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近代日本文学史メジャーのマイナー https://plaza.rakuten.co.jp/analogjun/

「純文学」読み始めはや数十年。病膏肓に入る状態。でも、「純文学」以外が嫌いなわけではないんですがね。

 補助テキストは高校の日本文学史教科書です。ブック○フで105円で買いました。  明治以降の小説作品を、ランダムに、かつブルドーザー的に読むというのが、コンセプトです。  ただし条件。  1・コンセプトはあくまでコンセプトである。  2・所詮シロートですけん、許してつかーさい。  以上

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2009/06/14

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  • ユートピア小説としての……

    『橋ものがたり』藤沢周平(新潮文庫) かつてたまーにしか「時代小説」を読んでいなかった時は、わたくしもの知らずだったせいで(もちろん今でも十分もの知らずですが)、時代小説と歴史小説の違いがわかり

  • 映画、小説ともに「薄味」?

    『ある男』平野啓一郎(文春文庫) 実は本作を読んだきっかけは、近所の文化ホールの様なところで本作を原作とする映画を上映していて、それを見たからなんですね。 最近私はけっこうたくさん映画を見ていて

  • 小説映画小説という体験

    『阿弥陀堂だより』南木佳士(文春文庫) 本文庫の解説文を書いているのが、小泉尭史という映画監督の方で、わたくし寡聞にして存じ上げなかったのですが、本書を原作とした映画を撮った監督であります。 映

  • 推理小説への違和感から

    『「私」をつくる』安藤宏(岩波新書) もう10年以上前になりますか、いろんな本をやたらに乱読していた(それもカルめの本を)のを反省し、心機一転、今後は近現代日本文学を中心に読書しようと、今となっ

  • 三読目にして堪能する荷風節

    『墨東綺譚』永井荷風(新潮文庫) この作品は2度目の読書報告をするのですが、前回同様、最初に一言申し添えます。 「墨」の字が、違うんですね。 本書の最後に「作後贅言」と銘打った筆者のあとがきのよ

  • 「告白できない男たち」は少しツライ

    『出世と恋愛』斎藤美奈子(講談社新書) 筆者は、筆者紹介によると文芸評論家となっています。 まー、そうでしょうねー。私としても、デビュー作の『妊娠小説』を面白く読んで以来、なかなかフェイヴァレットな

  • 得難い哄笑「ホラ話」

    『百年泥』石井遊佳(新潮文庫) 近代日本文学に哄笑できる作品は少ない、というのは、別にわたくしのオリジナルな発言ではありません。多くの方がお考えのことにわたくしも賛同しただけのことであります。 こ

  • 「正調・小川節」の魅力

    『海』小川洋子(新潮文庫) 知人に薦められて本書をネット経由で手に入れました。私は、同筆者の本は今までに何冊か読んでいます。 それはそんなにたくさんとは言わないまでも、短編集なら、芥川賞受賞作の

  • 太宰治の魅力とは

    『名もなき「声」の物語』高橋源一郎(NHK出版) 本書の奥付の前のページにこう書かれています。 ​ 本書は、「NHK100分de名著」において、二〇一五年九月に放送された「太宰治『斜陽』」のテキ

  • 映画鑑賞の楽しみとわからなさ

    『日本映画史110年』四方田犬彦(集英社新書) わたくしのもうひとつの拙ブログにも同様のことを書いたのですが、10カ月ほど前から、いろんな映画を見るようにしました。 60本くらい見たのですが、も

  • 豊穣なる女性作家の職場小説

    『おいしいごはんが食べられますように』高瀬隼子(講談社) 2022年の夏の芥川賞受賞作です。 女性作家です。 令和元年上半期から同5年上半期までの芥川賞受賞作家をちょっと調べてみたら、全部で12

  • 一体誰が知ってるこの作家

    『俺の自叙伝』大泉黒石(岩波文庫) さて、大泉黒石であります。 って、果たしてどれほどの方がこの名前をご存じでいらっしゃったでしょう。 自慢ではありませんが、もちろんわたくしも全く存じ上げません

  • 道也先生と小説を読む喜び

    『二百十日・野分』夏目漱石(岩波文庫) この文庫の解説の冒頭に、これらの作品がいつ書かれたかが述べられてあります。解説を書いているのは、小宮豊隆です。 それによりますと、明治39年の9月に4日間

