている。 飾り方も何かおしゃれだよなあ……。あ、これ……星羽くんの小さな時の写真かな。……うん? 何だ、今デジャヴっぽい感覚したような……? 怪訝に

  • 彼の者はヒーローではない

    「おい、スミー。またあのピーターパンが俺を狙ってるらしい。クソ。もう今年も終わりだというのにせわしねえ。だがヤツがどこにいるか昨日からまだ見つからねえんだ」 忌々しげに言う海賊の船長ジェームズ・フック・バーソロミューに、スミーと呼ばれた彼の

  • 聖夜の贈り物3

    剣の柄に結ぶ紐は思っていた以上にうまくできた。我ながら器用だし才能あるのでは、とファインは自分の作ったアクセサリーを見ながらにやつく。 紐はすでに昨日出来上がっていたのだが、魔力は今改めて込めていた。一応紐を編む際にも込めながら編んではい

  • 聖夜の贈り物2

    聖モナの日はセルゲイの城でも朝からミルク粥が出た。昔アイトールやトーレンス王国で食べたミルク粥をアルスは懐かしく思い出す。旅に出てからは食べる機会がなかったため、余計だろうか。 当時は安価で手に入る、セルヴォワーズにも使われる大麦を煮てい

  • クリスマス2023企画

    クリスマス企画☆水晶の涙☆(12/24〜12/28)---------------------------------------------------セルゲイの城に滞在している間に『聖モナの日』が近づいていることをファインたちは知った。

  • 聖夜の贈り物1

    セルゲイの城に滞在している間、ファインたちは何度か町へ出かけた。この地域へ着いた当初は気づかなかったが、そろそろ「聖モナの日」が近づいていたようだ。町の至るところで飾りつけがちらほら始まっていた。 聖モナの日は、神モーティナを祝って過ごす

  • 金木犀の夢23

    「そういえばもうすぐクリスマスだよね」 三年生の十二月は期末試験が終わるとほとんど授業もない。一応自由登校という形なので学校で過ごしてもいいが、登校しなくても問題ない。自分で受験勉強する者もいれば、登校して自習する者もいる。ただ自由なので出

  • 金木犀の夢22

    そんな悠犀が何故、とますます混乱しそうだ。それに対し秋李は自分を甘く評価しても見た目はまあまあと言えなくもないかな、くらいだろうか。勉強はそれなりにしてきているし、できるほうだと思うが到底悠犀には適わない。そもそもきちんと将来のことも考え

  • 金木犀の夢21

    悠犀を部屋で待っていると、下の階で話し声がぼんやり聞こえてきた。最初はトイレの場所でも聞いているのかなと何となく思いつつ気にしていると、ぼそぼそ聞こえてくる微音はなくならない。どうにも気になって、秋李は一階へ下りていった。するとリビングで

  • 金木犀の夢20

    気づけば十一月も半ばに入ったある日、秋李が突然「家へ遊びに来ないか?」と誘ってきた。とはいえ、ずいぶん親しくなったし友人同士ならお互いの家へ遊びに行くことも普通にあるだろう。それに「あと十日後に家へ遊びに来ないかって誘うから」と事前宣言す

  • 金木犀の夢19

    学校から航太のマンションまでの帰り道にある公園に、悠犀は通りかかるたび足を止めてしまう。日中はそうでもないのだが、下校時はどうしてもイメージが被ってしまう。 別に似てないんだけど、な。 公園は全然似ていないが、あの事件の時もこの香りと、そ

  • 金木犀の夢18

    高校三年の夏休みもあっという間に終わってしまった。 そういえば星羽くん、結構俺とかに付き合ってくれてたけど、受験勉強大丈夫なのかな。 秋李が心配することではないし、むしろ自分の進学心配だけしろと断言できるくらい、悠犀は頭がいい。それに基本

  • 金木犀の夢17

    夏休みに悠犀は何度か秋李と遊んだ。こうしてまた一緒に遊べると思ってもみなかった。 何して遊ぼうかとメッセージで聞かれた時は「そうだ、ディラに会わせてみようか」と浮かんだが、と同時に「直接会わせてもし秋李に悪影響あったら」と過る。少し考えよ

  • 金木犀の夢16

    悠犀に「夏休み、遊びに行こう」と誘われ、秋李は正直嬉しいと思った。三年生になって転校してきた悠犀と、最初は知り合ってからもあまり仲よくなる気配はなかった。だが今では結構仲よくなったと思っているだけに嬉しいのだろうと思う。理由は相変わらずよ

  • 金木犀の夢15

    もうすぐ転校してきて初めての、そして高校最後の夏休みになる。悠犀はぼんやり、どうしようかと考えていた。 秋李と同じ学校に通うだけでいいなどと言っていたくせに、結局避けることなど到底無理で気づけば仲よくなっていた。昔のような「兄弟みたいなレ

