「母の恋」 クナンクナン セントリオール 共著昭和の初め大きな商家に嫁いだ母は早くに夫を亡くしましたが、その後は再婚もせず嫁として母として、また一家の大黒柱として大家族の面倒をみてまいり
第7節 二十二輪 ボクはときどき夢を見る。 この家のリビングが「人間じみた花」の温室になった夢だ。沢山の花が、あちらでもこちらでもお話しをしている。(あはは、ふふふ)と笑っている。 OLの娘さん達のボタニック・ハズもいる。 娘さんが「お母さんが寂
第6節 十九輪 それから、一月してマリモちゃんのお父さんが亡くなった。 でも、マリモちゃんの家にはボタニック・ハズが三鉢もある。一つは百合、それからチューリップ。 梅もある。梅は季節が過ぎると花はみな落ちるけれど、二枝だけは必ず咲き続けている。それぞれの
第5節 十七輪 というわけで、友達全員がボクの家に集まって「酒盛り」が始まった。トラさんもやってきた。トラさんが加わって急に場が明るくなった。僕たちが集まったのを見て、ボクの母さんが 「あら、お友達が沢山お見えね。じゃあ、BMをこっちに持ってくるから」
第4節 十四輪 シロ君は、マリモちゃんの家に飼われている若い猫だ。 若いけどボクよりは歳はずっと上だ。 三毛君とシロ君と僕たち三匹はよく集まって猫缶を食べながら世間話をする。 シロ君のご主人の家は三人家族。 マリモちゃんは一人娘で小学6年生だ。マリ
第3節 十一輪 母さんはこの間、もうひとつボタニックミーを産んだ。 そのBMは長男の孫の誕生日にプレゼントした。 孫は小学一年生でお話しを聞くのが大好きなんだけれど、孫のお母さんは共働きだから忙しくて毎晩お話をしてやる時間がないんだって。 だから孫はBMを
第2節 七輪 目撃といっても中へは入って見ていないから、耳で聞いただけなんだ。それは、こうだった。 30代の、テレビに出てくるような、きれいな服を着た女の人がやってきた。 服はきれいだったけれど顔はそれほどでもなかった。もちろんお化粧はしていたんだ
第1節 一輪 母さんは、「ボタニック・ミー」がお気に入りだ。 ご飯の支度をしているときはキッチンの窓際に「ボタニック・ミー」を置いて話ながら手を動かしている。 ときどき笑ったり、鼻歌を歌ったりすることもある。 知らない人が見ると独り言を言ってい
三話 私たちの車は元来た道を狂ったようなスピードで引き返した。すぐに父の姿が目に止まった。父は、本を小脇に挟み、前屈みにトボトボと歩いていた。手には千夏が摘んだ花を大事そうに握っていた。 車は猛スピードで父のそばを走り抜けると、タイヤをきしませながらUタ
二話 母達の会話を傍らで聞いていて、なぜか、父のことが頭をよぎった。父はその人とは違うのではないか。私は漠然とそう思った。しかし、確信はなかった。 父は極端に口数の少ない人だった。父も、職場ではあのとき母達が話していた、ああいう嫌われ者だったのだろう
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