家の近くには、一つの踏切がある。 駅から幾分離れた旧街道沿いに位置する、何の変哲もない踏切は、 昼間はただの交通の通過点として機能する、単線鉄道との交差地点。 コインランドリーの裏手、築四十年を超える
イラスト詩「揚羽蝶が花の鎖に変わりながら心の中に雪を降らせるとき」
時刻は朝の四時。 十月が脱げ切れていない十一月の、 薄着では少し肌寒さを覚える時間帯・・。 早朝の列車のダイヤがそろそろ動き始める頃だろう―――か。 記憶が正しければ、 日本一早い始発列車は京浜東北線の
図書室、それは静謐なる楽園であ―――る。 学校図書館法において、 小学校・中学校・高等学校には学校図書館を設置し、 さらに司書教諭を置かなければならないと義務付けられているが、 そのような影も形もなく、
歪んだ街燈の間を、 濡れ雑巾のようなうらぶれた思い入れのくらげよろしく漂い、 顔の皮膚が強張り、 ややもすれば電気を帯びたような―――緊張・・。 けれど涙でもなければ白髪でもない、 まして、眉間の皺などで
ゲームセンター、クレーンゲーム機や体感型ゲーム機、 カードゲーム機やメダルゲーム機など、 様々なゲーム機を取り揃えている場所・・・・・・。 『レーシング・ファイナル・インパクト』
朽ち果てたフェンスに倒れかけている、 ギター。傘も差せずに No, no, 塞 が る Eyes... なくしたく―――な、い、 けして手放せない、音、階・・。 「違う、開けようとしていたドアの向こうで、 (鍵を掛
以降、「灯台」は変化のない時間のなかに潜伏することになる。
ぼんやりと、天井を眺めている。 the very best みたいなやつの正反対。 案外、何も感
俺は引っ越してきた。 アパートの階段を降りるとそこは駐車場と花壇。 大学生においては絶好のシテイフォーメーション。 三日徹夜の後の耳鳴り、みたいな笑いが貼りついた顔・・。 二階南向き―――で、八畳で風呂、
電子レンジに膨らんだ風船を入れた女。 って、何でお前震えてんだよ。 まだ、動かしてないだろ。 こちらを向いて、 「じゃすとじょーく!」 あと、唇が紫色。 紫芋かと思った、いやいや、唇が紫色。 おほほ、
河原に吹く風は爽やかで、 どんより曇った空との食い違いが妙に不安にさせる。 完璧な匿名的存在となりなが―――ら。 野球グラウンド。 サイクリングコース。 規則や注意事項が書かれた看板。 正確には、河川法
バス停がある。 正確には、信号機がない、 ポイントや分岐がない、停留所だろう―――か。 朽ちかけた雨よけの屋根。 待合室として小屋が設置されたバス停―――だ。 田舎ではバス会社や自治体、町内会、地元の有志な
173 *人は選択のたびに確実に夢を失っていく生き物である(?)
匿名希望 やれやれ。 ハルキムラカミだよ。 馬鹿な尻毛も、 馬鹿な陰 毛も、 馬鹿な毛根も。 禿げてしまえ。 否、禿げろ。 全部抜けろ。 なんだった抜き尽くせ。 火炎放射器よ、 燃やし尽くせ、FI
her temptation 貝殻骨の浮いて見える背中、 産毛が光るのに、 若い娘の背中がこんなにむき出しの寂しさを、 感じさせるというナンセンス。 アイデンティティーの圧倒。 イデオロギーは高潔。 スッと真
クリーン社会 あの。 学校じゃないんで、びわ湖で溺れて、 その後、死んでくれるならいいですよ。 あの。 うちの店長、 昔、やくざ屋さんで。 なめた口きいてると承知しねえぜ、こら。 はい。 ご注文は
Ingénue メープル・ストロベリー・フィッシュ、 風に薫れば。 首の付け根に数億の公孫樹の葉で、 木端微塵さ、 永遠の恋の埋葬。 腸詰をぶらさげているかと思ったら、 猫の尻尾だった。 愛と孤独の
聖少女 あのねっていった。 ゆうかいするのっていった。 ろりこん、こわい、いった。 しねばいいのにっていった。 おにいちゃんは、わらった。 おとうさんは、いまごろ、 ぱちんこだま。 おかあさんは
愛しい人 息もできなくて落ちてく夢ばかり見る。 テンプレ通りの過酷と困難。 なめらかなカーテンレールが、 光に捲れている美しい朝なの―――に。 目玉焼きが冷蔵庫に残っていて、 蛇口から一滴したたり落
近頃の僕は思う 棄てちゃいけないもんがある、 守んなくちゃいけないものがある、 人間、本当に真面目になってる時は、 馬鹿なことの一つも考えられないものさ。 でも今日が終わりじゃない、 だって自