  • 金木犀の夢14

    たまに挨拶する顔見知りといった関係である悠犀のことが、秋李は何となく気になっていた。 コンビニエンスストアで知り合ったものの、同級生のわりにその後、顔を合わせることはあまりなかった。一応たまに顔を合わせると挨拶は交わす。毎回何となくその際

  • 金木犀の夢13

    ただ、この気持ちに含まれているものは悠犀の個人的な苛立ちと八つ当たりが大半なのだろう。この秋李の友人にしても、何も知らないだけだ。知らなければ何してもいいとは言わないが、知らなければ心の配りようもない。 そんなことを考えていた悠犀は、つい

  • 金木犀の夢12

    気づけば中間試験も終わり、蝉の声が聞こえる時期になっていた。悠犀は朝から必死に鳴いている蝉がいるであろう木々を見上げる。 蝉はこんなに必死になって鳴いて自分の存在主張してんのに、俺は何してんだろな。 秋李との関係はさほど変わっていない。学

  • 金木犀の夢11

    秋李は今日、コンビニエンスストアで会った人が気になっていた。 何だろうな。何が気になんだろ。 学生服が秋李と同じだったので、多分同じ学校の生徒だろう。別に変なやつというわけではない。むしろ結構男前だったように思う。 モテそう。そういえば名

  • 金木犀の夢10

    「お帰り。俺のが早かったな」 悠犀が帰宅するとリビングのほうから航太の声が聞こえてきた。だが悠犀の反応がないからか、少しの間の後、航太は玄関までやって来た。そしてとりあえず靴は脱いだものの俯いたままの悠犀に気づき「どした?」と静かに聞いてく

  • 金木犀の夢9

    大げさ、なのか? かばった際に言われたことを悠犀は反芻する。大げさ、なのだろうか。 もしかしなくても、トラウマの一種なのかもしれない。幼い頃体験したあの絶望感にも似た不安を悠犀は何とか噛み殺す。 自分の知っている誰かが、それが例えただの顔

  • 金木犀の夢8

    一年生、二年生と悠犀はかなりがんばった。目指している大学より上のランクの大学も余裕で候補に入れたらいいと教師に言われるくらいにはがんばった。 そして高校最後の学年。悠犀は無事、秋李と同じ高校へ通う。 実家から離れているとはいえ、高校生を一

  • 金木犀の夢7

    秋、だな。 夕暮れの空を歩きながら眺め、秋李はぼんやり思った。 高校生になって初めての秋だ。通っている学校からの帰り道にはところどころで金木犀が咲いていて、オレンジ色の花から甘い香りを漂わせている。草木に強くはない秋李でも「金木犀だ」とす

  • 金木犀の夢6

    戻らず両親の元へ向かったのは今考えても正解だったと理性ではわかっている。 理性では。 でも、駄目だった。自分だけ無事だった、怪我すらしなかったという事実が悠犀を苦しめる。自分の後ろで何が起こっていたのか知りもせず、ひたすら怖くて自分の保身

  • 金木犀の夢5

    家に着く直前、悠犀は自分一人だけが走っていることにようやく気づいた。 も、戻らなきゃ……。 とっさにそう思ったが、引き返そうとして思い切り首を振る。 違う。俺がしなきゃなのは今すぐ父さんか母さんに言うことだ。警

  • 金木犀の夢4

    気づいた男は懐に手をやると何か取り出した。そしておぼつかない様子とはいえ同じように走ってくる。 何……? 何を……。 二人を守りつつ桃史も駆けだしたが、何とか振り返り男の手元を見定め

  • 金木犀の夢3

    そろそろ帰ろうと声かけ、結局一緒に遊ぶ羽目になった桃史だが、実はそれなりに楽しんではいた。高校三年にもなって弟たちと過ごすのが楽しいやつなどあまりいないかもしれないが、桃史にとっては楽しいし嬉しい。本当の弟ではないものの秋李はやたら懐いて

  • 金木犀の夢2

    秋李と悠犀が十歳の誕生日を迎える日、二人は桃史と一緒にあの公園へ来ていた。悠犀が言った通り、誕生日だからか最終的には駄目と言われなかったものの、桃史と一緒に行くのと夕方の五時までには帰ることが条件だった。夕方までに帰る条件は、夜に家族ぐる

  • 金木犀の夢1

    「桃史にいと航にいってさ」 秋李が言いかけると、飼っている愛犬と今まで戯れていた悠犀が「何?」と顔を向けてきた。「仲いいんだか悪いんだかわかんない時、あるなあって思って」 鳴海 秋李(なるみ しゅり)は両親と父方の祖父母と一緒に住んでいる。

  • 彼は最後に微笑んだ193

    ニアキスとラウラの屋敷へは、エルヴィンとニルスだけでなくリックも一緒に来ていた。ヴィリーは今回都合が合わなかったがその代わり、数日前に両親と先に甥と対面したらしい。だが楽しみにしているエルヴィンのためにむしろ感想を控えているようだ。城で会

