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2009/06/06

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  • 仁義なき日本沈没

    仁義なき日本沈没 東宝vs.東映の戦後サバイバル春日太一【著】新潮社(新潮新書)刊2012(平成24)年3月発行 年配の人がよく「昔の邦画は良かつた」と往年を懐かしむのですが、その昔と今の境界線はどこであらうかと著者は考へました。それは1973(昭和48)年であるとし、その年を象徴する作品が、東映の「仁義なき戦い」であり、東宝の「日本沈没」であるといふ。本書のタイトルもその二作品から採られてゐます。そこで日本...

  • 第三阿房列車

    第三阿房列車内田百閒【著】新潮社(新潮文庫)刊2004(平成16)年6月発行 内田百閒先生の阿房列車シリーズ、三部作の最終作であります。いつまでも無節操に続けて欲しいシリーズですが、やはり三部作で収めるのが上品と申せませう。 同行するのは、勿論ヒマラヤ山系こと平山三郎氏。作中では「山系君」として登場。この人の付添ひが無ければ阿房列車は運転されなかつたので、大功労者であります。 相変らず、百閒先生とは会話...

  • 新幹線と日本の半世紀

    新幹線と日本の半世紀 1億人の新幹線―文化の視点からその歴史を読む近藤正高【著】交通新聞社(交通新聞社新書)刊2010(平成22)年12月発行 又もや新幹線物か、と思はれるところですが、従来の新幹線史は専門ライターが趣味的側面から執筆したものや、学者が自分の専門分野に特化した学術的な記述のものが多いと存じます。つまり、「極極普通の人」が抵抗なく読める一般書は案外少ないと申せませう。 そこで本書の特色としては...

  • 南極のペンギン

    南極のペンギン高倉健【著】唐仁原教画久【画】集英社(集英社文庫)刊2003(平成15)年11月発行 国民的俳優・高倉健(1931-2014)さんの生誕90年であります。彼が書いた初の絵本といふ触込みですが、実態は健さんが体験した事を綴るエッセイと申せませう。 国際的スタアだけあつて、ロケ地もアフリカ、北極、南極、ハワイ、オーストラリア、ポルトガル等等ヴァラエティに富んでゐます。四十年以上(執筆当時)に及ぶ俳優人生で...

  • 要約 世界文学全集Ⅰ

    要約 世界文学全集Ⅰ木原武一【著】新潮社(新潮文庫)刊2003(平成15)年12月発行 木原武一氏による「要約世界文学全集」。啓蒙的な著書が多い印象ですが、これもまた読書欲を掻き立てる一冊であります。「Ⅰ」と「Ⅱ」に分冊されてゐて、これは「Ⅰ」の方。ざつと年代の新しい順に収録されてゐまして、本書ではナボコフ「ロリータ」からトルストイ「アンナ・カレーニナ」まで31編が収録されてゐます。 一作あたり13頁に統一さ...

  • 不信のとき

    不信のとき有吉佐和子【著】新潮社(新潮文庫)刊1975(昭和50)年3月発行2006(平成18)年6月改版 今年は有吉佐和子(1931-1984)さんの生誕90年であります。若くしての病死でしたが、「笑っていいとも」での奇行から僅か二か月後の訃報に、当時は死因が色色取沙汰されたものです。 ここで登場する『不信のとき』は、1967(昭和42)年に日本経済新聞にて連載されたもの。主人公の浅井義雄くんは、大手商社の宣伝部に勤めるサラ...

  • 硫黄島 栗林中将の最期

    硫黄島 栗林中将の最期梯久美子【著】文藝春秋(文春文庫)刊2015(平成27)年7月発行 硫黄島の指揮官だつた栗林忠道中将については、梯久美子さんは以前『散るぞ悲しき』といふ作品を発表してゐます。なので本書を見た時は、また同じやうなモノかな、と思ひ手に取るのが遅くなりました。 しかし一読しまして、硫黄島を新たな視点から見た一冊として傑れたノンフィクションだと思ひました。「ドキュメント1」から「ドキュメン...

