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  • 2021年1月読んだ本のまとめ

    2021年がはじまった。 このブログも少しずつ役割を変えていこうと思う。 おそらく本の感想はnoteやラジオで発信していく(予定) とはいえ、読んだ本の記録は引き続きやっていきます。 去年ほどのペースで読めるかどうかわからないけど、少しずつ、少しずつ。 1月の読書メーター読んだ本の数:17読んだページ数:3428ナイス数:101 アンゴルモア 元寇合戦記 (10) (角川コミックス・エース)読了日:01月02日 著者:たかぎ 七彦鬼滅の刃 23 (ジャンプコミックス)読了日:01月04日 著者:吾峠 呼世晴地形と歴史から探る福岡 (MdN新書)の感想2021年3月に文喫がオープンするなど、ます…

  • 2020年12月読んだ本のまとめ。~滑り込みで500冊達成!~

    正直、届かない、と思ってた。 で、終盤かなり嵩上げした。 ぼくの本来ある(この定義自体曖昧なものではあるけど)読書量とスピードだけでは、到底500冊にはいかないことを知った。 それでも、よくわからない意地に引きづられ、どうにか500冊を越えた。 これが、躍進に変わるのか、重荷になるのか。 今はわからないけど、ひとまず、500冊読んだ自分、お疲れ様(笑) 12月の読書メーター読んだ本の数:70読んだページ数:17456ナイス数:72囚われの山 (単行本)読了日:12月01日 著者:伊東 潤龍帥の翼 史記・留侯世家異伝(17) (講談社コミックス月刊マガジン)読了日:12月02日 著者:川原 正敏…

  • 2020年読んだ本のまとめ

    あけましておめでとうございます! 色々大変だった2020年ですが、今年はどうなるのやら・・・ まあ、どうなったとしてもまずは、振り返りですわ(笑) 2020年読んだ本をどどどーーっとまとめておきます。 2020年の読書メーター読んだ本の数:501読んだページ数:106193ナイス数:4404岳飛伝 9 曉角の章 (集英社文庫)読了日:01月04日 著者:北方 謙三岳飛伝 10 天雷の章 (集英社文庫)読了日:01月06日 著者:北方 謙三新テニスの王子様 28 (ジャンプコミックス)読了日:01月07日 著者:許斐 剛蒼天航路(5) (モーニング KC)読了日:01月07日 著者:王 欣太宇宙…

  • 2020年11月読んだ本のまとめ。~さあ、あと一息。終わりよければ全て良し~

    あっという間だった。 1日1日をなんとか乗り切った。 ここまでくると、たどり着いた、という単語が浮かぶほど。 きっと回想するには早いのだろう。 ただ、朝起きてなんとか出社し(在宅勤務し)、終えて夜寝る、を繰り返せば、もう年明けが見えてくる。 でも、それでも、最後の最後までこだわってみる。 読みたい本をどこまで読むか。 誰にも求められていないけど、やりたいからやる。 読み尽くす一ヶ月をとことん楽しみたい。 11月の読書メーター読んだ本の数:43読んだページ数:9867ナイス数:943×3(サザン)EYES (2) (ヤンマガKCスペシャル (152))読了日:11月01日 著者:高田 裕三信長と…

  • 読書感想:『大分断 教育がもたらす新たな階級化社会』 (PHP新書) 〜世界はどう変わっているのか?今を知り、視点を知る一冊〜

    今を分析するのはとても難しい。 きっと数年後、コロナが落ち着いたとき、ぼくたちは2020年の世界情勢をみて苦笑いするだろう。それだけ迷走し、普段では考えられない人間の動きをみてしまい、落とし所に苦慮する。 その過程でマスクをしない道を選んだ国もあれば、ある程度抑え込んでいる国もある。 その結果と因果関係を証明しきれず、ぼくたちはいまを生きている。 (もちろん未来のぼくらは今を称賛することもありうるのだけど) それだけ、今のことを、適切に理解できている人はほとんどいない。 日本のことですらそうなのだ。世界諸国のことなど、見えているかどうか・・・ メディアではなかなか突き詰めてくれない今の各国の実…

  • 2020年10月読んだ本のまとめ。~今年が終わる。あとはどこまで読むか~

    なぜか、11月は落ち着かない。 次の月は年末なので、慌ただしいし楽しい(今年はどうなるかわからんけど) 逆算思考でいくと、11月はいろいろ準備しておいたり、嵐の前ということで力を蓄えたりしたほうがいい。 が、なぜかどちらもできないのがここ数年。 終わりが見えると、途端にいろんなことに現実味が出てくるからだろうか。 10月はかなりペースがあがった。 理想であった10月中に400冊読破は達成しなかったが 、まあ、11月上旬にはするだろう、というところまではきた。 問題は500冊を目指すか。そしてあと何を読むか、だ。 (一度決めたのだけど、再び悩んでいる) それも見えてくるだろう。 60日あまりでで…

  • 読書感想:『天下取(てんかとり)』〜精一杯の抗いで断ち切る連鎖。戦国時代の女たちの戦い〜

    もうそろそろ、歴史の見方を変えなければいけないのではないか。 その思いは年々募っていく。 信長や秀吉など、著名な人物や時代に関する情報は更新こそされているものの、従来の説の裏付けか、ありそうでなかったものへの渇望に属するものがほとんど。 いわゆる役割や業績の分析が、これまでの切り口だった。 しかしこれらは現存物の総数や分析に限界がある。 抜けているところを想像や解釈で埋めていかなければならないのだが、そこには「史料重視」の壁がある。 頭打ちの予感が、どんどん漂ってきている気がするのだ。 これからは、「存在論」や「認識論」の切り口もあっていいのではないか。 彼ら(彼女ら)がその時に存在し、かすか…

  • 読書感想:『光秀の選択』〜社会不適合者・明智光秀の戦い〜

    明智光秀は何者なのか。 おそらく、これがわからないので、本能寺の変は解明されていない。 (解明された、という結論を出すことができない) 保守的な戦国武将というのが定説だったが、そうとも言えないイメージが宣教師の証言(文献)から出てくるなど、謎は深まるばかり。 ただ、これははっきり言えるだろう。 明智光秀は、50代まではほぼ定職につけていない「何者でもない」男だった。 要するに、社会不適合者だったのだ。 バクチ好き、社会適応性低く、満たされないものを抱え続ける存在。 『桶狭間の〜』や『姉川の〜』などでおなじみの鈴木さん新作でも、この光秀像は変わらない。 今回はほぼ光秀が主役となっており、実力はあ…

  • 2020年9月読んだ本のまとめ。~ラスト3ヶ月。何を読むかに悩む時期~

    年末年始に向けての三ヶ月予報が出ていた。 なんと、今年はめちゃくちゃ寒くなるらしい。 数年前の関東大雪と同じような気圧配置になるような気配とのこと。 つまり、秋がほとんどない、ということ。 季節の合間がないのは、なんだか慌ただしい。 どうやら今年は色んな意味でバタバタな一年で終わることになりそうだ。 さて、9月については良くも悪くもここ数ヶ月同様の感じで終わる。 いよいよ今年のラストクールが始まる。 冊数ペースでいくと、昨年の400冊はゆうゆうに超えるけど、500冊は辛そう。 どこかで大幅なペースアップが必要になる。 まあ、1日2冊読めていれば達成できる範囲ではある(苦笑) そして、9月の振り…

  • 読書感想:『はぐれ鴉』第六回 〜ついに、敵討ちのとき。才次郎、人生成就の太刀〜

    堤防で起きた事件。 解決するため、動き出すはぐれ鴉と才次郎。 犯人は見つかり、詮議にかけられるのだが・・・ 周囲からは意外な?犯人への戸惑いや、父と娘の対立など様々な要因が入り乱れ、戦後の結果は後味の悪いものへ。 しかも英里は才次郎との相思相愛を口にしながら、落飾を決意。 理由がわからない才次郎は混乱に混乱を重ねる。 英里と結ばれるなら敵討ちを捨てる、とまで決意していた才次郎の思いは、英里の行動によって、またしても行き場を失ってしまう。 やはり、初志貫徹。 才次郎は改めて自分がここにいる目的と志を確認し、敵討ちへ向かう。 そして、ついに迎えた、対決。 なぜ一家を惨殺したのか。 なぜ自分は殺さな…

