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以前、集A社短編小説新人賞で佳作入選し、「未来のスター作家めざしてがんばってください」とお褒めの言葉をいただきましたが、その後投稿はほとんどしていません。 みなさまのご感想、厳しいご意見などいただけたらとてもうれしいです。

ブログタイトル
短編小説 個人的発表会
ブログURL
https://atsunk-kimakimachan.hatenablog.com/
ブログ紹介文
短編小説新人賞受賞のその後さっぱりですが、自分の作品を投稿するブログをつくってみました。
更新頻度(1年)

集計中

ブログ村参加:2010/02/02

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ハンドル名
kimachanさん
ブログタイトル
短編小説 個人的発表会
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集計中
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短編小説 個人的発表会

kimachanさんの新着記事

1件〜30件

  • たった一人でもいい

    私は高校生のときに、進学の学費を稼ぐために賞金狙いで投稿したのが小説を書くきっかけでしたが、その初めて書いた作品がジュニア小説の新人賞でもう一息の作品の欄に名前が載ったので、つい味をしめてしまったのでした。 続けて次の作品ももう一息の作品に載り、そして3作品目で佳作受賞に至ったのですが、思いつくままに何の構成も考えず書いていただけだったので、10代という年齢の魔法はすぐに溶けてしまい、その後3作品を投稿しましたが、当然ながらさっぱりの結果となったのでした。 そこで、26歳のときに試しにカルチャースクールで半年間の小説家入門のコースを受講してみたのでした。 現役の小説家が講師で、20名ほどの生徒…

  • プロットをきちんと作りたいと思います

    最近2か月で読んだ小説と言えば、カズオ・イシグロの「日の名残り」「わたしを忘れないで」くらいで、あとは月20冊ペースでまんがばかりを読みふけっております。 私が毎回30ページ足らずの短編小説しか書いたことがない理由には、行き当たりばったりでしか書いたことがないことにあります。 プロットというレベルのものを作ったことがないのです。 最近読んだまんがで、1200年代のモンゴルが舞台の伊藤悠さんの「シュトヘル」がありますが、こちらは14巻に及ぶ大作であるため、入念な歴史検証とか、主人公の人間関係、家族関係をはじめからきちんと設定していなければ、物語の途中で破綻してしまったり、読者に訴えることができな…

  • ブログを引っ越してきました

    はてなダイアリー終了に伴い、はてなブログに引っ越してきました。 更新がめったにありませんが、どうぞよろしくお願いします。 にほんブログ村 小説家志望 ブログランキングへ

  • デビューははてながきっかけ

    以前、「じっくり聞いタロウ」というバラエティー番組を観ていたら、元AV嬢で現在まんが家として活躍している峰なゆかさんが出演されていて、もともと彼女は2年でAV嬢は辞めると決めていたとのこと、その後子どものころ描いていたまんがをブログにアップしていたら、それがきっかけでデビューに至ったとのことでした。 昔は、出版社の新人賞に応募を重ねて賞をとったり、担当編集者をつけてもらったりなど、デビューには一定の手順を踏まなければなりませんでしたが、きっかけがブログとはとても今っぽいですね。 彼女は「恋のから騒ぎ」に少しだけ出ていたとか、元AV嬢だったことを隠さず、ビジュアル的にも注目されやすかったこともあ…

  • 自分の本

    モノを書いたり、描いたりする人にとって、自分の文や作品が載った本を出したいと思うことは一度はあると思います。 今から30年ほど前、猛烈にブレードランナーファンだった同級生がいたのですが、現在に至るまでずっとずっと夢中で、コアなファンを集めてはイベントを開いたり、ブログをアップしていたのは知っていたのですが、続編の公開にあわせてとうとう最近共著で本を出版するに至ったのでした。 手に取ってみたところ、巻末の筆者の紹介欄に2番目に大きく載っていて、本のあちこちに文章が載っていました。 ここまで熱い思いを長年持ち続けているのもすごいと思いますが、それが映画評論家などをはじめとする関係者や出版社などとの…

