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2009/12/11

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  • ふるえるよ

    震えるよ震えるよ甘い匂いの風に吹かれてかみのけ揺れた溶けた土の匂い群れる蜜蜂の匂い芽吹く命の匂い古ふるふる振るえるよふるえるよ

  • あいの間に間に 5-LAST

    五.僕の個展が始まった。予想はしていたけど、一見さんで来てくれるお客さんは殆ど居ない。祖父の言うとおり、一枚も売れる事なく終わってしまいそうだ。だけど学校でお世話になっている何人かの教授に頼んで見に来てもらって、彼らからは概ね良い評価を得られた。その一人の教授の知り合いの、雑誌の編集者にイラストレーターとして紹介してもらえる事になった。報酬も少ないけど、わずかながら仕事を貰えた。これで卒業後も何とか絵を描き続けられるかもしれない。日曜日。父の洗車が終わったら、祖父と三人で墓参りに行く。夏の終わりに祖父が体調を崩してしまって、少しの間入院したため結局紅葉の時期を逃してしまった。一週間前に退院したばかりの祖父は、十k近く痩せていた。「そろそろ出かけるぞ、用意しろ」家の庭から、父が大声で叫んだ。「分かったー」軽く髪型...あいの間に間に5-LAST

  • あいの間に間に 4-10

    ベッドの上で僕らは激しく求め合い、体を重ねた。お互いの埋められない隙間を余すところ無く埋められるように。だけどどれだけ体を合わせても、心は重ならない。体を重ねる程に純の欠けた心が透けて見えて悲しかった。体と同じように、心も欠けた所を埋めあえたら良いのに。虚しいまま僕らは体を離して、終電で帰途に着いた。部屋に戻り、ここ数日開いてなかったスケッチブックを取り、ティンカーベルのページを開いた。筆を出して墨汁を作る。下絵に筆を入れるのだ。久しぶりに見るティンカーベルは、改めて見てみるとまゆみに少し似ていた。片足で立ち、こちらを振り返り不思議そうな顔をしている。まゆみ、と僕はティンカーベルに語りかけた。この絵を完成させたら、僕とまゆみの歴史は終わりだ。終わりにするのだ。薄めの墨汁が出来上がった。まゆみと過ごした時間を思い...あいの間に間に4-10

  • あいの間に間に 4-9

    一昨日も歩いた、純の家近くの川沿いの遊歩道で、二人並んでベンチに腰掛けた。あたりはもうすぐ闇に染まろうとしている。少し腫れているまぶたが分かりにくくて良かった。キャッチボールしていた子供たちもバラバラと帰り始め、段々周りが静かになってゆく。純が口を開いた。「彼女にふられたって、本当」「うん。プロポーズされて、結婚するからって」胸の奥がしくしくと痛んだ。「そっか…、辛いよね」「辛いっていうのかな、こういうのも」僕は背中を丸めて、純の胸に頭をつけた。純は拒否しなかった。彼女の両腕が僕の肩を抱いた。「こうやって君を慰める事は出来ても、あたしは君の隙間は埋められない」「どうして」「恋人が居るんだ」顔を上げた。純と目があう。何の気負いも後ろめたさもない、真っ直ぐな目だった。「初耳だ」僕がそう言うと、純は優しく僕の頭を撫で...あいの間に間に4-9

  • あいの間に間に 4-8

    翌朝頭痛が酷くて起きられなかった。父はそんな僕と冷蔵庫から消えたビールを見て何か納得したみたいだった。「まぁ、若いうちは色々あるだろう」そう言って、いつかドラッグストアで貰った、試供品のウィダーインゼリーをくれた。グレープフルーツ味のそれは、鈍く痛む僕の体に優しかった。頭は痛いし、何だかフラフラするし、お酒って最悪だ。それから少し眠り、夕方近くに目を覚ましたら頭痛が軽くなっていた。昨夜散々吐いたせいで、胃の中はからっぽだ。食パンを二枚トーストして、レンジで牛乳を温め、インスタントコーヒーでカフェオレを作った。パンをカフェオレで流し込み、皿を片付けて掃除機をかける。外はよく晴れている。今日も殺人的な暑さなんだろうけど、家の中に居れば快適だ。心にはまだ大きな穴が開いたまま、だけど掃除していたら少し穏やかな気分になれ...あいの間に間に4-8