頭悪い奴から死んだらいい。 I hope the stupid person dies. kamome studio
蜃気楼と夢と陥穽のアラート 医療実習用の模型―――を、 硝子越しに見ているような、 暗鬱、慄然、憧憬による、 性の屈曲と伸展を伴った階梯。 パー・バクの砂山モデル論、 トム・レイの人工生命「ティエラ
ジョン・レノンの夢 セル雲は、細胞に似ているため、 その名がつけられたが、 見た目とは裏腹に、 土砂災害が土鳴りや地鳴りをさせるように、 これは嵐やハリケーンの前兆現象―――だ。 雲には色んな面白
EFREET イフリートはアラビアの伝承に登場する怖ろしい精霊のこと。 女性はイフリータと呼ばれる。 アラビアの精霊はジンニーと呼ばれていて、 唯一神アッラーフが天使(マラーク)と人間の中間的な存在と
百円ショップ 100円ショップは『流通統計資料集 2010年版』 (流通経済研究所)p33の「商業統計における産業分類表」によると、 100円ショップは「その他のスーパー」に該当。 100円(税抜)の商品を主に売っ
黄砂の話 紙を拡げた軽さの砂だが、黄砂となると話は別、 これ、〇.五から四マイクロメートル。 マスクをしてもその網目を搔い潜ってることになるので、
心の中の迷路 maze in my heart 瞳を閉じながら、 (I Want You to Stay...) 交差点の雑踏が犇めき合い、 信号と共に動き出す―――時の、 眩暈のような、壊れそうな、心・・。 (“TILL I’M IN THE GRAVE”...
marriage 人には誰にでも、一人ずつの日常があり、 時間を原理とする思考は必然的に対話的原理を見失う。 一人の男と一人の女が一緒に暮らし始め、 そこに共通の日常が生まれ、それが次第に積み重なる、
streetscape 住宅地だった。 幅二十メートルほどの道路が縦横に走り、 街路樹がきれいに並んでいる。 不完結性と非決定性と結びつけながら、 それを独白の中で浸透させてゆこうとする、第一の声。 それほ
Becoming an adult, living, and not trusting people 物事を突き詰めて考えていくと、すべてのものが解体する。 そして、意味が消えていく。 その消失や崩壊から再構築が始まるまでのスパンが、 引き出しの
156 *NHKの朝ドラみたいな恥ずかしくなる詩を書きたい(?)
history, life, things that continue 僕等は、父親と母親の話をする。 そしてその思い出を次の世代へと伝えていく。 歴史を学び、斜に構え、ぼんやりと眺めている時は、 百年の時間も、一千年の時間にも
泣くという演技の考察 拝んでは泣き、水をかけては泣き、 とうとう膝をつき、墓石に抱きついては、 泣き崩れていた。 その光景を見ながら邦画の臭い演技、叫ぶ、怒鳴るなどの、 芝居の延長線上にあるオー
広告 秋っていいね、クマロード。 落ち葉、団栗、白骨化死体。 村ではアナウンス注意報。 秋っていいね、 夏は沖縄、 そろそろ起きなわ、 神社のそれは注連縄。 別名くびつりなわ。 秋っていいね、
153 *そして永遠に擦れ違い続ける、ただそれだけのこと(?)
だから僕は百合アニメ 観ようとオモイマシター(棒読) いいかね、後輩君、 恋愛講座in青空教室三億とんで大体一回目(?) もし女の子が悲しそうに座っていたら、 どう思うか? 1、生理だと思う(?)
猫風船 眼の前に、ニャにか、ニャにか、 ―――にゃおー(?) 見ようによっては、 ストリートファイターのピヨり状態とも、 スーパーマリオの無敵状態の前兆とも。 ご主人。 なんだよ。 見つめて、
君がいたから 膝を抱えて、口ずさんだ音はすぐに溶けてっ―――た。 夕空、時に彷徨う無力な言葉は、 手垢のついた錆びたナイフが胸を刺して。 明るい光の筋、細い鍵型、溶けた金属、 ヘミングウェイの「老
でもそれを君が知ることはできないのだ、真空管。 身の置き所のない煉瓦通りは空洞で宇宙へ。 But you can't know that, vacuum tube. The brick street with no place to live is hollow and goes into space.