  • 推敲が大好き

    私はこのブログの他に4つ気まぐれにアップしているのですが、書きたいことをバッと書いて、時間を置いて細かい表現を直していくのが大好きです。 自分が書いた文章でも、時間が経つほど客観的な視点で見ることができ、句読点やら重複的表現などを手直ししたり、よりいい文章が浮かんだりするのです。 小4の頃、国語辞典を片手に、同じ読み方で意味が違う単語がたくさんあることに興味を持ったり、「図工」は「図画工作」だとか、「京浜」は「東京横浜」だなどと発見したつもりで喜んでいたり、また「夜書いた手紙は朝見直せ」という格言に妙に納得したりしていました。 幼児の頃から絵本を手放さない子どもで、以来まんがや本を読みまくって…

  • その後の物語に共感したり、納得できなかったり

    現在、月20冊ほどまんがばかり読み耽っている私ですが、かつて読んだまんがの登場人物が、時を経てまた舞台に戻ってくるということがあり、今に始まったことではないのですが、自分自身10年20年と年齢を重ねてから登場人物たちと再開するので、以前の作品を読み直したりなど、とても興味を持って読んでいます。 最近は女性セブンに載った「東京ラブストーリー」のその後、リカの息子の名前が「アフリカ」とあって、そこでまずあり得ないと引いてしまったのですが、まあ、柴門ふみさんのまんがは安易なハッピーエンドに持っていかないところとか、性格がねじ曲がった人物が多いので予測不能なところが楽しめます。 かなり前の作品ですが、…

  • 影響を与えてくれた人

    自分の作風に影響を与えた人とか、心酔する人など、物を生み出す上でみなさんある程度ベースになる人がいると思うのですが、逆にほとんど誰の影響も受けず、まっさらでクリエイティブたり得るものでしょうか? 清少納言とか、ウォルト・ディズニーとか、手塚治虫とか、ジャンルも時代もバラバラですが、その道の開拓者のような人はどうやってその時々のインスピレーションを感じ、これまでにないものを創作につなげたのだろう? 小説ではなくまんがの話で恐縮ですが、若い頃は絵が苦手だの、時代が古すぎるだので読まなかった作者に最近ハマっています。 例えば、山岸凉子さん、わたなべまさこさんなど、子どもには難しすぎたり、イラストがあ…

  • コバルトの休刊に時代を感じて

    集A社のコバルトが、5月号を最後に休刊し、今後は無料ウェブマガジンに完全移行するとありました。 氷室冴子さんや唯川恵さん、藤本ひとみさんらが活躍し9万部を発行していた全盛期の頃、私は同誌の短編小説新人賞の佳作に入選したのですが、現在は1万数千部まで部数が低迷していたとのことです。 悲しいような、でも時代の流れのような‥ 記事に、コバルトが少女漫画のような少女小説のジャンルを確立したとありましたが、私も掲載時に30ページ足らずの短編に何点もイラストをつけていただいて、一時マンガを投稿したこともあるくらいのマンガ好きでもあったので、痛く感動したものです。 挿絵も描ける小説家に、と野望を抱いたことも…

  • 読解力の欠如

    花粉症&求職中のため、インドア生活が続いています。 昨日はCSで「ゴッドファーザー」3部作をところどころ気を抜きながら観ていたのですが、登場人物が多く相関関係が掴みきれない、イタリア系の名前に慣れていない、老人の顔の区別があまりつかない、時代が遡ったり現在に戻ったりを繰り返すところがあって混乱などと、製作者泣かせの視聴者なのでした。 思えば、学生のときのテストで、「作者の意図は4つのうちどれか」などという問題が大の苦手で、解説を読んでも「そこまで思って書いていないのでは」「問題を作る側はどうしてここまで解釈をねじ曲げているのだろう」と納得できず、自分の読解力についていつも悩んでいました。 にほ…