  • 笑い

    笑いアンリ・ベルクソン【著】林達夫【訳】岩波書店(岩波文庫)刊1938(昭和13)年2月発行1976(昭和51)年11月改版 初読は学生時代。しかしこの独特の持つて回つた物言ひに、理解するのに難儀しました。否理解出来なかつた部分もありました。まあわたくしの無知蒙昧さが招くもので、仕方あるまいと感じてゐました。 齢を重ねて再読した際には、やはり分かりにくくて、結局この文章(訳文)は悪文なのだらうと勘考しました。多...

  • 競馬と鉄道

    競馬と鉄道 あの“競馬場駅”はこうしてできた矢野吉彦【著】交通新聞社(交通新聞社新書)刊2018(平成30)年4月発行 著者は競馬ファンには有名なフリーアナウンサーださうです。不勉強にしてわたくしは存じ上げませんで、ご無礼いたしました。この方は「野球」と「鉄道」、そして「競馬」が好きで、「競馬と鉄道」をテエマに一冊出せないかと知り合ひの出版関係者に打診したさうです。しかし「そんなマニアックな本は出せない」...

  • 女重役

    女重役清水一行【著】光文社(光文社文庫)刊1988(昭和63)年3月発行 経済小説の第一人者であつた清水一行氏(1931-2010)の生誕90年に当り、「女重役」の登場であります。「重役」といふ言葉も最近あまり使ひませんね。この小説が発表されたのは1985(昭和60)年。現在でさへ、男女共同参画社会が叫ばれながら、中中女性進出が進まぬ現状を鑑みますと、当時女性役員(しかも一部上場企業)といふのは珍しく、寧ろ奇異の眼で見ら...

  • 変身の原理

    変身の原理 密教の神秘桐山靖雄【著】平川出版社刊2002(平成14)年12月発行 桐山靖雄氏(1921-2016)の生誕100年といふ事で、「変身の原理」。良く分からないが、この人はスゴイ人です。阿含宗の開祖でありますが、霊能者として様様な奇跡を起こした人。と云はれてゐます。何分わたくしは現場を見てませんので、それについては喋喋出来ない事が残念であります。漫画家兼心霊科学研究科のつのだじろう氏も、桐山氏の霊能パワーに...

  • 明治・大正・昭和政界秘史

    明治・大正・昭和政界秘史 古風庵回顧録若槻禮次郎【著】講談社(講談社学術文庫)刊1983(昭和58)年10月発行 本書を手に取つたきつかけは今となつては思ひ出せません。しかしこれが滅法面白いのであります。若槻禮次郎(1866‐1949)といへば、日本の第25代・28代内閣総理大臣として歴史に名を残してゐるので、授業中に居眠りをしてゐた人でも頭の片隅に記憶があるでせう。但し何かを成し遂げた人とか、歴史の変る中で存在...

  • 公害摘発最前線

    公害摘発最前線田尻宗昭【著】岩波書店(岩波新書)刊1980(昭和55)年2月発行 学生の頃に、訳あつて公害関連の書物を片端から読んでゐた時期がありました。これもその一冊。著者の田尻宗昭氏が亡くなつてから早30年といふ事で、再び手に取るものであります。 田尻氏は海上保安庁の職員といふ公務員ながら、公害と闘つたスゴイ人です。人呼んで「公害Gメン」。しかも責任ある地位に出世しても部下に任せて自分は一段上から指揮を...

  • 釣りバカたち

    釣りバカたち〈全3巻〉矢口高雄【著】双葉社(アクションコミックスデラックス)刊1985(昭和60)年1月発行 先月20日に亡くなつた漫画家、矢口高雄氏を偲び、ここに『釣りバカたち』を登場させるものであります。代表作の『釣りキチ三平』は我家の本棚で発見できませんでしたので。昔買つた記憶はあるのですがねえ。まあいいや。 『釣りバカたち』は、「漫画アクション」にて連載された、一話完結のオムニバス風釣り漫画であり...

  • 新聞記者の現場

    新聞記者の現場黒田清【著】講談社(講談社現代新書)刊1985(昭和60)年5月発行 元読売新聞記者の黒田清氏が亡くなつてから20年。まだ69歳でした。生前、この人の著書を積極的に読んでゐた訳ではなくて、寧ろ本多勝一氏のある文章で披露されたエピソオドが一番印象に残つてゐます。即ち。 とある洋食レストランで黒田氏と会食中の本多氏。話に夢中になり、手元のフォークやナイフを操る手がお留守になつたさうです。すると...