わたしはこれから なにをするのだろう? What am I going to do now? 小便ちびりそうだった。 最初の一言からして―――不穏な空気が漂う。 (チョイスが既にプロテク、) 幽霊出るという。 学校というか、
alienation 空き缶に野花―――咲いてたんだ・・。 夜には朝が狂ってる、 闇。外傷性。心象。 ―――ありもしない、深淵より、 踏切前の道化と、空気。 眠らない僕等の小さな頃の記憶、 ホーチミン市街の汗溜
冬の日 過去の謎を浮き彫りにする、無傷の雪。 道路沿いに建てられていた広告群が、今朝死んだ、冬。 ・・・・・・インベーダーゲームは続いている・・。 意味なんかなくたって言葉は勝手に続いてゆく。 誹謗中傷
君の匂いがした 古い橋の上から、 電車が行くのを見ている。 サイケデリックトランスなモードで、 車は行く。 制限的自由、 現代のピラミッドの中の白内障の眼(で、) 残酷で、 無神経に、 今日も
ヅヅヅ、キュイーン、と、 れっしゃー! ぱんだ!(いえい×3) お弁当持って動物園おいで、 おいらが「いただきます」 ちょっとしつこい味だったな、 え? 困ってテヘペロ、 ぷりんぷりりんアラーモード
人差し指はナイフさ The index finger is a knife 頭が悪いのがわかるから喋るな、 親に言われた。 剥き出しの肋骨とrock 'n' roll 毒親。乙。 ハーイ、人生終了です。 ゲームオーヴァー。 詰んだ。詰
You Only Live Once 銃を握り弾が詰まったマガジンを入れる。 スライドを引く―――。 反射する水面、燃え盛る炎、穏やかな雨、湧き上がる雲、 風になびく樹木、さざ波、ゆらめく灯り 、打ち上げ花火、 循
泣いているの? 薄暮の暮れ方の仄暗い所在に―――紛れ、見失った。 中心もなく周縁もない。曲げられ、抉られ、歪められた、 蹂躙。摩滅する道路には未解読の因果律があって・・、 (短)く・・[燃]ゑ・・ 数秒、
r/Place Placeという、 2017年4月1日からReddit内にて実施された共同プロジェクトで、 社会実験というものがある。 Redditはアメリカ合衆国の掲示板型ソーシャルニュースサイトで、 ユーザー数は3億人越え
wonder of the stars 宇宙にはどれほどの数の星が存在しているのだろうか、 天体望遠鏡を手に数多のロマンティストが、 気障なことを言ったに違いなく、 まずはエチケット袋を持って挑みかかりたいところで
最初のヒト ある人は道路で一時停止必須の場所なのに、 突然愉快な気持ちになり、 込み上げてくる笑いと共にアクセルを踏み込む。 慌てて一時停止し、事なきを得た。 その人はたまたま死ななかっ―――た。
panic 心霊スポットの“呪われたトンネル”へ入って十秒も経っていない、 すうっ、と寒くなって来たなと思った、 立ち入り禁止の孤島へでも流れ着いた漂流者の気分だなと思った、 静かなノイズにまみれた郊
山小屋 ドラクエの村みたいな田舎の山小屋に泊まった。 何だか異国みたいな気がするのは辺り一帯は鬱蒼とした木々があるのに、 その山小屋の周囲だけ不自然に刈り取られているように見え、 明らかに伐採の
ホモンクルス “ぼく”は覚醒めた。 錬金術師こと“博士”はここは、錬金術工房だと半笑いで言った。 眼鏡をかけた、髭を生やした老人。 白衣の出で立ちをしている。 眼が充血し、疲労だろうか体温が少し低いの
背中合わせの嘘と本当をつなぎながら――、 バグってる。 不良品には罰をつけてゴミ箱へ。 「社会不適合者の、」 花溜まり。 馬鹿黙り。 蛆貯
以降、「灯台」は変化のない時間のなかに潜伏することになる。
冬が来る 世界は愛であふれているんだ。 大人たちはそうじゃないと言うけど、 愛は心の中で編んでメビウスさせて、 固結びになってからが勝負なんだ、 きつくしばりつけても軽くほどけるし、 広告みたいな
