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2011/02/10

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  • 鏡よ鏡

    仕事の休憩時間にトイレへ行き手を洗って鏡を見たら名札の文字が反転していたヤバッと思ったけど違ったこれでいいのか昔からそうだっけ苗字もロゴマークも何百、何千回と鏡を見たけど反転していたんだったっけ「副店長」の文字は私の身体の右からはじまってい

  • 四月一日

    あなたは四月一日に生まれたんだけど早生まれは不利だと思って四月二日に出生届を出したのよ あなたが産まれたとき四月一日ももうすぐ終わりそうな夜だった陣痛は三月三一日のうちからはじまって気を失うほど長かったのなかなか出てこない頑固な子

  • 日時計

     (これは人間がスマホを持つ前の話) 監視員がからだをカンカンと叩く「9時だぞ」足元の天板に歪んだ影が落ちている「天板を見るのではなく、前を見ろ」くりかえし言われてきた言葉太陽がなければ生きている意味もないのに太陽がうら

  • 走って逃げる

    レジ横の飴が入った箱をひっくりかえしたまま出てきてしまった脳内には色とりどりの飴がはじけ飛び床に散らばった残像ばかりが巡るお客様? と言うかわいい女店員の声を背にそのときの僕はお客様でも何でもなくただの肉体だった会社の仲間といつものように連

  • みじん切り

    電話のベルが誰かを呼びそこねたまま止まり夕食のハンバーグに必要な玉ねぎのみじん切りに取りかかる家具に食事の匂いがつくのが嫌だった雨戸を閉めてしまったので外の気候が分からない濡れた手でまずは薄皮をむく茶色い薄皮が型を抜くようにはがれきつくひっ

  • 連弾

    仕事を早退した夕刻帰路につく途中、連弾の音がする煮つけの醤油のにおい消しゴムのかすなわとびの跡にまみれてピアノの、ひとり十本指では鳴らせない多重の鍵盤がおさえられて、音がなるなぜ連弾か分かるかって、それはおそるおそる、息を合わせて、かしこま

  • 鬼を追いかけている川で顔をすすぎ、毛並みを風で整えながら乗るはずだったバスを追い越して会社に着いてしまう毎日制服を着た鬼などいるのだろうか鬼みたいな顔をしている上司はいるけれど差し出されたものを美味しいと思って仲間になって、戦術を話し合って

  • ヒートコレクション

    下戸なので自分の頬の赤まった瞬間を集めたヒートコレクションショーウィンドーに並んだコレクションを手に取り頬にあてるストレス解消法冬のポケットに宿るホッカイロみたいな回した縄が当たってしまった膝小僧みたいなしかしよりうっとりとしたいなら熱いシ

  • 公園

    仕事中どうしてもとトイレに駆け込んだのだ実ははじめてだった胸が灰色の空気を吸ってふくらみ夕日色した軽いとびらをふっとあけると和式便器にカラーボールが詰まっていた息を止めたまま僕はズボンを下ろせなかったなぜかたんまりと残ったペーパーを見ながら

  • 不二家

    祝いのため不二家に並ぶひとびとたまごを産んだばかりの婦人と身を粉にしてくたくたのサラリーマンふくらし粉を隠し持つ還暦とそれを見抜く酒漬けの果実牛乳にひたったおかま白くあまく溶けて固まった青年と手をつなぎ種ごと食べられるいちごが生まれたと後ろ

  • ヤギ

    郵便をになって牧草を飼えるまでになった遠くに住む美しいひとの気持ちつつましい事務員の要求企業のかいがいしい叫びそっくりそのまま運んであげられる鍛錬のからだをまもる帽子にはこのみどりの町が血管のように埋めこまれている今日はそこに見習いがやって

  • ぱらぱらまんが

    老女三角座りで優先席さきほど過去のわたしに譲られた低い目線からガラスに流れる既存の街灯や目新しい看板などなどどれにも手が届かない夕暮れと夜のグラデーション空に電線が永遠にひとつづきになってその先はお父ちゃんのいるところ嫌ってくらい路線バスに

  • 親知らず

    誰も笑わずかわいそうな親知らず歯医者に行って抜いてもらえば穴はあたたかい血でいっぱい愛されたかったというのはきっと間違っている歯医者までの道のりはあなたが運転してくれたいつまで経っても上手くならない感覚しっかりと受け継ぎながらも私はあなたを

  • I wish I were a bird.

    空を飛んでみよう駅のスピーカーからきこえた毎日言うのが義務らしい大都会ではそう書かれたティッシュを配るらしい受け取った人はそれに火をつけてから空を飛びプラネタリウムのために並べるからそのための会議を睡眠と呼んでただ夢の中に浮かぶ雲をだきしめ

  • コインロッカー

    母が魔法瓶に入れて持たせてくれたあつあつのお茶を出先のコインロッカーに閉じ込めてしまう三〇〇円が返ってこないならコンビニで買えばよかったのに人が行き交う線を結んで交わるところに点を打つそうやってできる都会の地図どうしても空いてしまうすきまに

  • 試着室

    我に返ったとき我がいない心地パンツ一丁でカーテンを見透かす大勢のマネキン布を介し介しつづけてむかう理想のかたち空気で区切られた商業施設袖を通すひとによって無数になっていく洋服つまみ、はなれ、こすれ新品なんてどこにもない誰かが通りすぎたスカー

