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  • 叔母からの土産

    「やっぱりあんた義兄(にい)さんに似てきたね。体形なんか、そっくりだわ」久しぶりに会った叔母はしみじみ言った。夫を亡くして以来、子供のいない叔母は東京の暑さから逃れるため、北海道に時々来るようになった。七十歳をとっくに越えているのに元気なのだ。どうもこの

  • カンちがい

    二次会、三次会と散々飲んだ後、最後に一杯と立ち寄ったスナックで懐かしい顔に出会った。「おお、久しぶりだなぁ。カガヤ、今、何してんの」。高校時代のスキー部の後輩にボクは強気で先輩風を大型台風ばりに大きく吹かせ、声をかけた。驚いた表情を見せている後輩に、「何

  • 映画スター

    「久しぶり、分かるか、オレだ」仕事で近くまで来た、という中学時代の同級生、ヤスからの突然の電話だった。網走から二十数キロ離れた山の中、小中合わせて全校生徒が百人余りの小さな学校とヤスの顔が鮮やかによみがえった。担任の尾形先生は、教室の窓から気に囲まれた校

  • 携帯電話

    「ひつぎに一緒に入れたいものがありましたら、お願いします」通夜の前に体を清める湯かんのときだった。母はおやじのひつぎに携帯電話と入れ歯、そして、お守り袋を入れようとした。「携帯電話は火葬場で、だめなんです」と、葬儀社の女性は少し申し訳なさそうに言った。「

  • 叔父の変身

    おやじの入院している病院の近くに住む叔父が、病室に顔を出した。「おっ、なんだ、いつ来たんだい」。ぶっきらぼうな話し方は、以前と変わらない。上下ジャージでニットの帽子を被っている。六十八歳になる叔父は少し小さくなった気がした。いかつい顔も柔和にみえる。ボク

  • おやじの足

    おやじは人工呼吸器と点滴の管につながれ、個室のベッドに横になっていた。眠っているように見えた。ボクと妹がかけつけて、十時間以上たっていた。「おやじ、おやじ」と、つばがかかりそうなくらいおやじの顔に近づき叫んだ。しかし反応はない。人工呼吸器だけが単調な音を

  • バイクに乗って

    よく、気分転換にバイクを走らせる。車の少ない田舎道がいい。千歳から長沼を抜け、由仁に出ると、風のにおいが違ってくる。由仁から北長沼由仁線に向かうと、いつ見てもおかしい看板がある。「ヤリキレナイ川」だ。白い案内板の上部には、一級河川石狩水系と書いてある。こ

  • かわいすぎる

    久しぶりに、きてほしくない痛風の痛みがきた。腫れた左足の親指を苦々しく見ながら、数日前の反省をした。宴会があり、しゃぶしゃぶを食べた。そして、乾杯だけはとビールを飲んだのだが、とりあえず一杯がつい、もう一杯になってしまったのだ。そして、よせばいいのに二次

  • ばふん風のころ

    商売をしていて、お客さんに「いらっしゃいませ」とか「ありがとうございます」と言ったあと、心から言っただろうかと自問自答する時がある。二十数年前、札幌にばふん風が吹くころ、弟とススキノで酒を飲んだことがあった。盛り場をふらふら歩いていると、客引きのおにいさ

  • 夕焼け

    「シュクウメからまっすぐだと思ったのですが・・・」。支笏湖に行く道を教えてほしい、と高齢の婦人が店に来た。シュクウメ、と聞いて、祝梅のことだと思った。地元の人はシュクバイと呼ぶ。「次の信号を左折しまっすぐ行けば、支笏湖と札幌、と書いてありますから・・・」と説

  • 見せられたもの

    ともだちがよくボクの店に寄る。そのなかには、ボクに見せたいものがあってやってくる人もいる。それは娘の写真だったり、車やバイクだったりする。だが、見せられてもどう反応したらいいのだろうと考え込む場合もある。夏の暑い午後、ツカサがカメを抱えてきた。手のひらに

  • 草野球

    三十年近く朝野球をしていると、慣れという目に見えない泥沼の状態になることがある。こんなとき、チームを元気にする秘訣(ひけつ)がある。朝野球をやる人は三十代ぐらいまでがピークで、四十歳を過ぎてプレーする人は極端に少なくなる。だから、五十代のわれわれのチー

  • 母の手

    中学一年の秋、ぼくはワルがき三人と近所の店で万引をして捕まった。外で父親にこっぴどくしかられた後、家に入ると、母は無言で右手を上げた。その手は、僕の胸の前を横切り宙を泳いだ。その二年前、母は脳の手術を受けたのがもとで失明した。だから母の記憶の中には小学五

  • インターネット

    ついに、インターネットを始めた。少し前まではパソコンのそばにさえ近寄れず、息子がキーボードをたたくのを横目で見ているだけだった。だが、あまりにもエラソーにする息子に負けてたまるかと、意を決してパソコンに向かうことにしたのだ。まずインターネットに関する本を

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