  • 戸惑いの半世紀ぶりの再読

    『芽むしり仔撃ち』大江健三郎(新潮文庫) 実に、約半世紀ぶりの再読であります。 半世紀も前に読んだ本なんて、何も覚えていなくたってそれは私の記憶力に問題があるとは思いませんが、この度は、なんとな

  • 村上春樹の不思議な新作長編小説

    『街とその不確かな壁』村上春樹(新潮社) さて、村上春樹の不思議な新作長編であります。 不思議なというのは、作品一部(本作品の第一部のところですね)が2回目の書き直し発表、つまり最初の作品から合

  • 最後の本当になんでもありの小説

    『晩年様式集』大江健三郎(講談社) 本書は奥付によると2013年10月に第一刷が発行されています。 一方初出は「群像」誌で、2012年1月号から2013年8月号までの連載です。つまり、2011・

  • ミナミ象アザラシ小説

    『田紳有楽』藤枝静男(講談社) 少し前、たまに足を向ける神戸の街で、たまたま古本屋があったもので(神戸の街も結構古本屋さんのたくさんある街です)、ぶらりと入ろうとしたら、入口の横、道に面して設置

  • 「凄み」の人生観の第一人者

    『いずれ我が身も』色川武大(中公文庫) ひさしぶりにこの筆者のエッセイを読み直しました。 以前は、丸谷才一なんかと並んで、私はかなり熱心にこの作家のエッセイを読んでいたように思いますが、丸谷氏も

  • この作品を誰が評する

    『森』野上弥生子(新潮文庫) さて、『森』であります。 そのご高名は以前よりつくづくと伺っておりました。 何のご高名かとは、申すまでもないのかも知れませんが、筆者野上氏の、99才の作であること。数日

  • 鴎外も随筆を書く

    『鴎外随筆集』森鴎外(岩波文庫) 久しぶりに古本屋さんを覗いたら本書が目に入りまして、思わず、あれっ? 鴎外って随筆書いてるんや、という、まー、その後すぐ自分でも愚かしい思い違いと分かるような感

  • 恐怖と狂気そして陶酔

    『渦――妹背山婦女庭訓 魂結び』大島真寿美(文春文庫) 確か数年前に、この筆者がヴィヴァルディについて書いていた小説を読みました。詳しい内容は忘れてしまったのですが、きちーんとしっかり描いていたような

  • 河合隼雄物語賞ってどんな賞?

    『あひる』今村夏子(角川文庫) わたくし、本書を古本屋さんで見つけました。 文庫本に帯がついていまして、そこに、「芥川賞候補作&河合隼雄物語賞」とありました。 芥川賞はともかく、河合隼雄さんって

  • 描かれる心静かな生活

    『静かな生活』大江健三郎(講談社文芸文庫) 本書は、わたくし再読であります。 読書報告も2回目(以前に一度、本書の読書報告をしたという事)、であります。 さっきパラパラと自分が書いた昔の報告を

  • 父親という苦悩

    『銀河鉄道の父』門井慶喜(講談社) 宮沢賢治が主人公、いえ本当は賢治のお父さんが主人公です。 でも、賢治がいなければ成立しません。賢治が現在超有名人だからこそ、こんな風に小説になるんですね。

  • また思う「お玉」って誰

    『雁』森鴎外(新潮文庫) 本小説は、わたくし多分4回目の読書ではないかと思います。 以前拙ブログにも一回取り上げています。その時私は、なぜ鴎外はこんな小説を書いたのかというテーマを持って、まー、一応

  • 一日1編で読み終える本

    『冥途・旅順入城式』内田百閒(岩波文庫) この文庫本には、標題のとおり『冥途』と『旅順入城式』という2冊の短編集が一冊にまとめて収録されています。 ほとんどが数ページくらいのきわめて短い短編小説

  • 「私小説」のおさらい

    『河馬に噛まれる』大江健三郎(文春文庫) 作品を読みながらこう考えた。(すみません。『草枕』のしょうもないマネですー。) 近代日本文学における「私小説」が、偏っていびつになった原因は田山花袋の