  • 読書感想:『布武の果て』第七回(小説すばる 2020年 10月号 [雑誌]) 〜本多弥八郎暗躍、目に見えない反信長の気配〜

    信玄の死から足利義昭討伐。 一気に巻き返した織田信長の躍進の裏で、光秀に信玄の死を密かに伝えていた(らしい)家康という不気味な存在。 自分たちの情報網に入らなかった遠謀に、いやーな予感を抱く彦八郎たち。 さらに、鉄砲鍛冶の元には家康(元?)家臣・本多弥八郎が現れ、大量の鉄砲購入を求める。 そして、世を太平に導く存在を巡って、宗教・商業・文化などなど、様々な分野を題材に、彦八郎との応酬が繰り返される。 家康との直接的関係は曖昧にしつつ、弥八郎が匂わせたのは、信長という強烈な存在を受け入れられない、内なる風潮の強さ。 そこを突こうとする石山本願寺、張り巡らされた一向一揆ネットワーク。 乗せられてい…

  • 読書感想:『剛心』第十一回(小説すばる 2020年 10月号 [雑誌]) 〜街造りの可能性へ!妻木、弛まず進む〜

    前回の流れから、いよいよ議院建築!となっているだろう、と思いながら本開いたら、なんと予算を通らず頓挫。 というとんでも結果が突きつけられていた(汗) ただ、妻木は気にした素振りはなく、次なる仕事へ。 今度は日本橋の装飾意匠。これに矢橋が挑む。 矢橋は妻木という大きな存在がいることで、どうしても引け目なところが節目でてしまう模様。 「どう立ち回りゃあいいんだろうな」 なんだか、とっても共感してしまった(汗) でも、待ったなしに訪れる自分の出番。 建築家として、どう発言すべきか。 矢橋が選んだのは、自分の趣味・釣りを活かしたデザイン。 それが、日本橋という美しい橋を作る突破口になるのだから、チーム…

  • 読書感想:『塞王の楯』第十四回(小説すばる 2020年 10月号 [雑誌]) 〜西国無双・立花宗茂登場!矛と楯の未来を決める戦いが始まる〜

    大津城攻城戦、ついに開始。 今回は矛側・彦九郎の視点で、伏見城の戦いを振り返り。 当初は(そもそも)攻め手の意欲が薄く、また、塞王の巧みな防御術で一向に堕ちる気配のなかった伏見城。攻め手の都合や苦悩が垣間見えた。 最終的には内部からの裏切りで落城することになるのだが、その一方で矛と楯の戦いは続いていたことも、彦九郎が明らかにした。 塞王の捨て身の行動は、何かを残したんだな(涙) 考えてみれば、守れれば勝ちの守り手に対し、落とす(壊す)ことにフルベットしていかなければならない彦九郎ら国友鉄砲衆。 存在意義を賭けているのは穴太衆だけではないことを、改めて知る。 そして、名将・立花宗茂登場。 蒲生氏…

  • 読書感想:『チンギス紀』第四十一回(小説すばる 2020年 10月号 [雑誌]) 〜攻城兵器登場!チンギス、国を思う〜

    西夏へ、西遼へ、そして金国へ。 チンギスの次なる相手へ向けて、かつて梁山泊の漢たちが情熱を燃やした攻城兵器が、時を経て久々に登場! そして、北方水滸伝購読者にとっては懐かしの攻城戦が開幕!! 数話前から、金国ら中華系国家との戦いを見据えたチンギスの遠望が始まっていたけど、改めてここまでたどりつくと、他国(文化)を柔軟に取り入れるバランス感覚の良さを改めて思い知る。 そもそも、他民族や文化を否定せず、比較的柔軟に取り入れようとする姿勢が、この草原民族にはあるのだろう(もちろん、チンギスが金国で学んだことが大きいのだけど) 中華民族だと、民族の優劣や自民族への誇りや愛着を優先しそうなだけに、新鮮な…

  • 2020年8月読んだ本のまとめ。~残り4ヶ月。そろそろ年内読破本を仕分ける時~

    暑い。 もう9月というのに、秋の気配は全くない。 この状況と似たような温度のなか、昨年の今頃は毎日スーツ着て出勤していたのが信じられない。 環境が変わって半年。 感覚が変わっていることに、ただただ驚く日々・・・ さて、8月は、まあ、それなり、という感じかな。 1日1冊はキープできたけれど、質としてはもうひとつ。 そういうときもある、で済ませておこう(笑) そろそろ、年内読むべき本の優先順位をつける時期になってきた。 何を読むのか 何を後回しにするのか そして、何を読まないのか いつか読む、という本ももちろん存在するけど、この時期この時間だからこそ読む、という決断が、地味に重要。 これだけ変化の…

  • 読書感想:『[新釈]講孟余話 吉田松陰、かく語りき』 〜今こそ振り切るとき。松蔭に学ぶ信念の育て方〜

    幕末日本の若者に大きな影響を与えた吉田松陰。 その狂気すら感じさせる行動力や極端な思考、そしてまっすぐすぎる心根は、今なお多くの人を惹きつける。 そして、彼が育てた弟子の中から、多くの志士が生まれ、多くの総理大臣が生まれた。 教育者として、松蔭を理想像としている方は数多い。 吉田松陰はいかにして生まれ、何を我々に見せているのか。 彼が残した多くの書籍の中で、それがたっぷり詰まっている「講孟余話」。 本書はその現代語版だ。 魅力的でありつつも、極端な行動に注目が集まりがちな松蔭だが、内に秘めた熱さ、激しさ、誠実さがこの本には詰まっている。 読めば読むほど、その思いは本を飛び出してきて、胸にぶつか…

  • 読書感想:『日本文化の論点』 (ちくま新書)〜サブカルチャーで変わる社会。発信者が問われる未来とは〜

    製造物でもなく、農作物でもない。 目には見えないけど、相手が夢中になってくれているもの。 それが、世界から見た日本の新たな文化=サブカルチャーだった。 日本の文化を世界に。 そんな動きが活発だった2013年に発売されたのがこの一冊。 世界に認知されるまでにになった日本の新たな文化と、その文化によって変容している日本社会を、批評家・宇野さんが様々な論点から気づきを掘り出していく。 今でこそ、苛烈でどストレートな言葉を投げかける宇野さんだが、この当時はサブカルチャーオタクに近いポジションだったらしい。 サブカルチャーにどっぷり浸かっているが故のソフトな文調やライトな行動は、共感しやすい反面、鋭さが…

  • 読書感想:『はぐれ鴉』 第五回(小説すばる 2020年 9月号 [雑誌]) 〜拒絶の先に仇敵の姿、才次郎の振り上げる思いの行方〜

    おいしい役どころを得た(苦笑)才次郎だったが、結局この役目は彼に何をもたらしたのか・・・ 嫁入りの時期を遅らせることはできた。 しかも、流れのなかとはいえ才次郎は英里に告白することもできた。 しかし、その結果は撃沈(涙) 引っかかるのは英里の言い分。 まるで自分は幸せになることができない運命、かのような言葉が。 彼女の旅立ちにはまだ時間が残され、お別れ、ということではない。 (実際、偽装彼氏関係が終わった後も才次郎は英里に会うことができている) それでも、彼女の真意は未だ分からず、謎の発言や態度などすんなり終わり、ということにはならないだろうなあ。 そして、才次郎は普請ではぐれ鴉と遭遇、さらに…

  • 読書感想:『布武の果て』第六回(小説すばる 2020年 9月号 [雑誌]) 〜信長の躍進と堺衆の暗躍、その陰で蠢く三河の遠謀〜

    来ても対応できるだろう、という見込みはあった。 だが、足利義昭ら信長包囲網側からすると、信玄の死はやはり大きかった。 信長はすかさず足利義昭討伐へ動き出す。 そして今井たち堺衆もこの期を逃さず、荒木村重を突き動かし、信長へ帰順させる。 そもそもこの段階まで村重が反信長側だったという意外な事実もさることながら、村重のその後を考えると、堺衆主導という流れは大きな伏線になるなあ。 そして、ここ数回ずっと揉めていた堺商人内の意見も、これで統一になったかな・・・ 室町幕府の滅びも目前に迫り、近畿は織田色に染まっていく。 石山本願寺という強敵が控えてはいるものの、大きな峠を越えた織田と堺。 そんな中、進行…

