「なんとなーく元気がないように思えるけど」

こんばんみ星崎かのこです。最近急に寒くなってきましたね。仕事がいまいちモチベーションダウンのなか、でも仕事量は増えるばかり…寝不足も続いて、なんだか負のオーラ発してましたそんななか、ふと千川課長からメール。「ところで。最近なんとなーく元気ないように見えますけどなにかありましたか？もし僕にできることがあったら言ってね。上のひとにイヤなこと言われた？すぐに怒りにいきますっ」なんて。やさしいんだか、下心だか。。。でも、そんなふうに部下のことみていてくれるだけで女子はちょっとうれしいのです。結局自分のこと心配されていやがる人間なんていないのだから。今日は早く寝て、明日から仕事がんばるぜ「なんとなーく元気がないように思えるけど」

【Side.R】 海鮮居酒屋 春の海 （5）

「おじさんたち、いつ九州に帰るの」「ああ、今日東京で一泊して、明日府中の親戚の家に泊まって、だから・・・明後日に帰るね」「そうなんだ。きっとこれから向こうは観光シーズンでいいね」「うん、最近じゃ東京からも飛行機の便が増えて、安く行けるからね」改札をくぐった私達は、ちょうど来た電車に乗り込んだ。お互いに酔っ払った顔をしながら、つり革につかまる。反対の手で、ゆっくりコーヒーを口に持っていった。ろっくんのご両親は、明後日九州に帰る。九州。去年行った、ろっくんの故郷の情景が思い返させる。素朴な町並み、温かな家族、南の地方独特の風土が生んだ人間、環境。そして、どこまでも青く、暖かい春の海。そのどれもが、私を歓迎してくれている。新参者の私を、迎え入れようとしている。と、思う。だけど。何かが違うのだ。私はその暖かな海になるこ...【Side.R】海鮮居酒屋春の海（5）

【Side.R】 海鮮居酒屋 春の海 （4）

「禄哉、仕事のほうはどうだ。慣れてきたか」「あ、うん。まあまあ。営業は実績あげてなんぼの世界だから、ね」「かのこちゃん、どう？禄哉はちゃんと働いているかしら」「あ、はい。私から見てもちゃんと社会人として頑張ってると思いますよ」私は多くの小皿を寄せて、焼酎のグラスを置くスペースを作った。ろっくんの誕生日記念というわけで、奮発したコース料理であったが、ほとんどの料理が3割弱残っているという状態だ。「かのこは、俺より帰りが遅くてさ。仕事忙しいんだよ」ろっくんは、先ほどまでがぶがぶ飲んでいたビールを、ゆっくりと飲み干し言葉を続けた。「システム部門に異動になってからだよね。急に忙しくなったのは。かのこは、仕事がんばり過ぎなんだから」「まあ、女の子なのに大変ねえ」「いえいえ、今年はたまたま大きなシステム導入がありまして。い...【Side.R】海鮮居酒屋春の海（4）

【Side.R】 海鮮居酒屋 春の海 （3）

「前回はあなた達のマンションにお邪魔させてもらっちゃってありがとうね。東京でも夏はすごく暑いのかしら？」「暑いよ。ただ俺たちの住んでるとこは海に近いから、比較的風がある方なのかもね」テーブルの中央に置かれた刺身の盛り合わせを前にした。私とろっくんの協力プレイで醤油皿は順序良く満たされ、各自への配布作業が行われる。私はろっくんちの皆さんがとり終えるのを待って、刺身に箸を伸ばした。すると、ろっくんのお母さんがちょっとだけ首をかしげながら言った。「うーん。ここの魚は、焼いたのはおいしいけど刺身は、そうねえ・・・」「すみません、私あまり魚に詳しくなくて・・・海のない田舎で育ったものですから」「そんな、いいのよ。いいのよ」おばさんが首を振っているところに、おじさんがとろんとした顔で言った。「今度また2人で九州に遊びにおい...【Side.R】海鮮居酒屋春の海（3）

【Side.R】 海鮮居酒屋 春の海 （2）

「それにしても。こんな喜んでるオヤジみたことないよね」ビールを片手に、ろっくんはおじさんをチラッと見つめ、にやりとして言った。「ほんと。母さんもすっごく嬉しいのよ」「私もこうして東京まで来ていただいて、またお会いできて本当にうれしいです」「まあ、禄哉の25歳の祝いだからな。一つの節目だな」今日は彼氏の禄哉（ろくや）の誕生日で、ちょうど休日だ。九州からろっくんの両親が東京へ遊びにきていて、どうせなら4人でお祝いしようということになり、私がこの席をアレンジした。「九州はうまい芋焼酎がいっぱいあるけれどうちの人は誰も飲めねえんだから、つまんなくって」残り少なくなったおじさんのグラスに焼酎とお湯を注ぎ足し、再びその位置へ戻す。「かのこちゃんが飲めて、お父さん本当にうれしいのよ。ありがとね。これからも一緒に飲んであげてね...【Side.R】海鮮居酒屋春の海（2）