地獄の蓋 雨が降って埋葬される泥の星。 触れる女から、草が生える。瞬間、樹の枝を生やす。 他愛ない好意でエンター・キーを押すほど餓えてないし、 興味もない。 堅固な比類なき高楼のアイデンティティ
以降、「灯台」は変化のない時間のなかに潜伏することになる。
ナイル川へ エジプトでは毎年七月から十月までの間、 ナイル川が増水を続け、十月には水位が五月より約七・五メートル高くなる。 増水期にはナイル川は氾濫し、沿岸の土地に肥沃なシルトを堆積させる。 これ
襲撃 ルパン三世を始め、アニメや漫画や小説や映画なんかでも、 頭脳明晰な犯罪者が緻密な計画と周到な用意を持って、 主にチームワークで攻略不可能な標的に挑み、 現金や貴金属を強奪する、というのは割と
多汗症の話 多汗症は、日常生活に支障を来すほどの汗が自然と出る疾病だ。 子供から大人まで、日本人の十人に一人ほどが発症し、 日本には三百万人もいる。 脇の下や手の平など特定の部位に症状が出ることも
ライターという仕事 ライター、それは無職というのが正しいのか。 自宅警備員になる前の文学部で、知的な仕事がしたい、 そして出版社に眼をかけられてなんていうシンデレラストーリー、 ―――というのは、お
関係 夏休みの宿題に勤しむ。 健全な精神に健全な野望が宿る、だったろう―――か(?) たった一週間で宿題を片付けて夏の風物詩と戯れるべく、 刻苦勉励。一心不乱。疾風怒濤。 すばらしい黎明のような牢
ワープ航法 あっ、と彼女が立ち止まる。 うわっ、な、なに・・・。 むお~っ、とか乙女らしからぬ奇声をあげる。 そんな発声器官だったのか、お前の声帯・・。 たとえるのならば、服の袖の下から寄生虫が入っ
流れ星 夜空、流れ星がキラッと光った。 まるで華やかな蝶の群れが聖なる儀式のように飛び立ち、 羊の毛がコートが作ったみたいに・・・・・・。 * 彼女の笑った顔が。 からかわれて怒った顔が。 照れ
スマイリーデビル 神社で行われる夏祭りへ行く。 一つの眼で過去を捉えて、ひとつの眼でノスタルジアを捉えて、 一つの眼で外部と内部の中心を捉えて、ひとつの眼で行為と思考の結末を、 ―――ふわり、する
flour ――灰に種子―― 花が咲いた、 四分の一世紀 ものしずかに食い込んだ白癬とも疥癬。 憎悪をこめたルサンチマン、 フラストレーション最高潮の銃口から、 不快な副次的作用・・・・・・。 (平等)トイ
音の切れた場末の映画館のフィルムのように 疲れはてた時の刻みが聞こえるばかりの静けさ―――。 街街 街 ボクにも、見つけられるだろうか? キミがそうであったように・・・。 ―――人らしさって何だろう 眼を
頽廃 双面は、恍と絶え入り、 魔法の洋燈をくぐり抜ける火神さながらに、 洞窟の影の比喩とて悲しく、 他の条件が同じならば、 円規が素描を始め―――る。 否、窮みなき慾情に満つ、 邃き潭――行為も、欲
花の踊り ローマを取巻く丘のような、 花畑の道を進む、 印章派という透明な翅をして、 またロマン派の結晶的な雰囲気をして、 一きわ花やかで美しかった、 霊的神経網の影、 三千年来の若さの薫りが滴る
闇歴史 ハロウィン最高、 カラコン入れたった、 クレタ島のミノタウロス感、 ギザった仕込み歯つけて、 刃物のように変形した右腕、 をつくりだす――。 めっちゃ邪王炎殺のムード。 ドラキュラたった、
Kamome studio「dämonisch」 やすやすと握りつぶせそうに見えた卵からどろりとした黄身は流れ、 (・・・でない、)という、 (――なしつつあるものの、)のアンバランスさ、秤の根幹を折れ、 荒々しい目
空の上 揮‘‘‘‘‘‘‘発‘‘‘‘‘‘‘ あゝあゝ 衰退する宿場――で...は... I'm just stirred up by unpleasant emotions ヒューーーーーー (火星と木星の間にある特に微小な小惑星や、
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家の近くには、一つの踏切がある。 駅から幾分離れた旧街道沿いに位置する、何の変哲もない踏切は、 昼間はただの交通の通過点として機能する、単線鉄道との交差地点。 コインランドリーの裏手、築四十年を超える
