Spaghetti con salmone affumicato alla panna

「ねぇ、なにつくってくれるの？」「クリームソースのパスタ」彼はつぶやいて、台所に立ってこちらに背を向けている。つい10分ほど前に「あー、腹へった。」と言いながら、彼はドアの前に立っていた。全然、気負いも感じさせずにいつもと同じ風で近所のスーパーの袋を片手に

あめ と かさ

「こっち、はいんなよ」傘を差し出されるが、どうも入る気が起こらない。こんなに気持ちの良い雨粒が体をぬらしてくれると言うのに、なぜわざわざ傘の下に入らなければならないのか。肩を引き寄せられるわけでもなく、腰に手を回せるわけでもなく、絶妙な距離感を保ったつも

卵粥

をいをい、なんてリクエストだ...ったく。風邪引きと卵粥とメロンだって...三題話かよ。第一、卵粥なんて手間のかかるもの作ったことねぇよ。「何が食いたい」なんて聞くんじゃなかった。「作りかた知ってる？」って聞いたら、しれっと「知らない」って、答えるもんなぁ。や

メルトモ

今日は、何よ。いきなり、「ねぇさん、仕事ひけたら飲みに行きましょう。」とか言って。そういう時って、あんた変な話ばっかりするんだよね。大体さぁ、「ねぇさん」て言うけど、ひとつしか年上じゃないんだからね。え？相談？お金は貸さないよ。そうじゃない。ごめんごめん

坂道

アスファルトに残った真夏の昼間の熱気が、体から汗を搾り出す。ビールとたばこと運動不足にのろいの言葉を吐きながらペダルを踏む。坂道はまだ続くようだ、垂直の壁のように感じられる。----------------定時に会社のタイムカードを押した。入社以来初めてだった。まわりの

Spaghetti alle Vongole Bianco(上方風味)

「居てるかいな」「ああ、誰かとおもたら、おやっさんですかいな」「寝間の中から首だけ出して『おやっさんですかいな』やあらへんで、最近どないしとんねん。今朝、お前ンとこのおかはんがうちにきて『うちとこの息子が最近元気ないみたいや』『仕事もここ一週間ほど休んで

雨の香り

「こんな天気なのに自転車に乗ってくるなんて...」「風邪でもひいたらどうするの?」「これでも心配してるんだからさぁ。」「うるせぇ、おめーはおふくろか。」「どーすんの、まだ時間あるよ。」軽口をたたきながら、コーヒーショップにはいった。トレイには、コーヒーのカッ