この著者の三冊目だ。年譜で調べてみると『冬に子供が生まれる』2024年、『月の満ち欠け』2017年、『鳩の撃退法』2014年となる。ここ10年ほどの最新作品だ。前二作とは少しテイストも手法も違う。前二作はテーマが絞られてシンプルで解りやすくなっている。それに対してこの『鳩の撃退法』は複雑だ。主人公の小説家はかつて直木賞を受賞したことがあるが、今は書けなくなって各地を放浪している。舞台は放浪の三か所目、西日本の街での出来事。デリヘリのドライバーをしている彼の回りで生きた事件、バー経営の男の家族三人の失踪、デリヘリの女の子の失踪を小説家として想像、創作してゆく。これを小説にしようという企みもある。この主人公は40歳前後、やさぐれの感じがいい。これらの失踪にはデリヘリの社長の中学の同級生、街のやくざのボスが絡ん...4/23佐藤正午『鳩の撃退法』読了