  • なかなかの「問題作」

    『模範卿』リービ英雄(集英社文庫) なかなかの問題作と、わたくし、思いました。 あれこれ考えたのですが、(まー、下手の考えではありますがー)本書に私がなじめないポイントをざっくり言うと以下のよう

  • 筆者の不思議な心象風景

    『英子の森』松田青子(河出文庫) この作者は、わたくし、初めて読んだ作家ではありません。少し前に『スタッキング可能』という本を読みました。(これは個人的な私の問題なのかも知れませんが、若い作家の

  • 「猫話」に手を出してしまった

    『猫の客』平出隆(河出文庫) えー、本読みの先輩に薦められた本です。初めて読む作家です。詩人でもある作家だそうです。なるほど、研ぎ澄まされたような文章力が、あちこちの描写から感じられそうでありま

  • 新しいうつわに古い酒を盛る

    『ここはとても速い川』井戸川射子(講談社文庫) この筆者も、令和以降のバリバリの新人で、新しい人の作品を読もうとする時は、少しドキドキしますね。 それはもちろん新しい世界や物事を教えてもらえるわ

  • 「世界の希望」に連れてって

    『わたしがいなかった街で』柴崎友香(新潮文庫) この作家も、わたくし初めて読むのですが、新潮文庫の裏表紙にある「宣伝文」の最後に、「生の確かさと不思議さを描き、世界の希望に到達する傑作」とあって

  • 40年前の短編小説を読み解く(後編)

    『中国行きのスロウ・ボート』村上春樹(中央公論社) 前回の続きです。 前回私は本短編集の一編「中国行きの…」を特に興味深く読んで、5つの疑問点に気がついたと書きました。(すみませんが、詳しくは前

  • 40年前の短編小説を読み解く(前編)

    『中国行きのスロウ・ボート』村上春樹(中央公論社) いつだったか、作家の小川洋子さんが、本書をかなり絶賛していた文章を読んだ記憶があります。本書の初版は1983年で(文庫本ではありません)、帯に

  • 「詩とは何か」とは何か

    『私の文学史』町田康(NHK出版新書) 本書は、少し変わったところから出ている新書であることからもわかるように、NHK文化センターで十二回行われた連続講座の講義を編集したものであります。 サブタ

  • 現代史の「紀伝体」は可能か

    『人間晩年図巻2008-11年』関川夏央(岩波書店) 珍しく日本古典文学の話から始まります。 といっても、本当は羊頭狗肉で、古典文学の事なんて私は何も知ってはいません。ただ、近現代文学を読んでいるとど

  • 「完璧」な文章を書く新人

    『死者の奢り・飼育』大江健三郎(新潮文庫) 多分高校三年生くらいの時に私は一度本書を読みました。 あの頃、大江健三郎というのは、多分文壇の「アイドル」みたいな存在じゃなかったかと思うのですが、さ

  • 宇宙人のリアリズム

    『美しい星』三島由紀夫(新潮文庫) 先日、アマゾンプライムで『シン・ウルトラマン』を見ていたら、宇宙人同士が居酒屋で酒を飲みながら今後地球人をどのようにするかと話し合っている場面がありました。

  • 鋭い批判力と適度な感傷性

    『「一九〇五年」の彼ら』関川夏央(NHK出版新書) アマゾンあたりでこの筆者の作品をなんとなく探していると、この筆者にはけっこうたくさんファンがいることに気がつきます。 いろんなことに疎い私は、な

  • リアリズム手法からの脱却

    『末裔』絲山秋子(新潮文庫) 確かかなり昔に、私はこの作家の本を一冊だけ読みました。 と、思って探っていると、なんだ、我が拙ブログにも報告があるではありませんか。 実はその時の読後感をほぼ覚えて

  • 漱石作品中、際だつヘンさ

    『彼岸過迄』夏目漱石(岩波書店) わたくし、本小説を2017年発行の新しい岩波の漱石全集で読みました。第七巻一冊がまるまる本小説であります。図書館で借りました。 以前、同漱石全集で『三四郎』を

  • 史実に基づくつもりはない小説

    『ミチクサ先生・上下』伊集院静(講談社) 図書館で借りたのですが、図書館ではずいぶんの数の予約が入っていました。かなり待ちました。 そのとき知ったのですが、予約の数なんですが、えらいもので、上巻

