Prologue ~ 序章 ~ Bathrobe ~ バスローブ ~ Disturbed Ears ~ 揺れる耳 ~ A Chance In The Night ~ 夜の隙間 ~ A Secret ~ 秘密 ~ ...
「いい表情してるぞ・・・。 さあ、自分でパンティを脱いで、脚を大きく開いて・・・」 駿介に言われるままに、私はパンティに指をかけた。 遠足を終えたばかりの息子のスニーカーを洗って 庭に干そうと玄関のドアを開けると、 絹糸のような雨が音もなく芝生を道を濡...
あの紳士ともう逢うことはない。 けれどあの紳士と自分は似ているのかも知れない。 斉藤の声が恐怖を鎮めてくれた心の宙を 一期一会の紳士への愛おしさが絹雲となって流れていく。 いつからだろう、眠り落ちてゆく時は仰向けなのに 目覚める時は枕の中に左顔を埋めてうつ伏せ...
私は欲情しながらも昇り詰めることを許されない ヴァギナの代わりに大きく口を開けた。 精液が降ってくる、 飛び散って目に頬に胸元に髪にも・・・ そしてシーツにまで迸った一雫をも 身を捩って舌で掬いあげた。 教えてもらっ通り、 コンクリートの打ちっ放しの小洒落...
ドクン、トクン、ドクン、トクン・・・ 鼓動と鼓動がお互いを呼び合っている闇の中、 逞しく私を突き上げていた駿介のペニスが 力尽きて襞から滑り抜けてゆく生温かい感触に ティッシュを取ろうとした手が滑ってパソコンに当たった。 真っ暗になっていたモニターの中に浮かび上がった...
かすかに開いていた窓の外から虫達のハーモニーが響いてくる。 レースのカーテンの裾が揺れて、 仕舞い忘れていた風鈴が、間もなく窓辺に別れを告げる寂しさに 「チリン」と溜息を吐くけれど 携帯の着信音は、鳴らない。 ソファーに身を沈めながら、暮すという事は 見えないメールの...
捲り忘れていた玄関のカレンダーをそっと破った。 9月になった昨日が日曜日だったから、 小学校も今日から2学期。 ランドセルの上に体操着の入った袋を乗せるように背負い 右手に自由研究の模造紙、 左手に上履きと座布団が入った手提げ袋を持って 少し気怠そうに歩いていく息...
母のような女になれない・・・なりたくないと 小指を噛んでしまう。 ありがとう、の一言が喉に閊えたままよろりと立ち上がり、 また嘘が転がり落ちていた。 「ああ、気持ち良かった。 あんまり気持ちいいお風呂だったから つい長湯してしまったわ。 広夢、おばあちゃんと何話...
般若のように私を凝視する母の目を逸らさずに見つめ返した。 エンジン音を聞いたのだろうか、 父と息子が玄関から出てきた。 迎え火が始まる。 「おかえり」 と唇は柔和な微笑みの形を作りながら 私の目の中に嘘の欠片を探ろうとするような 母の灰色の眼差しが何かを見つけて、止ま...
「もしもし?」 「小夜ちゃん?急にごめん。 新しい支店の準備でこっちに来てる。 夕方少し時間が空くんだ。 逢えないか?」 わかったわ・・・と答える事も出来ず これから家族で実家に帰るところだと 答える事も出来なかった・・・逢いたくてたまらないから。...
耳と鼻と 口と膣と そして・・・ もうひとつ身体にある孔が、 通信教育のテキストには性交のための孔だなんて書かれてない、 消化管の末端にある便の出口だと書かれている孔が たかが生まれて初めてペニスに貫かれただけの事なのに、 「奴隷にしてやる」 と、何...
目映い陽射しと蝉の鳴き声が 降り注ぐ朝食のテーブルに 夫と向かい合って座る。 「朝から蝉か、今日も 暑くなるな。広夢は?」 「呼んでくるわね」 階段の下から声を掛けても 返事がない。階段を上り 子供部屋のドアを開けると 息子はラジオ体操のカードを 首に掛けたまま...
その瞬間、駿介は上半身を起こし 弾き飛ばされた両腕で私はシーツをたぐり寄せる。 私の尻を持ち上げ、突き上げるような動きを繰り返す駿介。 おしっこが漏れてしまいそうな感覚に奥歯を噛み締める私。 駿介が産み続ける波に揺らされながら ソファの前で彼が呟いた言葉が脳裏を過ぎる...