  • ボヴァリー夫人

    ボヴァリー夫人ギュスターヴ・フローベール【著】伊吹武彦【訳】岩波書店(岩波文庫)刊1960(昭和35)年6月25日(上巻)、11月25日(下巻)発行 若い頃に読んだ所謂名作と呼ばれる作品を、時を置いて再び読む事が屡々あります。読後感はたいてい初読時と違つてゐて、我ながら読解力の無さにゲンナリするのでした。しかしこの度再読した『ボヴァリー夫人』に関しては、あまり変化がない。エンマの性癖や行動に理解を示せるやうに...

  • 闇の女たち

    闇の女たち 消えゆく日本人街娼の記録松沢呉一【著】新潮社(新潮文庫)刊2016(平成28)年5月発行 松沢呉一氏の「闇の女」ルポルタージュであります。力作。新潮文庫書下ろしとなつてゐますが、実際の取材は大体西暦2000年前後のものが多い。当時すぐに本にすれば、身元がばれて迷惑をかける人が出るかもしれぬ、といふ配慮があつたので、雑誌媒体やメルマガで断片的に発表しただけのやうです。それが新潮社から声がかり、文庫...

  • 仇討ち

    仇討ち池波正太郎【著】角川書店(角川文庫)刊1977(昭和52)年10月発行 池波正太郎(1923-1990)も没後三十年。時蠅は矢を好む。短篇集『仇討ち』の登場であります。テエマはそのものずばり「仇討ち」。 日本人は曽我兄弟の仇討(1193)や鍵屋辻の決闘(1634)、さらには忠臣蔵・赤穂事件(1703)など、仇討物語が好きであると言はれてゐますが、本当の所は分かりません。Wikipediaなら、「要出典」「誰によって?」などと書か...

  • 鉄道をつくる人たち

    鉄道をつくる人たち 安全と進化を支える製造・建設現場を訪ねる川辺謙一【著】交通新聞社(交通新聞社新書)刊2013(平成25)年2月発行 鉄道の安全を支へる「縁の下の力持ち」的な仕事をする人たちの存在も、最近漸く知られてきた感があります。その中でも本書は、普段意識される事もないやうな分野、即ちややメイニアックなジャンルに特化して取材をしたルポルタージュであります。 著者は理系出身の鉄道「技術」ライターで、...

  • ドン松五郎の生活

    ドン松五郎の生活井上ひさし【著】新潮社(新潮文庫)刊1978(昭和53)年5月発行 井上ひさし没後10年の節目に、この一冊を選んでみました。人間性について色色物議を醸す人ですが、まあここではスルー致します。傑作は常に聖人から生れる訳ではないし、寧ろその逆の場合も多いですから。敢へて例を挙げませんが。 ドン松五郎は飼主から捨てられ、母犬とも生き別れとなつてしまひます。運よく小説家松沢先生の娘、和子くんに拾は...

  • アントニーとクレオパトラ

    アントニーとクレオパトラウィリアム・シェイクスピア【著】福田恆存【訳】新潮社(新潮文庫)刊1972(昭和47)年3月発行2005(平成17)年3月改版 『ジュリアス・シーザー』にてブルータスらに暗殺されたシーザー。彼の死後、ローマの政権は、後継者となつたオクテイヴィアス、マーク・アントニー、レピダスの三頭政治が敷かれてゐました。しかしアントニーはエジプトの女王・クレオパトラの色香に迷ひ、ローマを蔑ろにしてエジプ...

  • ぼくはくたばりたくない

    ぼくはくたばりたくない(ボリス・ヴィアン全集9)ボリス・ヴィアン【著】伊東守男/村上香住子【訳】早川書房刊1981(昭和56)年10月発行 「ぼくはくたばりたくない(Je voudrais pas crever)」は、ボリス・ヴィアンの詩とエッセイのアンソロジイであります。 前半が「詩・シャンソン篇」。ヴィアンは詩も小説同様、不条理感が漂ふのであります。表題の「ぼくはくたばりたくない」では、生への執着を見せてゐますが、ヴィアン...

