赤坂物語■第六話■

初子の花柳界にはその珍しい気性を喜ぶ客も中にはいて、「養女に」という話もあったが、初子が可愛い又四郎は、手放そうとはしなかった。旅館やお茶屋の亭主などというも…

赤坂物語■第五話■

初子は尋常小学校高等科をこの春卒業して、ボツボツ店の帳場を手伝うようになっていた。子供の頃のわがまま勝手な振る舞いは、もう影を潜め、どちらかといえば、無口で大…

赤坂物語■第四話■

今日は林屋のポン太のお披露目である。梅屋でも、朝から皆そわそわして一本になる芸妓を待っていた。ポン太というのは、この町の煙草屋の娘でちいさいときから皆よく知っ…

赤坂物語■第三話■

しかし、少し大きくなると「争わないものだ。だいぶ多華さんに似てきたね」などと不可解な言葉を投げかける人も出てきたが、初子はさして気にも留めず、我儘一杯の腕白ぶ…

赤坂物語■第二話■

幼い頃、兄によその店へ小僧に出された又四郎は、その頃としては、そんなに非常識なことでもなかったが、不本意に思い奉公先でのつらい経験と相まって、養父である兄の仕…

赤坂物語■第一話■

東京の花柳界の老舗は新橋、柳橋、芳町辺りで、それに吉原の芸妓は花魁とは違うというプライドがあり、体ではなく、芸を売ることで格式もった芸妓の集まりであった。明治…