『明日』(小題:山)

『明日』(小題:山)

カテゴリー;Novel彼誰時。払暁とも話していたな。アイドル歌手の歌に暁というものがあり、雫は真っ先にその言葉が浮かんだ――。深夜に家を出て、近所にある少しだけ小高い公園へやってきた。真っ暗だった空に色がつき始め、彼が突然『かわたれ』を知っていますか、と尋ねてきた。知らないと答えると、払暁ともいうし、有明ともと続けた。その時、ある歌を思い出した。「暁」好きなアイドルの曲名を言うと、嬉しそうに笑ってくれた。今時、お見合いなんて流行らないと思いますよね。彼にそんな風に言われるとは思わなかった。雫は引っ込み思案が災いして、きちんと就職することもできなかった。親にしてみれば、お見合い話はありがたい申し出としか思えなかっただろう。だからこそ、すぐに会いなさいと言われたのだと思う。実の娘ではない養女の扱いに困っていた...『明日』(小題:山)