  • 面白くない小説を書く意思

    『台風の眼』日野啓三(新潮文庫) ある時期、ちょっとまとめてクラシック音楽の評論というかエッセイというか、そんな本を続けて読みました。で、気づいたことがあったんですね。 そんな話をかつて私は別の

  • 小説・評論・小説・評論……

    『砂のように眠る』関川夏央(新潮文庫) この文庫本は、かなり昔から私の本立ての中にあったのですが、この度ふらっと手に取ってふらっと読み始めて、今まで本書を最後まで読み切っていなかったことに気がつ

  • タイトルとは異なるけれど……

    『俳句と人間』長谷川櫂(岩波新書) 本書の中に、東京電力福島原発事故についての短歌と俳句があります。一つずつ引用してみます。 人々の嘆きみちみつるみちのくを心してゆけ桜前線 何もかも奪はれてゐ

  • 不安定雇用と介護のあいだで

    『スクラップ・アンド・ビルド』羽田圭介(文春文庫) 時代的なものもあるからかなと思いますが、なんだか最近の芥川賞系の作品って非正規雇用の若者の話か、介護か認知症がらみの老人の話か、そのどちらかの

  • 関西人の造形を考える

    『通天閣』西加奈子(ちくま文庫) 初めて読む作家です。 直木賞の受賞作家で、それなりの売れっ子作家の方じゃないかなというくらいの先入観を持っていました。 でも、本ブログからおわかりのように、わた

  • コロナ・スペイン風邪・時代小説

    『マスク』菊池寛(文春文庫) 本書は、サブタイトルに「スペイン風邪をめぐる小説集」とあります。 スペイン風邪というのは、かつて私も知らなかったのですが、このコロナ禍でいろんなところで何度か聞いた

  • 丸呑みにするしかない

    『蓼喰う虫』谷崎潤一郎(新潮文庫) 例えばこんな萩原朔太郎の詩。 蛙の死 蛙が殺された、 子供がまるくなつて手をあげた、 みんないつしよに、 かわゆらしい、 血だらけの手をあげた、 月が

  • リアリズムと介護小説

    『龍の棲む家』玄侑宗久(文春文庫) この筆者の小説も初めて読みました。 ちょっと今回のテーマと関係ないことを考えるのですが、新聞の広告スペースに「今月の○○文庫新刊」みたいなのが載っているときがあり

  • 「変」のリアリティを考える

    『あの子の考えることは変』本谷有希子(講談社) 養老孟司のベストセラー『バカの壁』に、「バカの壁」とは何かの説明として、東大医学部の学生に授業をしていたら、もっとわかりやすく説明しろと何度となく言わ

  • 普遍的な老いの形のない中で

    『この道』古井由吉(講談社) この連作短編は、2017年から翌年にかけて「群像」に隔月連載されていたものです。その時の筆者の年齢が80歳から81歳、そしてその翌年2月に筆者は亡くなります。 と

  • こんな小説もあるんだろうなあと

    『爪と目』藤野可織(新潮文庫) 2013年の芥川賞受賞作です。 ……ふむ。 ……あ、……えー。 ……えー、まー、困っとるわけですね。 何に困っているのかというと、まー、この作品のどこがよくて芥川賞なの

  • なるほど確かに「デビュー作」は興味深い

    『君は永遠にそいつらより若い』津村記久子(ちくま文庫) 2005年に太宰治賞を受賞した筆者のデビュー作だそうです。 ただ、その時のタイトルは『マンイーター』というそうで、ちょっと大概な感じのタイ

  • SF的発想による時代小説

    『殿さまの日』星新一(新潮文庫) 星新一と言えば、やはりわたくしも中学生の頃ですか、何冊か読みました。読みましたが、これも多くの読書少年が多分そうであったように、その後読まなくなってしまうんです

  • 実に説得力ある「大阪論」

    ​ 『大阪的』津村記久子・江弘毅(ミシマ社) なんかパンフレットみたいな本です。薄い。95ページです。私は上記に「ミシマ社」と書きましたが、最初は出版元がわからなかったりしました。 そんな本をな