夜だから危ないということで、 家まで送る。 夏の夜。 止まらぬ揺らぎ、心の奥で溶けた言葉達。 混ざり合う影、形無き輪郭・・・・・・。
「貧者の一燈」という仏教用語、 マタイ福音書5章14-16節の「世の光」概念、 そしてモーゼ五書出エジプ
「人間」としての権利を剥奪され、 (記 憶 に コ マ ン ド ・ ラ イ ン ) 国家の都合の良いように再定義される。
素敵な夢だけポケットに 詰め込んであなたと渡る架け橋―――を・・。 コンビニで買った缶コーヒーの苦味が舌に残り、 スマートフォンの通知音が鳴る度に心臓が一拍飛びながら、 世界がもし美しいと思うのならと、
不.安.ば.っ.か. 運.ん.だ. 広角レンズに映るクリーム
無法地帯という言葉を聞いて何を想像するだろう、 存外、治外法権という言葉を思い浮かべるかも知れない。 とはいっても治外法権とは、国際法上の権利で、 在留外国人がその居住する国家の法律に拘束されない特権
これは一体何度目の冬? そしてこれは一体何度目の絶望? A
<ゴミ箱から異世界へ行きます> ...エアコンの室外機で、 “コマンド入力”する、 「※ コマンド入力によるアクセス可能」 [ライ
昼下がりの空気は、 まるで熱に煮えたぎる水のようにゆるく歪んでいた。 アスファルトの表面温度は摂氏五十度を超える
閉じられてゆく世界/こじあける世界 外出とは、僕等を覆う、薄くも強固な一枚の膜を破る行為だ。 それは、室内という、完璧に守られ、制御された空間から、 広大で予測不可能な世界という名の無限の可能性へ
コイン精米機 駅前のスーパーの、日陰になった隅。 真夏のアスファルトの底知れぬ熱気を、どこか遠ざけるように、 その機械は背を低く構えている。 薄緑色の鈍い光沢を放つ鉄の外装が、午後の傾きかけた日差
深夜の蒼色のレーダー図より 人類が、まだおぼつかない歩みで大地を離れ、 空という無限の領域へと、その視線を向けた、まさにその瞬間から、 戦闘機は、もはや単なる鉄と火薬でできた兵器ではなくなった。
狐影戦記 雨雲が、鉛色の重みを帯びて空を低く覆い、 その冷たい滴が、無数の甲冑の表面を濡らし続けていた。 一粒一粒の雨滴が、武士の兜の鉢金を叩く音は、 遠くで響く雷鳴にも似て、湿った戦場の空気を震
空豆 風の気配すら感じられない、とある静謐な午後。 畑の一角に、他の草木よりもひときわ高く、 向日葵やアスパラガスのように、 まるで誰かに見せるかのように、その青い莢を掲げる、 控えめながらも存在
洞窟の火と手の記憶 The Fire in the Cave and the Memory of the Hand 社会主義という思想の根底には、人類が持つ、 普遍的な感情が横たわっている。それは、 眼の前に広がる「不公平」への、燃えるよう
蝶の光、なめくじの夢 一九八〇年代後半、日本という国全体が、 まるで巨大な金色の泡の中にいた。 その時代、空気は、根拠のない楽観論と、高揚感に満ちていた。 富を欲するものは恥を忍び、傾絶せよ。
麦茶 夏の兆しが、まだほんのりと青い、 湿った空気の匂いに混じり始める頃。都市の喧騒から離れた、 あるいは古い住宅街の、とある台所で、 ひと鍋の麦茶が、静かに、そして緩やかに煮出されている。 窓辺
おお、あれが高く聳えし、呪われたバベルの塔 命綱なしで、 二一〇メートルの高層ビルの窓枠をつたって、 素手で登った男性もいれば、 命綱なしで、 高さ三二〇メートルのクライスラービルで、 高所作業を
はなびら 恒星「S2」の軌道は、 まるで宇宙に花弁でも描いているかのような、 ロマンチックなもの。 バラ曲線は極座標の方程式によって表される曲線で、 炭酸飲料などのペットボトルの底にある、 内圧
Question and Answer 人類は皆兄弟なのかという問い掛けがあれば、 全人類は二〇万年前に存在した、 一組の夫婦の子孫である可能性が高い。 ぼんやりと想像する、 アメリカ大陸の原住民と文明接触の悲劇