  • 読書感想:『剛心』 第十回(小説すばる 2020年 9月号 [雑誌]) 〜明かされる妻木の過去。何者かになろうとした若き日々の姿〜

    原口の回想から明かされる、妻木の過去。 言葉はあてにならない。見るべきはその人の行動だ 自分は何者でもない。だから結果が欲しい 時代は江戸から明治へ。 みんな、新時代で生き残るために、何者かになろうとしていた。 武士が商売を始めて笑われたり 武士のままでいようとして、刀を振りかざしたり そんな中、不器用で真面目で、そのくせ壮大な思いを抱く青年・妻木。 自己アピールをせず、黙々と何かをする。 周囲から浮くその存在は、妥協せず迎合せず、己を磨き続け、原口が出会うたびに、一廉の男に近づいていく。 あの天才肌で、憎々しく、それでいて何でもできてしまう活躍には、自分しかなれない何かへの尽きない努力があっ…

  • 読書感想:『塞王の楯』第十三回(小説すばる 2020年 9月号 [雑誌]) 〜大津再び!穴太衆、西国無双から城を守れ〜

    塞王の死、という衝撃と伏見城陥落。 匡介たちの悲しみをよそに、西軍は一気に近畿一帯を制圧していき、舞台は岐阜や尾張、伊勢に移っていく。 もう、出番はないのか。 源斎が体を張って得た情報を活かせる場は、ないのか。 依頼がないと動けない。 苛立つ穴太衆に大津・京極家から大津城防衛の依頼が舞い込む。 秀頼の母・淀殿の妹が奥さん 一族が秀吉の側室の出身地 豊臣家(西軍)との関係が深い京極家。 地理的にいっても関係値からいっても西軍所属、と思われていたにも関わらず、土壇場で東軍へと鞍替え。 西軍にとっては邪魔な存在に早変わりしてしまった。 ときは関ヶ原合戦間近、家康率いる東軍は美濃へ集結、三成の西軍との…

  • "私は面白かったよ。おまえが死ぬのではないかと、はらはらしながら待つ人生が" 読書感想:『チンギス紀』第四十回(小説すばる 2020年 9月号 [雑誌])

    母・ホエルン逝く。 チンギスからまた一人、大切な存在が去っていく。 ジャムカ死後、目に見えた強敵は無い。 当初は数百機だったモンゴル帝国は、今や数十万の軍勢を動員できるほど、その規模は拡張している。 (将来のライバルとなりそうなマルガーシが着々と成長しているけど・・・) 主だった将校は戦死や病死がほとんどなく、一軍を任せられるほどの存在がたくさん。 新たなメンバーも続々加入し、金や西夏との戦いに備えた歩兵の準備も着々と進む。 なのに、どんどん空虚になっていくチンギス。 なんだか、『楊令伝』後半の楊令と重なる・・・ (楊令と違うところは家族がたくさんいることと、方向性はもうみんなに認知されている…

  • 読書感想:『豪快茶人伝 下巻』 (大活字本シリーズ)〜こだわりが繋いだ茶の道。現代に続く茶の湯物語〜

    ※本書は文庫版の大活字本verを読んだ感想です。 内容は文庫版と同じなので、文庫本表紙も一緒にあげておきます。 茶の湯を繋いだ人たちの物語。 後編は江戸時代以降の茶人を追っていく。 パトロンが付いたことで、茶の湯は幕府御用達の流派だけではなく地方でも開花。 戦なき太平の時代となり、その時期が安定していくと、茶の湯が果たした役割は少しずつ変化していく。 忠臣蔵の決め手となった吉良上野介の茶会 享保の改革の敏腕老中が愛した茶器収集 大老として幕府を支えようとした井伊直弼が培った茶の湯の精神 茶の湯は、趣味・娯楽・アフターファイブの楽しみ(笑)といったサブカルチャーとしての価値はもちろん、職務では満…

  • 読書感想:『豪快茶人伝 上巻』 (大活字本シリーズ) 〜茶の道はつながった! 一杯の幽玄に命をかけた者たちの物語〜

    ※本書は文庫版の大活字本verを読んだ感想ですが、内容は文庫版と同じなので、文庫本表紙も一緒にあげておきます。 豪快茶人伝 上巻 (大活字本シリーズ) 作者:火坂 雅志 発売日: 2019/11/01 メディア: 単行本 もう5年。 数字を見て、驚いた。 もう、そんなに経ったのか。 確か、冬のスキー旅行で新潟にいたときに、この訃報を聞いた。 奇しくも火坂さん出身地にいた僕は、聴いた瞬間、火坂作品でよく描かれていた稲穂が目に浮かんだ。 冬を耐え、たくましく立ち誇る。 あの光景を、もう見ることがない、と脳が自覚したときの寂しさを、思い出した。 数多くの作品を手掛け、執筆途中だった作品もあった。 未…

  • 読書感想:『愚か者の城』〜行き方を知らない天下人への道。秀吉、生まれ変わる〜

    令和の秀吉像を作り出した矢野隆さんの傑作『大ぼら吹きの城』の続編。 www.motiongreen.net 今作は"天下人"という目指すべき姿を見出したものの、現実や未熟な自分とのギャップに苦しむ秀吉が描かれる。 お市の方に惚れてしまい、おねにバレて家庭は不穏な雰囲気。 気に食わない明智光秀がどんどん出世し、秀吉にとって面白くない日々。 おまけに「必要なのは武功」という概念に囚われ、殿(しんがり)を名乗り出たら、思わぬ自分の本性に愕然とする。 目指す先はあるのに、自分のダメさがどんどん現れていく。 燃えたぎるミッションを作ることができず、気がつけば周囲に壁を作ってしまう。 そして、ちぐはぐな自…

  • 2020年7月読んだ本のまとめ。~1日1冊 適正ペースを知っておく~

    この記事を書いているころ、全国的な梅雨明けがいよいよ、という話になってきた。 暑さは得意ではないけれど、暑くない夏というのもさみしいもの。 ましてや、晴れ間がないと憂鬱になってしまう。 ただでさえ、巷じゃ感染者が増えてきて、もはやどうしたものか、という状況なので・・・ さて、そんな中、7月は意外と読書に関しては苦戦の一ヶ月だった。 というより、読書以外のこととの兼ね合い・折り合わせが悪く、気持ちが分散してしまって集中できなかった、というのが大きい。 それでも、1日1冊ペースが崩れなかったのは、自分の中では僥倖。 8月以降はもう少し諸々のペースがあがってくるといいなあ。 積み本、そろそろ本格的に…

  • 読書感想:『ヘタな人生論より中国の故事寓話』 (河出文庫)〜やっぱり困ったら先人に訊け!気付きがある古来中国の話〜

    再読。 やはり故事成語は面白い。 人間関係、就職、ストレス、お金のこと・・・ コロナ渦の中にいると、些細なことですら時間と手間を費やすことが増えてきた。 会って話をすればすぐにわかるのに 自分のことがわかってくれれば、誤解されるようなことなんてないのに 永遠の悩みとすら感じてしまうような悩み、実は古来の人が全て解決しているというのが、古典を読むとよくわかる。 最近話題になっている古典の魅力は、本書を読むとその通りだと改めて実感。 そして様々な価値観が提示されているからこそ、自分という存在の認知がとても重要なんだということを腹落ち。 どこを選んでも、何を優先してもメリットデメリットは存在する。 …

  • 読書感想:『滅亡から読みとく日本史』 (KAWADE夢文庫) 〜定説と最新説 見比べて学ぶ滅びの原因〜

    日本史の中で滅んでいった数々の家。 もちろん必然ともいえる流れや出来事が原因だったところもあるが、偶然や悲運に見舞われたところも結構ある。 勝者の歴史はとかく必然性を前提にした論建てになりがちなので、その視点一択ではなく、より色々な情報や視点を持って、その原因や経緯を知っておく。 日本史(世界史もだけど)との付き合い方は、昔よりも単純ではなくなっている。 (それを面白いと思えてくると、一気に歴史は身近になる) とはいえ、日本史はまだまだ研究途上にあるものも多い。 定説(常識)と思われていたものがどんどん塗り替えられているややこしさがあるのが、このジャンルの難しさではある。 それを含めて、滅んで…