  • エキナカカフェ

    パズル雑誌をもってひとり女子大生バイトまでの時間コーヒーに砂糖を足して脳みそをやわらげるクロスワードを解くのは誰のためでもなく暇つぶしのため何も考えないで過ごすため雑踏に紛れてもしかしたら人生はいかに暇をつぶすかなんじゃないかって気づきはじ

  • 外の菌を落とすため蛇口から出る水の流れを利用する菌を連れ去る泡を落としながらこの水に全身がどぷんと浸かってしまったなら私は息絶えてしまうのだというまさに背水の陣泡の正体、石鹸石鹸はあぶらでできていて同胞の菌をどうもくっつけがち泡の中身、空気

  • バイバイアナログ

    ブラウン管テレビ抱きながらブランコゆれていた砂が目に入って、草の先端が擦れて、鉄がももを打って、痛い少女の腹のなかで熱は冷めずにバラエティ番組の拍手はなりつづけどんどんと元・子供たちが群がってくる皺、白髪、たるみ、しずく、ほつれ、ほころび、

  • 愛妻家の夫

    愛妻家は笑う白髭をゆらして台所に立つのは慣れているし好きな人を待つのは楽しいよ今日はハンバーグを作ろうと愛妻家はまず玉ねぎをみじん切りにするため乾物を入れた段ボールからいくつ取り出すべきか迷いあなたを見つめて思いっ切り炒めてしまうのでたくさ

  • つきぎめ

    仕事を終えバス停へ向かう途中とおく浦の工場の煙するすると吐き出し切ってしまううすい夏の空に革は時計よりもぼくの腕を支えるのであって19:24発の下りバスにいつも爪を切る女がひとり四週×平日=二十日になぞらえ左手親指から小指、右手

  • おとひめたち

    地下の交通に抱きつくかたちのデパートへいざなう虹色のエスカレーターに乗れば、さまざまなガールがペイントした手のひらを見せびらかすように挙手して、街は拍手喝さい鋭角のおじぎで出迎える店員の持つスイッチ、たまにすとんと落とされるガールに憧れすぎ

  • ★「ムーンウォーク」(50)

    結婚はしてるか問われ恋愛はしてるか問われなかった面接脳内の私は専業主婦である美人であるが名前はまだない研修を終えては胸にそよ風がうどんのだしのように染みゆく晴天の無駄遣い中お迎えを待つ信号につかまる鳩と契約の規則に布教活動はなしと書かれた日

  • ゴウ雨

    ゴウ雨が降るから気をつけて、と母は言った防犯ブザーみたいな威嚇をする雨傘を持たせて・・・ほら、雨宿り入れ替わり立ち替わりゴウ雨を当てられない人々が息を整える場所右利きに直された左手からしたたるは体液でなくどこかでうけた優等生の押しつけとなり

  • しばしの面影

    バスは田舎、特に休日である土曜日はことさら本数を減らし最終22:05に合わせ電車を乗り継いできた私は光る行き先をロータリーに見つけ、かけこみ、席を見通し、息切らす(ドアが閉まりますのでご注意ください)昇降口近くの優先席に腰をおさめながら私は

  • 一時の母

    殺伐を見ていたら心が空になったので皆が思う理想の駄菓子屋をひらいてみた草原の真ん中に囲いのない駄菓子の密集があって、顔に皺をつけた私が巨大な頭を茜色の頭巾でまとめながらそこに加われば、鳩時計の鳩は飛び立ち、その開いた穴から子どもがぞろぞろと

  • バク

    教室の中心でバクがねむっている顔を上げたまま目をつむっている中心はどこから見ても同じ距離のことバクは学ランを着て長い頭に小さな学生帽をのせめったに動くことはない黒板を懸命に消す子がいる授業がおわるたび皆がノートをうつし終え息をはけば彼女の出

  • object

    印字された紙が持たれ畳まれ仕舞われる鼓動(縮む・絞まる・ゆるむ・漏れ出す)鏡はヒトを映す瞳はヒトを映す「いってきます!」(ひらく・震える)肌に染みる外鼻をまとう潮風生まれたての飛行機雲その先に門振り返ると海高鳴り(打つ・しびれる・濡れる)砂

  • 1

    本は少しずつ焼けていく。 地平線の真ん中にぽつんとこの建物はあって、家庭の顔をした老若男女がものを買いに来る。夜崎はひとり片隅で店番をしながら、蛍光灯に照らされる人の顔を機械的にチェックしていた。蛍光灯の下では皆、人間はプライベートをさら

  • 相対性理論ゲーム

    深夜、首都光速道路を開発中のETCで通った先に真直ぐな自分史が複数並んで好きなように行けるゲームがある等間隔な灯の下、助手席にはシンセサイザーに脈をまかせる君を置きドラム音でちょうどその横顔に灯が差すシンクロの仕組を頼りにスタートするバーが

  • 初恋

    あの子が好き! と教室で叫んだ人がいて仮にその名をミユキとするミユキは恋なんてしたことがなかった涼しい目を持ちながら八重歯がかわいいけど格好つけることが苦手で少しださいので深追いされることはなく正しい学生生活をしているミユキは勉強ができない

  • 母の色香

    駅前の本屋はつぶれてしまったと母は言う。私の荷物を持ち、颯爽と前を歩く母の背中は小さい。元から細かったけど頭も首もやわらかそうで、手のひらでつかめそうなくらいだ。先日、就職が決まり母には電話で報告済みで、父もいないふたりだけの小さな家族も

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