苗木

男は一本の苗木を手に入れた。店の者が言うには「幸せになれる木」だとか。若干如何わしい店ではあったが、そういう店のほうが逆に信頼を置ける。店の者の説明はこうだ。…

リンク 第二話

「どうだね、調子は」彼は医者。それも精神科医だ。軽い欝状態の患者から、隔離されるほど重度な患者まで幅広く手がけている。「悪くないですよ」そして彼が患者。俗に言…

事件

男は刑事。今日も殺人の現場にやってきている。経験は浅いがかなりの手腕だと、署内でも定評がある。「死因は頭部の打撲で間違い無いかな」「解剖を行なっていないのでな…

リンク 第一話

「ほう・・・そりゃ貴重な体験じゃないか」彼はコップ一杯の酒を飲み干し、そう呟いた。「そう思うかね。僕は生きた心地がしなかったが・・・」「心霊だなんてね。縁のな…

心理テスト

「この紙に人の絵を描いてください」医者はそう言うと一枚の紙を手渡してきた。俗に言う「心理テスト」というやつらしい。「人の絵と言うと全身かい。それとも顔だけ・・…

人生の厚さ

男は古道具屋で一冊の本を手に取った。表紙には「人生」と書かれており、それ以外は何も書かれていなかった。「作者も不詳と言うわけか。よほど古い本なのだろう。 おも…

筋書き

とあるマンションの一室。男は仰向けに天井を眺めながらぼんやりとしていた。「はぁ・・・」――――――――このため息混じりのあくびは、物語において暇を表現するのに…

共通の空

「宇宙人ってのはいると思うかい」「さぁ。いると言えば嘘になるし、いないと言えども嘘になる」「そりゃそうだ。わからないんだからな」当たり障りのない、実に曖昧な会…

輪廻

あれは昨日のことだ。テレビを見ていたら急に画面がザーザーいいやがる。テレビが壊れたか？電波がおかしくなったか？どっちにしろ不快には違いない。どうにかならないも…