  • この圧倒的に不愉快な読後感

    『送り火』高橋弘希(文春文庫) しかし、なんとも後味の悪い小説を読んでしまったことであります。 以前にも拙ブログで紹介したように思いますが、三島由紀夫が『小説とは何か』という(タイトルの通り小

  • 「おせっかい」な名文の魅力

    『神戸・続神戸』西東三鬼(新潮文庫) 例によって古本屋さんで見つけた文庫本であります。 「『おすすめ文庫王国2020』年間最優秀文庫編集者賞受賞」と、本の帯にあります。 何が何だかよくわからない

  • 方丈記にあまり触れない方丈記

    『方丈記私記』堀田善衛(新潮文庫) わたくし本書は二度目の読書です。一度目に読んだのは、大学の一年生の時でした。 なぜそんなことを覚えているかというと、私の入った大学の文学部一年生で、そんな授業

  • ハードボイルドな母を描く

    『猛スピードで母は』長嶋有(文春文庫) この文庫は160ページの本文でちょうど真ん中で切れる、つまりきれいに80ページずつの小説が二つ収録されています。 なるほどこのくらいの長さが、「芥川賞ねら

  • こだわりの二葉亭、こだわりの『蒲団』

    『言文一致体の誕生……失われた近代を求めて1』橋本治(朝日新聞出版) 例によって図書館で見つけた本ですが。 いえ、図書館にこの本があることは、実はずっと前から知っていたのですが、ちょっとパラパラ読

  • 「ポスト」の難しさに挑む

    『爆心』青来有一(文春文庫) この筆者については、わたくしかなり前に一つだけ短編小説を読んだことがありました。 その時の漠然とした印象が、この文庫本を見つけた時にふっと思い出されまして、実は一瞬

  • 懐疑と想像力

    『白土三平論』四方田犬彦(作品社) 実はわたくし、新書版の全21冊の第一部『カムイ伝』を多分持っています。 多分というのは、現物を長く見ていないからで、多分押し入れの奥にあるだろうと思っているか

  • 芥川賞は5回目まで

    『九年前の祈り』小野正嗣(講談社文庫) この筆者は、NHKを見ていると時々お顔を拝見する方ですね。 そんな番組内での発言を聞いていると、頭のよさそうな方だなーと感じますし、今回読んだ講談社文庫の

  • 「こじらせ女子」はどこに

    『地球星人』村田沙耶香(新潮文庫) さて「まくら」は、日本文壇の半期に一度のお祭り、芥川賞の事であります。 いえ、私は新聞やテレビのニュースなんかの報道では適当に興味を持ちつつも、受賞作について

  • 講談社文芸文庫の「徳」

    『懐中時計』小沼丹(講談社文芸文庫) 講談社文芸文庫には、なかなかなんと言いますか興味深いというかビミョウというか、そんな感じのする小説作品がいっぱいありますね。 そもそも純文学系の文庫と言え

  • ちょっと気の毒な大騒ぎの話

    『村上春樹はノーベル賞をとれるのか?』川村湊(光文社新書) 以前、よく似た感じのタイトルの本を読みました。あの時の本は、芥川賞だったと思います。(芥川賞の時は、なぜ取れなかったか、という本だった

  • この終末部をどう考える

    『沙羅乙女』獅子文六(ちくま文庫) 獅子文六作品の読書報告は3作目であります。 まず『てんやわんや』を読んで、何だかもうひとつ面白くなかったような報告をしました。でも、あまり記憶に残っていません

  • 難解村上世界を読み解く

    『村上春樹の世界』加藤典洋(講談社文芸文庫) 『村上春樹は、むずかしい』加藤典洋(岩波新書) この度上記の2冊を立て続けに読みまして、取りあえず筆者が村上春樹の作品をどのように理解していったか

  • 近代西洋絵画史のおさらいより

    『子猫が読む乱暴者日記』中原昌也(河出書房新社) いえ、この本も図書館でふっと見つけたのですがね。 いえ、この本というのは、冒頭の今回報告する本ではありません。この本です。 『知識ゼロからの

  • お手上げの意識の流れ

    『街と村・生物祭・イカルス失墜』伊藤整(講談社文芸文庫) さて、伊藤整であります。 「さて」っちゅうのは何のための書き出しの言葉かというと、……えー、なんでしょうねぇ。 ……やはり、ビビっている、ん

  • 「人間の芸術品」とは

    『峠・上下』司馬遼太郎(新潮文庫) 「司馬先生」の作品であります。 「先生」とつい書いてしまいましたのは、多くの司馬ファンが言うように、司馬作品中のとっても面白い「余談」のおかげであります。 特

  • なぜ静と私にこだわるのか

    『夏目漱石『心』を読み直す』小森陽一(かもがわ出版) 以前読んだ、志賀直哉の短編について書かれた本と同シリーズの本であります。 大きな特徴は、新しい本であるということ。(2020年9月第1刷発行

  • 仕掛けに満ちた展開の長短(!?)