  • 兵士に聞け

    兵士に聞け杉山隆男【著】小学館(小学館文庫)刊2007(平成19年)7月発行 笑福亭鶴瓶さんが吉田茂を演じたドラマに、本書『兵士に聞け』からの引用がありました。即ち、 ......君たちは自衛隊在職中決して国民から感謝されたり歓迎されることなく自衛隊を終るかもしれない。きっと非難とか誹謗ばかりの一生かもしれない。ご苦労なことだと思う。しかし、自衛隊が国民から歓迎され、ちやほやされる事態とは外国から攻撃されて国...

  • 読書の方法

    読書の方法 未知を読む外山滋比古【著】講談社(講談社現代新書)刊1981(昭和56)年11月発行 連日暑いのであります。梅雨の間は毎日飽きずに雨が降り、ブリジット・フォンテーヌの歌詞(雨は、降るより外に何も出来ない)を連想しました。いざ、梅雨が明けると今度は猛暑日以外は許さんとばかり我々を苦しめるのでした。猛暑は頭の働きも鈍らせるやうで、何もする気が起きぬ。そんなぼうつとした精神状態でゐるところに、外山滋...

  • 8マン

    8マン(エイトマン) 平井和正【原作】桑田次郎【著】秋田書店(サンデーコミックス)刊1968(昭和43)年1月発行(第1巻) 漫画家の桑田二郎氏の訃報に接し、しよんぼりしてゐるところであります。「桑田次郎」の名で親しんで参りましたが、いつの間にか「桑田二郎」に字を変へてゐたのですね。いかなる理由か知りませんが。 で、代表作と目される「8マン」(1963-65連載)であります。無論「エイトマン」と読みますが、正式...

  • 原節子 わたしを語る

    原節子 わたしを語る貴田庄【著】朝日新聞出版(朝日文庫)刊2013(平成25)年5月発行 生誕100年を迎へた原節子であります。「伝説の女優」だの「永遠の処女」だのといふ形容が付いて廻る人ですが、まあオーヴァーな形容ですね。現在でも主要出演作品の多くは簡単に観られる訳ですから、伝説といふ程ではありますまい。 確かに仕事とプライヴェイトは厳然と分ける人でしたので、他の同時代の女優と比べても、私生活はあまり語ら...

  • マネーチェンジャーズ

    マネーチェンジャーズアーサー・ヘイリー【著】永井淳【訳】新潮社(新潮文庫)刊1978(昭和53)年9月発行 (今回はネタバレ大いに含まれてゐます) 生誕100年を迎へたアーサー・ヘイリー(1920-2004)の『マネーチャンジャーズ』であります。銀行業界といふ一見地味で堅実な商売を取り上げてゐますが、これがまたダイナミックなストオリイなのですよ。 米国の主要銀行の一つ、ファースト・マーカンタイル・アメリカン(FMA)銀...

  • 不実な美女か貞淑な醜女か

    不実な美女か貞淑な醜女か米原万里【著】新潮社(新潮文庫)刊1998(平成10)年1月発行 米原万里さんが健在だつたならば、今年で70歳を迎へるところでした。処女作の『不実な美女か 貞淑な醜女か』の登場であります。 初めてこの書名を目にした時は、何の事であらうかと思ひましたが、著者がロシヤ語の同時通訳者と知り、「ああ、なるほど」と得心したのであります。元元通訳翻訳を女性に例へる格言(?)のやうなものは昔からあ...

  • 全国鉄道事情大研究 東北・西部篇

    全国鉄道事情大研究 東北・西部篇川島令三【著】草思社刊2018(平成30)年10月発行 『全国鉄道事情大研究』シリーズ、遂に完結であります(もう二年近く前ですが)。鉄道アナリスト・川島令三氏のライフワークともいふべき仕事で、1992年の第一弾「神戸篇」から数えて全30巻、26年を費やしております。「鉄道事情」と言つても刻々変化するもので、あくまでも取材当時の「現在」を切り取つてゐ為、旅人が参考にするやうなガイド的...

  • 捜査一課長

    捜査一課長清水一行...

  • 巣鴨プリズン

    巣鴨プリズン 教誨師花山信勝と死刑戦犯の記録小林弘忠【著】中央公論新社(中公文庫)刊2007(平成19)年7月発行 第二次大戦後、連合国軍によつて戦犯とされた人々が収容された「巣鴨プリズン」。この施設で多くの死刑囚を看取つた、初代戦犯教誨師の花山信勝の視点から、戦犯たちの心の軌跡を辿る一冊であります。 1945(昭和20)年、GHQに接収された巣鴨拘置所が巣鴨プリズンと改称され、東条英機・広田弘毅らA...