  • 読書感想:『選ぶ力』 (文春新書) 〜悔いなき日々とは?選べないことを知ることで、得られるもの〜

    五木寛之という作家は、出会うときによって、その存在が大きく違って見える。 かつて『生きるヒント』読んだときは、力を抜いて読める不思議な雰囲気に魅せられ「こんないい大人になりたい」と思ったもの。 生きるヒント 自分の人生を愛するための12章 (角川文庫) 作者:五木 寛之 発売日: 1994/06/23 メディア: 文庫 新版 生きるヒント 1 自分を発見するための12のレッスン (集英社文庫) 作者:五木 寛之 発売日: 2016/08/19 メディア: 文庫 それ以降、折に触れて五木さんの著書やインタビューを読んでいるのだけど、あるとき、ご本人の心情がマイナス(後ろ向き)に針が動いている感じ…

  • 読書感想:『はぐれ鴉』第四回(小説すばる 2020年 8月号 [雑誌]) 〜思いの炎が消えていく。彷徨いの才次郎、始めたのが疑似恋愛?〜

    ようやく仇敵と再会した才次郎。 ところが現れた"はぐれ鴉"は彼の憎悪を掻き立てる存在ではなかった。 (只者ではなさそうだけど) 作品スタートから奇妙な雰囲気に包まれている竹田藩。 その雰囲気に溶け込むかのように、彼は存在感を消していた。 この爺さんと一家惨殺が結びつかないのは、この14年で何かあったってことだろうか。 (そもそも、あれだけの人を斬り殺したのだから、音沙汰ないという事自体が奇妙なんだけど) やはり何かの大きな意図が隠されている感じがするなあ。 生涯をかけた(若干の野心を含んだ)才次郎の思いは、覇気のない相手を前に行き場を失う。 傷を癒やすために滞在した温泉、気持ちよさそうだったけ…

  • 読書感想:『布武の果て』第五回(小説すばる 2020年 8月号 [雑誌]) 〜堺が見た戦国大名の結末。積み重ねた先にあるもの〜

    石山本願寺蜂起。 後々振り返れば、ここから10年にわたる抵抗勢力との戦いが始まる。 天下布武最大の強敵が動き出したことで、その他の勢力も反信長を掲げる。 そして、堺にとっても、孤立無援のなかで生き残りをかけた争いが勃発する。 織田軍絶体絶命のピンチを聞きつけ、彦八郎たちのもとへ堺の反信長勢力が詰め寄ってくる。 三好との関係復活、そして堺・織田派の判断間違いの責任問題。 まあ、そうなるよね。 現代でもよく見られる光景。 状況は確かに信長不利。 それでも現実の分析を行い続けてきた彦八郎たちは、ひるむことなく分析結果を突きかえす。 信長に抵抗したことで荒廃した尼崎の姿、織田の経済力、現状の他勢力の状…

  • 読書感想:『剛心』 第九回(小説すばる 2020年 8月号 [雑誌]) 〜目指すは和洋の調和。武田、内装を任されるってよ〜

    妻木、国会議事堂建築を目指す。 小林が推測する、妻木の目標。 『剛心』は妻木とその仲間たちによる群像劇の様相を一層強めてきた。 今回スポットライトがあたった武田も、必要な人材の一人となるのだろうか。 武田五一。 人付き合いが苦手そう、仕事に対する情熱は人一倍。 そんな彼が妻木に見いだされ、勧業銀行の廊下(窓口)設計に任命されるのが、今回のお話。 「武田くんがうまくやってくれますから」みたいな流れを作られ、意図を汲みつつも不安と恐怖で胸がいっぱいになる武田。 「僕の設計案が本当に通るんだろうか」 先方の顔色を思い出しながら、その一方で自分の力を発揮したいという思いが高まり、悶々とする日々。 (そ…

  • 読書感想:『塞王の楯』 第十二回(小説すばる 2020年 8月号 [雑誌]) 〜塞王散る?伏見城攻防戦〜

    伏見城攻防戦といえば、関ヶ原の戦いの前哨戦として知られている。 西軍にとっては、決起後初めての戦い。 最終的に西軍が勝つものの、当初はやる気がなかったのか、なかなか堕ちる気配がなく、東軍は善戦した、ということになっている。 その戦いに隠された«楯»と«矛»の情報戦。 匡介たちは、伏見からやってきた人たちをとっ捕まえては、現地の情報を聞き、状況を想像する。 明らかになったのは戦いが繰り広げられる中、状況に応じて石垣を組み替える源斎の姿。 彼らに言われる前に「そんなこと出来るのか?」とこっちが叫んだよ(笑) どんどん進化する技術に変化する戦術。 予測しきれない中でも最善の一手をうつために、あえて〈…

  • 「さらば、わが友」読書感想:『チンギス紀』 第三十九回(小説すばる 2020年 8月号 [雑誌]) 〜鮮やかな黒の軌跡、ジャムカ草原に散る〜

    このときが、来てしまった。 月日が経てば立つほど、このときは確実なものとして、読み手のページめくりに影を指していただろう。 ジャムカ、散る。 もはや無理だろ、死に場所探しだろ。 そう思うほど、チンギスとジャムカの力は開いていった。 お互いが願った草原の統一はあと一歩のところまで迫ってきていた。 皮肉にも、民族が争い続ける要因を、お互いが作り続けていた。 チンギスは、圧倒的軍事力を誇りながら、ジャムカを恐れていた。 鉄を求め、歩兵(城攻め)を想定した布石をうち、先々を見据えた配置を次々と実行していく。 そんな予定通りの展開をしておきながら、満たされない思いを抱えていた。 戯れのごとく自分をさらし…

  • 読書感想:『「見えてる人」になるたった1つの法則』〜まず始めよう、そしてやり遂げよう〜

    要するに「考えるより行動しろ」を言いまくってる一冊。 まず行動しよう。 始めたからにはやり遂げよう。 その行動は、例え失敗しても価値を下げることにはならず、将来の貯金となって帰ってくる。 この考えは全面的に同意する。 けど、ページめくってもめくっても「行動しろ」一点張りすぎ。 後半飽きてきたよ(笑) まあ、8年前の本だから、理屈より動くことが大事だということなんだろう。 その頃は、失敗を恐れ、動かない風潮が世界中を包んでいたのかもしれない。 インプットばかりでは頭でっかちになるぞ、という話は今でも根強い。 成毛さんは著書で「日本人はインプットしすぎ」とよく言っているし、『0秒で動け!』の伊藤羊…

  • 読書感想:『断片的なものの社会学』〜無意味とされるこの世の欠片から、今が見える〜

    犬が死んだ。 事実はこの一行で済む。 気に留めなければ、きっとどこかで起きていること。 意識しなければ、とりとめのないことと同じ扱いで、この出来事はみんなの耳を通過していく。 しかし、この本の著者・岸さんはインタビュー時に突然聞いたこの事実が忘れられなかったという。 どんな犬だったのか どう葬られたのか 飼い主は悲しんだのか 唐突だったからこそ、その場の流れに不釣り合いなその一言に、思いを巡らす。 頭の中で予想・想定していなかったことを、僕たちはその時の文脈や雰囲気に合致しないと意識の外に放り投げる。 だけど、それは確かに存在した。 題材にもネタにもなりづらいまま、それらは社会の片隅で起きてい…

  • 2020年6月読んだ本のまとめ。~気がつけば半年経過 これからを少し考える~

    半年前、きっとこんな折り返しになるとは思わなかった。 今も、感染者が増え始め、足場は少しも落ち着いていないことを知る。 きちんと怖がる。 やはり、難しい。 そんななか、折り返し。 ブームや流行に全くのることなく(笑)好きなように読書をしていけたことは、ありがたいとしか言いようがなく、これからも、こうやって読書していければなあ、とぼんやり思う。 この目の前に横たわるたくさんの本を活かし、己が体現者となる。 先々のゴールやビジョンをあえて考えず、ただ(傍目から見て)黙々と本を読み、本を積み上げていく(ダメなパターン) もしそのときお付き合い頂ければ、どうぼくが変化しているかをみてほしいな。 うまく…

  • 読書感想:『火天の城』 (文春文庫) ~無二の城がみんなを一つにした 城作り作品の決定版!~

    元々は「伊東潤の読書会」『もっこすの城』関連で読もうとしたのがきっかけ。 久しぶりに手に取って、読み始めた。 そしたら、面白すぎて1週間に3回も読んでしまった。 職人モノの作品を手掛けたら天下一品の山本兼一作品、その中でもチームワークとプロフェッショナル部門で代表作とも言えるのが、この『火天の城』 安土城の築城という、一大プロジェクトにあらゆる分野のプロが集結。 困難や挫折を乗り越え、みんなが前のめりに命を賭けた戦国の“プロジェクトX” 材料調達、唯一無二のデザイン、困難を可能にするアイデア、全てのワガママを実現させる現場監督術など、今に繋がる様々な難問を彼らは意欲に変えていく。 ・城のデザイ…