  • 久しぶりに応募してみました

    先日、ほんとに何年振りか短編を書いてみました。 Kブックスという出版社のショートショート大賞に、原稿用紙2枚程度を20分ほどで仕上げ、応募してみたのです。 私のように、構成もあまりろくに考えず思いつくまま書くタイプは、長い小説ではボロが出るので、せいぜい30枚以下が限界のような気がします。 発表は6月で受賞は4作品、ほとんど期待はしていないのですが、今は電子ファイルで応募できるなんて便利になったものですよね。 初めて小説を書いた17歳のとき、貧乏学生だったため、わずか30枚分のコピーを取るのもケチって、テープに録音したことがあったなと思い出しました。 もともと小説を書こうと思った動機も、賞金を…

  • 尊敬する人

    高校生のときに書いた小説が集A社の短編小説新人賞の佳作に選ばれ、編集者から受賞のコメントを電話で求められたとき、「尊敬する作家は」「尊敬するマンガ家は」という質問に対し、私は「三浦綾子さん」「くらもちふさこさんと池田理代子さん」と答えました。 今は亡き三浦綾子さんですが、6年ほど前に旭川の記念館に行くことができ、くらもちふさこさんとは20年ほど前、ファンイベントで隣の席に座りお話しすることができ、一生の思い出になりました。 そして池田理代子さんですが、今日さいたま市の漫画会館でサイン会があったものの、先着100名の足切りにあい残念ながらお目通りがかなわず、なんと先頭の強者は午前3時半から並んで…

  • あけましておめでとうございます

    前回更新してから3年以上も経ってしまいました。 小説は現実の生活が精いっぱいで、もう何年も書いていません。 ほんとはこのブログを削除すべきなのですが、一年に何人か訪問していただいていることもあって、そのままにしていたりします。 こちらのブログでは、月に何度か更新しておりますので、お時間のある方はぜひお立ち寄りくださいませ。↓ ↓ ↓ ↓ 超低空飛行FP号 皆様の今年一年のご多幸をお祈り申し上げます。 にほんブログ村 小説家志望 ブログランキングへ

  • ひとこと

    ブログを立ち上げていながら、載せる作品は10年以上前に書いたものだったり、何カ月も更新しないままだったりで、ほんとにやる気があるのか疑われても仕方がありません。 遊びに来てくださる方には大変申し訳なく、度重なる非礼をお詫び致します。 ですが、現実がうまくいかない状況がずっと続いていて、創作意欲がちっとも湧いてこないのです。 リアルな現状はこちらのブログにお立ち寄りくださいませ。↓ ↓ ↓ ↓ 超低空飛行FP号ところで、TOKYO MXの「5時に夢中!」に出演されている岩井志麻子さんは、18歳のときにジュニア短編小説新人賞に佳作入選し、その後35歳で日本ホラー小説大賞を受賞されてメジャーになって…

  • ひとこと

    最後にアップしてから、半年経ってしまいました。 いい年をして就活をしていて1年超が過ぎ、小説を書くという心の余裕が今の自分にはないのです。 こちらは余裕がないからこそ書けるノンフィクションですが(笑)、ある1人のアラフォーの、社会における存在意義について危機が迫っている、というところにドラマ性を垣間見られるかもしれません。 お時間がありましたら、ぜひどうぞ。 ↓ ↓ ↓ ↓ http://d.hatena.ne.jp/atsunk/ 10年くらい前はやりたいことがたくさんあって、小説を書いたり、イラストを描いたり、資格取得のための勉強をしたりなど私なりに楽しんでいました。 きちんと方向性を定め…

