現在、私の目の前には白い小人がいる。 いったいどうすればいいのかわからない。 小人は藁でできたとんがり帽子をかぶり、秋の紅葉を連想させるポンチョ...
西武ドームへ向かう四両編成のレオライナーがやや緩慢な速度で二子の脇を通り過ぎていった。貯水池に沿って続くフェンスの向こう側には木々が鬱蒼と生い茂り、自転...
衣服のポケットをすべて探したが、切符は見つからなかった。Mは立ち止まってもう一度ポケットの中をよく確認したかったが、駅の連絡通路はひどく混んでいて足を留...
そんなわけで私の手からすこしずつ関連性のないものごとがこぼれていく。発見されたものごとがあまりにも多すぎたために。でも不幸なことに産まれ落ちたときから私...
何もかもが黄味がかった部屋に女はとり残されていた。 とり残された! と女は感じていた。名前はオサダ・マユズミ。彼女は腐りかけの椅子にかけ、むかしの写...
目が覚めてからずっとニンテンドーDSに夢中になっていた夫が急に喋りだした。それも、私にではなかった。まるで遠くにいる誰かに呼びかけるような声である。 ...
一人の小太りの男がバイパスに面した「ローソン」の広い駐車場に車を入れる。ガソリンがなくなりかけていたのだが、手持ちの金もなかったのだ。十数年ぶりに袖を通...
昨夜からつづいている不安のせいだと思う。真夜中に姉に揺り起こされても腹を立てることもできなかった。瞼をひらこうとすると目玉も一緒に持ち上げられてほとんど...
水族館なんか、おもしろくもなんともない。 ウェットスーツを着た女性スタッフが水槽に姿を見せたから、大きく手を振ってやった。ちょっとおもしろそうだった...
町外れのカフェで一人のウエイトレスに禁煙席のフロアの照明を落としてもいいだろうかと頼まれる。彼女に名前はない。彼女は玉葱の皮みたいな単一的な肌の色をして...
夜、素振りの練習をするために少年が城跡の公園に入り込むと、屋根付ベンチの下で行き場のない女と出会う。女は胎児の様に丸くなりまどろんでいる様にも見えたが、...
夕焼けが赤く染まり始めると、太郎は十本目の缶ビールを飲むべくプールへと手を伸ばした。彼はプルリングに付いた風船の紐を指の付根に縛りつける。彼の頭上では十...
夜の間に何者かの救助作業が行われているようだった。十分ほど前にサイレンが鳴り、Mは閉めきった部屋の中から火事でないことを確かめるためにそっと雨戸を開けて...
娘の幹は神様の話が好きで、私にもよく神様の話をしてほしいとねだることがある。このあいだ幹にねだられたときには、とうとう話のネタが尽きて、私が中学生のとき...
他人と余り関わることのない一人暮らしで自棄的な感情に陥らずに過ごすには工夫が必要とされる。錯乱した部屋、文字通り足の踏み場もない部屋で立派に過ごせるのは...
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