  • 読書感想:『ふだんづかいの倫理学』 (犀の教室Liberal Arts Lab) ~こんなときだからこそ倫理学! はき違えた言葉の価値を再確認しよう~

    何が正しくて何が間違っているのか。 まともに考えていくと頭がこんがらがる事が多い。 よさげに聞こえる正論。 ついつい聞いてしまう発言。 聞いてる側も「言ってることはわかるけど・・・」という枕詞をつけてしまったり、「行動はともかく・・・」と折り合いをつけてしまったり。 もはや基準がわからないまま、感情論へ傾いていくいやーな流れ。 SNS内はもちろん、リアルでもそんな話しばかりが乱立する世の中だ。 意見の尊重? 個人の裁量? いや、そう割り切るのはまだ速い。 大事なこと・正しいこと・曖昧なところはどこなのか。 きちんと分けて、評価して、結論づけていく必要性がある。 個人に委ねるのは、その後のハズ。…

  • 読書感想:『将棋の駒はなぜ40枚か』 (集英社新書) 〜意外に謎だらけ 相手の駒を使ってよいルールはどこからきた?〜

    若い逸材が登場して話題の将棋界。 古臭い、ルールがわからない、などと言われ、距離が遠い文化だったのは昔の話。 今後さらに注目が集まりそうな予感がする。 実は将棋を題材にした作品は結構ある。 リアルな将棋界を描いた作品ともなると、将棋に命を賭けた人たちの壮絶な戦いが描かれていて、知らない方は面食らうに違いない。 その対戦で勝つことが全てという過酷さ。 華やかな活躍をする棋士がいる一方で、脱落していく棋士がいるのも、この世界の現実のようだ。 ところで、日本独自と言われる奪った駒を再利用するルール。 どこから生まれたのか いつごろから流行したのか。 そもそも、今の将棋の駒の名前(金や銀、桂馬や香車な…

  • 『チンギス紀』単行本第八巻 7/15発売(予定)!

    亡き父の果たせなかった使命を果たし テムジンはどこを目指すのか。 求めるのは、鉄。 これからの戦いに欠かせない物質として、そして国の豊かさの象徴として、発掘作業が始まる。 一方、敗れた各陣営はそれぞれの喪失を持ったまま、それぞれの道をいく。 ただ一人、ジャムカは姿をくらましたまま、牙を研ぎ続ける。 跡継ぎへの不安がケレイト王国を覆うとき、ジャムカの謀略が王国内部の分裂を招く。 出撃したテムジンは、ジャムカと再び対峙し、かつての同盟国・ケレイト王国からの襲撃を受けることに・・・ ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー コロナの影響で、小説すばる5月号が休刊…

  • 読書感想:『はぐれ鴉』 第三回(小説すばる 2020年 6・7月合併号 [雑誌]) ~仇敵の娘は美麗小町!使命か恋か、迷いの才次郎~

    どk 前回思わぬ裏切りによりボロボロのままの才次郎。 傷をひた隠しにしたまま臨むは仇敵・はぐれ鴉の娘、英里との戦い。 道場での一騎打ち、相手が女性とはいえ、ご近所じゃそれなりの腕前、とのことだっただけに片足がほとんど使い物にならない状況で勝てるのかよ、と思っていたけど。 やはり、死にものぐるいで鍛えてきた月日は田舎剣術を吹き飛ばすものだった。 剣術一心だったのは伊達じゃないなあ。 そして隠れファンが多い竹田小町。 なんと南蛮の血が流れているというのだから、この話しはやっぱり隠れキリシタンと関わりがあるに違いない。 で、戦いが終われば献身的な治療。 お酒飲んだり、花の話しをしたり、道場の運営につ…

  • 《この気持ちをわかってくれるのは、たった一人でいいのだから》読書感想:『夕風の桔梗』(小説すばる 2020年 6・7月号 [雑誌])

    『言の葉は、残りて』佐藤雫さんの新作が読み切り短編で登場。 www.motiongreen.net 生真面目で人と接するのが苦手な武士・晴光。 想いを寄せた女性から放たれた態度や言葉に、その心は傷ついた。 そんな中、であったのは、なんと娘に化けた狐(!) 狐との出会いと別れを通じて青年の心が昇華していく、ジュブナイル的テイスト物語。 『言の葉は、残りて』もファンタジー要素があったけど、本作はヒロインが狐、というこで要素はひろがり、おとぎ話のような雰囲気を醸し出している。 「ボーイ・ミーツ・ガール」の王道をゆく構成 上手く立ち回れない男の不器用さ 社会の許容のあり方を内包した問いかけ 短編ながら…

  • 読書感想:『布武の果て』 第四回(小説すばる 2020年 6・7月号 [雑誌]) ~取るべき道は魔王と相乗り! 御用商人の目利きの行方~

    信長が畿内を安定させたことで、商いの賭けに勝った今井ら堺商人三人衆。 彼らは御用商人となり、信長の依頼に基づいて物資の調達に走り回る。 ちなみに、魚屋(千宗易)は茶道を通じて光秀と関係を深めていく。これ今後の大きなポイントになりそう。 しかし、楽勝と思われていた朝倉征伐が、浅井の裏切りによりまさかの失敗。 織田軍団は敗走し、これにより堺への三好の逆襲が懸念され、反信長派商人が御用商人三人衆に詰め寄ってくる。 おまけに、因縁深き尼崎(摂津)が城主・池田や荒木と共にまるまる寝返るという事態が発生。 ここぞとばかりの意趣返しの連鎖で西側は反信長色が強くなる。 ほら見たことか、と反信長派(三好派)が三…

  • 読書感想:『剛心』 第八回(小説すばる 2020年 6・7月号 [雑誌]) ~その哀しみは希望になるか? ミナが見た妻木の日々~

    広島臨時議事堂建設を経て、妻木は相変わらず新旧メンバーと共に忙しそう。 どうやら新しい役職・大蔵省建築掛長に就いたらしい(臨時でとっつけたようなネーミングに見えるのは僕だけか?) 舞台は再び東京へ。 今回は妻木の妻・ミナ視点がメイン。 育児も来客対応も真摯に切り盛りしながら、彼の力になろうとする思いが綴られたほっこり回。 穏やかで合理的 怒ることがめったになく表情が大きく動かない。 捉え所がなく、家事もだいたいのことが出来てしまう。 当初は自分の居場所に戸惑う夫との距離。 その後、両親を早くに亡くし、天涯孤独で生きてきた妻木が、失うことを恐れているのでは?と気付いたときから、支えになろうと決意…

  • 読書感想:『塞王の楯 第十一回』(小説すばる 2020年 6・7月号 [雑誌]) ~矛と楯の決戦へ “矛”彦九郎は描く 抗える未来のために~

    新たなる戦乱の匂い それは、理不尽な悲しみがない未来のための戦い。 民の涙をぬぐうのは 矛か、楯か。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 伏見城での戦いから始まる、矛と楯の最終決戦。 攻める気持ちを喪失させる絶対の楯か 苦境に抗える力を民に与える至高の矛か 技を極めた二つの技能衆が激突する。 今回、もう一人の主軸・彦九郎の視点がついに導入。 どんなにスキルを高め、どれほどの時間を費やしても、鉄砲の弾一つでその日々を無に打ち砕ける現実がそこにあった。 父の最期を見たからこそ、虐げられる弱き存在のための“矛”を作る、と心に決めた。 (奇しくも、同号で掲載…

  • チンギス・ハン誕生! 読書感想:『チンギス紀 第三十八回』(小説すばる 2020年 6・7月合併号 [雑誌])

    民族統一どころか、当初はバラバラで本人は弟殺しで逃亡していたんだよな。 隔世の思い。 思えば遠くまできたもんだ(涙) 儀式のシーンはおごそかな雰囲気。 テムジンは人に推され、神によって認められて、ハンを名乗る。 認められるから、みんなから祝福されるのだ。 今じゃ形式的なもの、という意識がつきまとうけど、選ばれるってことは尊く、その過程を見届け体験するということも、必要なステップなんだ、と今さらながら思う。 これにより、テムジン、いやチンギスはより大きな国の象徴となった。 (作品でもこれ以降、テムジンとチンギスと表記していく) その反面(北方作品だとこの手の展開は)下り坂の始まりになることがある…

