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水城ゆうき
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2010/04/11

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  • 最終章 完結 『ヒカリ☆ ~恋の落とし穴に落ちた享介の顛末~』

    「イチョウの樹の根が、ひかりをイジめていたんだな」 享介は走りだすと、イチョウの硬い樹皮めがけて左右のパンチを効かせて、くるりと後ろから腰をねじって回し蹴り。 けっして伝承のイチョウまでは届かない、遠めの位置からの敵討ちって、やっぱりピントのズレた享介だ

  • 最終章 ひかりのお腹の根 ④

    ひかりは横腹を手で押さえて、腹痛とも吐き気ともとれる姿勢で、じっとうつむいて耐えた。「やっぱり教えてあげたいな。享ちゃんの知っている、イチョウの伝説はかなり違うよ。そうじゃなくって満月の晩、イチョウの樹に触れたカップルには、永遠の別れがやってくるだよ。

  • 最終章 ひかりのお腹の根 ③

    「享ちゃん、月の色が赤いよ」「こんばんはムーン」 すかさず飛びあがって満月のおでこにタッチする。 学生の時から享介はこうだった。「森へいこう! 今夜なら月の真実に近づけそうな気がする」 そのような経緯で、学校の職員室から懐中電灯を調達して、二人の探検隊は

  • 最終章 ひかりのお腹の根 ②

    スピーカーから観覧車の特徴と景観ガイダンスが流れ、ゴンドラは低速で回転するフレームに傾(かし)いでバランスをとった。 ひかりはセーラー服のスカーフの結びを気にして、スカートの広がりをそろえて腰かけた。 たるんだ膝のヘコミに手をおいて、眉間のシワ、片方の

  • 最終章 ひかりのお腹の根 ①

    「ううぅ兄ちゃん、お化け屋敷は怖かったー」「つぎはジェットコースターな!」 ここは海ノ宮の臨海遊園地。子供たちが風船をつかんで園内を走り抜けていく。 生徒数の足りない海ノ宮高等学校をよそに、海浜の森林地域を切り開いて、都市開発プロジェクトが進められていた

  • 廃校へ侵入 ひかりの思い出 ⑨

    「男はあわててツタを登りだすと、ネズミがツタの根元をかじっているではありませんか。巨像の群れも地響きをたてて帰ってきて、上にも下にも行けず囚人は最期を覚悟しました。すると口元に何か甘いものを感じました。落とし穴のへりにあった蜂の巣からこぼれ落ちた蜜の味で

  • 廃校へ侵入 ひかりの思い出 ⑧

    「ある夜、ネズミが土壁をかじる音をきいて、囚人は小躍りしました。思いのほか、牢の壁には穴ができて、あとは指先一つで崩せそうなモロさでした。これならばと有頂天になり、身体ごと壁に向かって飛びました。掌を突きだして、錐(きり)揉み回転で薄壁を突破したんです」

  • 廃校へ侵入 ひかりの思い出 ⑦

    享介は教壇まえの、机イスに崩れるように坐って呻いた。「ひかり、躊躇(ためら)わず何てことを。おまえ、人としておかしいぞ」「どうかしらね、わからない? お次は享ちゃんの順番なのよ。黒板を見ていてね」「なんでこうなるんだ。俺たち恋人同士じゃなかったのかよ」

  • 廃校へ侵入 ひかりの思い出 ⑥

    享介は胸を弾ませ、ひかりの後ろぴったりを歩くが、ケンジまで享介に連結してきて、ユーモラスな三人列車が、学校の廊下や階段を歩きまわる。 3Fの三年D組へ行き着き、扉を開け放つと、いままで風通しのなかった教室の臭いが鼻を刺した。ざあざあとする雨音が、向かいの

  • 廃校へ侵入 ひかりの思い出 ⑤

    海ノ宮高等学校に豪雨が止まらない。 ぼんやりと暗い学校では、電気のスイッチを入れたい衝動にかられる。 窓からの採光に期待できない分、セーラー服の白っぽさが下駄箱に浮かんでいた。「濡れたよね、あそこでワタシは濡れる気はなかったけどね」 ポタポタと髪先から

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水城ゆうき ライトノベル『ヒカリ☆ 恋の落とし穴』
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