    『月の満ち欠け』佐藤正午(岩波文庫) 懐かしい作者の名前であります。 と、書くのは、作者に対しては失礼なのかなとも思いつつ、まー、やはりそう思って読みだしたことは否めません。 むかーし、『永遠

  • 自由律俳句ってどうなの?

    『海も暮れきる』吉村昭(講談社文庫) 尾崎放哉といえば、種田山頭火と並んで自由律俳句界の二大スターでありますね。 有名な句がいくつかあります。 わたくし恥ずかしながら、ちょっとだけ俳句が趣味であ

  • 女子高生文体ではあるが…

    『かか』宇佐見りん(河出書房新社) ……えー、えらいもので、最初の「令和期の作家」であります。 いえ、まー、令和もすでに3年目に入っておりますから、例えばその間に芥川賞なんかを受賞なさった作家は、

  • 我が性は牡蠣の如くに

    ​ 『明るい夜』黒川創(文芸春秋) この作者も初めて読みました。 そもそも私には、新しい作家を次々に開拓していくという積極性が全くありません。 文芸雑誌というものについては、ほぼ完璧に手を出したこ

  • フットワークというのは何か

    『文壇アイドル論』斎藤美奈子(岩波書店) 図書館で借りてきました。 この筆者は、最初の頃の『妊娠小説』あたりからわりと好きでした。どこが好きかというと、何というか、フットワークの良さ、みたいなも

  • 人類滅亡のリアリティ

    『復活の日』小松左京(角川文庫) 時節柄ということもあってか、友人に勧められて読んでみました。 時節柄ということで言えば、カミュの『ペスト』とかのちょっとしたブームと同じく、本書もまた最近多く読

  • 直木賞の方が欲しかった

    『姥ざかり』田辺聖子(新潮文庫) 現在マイブームの老人文学であります。 なぜ、老人文学がマイブームなのかは、最近の私の2種の拙ブログのあちこちにちょろちょろと書いています。 でも、自分でも読んで

  • 屹立する高い独創性

    『海と山のピアノ』いしいしんじ(新潮文庫) わたくしこの作家も初めて読みました。 しかし世の中には、いろんな才能をお持ちの作家がいらっしゃるものでありますなー。 改めて感心しました。この筆者は、

  • 虚無から生み出す価値の世界

    『ニムロッド』上田岳弘(講談社) えっと、数回前の芥川賞の受賞作品ですね。 仮想通貨がテーマである、と。 なるほど、ビットコインが出てきます。けっこう大切な小道具として出てきます。 しかし、何

  • あー、こんな感じだったなー

    『水声』川上弘美(文春文庫) 考えてみると、川上弘美も長く読んでいないなー、と。 一時期はかなりまとめて読みましたが、ぷつっとやめました。 今思い出してみると、あの時私は、なにかこの筆者の小説

  • これは苦手な児童文学なのか?

    『月の光――川の光外伝』松浦寿樹(中公文庫) この本も、例の全国展開の古本屋さんで廉価で売っていたので買いました。買ってから何となくあちこち(前書きとか、内容ぱらぱらとか、ですね)見ていますと、ど

  • 司馬的バラガキのトシの魅力

    『燃えよ剣・上下』司馬遼太郎(新潮文庫) この本も、「本読み」の先輩に薦められました。 「司馬遼太郎は、空海と土方の話が面白かったかなー。」と。 『空海の風景』は、私も読んで面白かった記憶があり

  • 今、老人文学はどうなっているのか

    『おらおらでひとりいぐも』若竹千佐子(河出文庫) 正面から老人問題を捉えた小説であります。芥川賞を受賞しました。その時筆者は63歳でありました。 というあたりを事前の予備知識として本書を読みま