  • 読書感想:『観察: 「生きる」という謎を解く鍵(Kindle)』 ~僕たちは“見ていない”という事実 ただファクトを見るという感触の再確認~

    昔、熱で寝込んでいた頃。 水分補給でポカリを飲んで横たわる。 すると、のどから水分通過の報告が入る。 体内にいる小人さんがえっちらほっちら水分を運び、チェックしてどんどん流し込む。 のどを通過して体に入り、腕や下半身、臓器など、様々なところから水分の感触が伝わってくる。 聞こえるはずのない小人さんの声や息づかいが聞こえた。 水分がどこを通過しているのか、指をさせと言われたら指し示す自信があった。 体調が悪く、眠ることも出来ず、ただ寝転んでいる自分は、体の変化を見ているしかなかったのだろう。 僕はあのとき、体を“観察”していたのかもしれない。 この本を読んで、思い出せないあの感触を、懐かしく思い…

  • 読書感想:『モチベーション革命 稼ぐために働きたくない世代の解体書』 ~これからはワークライフではなくライフワーク。満たされた人たちに送る新しい生き方~

    言われたことしかやらない若手 飲み会に参加せず、社内イベントにも否定的 本人のことを色々知ろうとしても、意向を聞いても、何をしたいのか何が望みなのか、よくわからない こんな若者が増えた、という声をよく聞く。 そして「近頃の若い者は」「ゆとりは」「さとり世代って奴は」って枠組みにはめて、線を引いてしまう。 いつの世でもある光景ではあるけれど、もしかしたら、これからの若者にはこの常套句を当てはめてはいけないのかもしれない。 ある程度“満たされて”生まれ育ってきた人たちは、年長世代と同じ理由、同じ路線で燃え上がらないのかもしれないのだ。 本書で提唱された、その正体。 それは「乾けない」。 これからは…

  • 読書感想:『小説 仮面ライダー鎧武外伝 ~仮面ライダー斬月~』 (講談社キャラクター文庫) ~今度こそ平和を掴み取れ!本当の鎧武・オンステージ~

    鎧武舞台版のノベライズ。 物語自体はTVシリーズから地続きの続編ということだが貴虎以外は初登場人物ばかり。 登場人物一覧をみると、とっつきづらい名前ばかりが並んでいるので、実質はスピンオフなのかな、と思って読み始める。 読んでいくと、次第に違和感が頭をよぎり続ける。 “彼ら”と似たキャラクターが登場する。 そして、“あの時”のような行動や決断をしていき、怒りや悲しみを露わにしていく。 スピンオフどころか、リメイクと思える展開だ。 大人に見放された少年たちが閉じ込められた世界の中で必死に生きていく。 大人への憎しみ 脱出するための争い 大人によって放り込まれるライダーシステム・・・ これ、虚淵玄…

  • 《〈今、ここ〉から未来につながるビジョンをみせよう》読書感想:『静かなる革命へのブループリント: この国の未来をつくる7つの対話』

    気がつけばこの国のこの社会は、ずいぶんと後ろ向きになってしまった はるか昔、宇野さんの本を読んで衝撃を受けた身からすると生ぬるい、けどチクリと痛む出だし。 絶望のようで、達観のようで、それでいて蒼い炎のようで。 もしかしたらこれは、今僕たちが生きている世界そのものなのかもしれない。 「どうせ変わらない」と思いながら、どこかアテにしている。 「未来は明るくない」と未来を予想されて、頭ではそうかも、と思い、でも歩むことはやめたくない。 2004年、そんな中でも小さな旗はあがりつづけていたらしい。 業界の片隅で、地方のどこかで、そして意欲のある人の心の中で。 『遅いインターネット』で注目の宇野さんの…

  • 読書感想:『2020年6月30日にまたここで会おう 瀧本哲史伝説の東大講義』 (星海社新書)~ボン・ヴォヤージュ!この本で人生への熱量をチャージしよう~

    コロナショックで、僕たちは肌感覚の情報を取りづらくなった。 例えオンラインでつながっていたとしても、あの熱気や、予期せぬ出会いや、不意に訪れるひっかかり(心へのサビ)は今の技術では提供されてこない。 どんな本を読んでもやってこないのだ。 体験でしか得られない熱量が。 明日をがんばろうと思わせてくれる一言が。 でも、もし、貴方がそんな場に飢えているなら。 背中を押してくれる存在を渇望しているのなら。 この本は、それらを満たしてくれる1冊だ。 あのとき、未来を厳しく楽しく創り上げていこう、というエネルギーに会場は満ちあふれていたに違いない。 2012年6月、東大で行われていた“伝説の東大講義”を収…

  • 2020年5月読んだ本のまとめ。~ようやく掴めた 在宅デイズの読書環境作り~

    ずーーーっと自宅(もしくは自宅周辺)にいるGW。 そして、少しずつ、少しずつ外へ出て行く。 少しずつ、体を慣らしていく。 まだまだ感染拡大の危険は続いていく。 在宅ワーク、対面の減少、そしてリアル以外の生活圏が生まれる兆し。 これは、全く新しい変化か。 それとも、目に見えない(実際は萌芽していた)変化が一気に吹き出しているのか。 予測できないことは多いけれど、僕にとっての朗報は、ようやく読書ペースが戻ってきたということ。 在宅全体の生活に、きちんと読書時間を能動的に確保していく、という気づきを実現することが出来た。もちろんまだまだ改善の余地はあるけれど、ここに、リアル要素(喫茶店での気分転換や…

  • 読書感想:『空海の風景〈上〉』 (中公文庫) ~イノベーター・空海とは何者だったのか?空海を探る司馬さんの脳内追体験~

    平安時代初期。 日本の宗教史において(日本史そのものにおいて)得がたき二人のリーダーが現れた。 厳しい修行と懐深き学びの場をつくることで日本宗教界の母なる地を生みだした最澄 人智を越えたその明晰さと異次元の発想であらゆる事項のイノベーターとなった空海。 努力型と天才型(という分け方でいいのか自信は無いが) リーダーの理想たる姿を体現したかのような二つの存在によって、日本の歴史は大きな軸を得て、中世・近世へと進んでいく。 そして二人の功績は、宗教だけではなく文化、思想など幅広い分野に及んでいる。 今なお、二人が創設した文化財(比叡山・高野山)に国内外から多くの人が訪れ、何度も足を運ぶその魅力はど…

  • 読書感想:『どこでも誰とでも働ける――12の会社で学んだ“これから"の仕事と転職のルール』 ~大変だけど選んでみる? 自分の道をいくエネルギーをもらえる1冊

    転職回数、二桁。 著書を出される度にその回数が増加していく尾原さん、その経験を通じて、御本人が掴んだ働き方(生き方)とは何なのか。 これまでの著書は御自身の経験や働くフィールドについての本だったが、本書はその働き方(生き方)について、ついにフォーカスされることになった一作。 日本では(昔ほどではないにしろ)転職回数の多さは社会的マイナスイメージとなって、自身に降りかかる傾向にある。 しかし、地殻変動は起きていて、その中で生きている人は確かに存在する。 尾原さんもその1人。 そしてそういうアウトロー(?)な方の存在が、今後注目されるかもしれない。 言うまでもなく、コロナの影響だ。 今後の生きる基…

  • 読書感想:『戦国武将の叡智-人事・教養・リーダーシップ』 (中公新書 (2593)) ~今さらだが戦国時代はおもしろい! 温故知新のエピソード~

    『麒麟がくる』時代考証・小和田先生の新作。 なんと御本人は最近youtubeチャンネルを開設し、週3前後とかなり精力的に更新。 この本もそこで紹介されていたので、思わず購入。 動画の力はスゴイわ(笑) youtu.be 本書はタイトル通り、戦国時代に生きた人々のエピソードをテーマごとに紹介。 今に生きる僕たちが学ぶべき要素がふんだんに盛り込まれている。 元の(連載)記事が4~5年前のものなのでやや論調が古くさく、おなじみの史料を多様していたり、被りネタが見られるなどの難点はあるものの、小和田チョイスの戦国時代エピソードは読めば読むほどひきこまれる。 ※いくつか新録もある。 今さらだが、やはり戦…