  • ひとこと

    「飛べない鳩」と「給湯室から」は今から11年前に、「休みの日」は9年前に、それぞれ3〜4日で書いた作品です。 当時は携帯はあったもののまだ高価で一般的ではなかったため、今の小説では小道具としてポピュラーですが、私の作品の中ではあまり登場しません。 「飛べない鳩」では受験と家族関係をテーマにしていますが、これは私自身現役の時に相当悩まされたものでもあります。 「給湯室から」で新駅ができるという下りがありますが、これは実際あった話で、平成12年に「白金台駅」「白金高輪駅」が開業しました。 これは学生時代の友人の結婚相手がこの近辺に住んでいると聞いたところからヒントを得ました。 「休みの日」は、家族…

  • 給湯室から  

    第9回 帰り道、2人は無言だった。何を言っても、どこか根本的に違うものがあるのにお互いがようやく気づいたからだった。 田代は美香子を駅まで送ると、ようやく口を開いた。 「美香、僕たちの婚約、ちょっと時間を置いてみないか」 美香子は黙って田代を見つめる。 「このまま結婚しても、美香も納得できないだろ? 」 田代は、2人の考えが変われば縒りを戻せると思っているのだろうか。だけど、美香子の気持ちは冷めていた。親にがんじがらめで、恋愛も仕事も二の次である田代に、もう何の魅力も感じなかった。 「・・・そうね」 美香子の冷ややかな反応に気づかないのか、田代は美香子の顔を引き寄せる。軽いキスは、美香子には別…

  • 給湯室から  

    第8回 田代さんが異動? また、給湯室から聞こえてくる話を耳にしてしまった美香子は驚きを隠せない。営業になったら、転勤も2,3年であるし、幹部への道も随分遠回りとなってしまう。上司とやり合うなんて馬鹿なことをして、と美香子は腹が立った。 受付の電話が2回鳴って切れ、再び鳴りだした。 「はい、受付畑山です」 「美香、僕だけど今日空いてる? 」 きっと辞令のことだ、と美香子は思う。 「はい、空いております」 「じゃ、6時に公園の隣のイタメシ屋で待ってて」 「はい、かしこまりました」 美香子の気持ちは、この間の田代の家や母親、そして今度の辞令のことで少しずつ冷めていた。改めて、自分は田代の周辺を好き…

  • 給湯室から  

    第7回 「お母さまに私あまり気に入られていないみたい」 車の中で美香子は小声で言った。 「え、そんなことないよ。どうして」 「だって、家のこととか、学校のこととかお母さまがっかりされてたわ」 「ハハ、ただ聞いただけじゃないか」 「・・・でも」 美香子は釈然としない。少しばかり金があるといっても、古くさくて小さな家だし、結婚したら二世帯住宅にするとはいっても、食事や買い物も一緒にすることになるに違いない。美香子自身、田代の家柄などにこだわっていたのに、自分のことを言われると侮辱されたような気がするのも可笑しかった。 「うちに来るの、もう少し待ってて」 美香子がそう言うと、田代は困った顔をした。 …

  • 給湯室から  

    第6回 「母さん、美香子だよ」 敷石を踏んで玄関をくぐると、そこは線香の匂いが立ち込めていた。出迎えたのは、着物を着て、白いものの混じる髪をきっちりと結わえた女性だった。 「初めまして。俊一の母でございます」 家の周りを木々が囲んでいるせいか、或いは天井が高いからか、部屋はとてもひんやりとしていた。 通り一遍の話を終えると、田代の母はおもむろに切り出した。 「美香子さんのお父さまはどういったお仕事をしてらっしゃるの」 美香子の表情が僅かに堅くなる。 「商店を、経営してます」 「まあ、それじゃ社長さんでいらっしゃるのね」 経営なんて言ったからだろうか。美香子は焦った。 「い、いえ。両親だけでやっ…