  • 傷だらけの競走車

    傷だらけの競走車(ラリーカー)梶山季之【著】角川書店(角川文庫)刊1978(昭和53)年7月発行 梶山季之(1930-1975)も生誕90年。45歳で香港で客死してから45年。即ち没後の年数が年齢に追ひついた訳です。時蠅は矢を好む。わたくしが本好きになつた頃には、既に梶山氏は亡き人となつてゐて、もつと早く知つてゐればと切歯扼腕したものです。幸ひ死後にも新刊・再刊が相次ぎ、その著書の殆どを入手したものであり...

  • 恋子の毎日

    恋子の毎日ジョージ秋山【著】双葉社(アクションコミックス)刊1985(昭和60)年8月発行(第1巻) ジョージ秋山氏も逝く。77歳は今時まだまだ元気な年齢といふ印象だけに、惜しい事です。追悼の意を込め、急遽「源氏川苦心の快楽書肆」を更新するものであります。 ジョージ秋山作品の中では、わたくしは「銭ゲバ」に衝撃を受けたものですが、これは既に拙ブログにて登場済みですので、ややマイナアな「恋子の毎日」を...

  • ボーイングVSエアバス 熾烈な開発競争

    ボーイングVSエアバス 熾烈な開発競争 100年で旅客機はなぜこんなに進化したのか谷川一巳【著】交通新聞社(交通新聞社新書)刊2016(平成28)年12月発行 交通新聞といふ業界紙がありますが、実態は鉄道の記事ばかりで、仮に「鉄道新聞」と名乗つても何ら違和感はないのでした。従つて交通新聞社新書も大部分が鉄道関連で、たまに航空業界の本が紛れ込む、といつた状態。本書はその一冊であります。中中面白い。 ラ...

  • 米内光政

    米内光政阿川弘之【著】新潮社(新潮文庫)刊1982(昭和57)年5月発行 今年は米内光政(1880-1948)生誕140年といふことです。この人は「第37代内閣総理大臣」といふよりも、「最後の海軍大臣」としての方が存在感があつたやうです。 本書はその米内光政を、やはり海軍出身の阿川弘之が執筆した評伝小説であります。 元来米内光政といふ人は、兵学校でも平凡な成績で、さう優秀とも目されず目立たぬ経歴だつたやうです。...

  • 元アイドル!

    元アイドル!吉田豪【著】新潮社(新潮文庫)刊2008(平成20)年6月発行 幼時より現在に至るまで、余りアイドル(といふか芸能界)には関心は無いのですが、吉田豪さんといふことで手に取つてみました。杉浦幸さんに始まり花島優子さんまで、計16名の「元アイドル」のインタヴューが収録されてゐます。取材当時(2003-04年)は、まだギリギリ現役アイドルと呼べる人も含まれてゐましたが、今となつては、全員が堂堂たる...

  • 帝国の建設者

    帝国の建設者ボリス・ヴィアン【著】利光哲夫/伊東守男【訳】早川書房刊 生誕100年を迎へたボリス・ヴィアン(1920-1959)の戯曲集であります。ヴィアンの戯曲としては、かつて『屠殺屋入門』といふ痛快な作品を登場させた事があります。いやあ、あれは面白かつた。ヴィアンの生前に上演が実現した唯一のものでした。 従つてこの『帝国の建設者』に収録された作品群は、全て死後の上演といふ事になります。 表題作の「帝国...

  • 新幹線開発物語

    新幹線開発物語角本良平【著】中央公論新社(中公文庫)刊1964(昭和39)年4月発行2001(平成13)年12月改版 この本は1964年、即ち東海道新幹線が開通したその年に、「中公新書」の一冊として出版された『東海道新幹線』が元になつてゐます。2001年にその後の経過などを追加した上で、中公文庫として復刊しました。 新幹線に関する書物はそれこそ星の数ほど出てをりますが、その発表時期は割かし近年に集...