  • 読書感想:『戦国武将の精神分析』 (宝島社新書) ~歴史研究の新しいアプローチ 歴史×脳科学!~

    人間はウソをつく。 それは昔も今もおそらく変わらない。 今ですら、事実(真実)が正確に記録されておらず、問題になるケースがあるのだから、歴史上の書状や日記、書籍や記録の信憑性は根本的な所で担保されているとは言えないのだ。 しかも、それらの史料が今後山ほど出て来る保証はなく、日本史の研究は“わからない”袋小路となっている事例が多いんじゃなかろうか(むしろ、未解明のものが山ほどある) ある意味小説(フィクション・ストーリーメイキング)目線にはなってしまうけど、人や気象、海外との比較、当時の思想や事象、さらには他の専門学やホモサピエンス学といった幅広い観点こそ、僕たちが学ぶべき“日本史”が含まれてい…

  • 読書感想:『30ポイントで読み解く 吉田松陰『留魂録』』 (PHP文庫) ~受け継がれた狂気と熱狂 松蔭魂の叫びを知る1冊~

    幕末長州の火付け役・吉田松陰。 彼は高杉晋作・久坂玄瑞ら多くの弟子を育てた教育者として名前が挙がることが多いが、思想家であり、行動の人であり、読書家でもあった。 そして何より彼が残した膨大な著書こそが、僕たちが吉田松陰という人物を知る大きな手がかり。 中でも有名なのが処刑前2日間で書き上げたという魂の書『留魂録』 極限の状況の中で彼が残した、まさしく魂の叫びが、長州藩の行き先を決めた、といっても過言ではない。 本書はこの書籍のダイジェストを通じて、松蔭の生涯と弟子・関連人物の生涯、松蔭死後の松下村塾や吉田家、さらには松陰神社設立秘話までを網羅したもの。 幕末から明治にかけて、数多くの著書がある…

  • 読書感想:『「関ヶ原」の決算書』 (新潮新書) ~関ヶ原で本当に損したのは?山本博文さんの遺作にしてタメになる必読本~

    『決算!忠臣蔵』という映画を覚えているだろうか。 忠臣蔵をお金の面から描いた異色の作品。 赤穂城明け渡しにかかるお金、家臣に渡すお金、生活費、武具維持費、さらには討ち入りの費用などなど、武士の使命感と現実の家計問題との間で揺れ動く赤穂浪士たちの姿が、コミカルに描かれていた。 主演は堤真一、お笑い芸人の岡村隆史が役者として出演して注目を集めたことでも知られている。 決算! 忠臣蔵 [DVD] 発売日: 2020/05/02 メディア: DVD この映画、実は原作が新書、つまり物語ではなく研究本から生まれた作品。 しかも、著者は東京大学大学院情報学環教授、史料編纂所教授の山本博文さん。 著書から感…

  • 読書感想:『ビジネスを成功に導く! コンサルタントの「決断力」』 (PHPビジネス新書) ~最後は決断。「何のために」を忘れない心づくり~

    コンサルタントの仕事(役割)を一言で言えば、という話になれば、きっと「解決(ソリューション)」、ということになるだろう。 調査して、分析して、提案して実行して、成果を出す。 その過程は様々あれど、やはり解決することこそ、大きな価値。 しかし、どんなに情報が揃っても、絶対の成功が約束されるケースはそうそうみられるものじゃない、とぼくは(勝手ながら)思っている。 だからこそ、最後の最後は、踏ん切りをつけてやる。 決断力こそ、実現のために必要な力。 野口さんの本というと、フレークワークを中心とした型の紹介、というイメージがあるが、本書は「can(できること)「will(したいこと」を尊重しよう、とい…

  • 佐々木作品にハズレなし!読書感想:『家康の猛き者たち 三方ヶ原合戦録』 (時代小説文庫)

    戦国最強の武田信玄がついに攻めてくる。 頼みの織田信長は四方に敵を抱えていてアテにできない。 迎撃か、降伏か。 徳川家は揺れに揺れていた。 しかし徳川家康はこの逆境を機に徳川家の構造改革に乗り出す。 従属ではなく独立を 分裂を起こさない結束を そして、生き残るための唯一無二の強さを! 志を同じにする本多正信を筆頭に、新生徳川の象徴となる武神に本多忠勝 、諜報部隊に服部半蔵父子。 家康の基に集いしプロジェクトメンバー。 個々の能力を総動員し、滅亡不可避の戦いへ。 従来から言われている三方ヶ原の戦いに漂うネガティブ雰囲気は全くない。 それまでの卑屈な立場が災いしておどおどしていた家康が「変わるんだ…

  • 2020年4月読んだ本のまとめ。~生活が変わって知った、読書ライフの実態~

    緊急事態宣言による在宅ライフ。 はじまってしばらくしてはたと気付く。 “全然本読めてない・・・” 自宅にいるのに 時間ある(はず)なのに いっときフラストレーションたまっていた。 で、生活振り返ってみた。 これまで生きてきたなかで、いつ・どこで読書していたのか。 朝起きて、出勤途中で読んで、休憩時間で読んで、移動時間で読んで、移動先で読んで、休憩の喫茶店で読んで・・・ ああ そうか、うちで読むより、そとで読んでいたのか。 だから、読む量どころか回数も少なくなっていたのか・・・ ということがわかったので、4月中盤以降は、「読書回数」増やすように心がけた。 (一回あたりの時間は意識しない) これに…

  • 読書感想:『わかりあえないことから──コミュニケーション能力とは何か』 (講談社現代新書) ~つながるふりからの脱却。みんなちがうのは、大変なんだ~

    8年近く前の本。 だけど、巷で言われている「コミュニケーション能力」の必要性、そして実際の対策が実態と乖離しているという、本書の指摘は今なお全く変わることなく残ってしまっている。 もし、今、「コミュニケーション能力」という言葉に違和感を覚えている方がいたら、その答えを、本書は示してくれているかもしれない。 “みんなちがって、みんないい” じゃなくて “みんなちがって、たいへんだ” 本書で示された強烈なフレーズが、まさにこの問題の根底を示している。 “みんないい”がつながりあえることが前提にある「逆算思考」”ならば “たいへんだ”は混じり合わないことを前提にした「混沌思考」に近い。 でも、そこか…

  • 読書感想:『信長が見た戦国京都 ~城塞に囲まれた異貌の都』 (歴史新書y) ~応仁の乱から進まない京都 信長上洛によって起きた変化と対立~

    桶狭間前年、信長が訪れた京都は戦火で規模を縮小した、衰亡の都だった。 応仁の乱から政争の渦中にあった京都。 どんな時を経て、信長にその姿を見せていたのか。 本書によると、実は僕たちが知る京都の枠組みは秀吉(豊臣政権)以降に出来たもので、それ以前の概要(都町の規模や位置など)を示す史料は限られてくるらしい。 その少ない史料と今に残る京都の道名・街名の由来などから、応仁の乱後の京都の実態を明らかにしたのがこの本だ。 内裏のすぐ側まで麦畑だったとか 狭い地域での町同士の対立、自衛と自治の状況 応仁の乱から進まない復興 そして信長との対立 などなど、見えてくる歴史の側面が満載。 天皇や公家が困窮してい…

  • 読書感想:『塞王の楯』 第十回(小説すばる 2020年 5月号 [雑誌]) ~秀吉が残した呪いの一言 天下争乱前夜~

    天下人・太閤秀吉の死。 再び訪れそうな混乱を予期してか、世情は不穏な雰囲気に。 穴太衆はこれまで以上に仕事が減り、身の振り方を考え始める者が現れた。 他家の仕官。 それは独立不羈の姿勢からの脱却にして、穴太衆への裏切りを意味していた。 雇われによる生活の安定か、使命を前提にした職人魂か。 穴太衆内部のひずみに憤慨しつつ、匡介は先々を見据えて、石の切り出しを依頼。 大津城での日々を通じて得た、自らの理想に向かって動き始める。 目指すは、永劫の泰平。 墜ちない城、攻めようという意欲を削ぐ城を作ること。 争乱が起きたとき、また悲劇を繰り返さないために。 そして“最強の矛”国友との激突をも制するために…

  • 読書感想:『剛心』 第七回(小説すばる 2020年 5月号 [雑誌]) ~その志を失うな! 広島議事堂建築 完結編~

    日清戦争のため、臨時で政府が広島へ移動。 そのために作られることになった臨時の議事堂、いよいよ完成間近。 が、ここにきてミスが発生。 突貫作業だからこそ起きてしまうヒューマンエラー。 現場の愕然とした雰囲気の中、職人達は口を揃える。 仕方がない 時間がない 材料がない ないないづくし妥協の声。 そこに大迫が仕事の意義をぶち込んでいく。 「お前はそれで満足か?」 「(手を抜けば)手にするはずだった美しさを永遠に失うことになる」 「(最上のものを造り上げようとしている)同志の仕事を裏切る権利は、ここにおる誰にも与えられとらんのじゃ」 背筋の伸びる名台詞の数々が、今一度現場を引き締める。 その一方で…