  • 彼は最後に微笑んだ

    ◆彼は最後に微笑んだ◆ エルヴィン・アルスランは、冷たい牢の中で大切だった家族を思い、打ちひしがれていた。 妹はさんざんつらい思いをした上に出産後亡くなり、弟は反逆罪で斬首刑となった。母親は悲しみのあまり亡くなり、父親は自

  • 彼は最後に微笑んだ192

     *R-18指定あり注意今回のお話は性的表現が含まれる部分がございます。18歳以上でR指定大丈夫な方のみおすすみ下さい。 

  • 彼は最後に微笑んだ191

    五日間の休暇だが、最終日はニルスの屋敷でゆっくり過ごそうと考えていたため、あと丸一日ゆっくりできる日はニルスとようやく初めて体を重ねた翌日のみという予定だった。 婚約パーティーの夜は一旦アルスラン家の別宅で休み、休暇初日は昼過ぎに起きたの

  • 彼は最後に微笑んだ190

    すごかった。 まだ疲れ切った上に逃しようもない痛みのせいで横たえた体を動かせないまま、エルヴィンは内心目を輝かせて思っていた。 あんなに……全力疾走並みに疲れて、あんなにニルスのが硬くて熱くて大きくて、あんなに

  • 彼は最後に微笑んだ189

     *R-18指定あり注意今回のお話は性的表現が含まれる部分がございます。18歳以上でR指定大丈夫な方のみおすすみ下さい。 

  • 彼は最後に微笑んだ188

    確かにエルヴィンのことが大事すぎて慎重になりすぎていたのかもしれない。だが自分の欲よりも何よりもエルヴィンを大切にしたすぎて、ニルスはずっと堪えてきた。 本当ならば、できることならば、表情も体も何もかもがとろけそうなエルヴィンをめちゃくち

  • 彼は最後に微笑んだ187

     *R-18指定あり注意今回のお話は性的表現が含まれる部分がございます。18歳以上でR指定大丈夫な方のみおすすみ下さい。 

  • 彼は最後に微笑んだ186

     *R-18指定あり注意今回のお話は性的表現が含まれる部分がございます。18歳以上でR指定大丈夫な方のみおすすみ下さい。 

  • 彼は最後に微笑んだ185

    ニルスは答えを待っているようで、ただじっとエルヴィンを見てくる。非常に落ち着かない。 友人としての付き合いはかなり長い。おまけに遡ってからのニルスは子どもの頃から特別な友人の一人であり、気が置けない仲だった。 だが好きだと意識したのはそん

  • 彼は最後に微笑んだ184

    日が落ちてくるとこの辺りは田園地帯ということもあり、普段エルヴィンたちが生活している場所と違って真っ暗になる。見張りや換気が必要な松明を焚く理由も特になければ、エルヴィンたちが日常生活を送る時に使用する燐光石も使われていないようだ。 燐光

  • 彼は最後に微笑んだ183

    過去のことだし、見た夢は切ないながらも幸せな光景だった。だからエルヴィンも落ち込むことはなかった。 シュテファンのことを思うともちろん悲しいが、そればかりはどうしようもない。「エルヴィン……どうかしたのか」 だ

  • 彼は最後に微笑んだ182

    「今日はシュテファンに会いに行く日なの」 ネスリンが満面の笑みを浮かべて笑っている。 シュテファン……? 待って母上、シュテファンは……もう……。 そう思っ

  • 彼は最後に微笑んだ181

    別荘に着くまでエルヴィンはひたすら耐久を強いられていた気がする。とはいえもちろん嫌なわけではない。正直嬉しい。 ただ、嬉しいが羞恥心も半端なかった。好きな相手の膝上という状況が何より嬉しいながらに恥ずかしいし、それ以外でも図体のでかい男が

  • 彼は最後に微笑んだ180

    ニルスのたどたどしいと言っても過言ではない説明で、以前エルヴィンがザイフォンクプアスを口にして大変な目に遭った時に触られたのだとようやく把握した。「あ、あー……」 実際「あー」しか言えない。あれは本当に自分がや

  • 彼は最後に微笑んだ179

    っていうか……。 一応眠ったものの疲れが体にこびりついているような感覚が拭えないエルヴィンは、朝というよりは昼に近い今、爽やかな日差しを窓から浴びながらパンとサラダ、そして蒸した鳥の肉を惰性で口に放り込んでいる

  • 彼は最後に微笑んだ178

    一度達したのもあり、指を抜こうとしたニルスにまた「やめないで」とねだったものの、先ほどからエルヴィンには気になっていることがあった。 こういう、もの……? 最初に入ってきたのはどうやら人差し指だったようだ。その

  • 彼は最後に微笑んだ177

     *R-18指定あり注意今回のお話は性的表現が含まれる部分がございます。18歳以上でR指定大丈夫な方のみおすすみ下さい。 

  • 彼は最後に微笑んだ176

    「いいパーティーだったと思う……」 珍しくニルスがそんなことを言っている。エルヴィンと同じくそういった催しが苦手なはずのニルスだけに、そう思えるのならよかったとエルヴィンは笑みを浮かべた。「お前がそう思うなら、よ

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