  • 悪名高い国語新指導要領を……

    『文学国語入門』大塚英志(星海社新書) 図書館で借りました。 風のうわさに聞く「悪名高い国語新指導要領」(本書にそう書いてあります)ということで、図書館でちょっと手に取り、そのまま借りて家で読み

  • なんて上手な短編小説(後半)

    ​ 『一人称単数』村上春樹(文芸春秋) ……えー、前回の続きであります。 村上春樹の最新短編集を読みながら、わたくしはわたくし的「新発見」をしたと、前回最後にハッタリをかましてしまいました。 えー

  • なんて上手な短編小説(前半)

    『一人称単数』村上春樹(文芸春秋) とりあえず買おうか買うまいかと迷っていたら、友人がお貸ししましょうと貸してくれた本であります。 でもちょうどその時、私は別の小説を読んでいましたので、勇んで本

  • 「メンター」の導きに従って

    『動物記』高橋源一郎(河出書房新社) わたくしの読書の「メンター」のような方に、「最近何読んでますか」と訊ねた時に出て来た書籍がこれです。私は「『銀河鉄道の彼方に』は読みましたか」と訊ねました。

  • ちょっと「イヤ」なんですが……

    『十二人の手紙』井上ひさし(中公文庫) ごく個人的な話で申し訳ないのですが、この拙ブログでは、橋本治は「文芸評論家」のカテゴリーに入っています。多分私がこのブログに最初に報告した橋本作品が、文芸

  • 器用な二刀流の作家です

    『パーク・ライフ』吉田修一(文春文庫) 少し前に、薦められて吉田修一という作家の本を初めて読みました。 『ウォーターゲーム』という本でした。 前もっての情報もあまりなく読みました。いえ、二つだけ

  • 「海岸公園」とは何となくロマンティックな……

    『夏の葬列』山川方夫(集英社文庫) 今となってはかなり昔、多分例の全国展開古本チェーン店で『海岸公園』というタイトルの文庫本を買いました。新潮文庫でした。 私に作者についての予備知識など全くあり

  • 偉大な作家の偉大な「性慾」

    ​ 『谷崎潤一郎 性慾と文学』千葉俊二(集英社新書) 以前より何度か本ブログで書きましたが、私は、大学は文学部というところに大昔通っていました。そこで、まー、何年か何となく通っていたら卒業せよと言

  • 韜晦し韜晦し、そして告発する

    ​​ 『恋する原発』高橋源一郎(講談社) まず冒頭に、献辞のような形で2ページ、各2行ずつで、こうあります。 すべての死者に捧げる……という言い方はあまりに安易すぎる。 (

  • あの大岡昇平の戦争小説集

    『靴の話』大岡昇平(集英社文庫) 集英社文庫も新潮文庫と同じで、文庫本のカバーの裏表紙に当たる部分に、作品内容のまとめや評価についての宣伝文が載っています。本書のその文章の最後に、こう書いてあり

  • 恐るべき「地味」さの果てに

    『この国の空』高井有一(新潮文庫) 本書を読み終えて、思わずいったいどうなっていたのだろうと考えたことがあります。あれは、今どうなっているんだろう、と。 しかし、ともあれもう少し順を追って報告

  • 主人公の魅力の「逆説的」描き方

    『歳月』司馬遼太郎(講談社文庫) 明治初期の、肥前出身の司法卿・江藤新平の生涯を描いた司馬遼太郎の小説であります。講談社文庫で、本文はちょうど700ページ、一冊です。 この長さというのは、司馬

  • もちろん「羅生門」も面白い(その4)

    『羅生門・鼻・芋粥・偸盗』芥川龍之介(岩波文庫) とうとう4回目になってしまいました。何が何でも今回はまとめねばなりません。がんばります。 前回の林先生の最初の問いかけは、「なぜ下人は羅生門の

  • もちろん「羅生門」も面白い(その3)

    『羅生門・鼻・芋粥・偸盗』芥川龍之介(岩波文庫) 前回最後に報告していたのは、「羅生門」執筆直前に芥川が、後々までかなり強烈なトラウマとなる失恋を経験したということでした。 後年芥川は、当時を振

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