  • 読書感想:『布武の果て』 第三回(小説すばる 2020年 5月号 [雑誌]) ~一歩間違えれば消えてしまう? 若き三人の織田勤め始まる~

    堺が信長に屈服し、彦八郎ら3人は織田勤めをすることに。 結局動きが見られない三好、アナザーエンドを象徴するかのように燃やされた尼崎を戒めにして、堺を守る戦いが始まった。 そして「茶」というキーワードに誘われるように、明智光秀が初登場。 将軍家に仕えていたとはいえ、文化芸術に詳しいわけではない、という設定は、従来の光秀像よりは最新の研究に近づけているのだろうか。 やばい、やばいよ~という心の声が聞こえそうな光秀(笑) おそらく光秀のように、都(将軍)仕えがにわかに始まり、予備知識(経験)がないメンバー、多かったんだろうなあ。 一方、信長への謁見をきっかけに、信長の考える「茶」というツールに興四郎…

  • 読書感想:『はぐれ鴉』 第二回(小説すばる 2020年 5月号 [雑誌]) ~幕府隠密でも掴めない竹田藩の謎 鍵を握るのは姫ダルマ?~

    見れば見るほど、聴けば聴くほど、引っかかることだらけ。 竹田の観光旅情作品として楽しみの反面、謎は深まっていく。 やっぱりなにかある竹田藩。 ホントに一部の人しか知らない謎があるのか、みんな口を閉ざしているのか・・・ 脳天気で、都会に憧れるムチャぶり上司など、地方にいそうな(竹田という土地から連想される田舎風情の)方々が出てきていて、ついついそこに引っ張られてしまう。 どこまでが実態なのか、うーん。 小藩にしては多すぎる銃火器 多すぎる火災の数 そして、気持ちを削ぐ怪しげな怪談話 これらは表向き、まあわからなくはないなあ、ということだらけ。 隠れ蓑にしているんじゃないか、と勘ぐりたいところなん…

  • 読書感想:『チンギス紀』 第三十七回(小説すばる 2020年 5月号 [雑誌]) ~一瞬の隙を突くジャムカ!鉄と刃こぼれと逝く命~

    反金国連合軍VSテムジン。 かつてのジャムカ率いる連合軍撃破の後も、次々と現れる敵。 しかし、その時ほど切迫な雰囲気はない。 むしろテムジンが前面に出ずとも、打ち倒せる体制が整ってきた。 動員兵数はもちろん、分割行動する部隊すら万単位。 物語初期から考えられないほど広大な領土を手にしたテムジン軍は、カサルやテムゲらが泥臭い後方攪乱を展開。 もはや遊牧民族の戦い方を越えた組織戦、かたや超個人技をみせるクブライ・ノヤンの活躍でナイマン王国、タヤン・カンを討ち果たし、また一つ、統一へ近づいていく。 しかし、スキをみせたら迫ってくるジャムカ。 もはや必殺奇襲人状態(笑) 勝ったものの、個人技としては負…

  • 読書感想:『8000万人社会の衝撃 地方消滅から日本消滅へ』(祥伝社新書)~データでみる人口減の実態 僕らはどこまで自分事にできるのか?~

    日本が抱える最大の問題と言われる人口減。 人口といえば、1億2,000万人というのがだいたいの数値だったけれど、過去の話になるのかもしれない。 (ちなみに、令和2年4月の人口概算値は1億2596万人で、前年同月より約30万人減少しているとのこと) 国会討論ではしょっちゅうこの問題が国家的難題として認知され、様々な施策が採られる一方、出産に関する政治家の失言名言が飛び交っているのも記憶に新しい。 そもそもこの問題、なぜ起きているのか? 人口減によって起きる問題は何か? そしてなぜ改善(解決)しないのか? これらの疑問と回答が細かく紹介されているのがこの1冊。 データがとにかく充実していて、ビジネ…

  • 読書感想:『書評の仕事』 (ワニブックスPLUS新書) ~書評って何?プロから学ぶ「人への伝え方」~

    ご存じの方もいるかと思うが、ぼくはまがいなりにも書評やっている身だ。 note.com note.com プロではないけれど、だからといっていつまでも“まがいもの”を垂れ流すわけにもいかない。 クオリティを高めるためにも、プロのお話し聞いておかないと、ってことで読んでみたのが今回の1冊。 正直、はぐらかされている印象は否めず、食い足りないところは多々あるけれど、“書評”というコトに対する姿勢や考え方、工夫など、発信者としておさえておくべき要素がたくさんある。 誰もが発信できる世の中だからこそ、プロとアマチュアとの差は、外側(ユーザに対する)分析と内側(自分自身のスタンス)分析をきちんとしている…

  • 読書感想:『瞬間の記憶力 競技かるたクイーンのメンタル術』 (PHP新書) ~かるたクイーンが語る、自分に合ったやり方の作り方~

    集中力。 一口に言っても、内実は長続きするものと短期のものがあると思っていた。 ところが、根っこは同じというのが本書のお話し。 『ちはやふる』で注目が集まる競技かるた。 そのクイーンが語る、かるたの魅力や練習方法、クイーンになるまでの道が記されている1冊。 特に注目すべきなのは、その練習方法や、競技中に心がけることが、他の選手と異なっていて、しかもそれを気にせず肯定していること。 例えば、集中力については練習を繰り返すこととは別に「疲れてきてからいかに集中力をあげるか」という戦略の基に、日常の集中力をキープしようとしていたこと。 つまり、練習により短期・通常のレベルをあげることによる“短距離”…

  • 読書感想:『東京どこに住む? 住所格差と人生格差』 (朝日新書) ~つながれないから、職住近接を再考する~

    緊急事態宣言で僕たちが切られた、肌感覚を前提にしたつながり。 オンライン化は(半ば強制的に)加速している。今後、これが前提(もしくは大きな選択肢となって)色々なことの前提が変わるのだろう。 会社経営者なら、この状況下で会社事務所(オフィス)維持費を意識してしまうかもしれない。 買い占めによる物不足を気にする方にとっては、物がある程度確実に手に入る区域へのニーズが高まるかもしれない。 おそらく、場所に関する価値基準の変化が、目に見えて起きてくる。 よくよく考えると、コロナショックの前は、一極化打破のための郊外への移動と、暮らしと職場の近接ニーズとが混合する状況だった。 こんな時だからこそ振り返り…

  • 読書感想:『政宗の遺言』~野望の火は消えていない?独眼竜政宗、最期の言葉~

    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 江戸時代・三代将軍家光の時代。 老いた独眼竜・伊達政宗。は、未だ家督を譲らない中で自身が最期と銘打った江戸への参勤を行った。 ところが、病を押してまで行く理由について、様々な憶測が流れる。 中には、幕府への叛逆を企てているのでは?という不気味な噂も・・・ 道中で、そして江戸で起きる様々なトラブルや事件。 体調の良くない政宗への懇ろな対応をする将軍と、嫌がらせのように伊達屋敷へはびこる老中。 そして突然現れる幕府の密偵。 その先には、野心の残り火・叛逆への動かぬ証拠をめぐる幕府との暗闘が待っていた。 果たして、その証…

  • 読書感想:『黒田官兵衛』 (平凡社新書)~才覚鬼謀は平坦では成らず。苦労と苦難の先にあった黒田家飛躍~

    ちょいと調べたいことがあって再びこの本を手に取る。 で、この際だからと再読してしまった(苦笑) 改めて読むと、疑わしきところにはコメントを挟んだり、関ヶ原時の官兵衛(如水)野望説に否定的だったり、と、初読時じゃ気付かなかった小和田解釈の数々、結構掲載されていたな(汗) もっとも、物語的には野望説の方が人気があるけどね(苦笑) 官兵衛の人生は苦難の方が大きかった。 それも才覚があるが故に、足元を見られなかったという、人生の落とし穴で命の灯が消えるような日々が彼を襲う。 信長に目を付けたところはさすがだったものの、(如水後はともかく)その後は本家や実家との板挟みになったり、幽閉されて命を危機にさら…

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