  • 給湯室から  

    第5回 「そんなに畏まらなくていいからね」 日曜日、駅で会うなり田代は言った。 「おふくろの奴、僕があまり君を褒めるから、会ってみたいなんて言い出したんだ。ちょっとしゃべって、その後お台場にでも行こうよ」 田代は美香子の肩に手をやった。 「私、お母さまに気に入ってもらえるかしら」 美香子は上目使いで田代を見る。 「美香を気に入らない奴なんていないよ。君は素直でとても魅力的だよ」 美香子は自分の二面性に気づいていた。だけど、男の前で自分を良く見せようとしない女なんているだろうか。 「この辺、大きなマンションが多いのね」 道すがら美香子は呟く。ところどころ古い屋敷もあるが、小綺麗なマンションが立ち…

  • 給湯室から  

    第4回 「え、家を1日貸して欲しいって? 」 電話口で叔父は笑っている。 「美香子ちゃんの気持ちは分からないことないけど、そんなことすると後々面倒になるよ。叔父さんからも、もっと真面目に考えるように兄さんに言ってあげるから」 気休めの言葉は必要なかった。美香子は溜め息を洩らした。 「叔父さん、叔父さんは綺麗な家に住んでてお金持ちだから羨ましいわ。私、叔父さんちに生まれたかった」 「はは、叔父さんも女の子欲しかったよ。でも、彼氏は美香子ちゃんを好きになったんだろ。家なんて関係ないんじゃないのかい」 電話を切ると美香子はふと考えてみる。私は逆に彼のどこが好きなんだろう。もし彼の家も学歴も大したこと…

  • 給湯室から  

    第3回 「ただいま」 美香子は帰るたび、家中に染みついた油のにおいにうんざりする。 「ちょっと、お母さん。どうにかしてよ、これ」 台所で夕飯の支度をしている母親は、暖簾から顔だけ出すと何か言ったかい、と返事した。 「だから、このにおい。いつになったら消えるの」 「なんだ、またその話か。あんたの香水の方がずっとにおうよ」 母親は知らん顔をして蛇口を勢いよくひねった。 美香子の家は、商店街の端に位置する総菜屋だった。1階が店で、2階が住まいだったが、揚げ物や煮物のにおいがいつも家中立ち込めていた。自分まで油臭くなりそうで、美香子の香水もきつくなりがちだったが、今度ばかりは文句を言うだけでは済まなか…

  • 給湯室から  

    第2回 嫌味言われたって平気よ、と給湯室からこぼれる会話を聞いていた畑山美香子は呟いた。 妬まれようが何しようが、私は田代さんと婚約するんだから。誰にも邪魔させないわ。 美香子は涼しい顔で化粧室に入ると、鏡の中の自分を念入りにチェックする。 マスカラも口紅も完璧。前髪からサイドへのゆるやかなウェーブも、少しの乱れもなく整っている。美香子はにっこり微笑むと、首筋にコロンを吹き掛けた。 来客や問い合わせがめっきり減る午後3時過ぎ、受付の電話が2回鳴って切れ、間を置かず鳴りだすときは、田代からと決まっていた。 「はい、受付畑山です」 美香子は隣の女をちらっと見る。他の電話に対応していた。 「美香、僕…

  • 給湯室から  

    第1回 とある小さな商社の昼休み。給湯室では経理、広報、人事各部のOL3人組が新しい情報を持ち寄り、交換するのが常だった。 「総務の田代さん、近々婚約するみたいよ」 いつものように広報が口を切った。 「え、あの田代さんが? 相手、誰なの」 「受付の畑山さんだって」 経理と人事は奇声をあげる。 「畑山さんと? ウソでしょ」 総務の田代といえば、女性社員だったらみんな知っていた。その端正な顔立ちに、エスカレータ式のお坊っちゃん学校を出ているとか、自宅は白金台だとか話題に事欠かなく、女同士で牽制し合い、抜けがけするのが憚られていたほどだった。 「・・・いつの間に」 田代に彼女がいたのも知られていない…