【Side.R】 海鮮居酒屋 春の海 （1）

薄暗い店内は休日にも関わらず、スーツ姿のサラリーマンで埋まっている。職場に近いこの辺りはIT系企業やメーカーが多く、休日でも明かりがついているビルは沢山ある。そして。私は目の前にいる、とろんとしたおじさんを見つめる。見つめると言っても、目を細めすぎているので、彼の厚いまぶたの下に隠れているであろう瞳の場所を見るようにする。「かのこちゃんは、ほんとにいい子だなぁ」「いえいえ、とんでもないです。ありがとうございます」ウェイターが運んできた創作料理を私は小皿に取り分け、1皿目を目の前のおじさんの分とする。彼の飲んでいる焼酎のグラスをそっと避けて、目の前に小皿をゆっくりと置いた。「禄哉には本当にもったいないわね」おっとりした口調でそう言いながら、おじさんの横に座るおばさんが、私の取り分けた2皿目の料理を受け取った。彼女...【Side.R】海鮮居酒屋春の海（1）

「誕生日おめでとう」

こんばんみ星崎かのこです。先日私の誕生日でした！かのこ、早くも25歳になってしまった・・・。同期とか、同じフロアの皆さんとか、お祝いをしてくれてケーキを3個食べました。こんなに他人に自分の誕生日をお祝いしてもらったことなくて、ほんとに涙が出そうだったーそして、同期と飲みながらサプライズお祝いをしていただいてる最中に。ふと、トイレでiPhoneをみると、千川課長からメールが。「誕生日おめでとうございまーす！たいしたものではないですが、渡しそびれたプレゼントを置いていきます」えー酔っ払ってたのもあり、もう千川さんの声が聞きたくて早くにお礼が言いたくて、即電話しました。電車の中だったのか、ひそひそ声でわたしの突然の電話に驚きながらそれでも、おめでとう！と笑ってくれた。・・・・・・・月曜日。デスクにはまっているイスの隙...「誕生日おめでとう」

「お前に期待してるんだから、指導するんだよ」

こんばんみ星崎かのこです。「昨日のミスといい、星崎さんらしくないね。何かあったの？」「ミスをするとこういう風にいろんなところに迷惑がかかるんだよ」「この原因はなに？」会議室に呼び出され、千川さんからの厳しい指導。今週、仕事で凡ミスを連発してしまい。。。休み明けで、ぼーっとしてたんです。仕事も上司も舐めていたのかも。その日はもう1日中落ち込んでいました。笑っても笑っていない自分がいて。やー泣きたかった。そんな夜、私の愚痴をひたすら聞いて、長年の付き合いから的確なアドバイスをくれた、ろっくん。仕事でミスして凹みまくっている・・・ってメールしたらなにも言わずに飲みに付き合ってくれました。「お前に期待してるんだから、指導するんだよ」なんてばち当たりな、私。こんなやさしい彼氏がいて。本当に、天罰があったんだー。『昨日のミ...「お前に期待してるんだから、指導するんだよ」

「僕のこころを揺さぶらないでください」

こんばんみ星崎かのこです。三連休ですね！ようやく秋を感じ始めた・・・千川課長と、コンサートに行ってきました。友達と行く予定だったのにキャンセルになってしまって、というお誘い。待ち合わせ、とかドキドキした・・・。でも結果苦しかったよーつらかったよーコンサートはすごく良かったのです。秋の夜、落ち着いたおっきいホールで、めいっぱい聞きました。3セットだったんだけど、どこも個性的でよかった。でも帰るとき、いっぱい泣いた。自分泣いちゃったから本当かも知れないって思った。千川さんへの気持ち。・・・・・・・「1時間ちょっと飲んで行きますか？」「いいですよー！おなか空きましたし」コンサートが終わって9時過ぎ。私達はホールがある駅の周辺に繰り出し、軽く飲みに行きました。いつもどおり、いっぱい話して楽しかった。会社のネタとか、お互...「僕のこころを揺さぶらないでください」

【Side.S】 海鮮居酒屋 春の海 （5）

「気をつけて帰ってね」「はい、千川さんもお気をつけて。おやすみなさい」長身の彼に手を振り、私は改札をくぐった。この瞬間、改札を境に、2人は別れる。別人に変わる。千川さんは奥さんのもとへ、私はろっくんのもとへ帰る人間となる。私達の温かな夢は続きを持たない。決して。電車を待つ私は携帯を開き、メールを送る。一通は、千川さん宛てに。今日はご馳走様でした、というお礼メールを。もう一通はろっくんに。今から帰ります、遅くなってごめんね、というお詫びメールを。きっと千川さんもJRのホームで同じようにメールを2人に返しているに違いない。帰りを待つ奥さんへの返信。そして私への返信。私の知ってる千川さんなんて本当に一部分なんだろうと思う。会社での千川課長という姿。それはもはや全て演じてるだけなのかも知れない。『僕は絶対星崎さんを守り...【Side.S】海鮮居酒屋春の海（5）