ネックレス ドイツでは、ツヴィシェンゴールドパーレンと呼ばれる、 十字架がついたネックレスが発見されており、 これが一世紀から二世紀のもの。 古代からペニスなどをモチーフにした彫刻や絵画は数多く
冒険 真っ暗な部屋の中に、 ブラウン管テレビだけが痛い程に光っている、 寒々しさ。 そんな不気味さと淋しさが同居したような光景。 闇の中で強烈な光を放つ物体は、 幼児退行願望や、 あの日、君が促さ
マイネイムイズ メールアドレス 何かの遊び? テキストフィールドに入力して、 ポップウィンドウにガールしたことを、 宣言します。 名前? メールアドレスは、 歩きます。 第三者の商標を含む一切
紳士/淑女 カッコいい男がいいと言う女の垂直安定板 けれど、可愛い女とか、美人の女が、 よかったことなんて一度でもあったのか。 群衆は黒蟻。 化粧やスタイル、言葉遣いにいたるまで、 集合体で、ど
パスワードの話 イギリスでは、ネット接続するデバイスを使うなら、 今までよりちょっとだけ頭を捻らねばならなくなる。 “12345”や”password”といった、 誰にでも想像できる安易なパスワードが禁止になるか
蚊の話 蚊取り線香も、 パソコンから蚊が嫌う音を出す、 フリーソフト「デジタル蚊取り線香」 なんていう時代があったわけだけれど、 殺虫剤の大手メーカーである、 アース製薬が生み出した、 光触媒技
Even today 飛行機の中にいるような気がする夜、 窓は丸くなる。 静かだ。けれど、 音がするものに囲まれている。 いつもは部屋の照明を弱くするけど、 今日は光彩の交錯、 小生意気な粉砂糖のコニャ
世界というものは 面と色とが互いに関係し合い、 “静謐な正比例” 「人体/動き/キャラクター」が音響する。 太陽は白孔雀のシンバルである時、 炸裂する柘榴石。 聖なる円環というように、 明日も繰り返
廃人のように、スイカ美味しいよね、 を繰り返す夏の日の少女 スイカ美味しいよね。 そういえばさ、コーラで、 消火できるらしいよ。 専門家はやめろ使うな、 ライフハック、 NGというけど、 水だから
木の切り株は、 死んでいるように見えるけど、 生きている。 氷山の転覆した時、普通は「白」で、 空気が入っているのが「青い」んだ。 氷河の中から、 未知の古代ウイルスが発見される。 氷というのは
明日の君はどうやって生きるの? How will you live tomorrow? 「ランダムアクトオブカインドネス」というのがある。 「見返りを求めない行為」のことを言い、 わらしべ長者的な、「親切」や「優しさ」の
珈琲 誰もがそれを見たことがあるに違いない、 ソーサーという受け皿から離し、 コーヒーカップを持ち上げ、 一口味わうという略奪―――を。 無力な叫び声のように、 何処にいたんだ? あまり時間がない
埠頭 埠頭で波の静かな呼吸が聞こえる。 太陽が失せてしまうと、夜の世界だ。 砂浜には、貝殻や、プラスチック、硝子、 シーグラスなどもあるかも知れない。 空き缶や、ハンバーガーの袋。
子守歌 象の子供に飼育員が、人間用の子守歌をうたうと、 すやすや眠ってしまうという話があったけど、 子守歌には鬱が塗りこめられている。 もちろん賽の河原へ連れて行くとか、 包丁で大根のように切り
鏡 儒学伝来以後、「鏡」は「知」 ハエトリグモに鏡を見せると、 踊るような挙動を繰り返すけれど、 これは明確な―――“威嚇”だ。 合わせ鏡で“無限の反射”を生み出すことは可能か、 という問い掛けがあ
十字路 自動運転になると信号機をなくせたり、 交通事故そのものがなくなる可能性がある。 この交通渋滞を起こさせないASBCは、 航空管制システムをイメージすれば分かりやすいが、 前提
クリップ 書類を挟む文房具のクリップ。 引っ掛けられる、だって穴があるから、 目玉クリップ。ピン系の画鋲と組み合わせると、 謎の無双感を発揮する。 食べかけのお菓子や使いかけの食材などを、 「パチ