  • あいの間に間に 4-7

    どこをどう歩いて帰ったのかよく覚えていない。気が付けば自分の部屋に一人、ベッドに腰掛けて呆けていた。時刻は夜0時を過ぎていた。父はもう寝てしまったみたいだ。一階のキッチンに下りて行き、冷蔵庫からビールを二本取り出して、部屋に戻って空けていった。二本目が空になる頃、突然どうしようもなく悲しくなって発作的に純の電話番号を呼び出していた。「もしもし、寝てたんだけど」不機嫌そうな声。ごめんね、と言おうとして声が出なかった。僕は泣いていた。「なに?イタズラなら切るよ」「待って」自分でも驚くほどかすれた声だった。「…泣いてんの?」「今日、彼女と別れてきたんだ。彼女、結婚するから、って」「うん。それで、どうしてあたしに電話して来たの?」「分からない。突然悲しくなって、気が付いたら純に電話してた」「空いたスキマをあたしに埋めて...あいの間に間に4-7

  • あいの間に間に 4-6

    朝、目を覚まして携帯を見るとまゆみからメールが入っていた。“大事な話があるんだけど、今夜時間ある?”大事な話と言われると、変に緊張する。いいよ、とメールを返した。父に帰りは遅くなると告げ、まゆみの地元の駅前の喫茶店で待ち合わせた。ここは何度かまゆみと来た事がある。店の一番奥のテーブルにまゆみは無表情に座っていた。携帯を開いて誰かにメールしてるみたいだった。「どうしたの、急に」「いいから座って」確実に機嫌が悪そうだった。向かいの椅子に座り、コーヒーを注文する。「昨日、ヒロミ君何してたの」「何、いきなり。親戚の家に行ってたよ」「ウソ」まゆみの目が、今まで見た事ないくらいに冷たかった。「女の子と手を繋いでホーム歩いてたでしょ。それで二人で電車に乗って、どっか行ったよね。私見たんだから」昨日純と歩いてたのを見られていた...あいの間に間に4-6

  • あいの間に間に 4-5

    「傲慢なじいさんだったね」地元に戻り、僕らは純の家の近く、川沿いの土手をぶらぶら散歩していた。水面は夕焼けを映してうっすらと赤い。「なぜ?」「だって駆け落ちでしょ。しかも人妻。君の家族から筋も通さず奪っておいて、よくあんな都合良い事言えるよね。ヒロミはそう思わない?」少し興奮気味に純は早口で言った。「いまいちピンとこないんだ。じいちゃんや父さんの事を考えたら、やっぱり片野さんとばあちゃんは許されるべきではないのかもしれないけど、でもばあちゃんが幸せだったなら、それはそれで良かったんじゃないかな、とも思う」「ユルいよ」そう言って純は僕の額を指でつついた。「年上のお姉さんにからかわれてるみたいだ」「年上のお姉さんじゃん」でも純はお姉さんという感じがしなかった。もっと近い、なにか。家の前まで純を送り、父の待つ自宅に戻...あいの間に間に4-5

  • あいの間に間に 4-4

    玄関を入ってすぐ右側の部屋に通された。小ぶりな仏壇が置いてあって、その横に微笑む老女の写真が置いてあった。これが僕に似ているという祖母なのか。「そちらの方は」老人が純を見て言った。「彼女は僕の…」「彼の友人の魚住純です。一人は心細いっていうんで、ここまで付いてきてあげました。どうぞおかまいなく」僕が答えるより先に純が言った。友人。まぁ僕と彼女は友人なんだろう。「ヒロミ君のガールフレンドかと。いや、つまらぬ邪推をしてしまいました。これは失礼。まぁ澄子に選考をあげてやって下さい。きっとヒロミ君に会えて喜んでいる事でしょう」老人は立ち上がって仏壇の蝋燭に火を灯し、線香にその火をとって僕たちに手渡した。受け取り、純と二人並んで仏壇に手を合わせた。背後で襖が開く音がした。「お茶、ここに置いとくね」「ああ、ありがとう。勉強...あいの間に間に4-4

  • あいの間に間に 4-3

    快速だと十五分くらいしかかからなかった。地図サイトからプリントアウトした紙を手に、燃えるアスファルトの上を歩く。地図で見る感じでは、駅からはそう遠くない。「アポイントなしなんでしょ、いきなり行って大丈夫なの?」「分からない。もしかしたら遠くから見るだけで終わってしまうかも」「わざわざ時間かけて行くんだから、先に電話入れておいたほうが良かったんじゃない。留守だったら無駄足じゃん。無計画すぎない?」アポなしだと言ったら、純は不満をだらだらとこぼした。「無駄な事は嫌いなんだよ」純は両手を上げて肩をすくめる、アメリカ人みたいなポーズを取った。大通りのガソリンスタンドの角を右に曲がる。角から三軒目が祖母の家だった。家はあった。表札に“片野”と書かれている。「ここだ」僕の肩くらいまであるコンクリート塀で家は覆われていて、ス...あいの間に間に4-3

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