  • 休みの日  

    第9回 家に帰るや、ネクタイを解く間もなく妻が言った。 「お父さん、箱根のことですけど」 「ああ、いつ行くのかね」 「いえ、研修旅行のことじゃなくて、宿泊券の方ですよ。明生が使わないんだったら欲しいって言っていましたよ」 「宿泊券はもうないよ」 妻は私のワイシャツを受け取るとどうして? と言った。 「私がもらったんだ。どうしようと勝手だろう」 だいたい明生も図々しい。親の臑を齧ることばかり考えている。 やがて明生が帰ってきて、珍しく家族4人食卓についた。明生は椅子に座るなり宿泊券のことを言い出した。 「あげちゃったんですって、会社の人に」 妻がそう答えると、 「何でそんなことするんだよ、俺にく…

  • 休みの日  

    第8回 「お早うございます」 会社へ続く並木道を歩いていると、吉田君が小走りにやってきた。 「課長、昨日は凄かったですね。でも、聞くところによれば、課長はいつも賞品を攫っていくそうじゃないですか」 「いや、君だって入賞していたじゃないか」 照れくさくて言い返すと、吉田君は頭を掻いて笑う。 「僕のは偶然ですよ。どうも、野球みたいに思い切り投げてしまって。ピンを倒すっていうより、破壊しているような」 「ボーリングはね、力じゃないんだよ」 意外にも、吉田君は真面目な顔をして聞いていた。仕事で注意しても、上の空で聞いていることが多いのに。そして土曜日には数人のメンバーでボーリングに行く約束をした。久し…

  • 休みの日  

    第7回 日曜日、会社のボーリング大会を終えて家路につくと、私は喜びを隠せなかった。優勝は出来なかったが、みごと宿泊券を手に入れた。純粋なスコアでは一番だったが、女性社員は全員ハンデ付きだったので僅差で負けてしまったのだ。私が賞品のテニスラケットとシューズを貰うと、優勝した女の子が宿泊券と取り替えませんか、と言ってきたのだ。目録には優勝と書いてあるが、敢えて否定するまでもなかろうと妻に手渡す。 「あら、すごいのね。優勝したの」 妻はチビにも見せる。チビは分かるはずもないのに尻尾を振った。 「今度の連休にでも行ってみようか」 しかし、妻は封を開けたきり黙ってしまった。 「箱根は紅葉はどうなんだろう…

  • 休みの日  

    第6回 だんだんと瞼が重くなってきた頃、おじさん、と呼ぶ声に我に返った。この前会った男の子だった。 「やあ、君か」 私が起き上がると、少年はビニールボールを高く放った。 「この前の犬は? 」 「家で、留守番しているよ」 私がそう答えると、男の子はがっかりしたようだった。 「おじさんには子どもいないの」 「二人いるよ」 「どうして一緒に遊んであげないの」 私は言葉に詰まった。遊んでくれないのは子どもたちだったから。 「二人とも、友達と遊ぶほうが楽しいらしいよ」 素っ気なく答えると、男の子は首を傾げる。 「ぼくはお父さんと遊びたい」 私はまた言葉に詰まる。下手な慰めなど、子どもには通じないだろう。…

  • 休みの日  

    第5回 良く晴れ渡った土曜日。妻に出かける、と言い残して家を後にしたはいいが、行く当てもないのでぶらぶらと歩いた。静かな町並みを抜け、商店街に向かう。土曜も日曜も、こんなに暇を持て余しているのは私だけかもしれない。ビデオでも借りようかと思っても、直子が何か録ると言っていたのを思い出し、本屋に行こうかと足を止めても、読んでいない本が山積みになっているのでやめにした。ただ散歩をして家に戻るのは癪なので、コンビニでビールと煙草を買うと、私は一人寂しく土手に向かった。 私の隣を、肩車をした親子が通り過ぎる。若いカップルは荷物を抱えて買い物帰りらしい。犬を連れた老人がのんびりと歩いている。みんな他の人間…

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