メールソフトを立ち上げると私は 震える指先で駿介のメールアドレスを 一文字一文字確かめながらゆっくりと入力していた。 件名:桐小夜子です。 本文:西埜駿介様 こんにちは。 岸田様の結婚披露宴でご一緒させて頂いた桐です。 その節は大変お世話になりま...
駅前駐車場の前の路肩に俊介がステーションワゴンを停めるのを 待っていたように最終の特急を降りた人達が 中央口の階段から気怠そうに掃き出されてきた。 「車を出しておいで。 この駐車場、そろそろ閉鎖する時間だろ?」 促されるままに自分の車を駐車場から出して ステーション...
高速道路は緩やかなカーブを描いている。 ビル街と丘陵の間に沈んでゆく夕陽に一瞬照らされた 駿介の左の横顔に疲労の影が澱んでいる。 東京という強い引力に逆らって駿介はステーションワゴンを走らせ 駿介という強い引力に逆らえずに私は助手席で ミニドレスの中から剥き出てしまう...
旅に出てから四日後の金曜日の夕方近く、 キッチンで珈琲カップを洗っていると 耳慣れたエンジン音が近づいてきて 出窓のレースのカーテンに赤いブレーキランプが揺らめいた。 「ただいまー!」 と息子の声が歓んでいる。 「おとうさんがね、 校門の前で待っていてくれたんだよ!...
ゴールデンウィークの間、ずっと雨が降り続いた。 4年生になってクラス替えをして 新しい担任と慣れないクラスメイトに 少し緊張しながら通学していた疲れが出たのか 息子は熱を出した。 家族3人で湖にボートを漕ぎに行く約束を 雨音が息子に優しく諦めさせてくれた。 湖に続く道...
朝、心の中で亜紀に対して使った<覚悟>という言葉を いきなり薫から突きつけられて、唾をごくりと呑み込んだ。 「覚悟・・・ですか?」 「ええ。もし施術の道に進むなら、 今伝えた言葉の意味は桐さんが・・・」 「どうぞ名前で呼んで下さい」 「小夜子さんがこれから歩んでいく...
ドアがコトリと閉まり、 夫が階段を下りていく足音に目が覚めた。 カーテンの隙間から忍び込んでくる夜明けの気配が 寝室を紫苑色に染めようとしている。 サイドテーブルに手を伸ばし 携帯の電源を入れると、4月24日 4:17。 私を求める時はいつも 「おいで・・・」 と自...
A Foreboding and A Hunch ~ 予感 ~
砂浜で独り、木製のデッキチェアに身も心も委ねて 穏やかな波の彼方に沈んでいく夕陽を眺めていたら いつの間にか・・・ そんな密やかな死に方をしたいと思うことがある。 仕事場からも、誰からも知られず そっと姿を消したかったから 社員のほとんどが外出してしまう昼休みの時間に...
キッチンテーブルに座って息子の通知表を眺めていた。 「広夢、三年生、皆勤したのね! お母さんはずっと仕事お休みしてるのに、 広夢は偉いなぁ」 「ねえ、お母さんはいつからお仕事始めるの?」 「そうね・・・どうしようかな・・・ また声が出なくなったらって思うとね お母さん、怖...
ある日突然、恋に堕ちて ある日突然、恋を失くした。 ある日突然、声も失くして 今日・・突然、声を取り戻したことに ガウンの中でレースのTバックを脱ぎながら 私は困惑していた。 チェンジングルームのドアを開けると 薫が白いティーカップを乗せたトレイを持って入ってきた。 「お疲れ様...
身づくろいをして階段を下りていくと、 私の声が聞えてきた。 リビングのドアを開けると、 ソファーに座っていた息子が慌てて テーブルの上のCDプレーヤーのスイッチを切った。 息子の右隣に座っていた夫が振り向いて私を見た時 一瞬眩しそうな表情をしたのが恥ずかしく、 そして...
「薔薇に罪はないよ・・・」 夫の諭すような囁きが左耳から喉へ胸へと 滑っていった。 呪文にかけられたように全身の力が抜けて、 握り締めていた花束が床に落ちた。 カクリとひざまずいた私を夫が抱き上げ ベッドに横たえた時、 背中に針で刺されたような鋭い痛みを感じた。 その...
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