長くて儚い恋の遍歴を通して、人間の根源に迫る、現在進行形の私小説です。
この人こそ……と思い続けた一途な30年越しの恋愛。すれ違い、傷つけ合い、何度別れても、それでも求め続け合った恵と拓斗。だが、互いに別々の家族を持ち、やがてふたりは老いた。そして人生の終末で見た真実の愛とは、幸福とは……。
「結婚したんだってね。淳ちゃんから聞いていたわ」 恵は薄笑いを浮かべながら、芸能人の話のようにさらりと言った。拓斗は、恵の顔の表情にちらっと目をやると、湖面を…
――神聖なる場所……。 女は懐かしそうに小さく呟いた。それがこの小さな岬の呼び名だった。 十年前のある日、恵は出会って間が無いある男を捜して白色のセダン車の…
女が過去と現在を貶めたり、飾ったりして遠くに眺めていると、その横に一台のワゴン車が停まり、運転席から男が降りてきた。車のフロントを回り込み、女の前に立ち止ま…
湖面に風が輝いた。 晴れた冬の日の陽光が、無数に散りばめられたダイヤモンドのように煌めいていた。湖に迫り出した所に、ロッジ風の造りをした古い喫茶店が、歳月の…
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