  • ある町の高い煙突

    ある町の高い煙突新田次郎【著】文藝春秋(文春文庫)刊1978(昭和53)年11月発行2018(平成30)年3月改版 新田次郎が他界して早くも40年。中高生の頃、わたくしは吉村昭・城山三郎・有吉佐和子そしてこの新田次郎を秘かに「ストオリイテラア四天王」と呼んでゐました。単にわたくしの好みです。 で、何故『ある町の高い煙突』か。随分前に(30年位前か)、公害関連の書物を色色漁つてゐまして、その中に紛れ...

  • さいごの色街 飛田

    さいごの色街 飛田井上理津子【著】新潮社(新潮文庫)刊2015(平成27)年2月発行 お久しぶりでございます。自宅待機もしくは強制休業の皆さまいかがお過ごしでせうか。自粛が飽きて外へ出ないやうに。今も岡江久美子さんのまさかの訃報に接し、愕然としたところです。どうも自宅で過す事が苦手な人が多いやうですね。わたくしは家で一人でやりたい事は無尽蔵にございます。ゆゑに何日でも自宅に籠る事は全く苦にならない...

  • 桜の園・三人姉妹

    桜の園・三人姉妹アントン・チェーホフ【著】神西清【訳】新潮社(新潮文庫)刊1967(昭和42)年9月発行2011(平成23)年11月改版アントン・チェーホフ生誕160周年であります。。ちよつと中途半端ですか。ここでは『桜の園』と『三人姉妹』をカップリングした一冊を取り上げませう。まづ『桜の園』。四幕ものですが、チェーホフは「喜劇」としてゐます。本当かね。桜の園の女地主ラネーフスカヤは、この地を離れ...

  • 人を殺すとはどういうことか

    人を殺すとはどういうことか 長期LB級刑務所・殺人犯の告白美達大和【著】新潮社(新潮文庫)刊2011(平成23)年11月発行殺人犯に取材したノンフィクションかと思つたら、殺人犯本人が書いた一冊でありました。美達大和(仮名らしい)といふ人で、二人を殺害した罪で無期懲役の刑を受けてゐます。サブタイトルにある「長期LB級刑務所」とは、刑期が10年以上残つてゐる者が服役する刑務所ださうです。Lはロングの頭...

  • 青い山脈

    青い山脈石坂洋次郎【著】新潮社(新潮文庫)刊1952(昭和27)年11月発行昨年五月に亡くなつた杉葉子さん。杉葉子といへば、各人の印象は様様でせうが、「青い山脈」の寺沢新子を連想する人が多いのではないでせうか。一周忌を前に映画も観ましたが、今年は原作者石坂洋次郎の生誕120周年らしいので、ここで原作を取りあげるものです。それで分かつたのは、現在『青い山脈』が案外入手困難といふ事であります。新潮文庫...

  • ふむふむ おしえて、お仕事!

    ふむふむ おしえて、お仕事!三浦しをん【著】新潮社(新潮文庫)刊2015(平成27)年4月発行女性人気作家が、様々な分野で活躍する女性たちを取材・インタヴューした一冊であります。靴職人・染織家・活版技師・女流義太夫三味線・漫画アシスタント・フラワーデザイナー.....15の職業に携はる16名の女性が登場します。三浦しをんさんは、自分の興味のある仕事の内幕を聞き、「ふむふむ」と相槌を打ち納得する事が目的...

  • 幸福な死

    幸福な死アルベール・カミュ【著】高畠正明【訳】新潮社(新潮文庫)刊1976(昭和51)年6月発行最近は人と会ふと、挨拶代りにコロナウイルス騒動の話題になるので、参るのです。殆どの人が影響を受けてゐるだらうと思はれます。わたくしの居住する市では今まで感染者はゐなかつたのに、この度つひに発生してしまひました。例の蒲郡の迷惑おやぢの所為であります。そして相変らず店頭にはマスクはない。ドラッグストア各店で...

  • 日本の戦争力

    日本の戦争力小川和久【著】坂本衛【聞き手】新潮社(新潮文庫)刊2009(平成21)年4月発行コロナウイルス騒動で、北朝鮮が「飛翔体」を打ち上げてもニュースの片隅に追ひやられてゐる感じです。今回の色色自粛の措置は、致し方ないとはいへ、わたくしの仕事にも大いに影響が出てをりまして、この状況が長く続けば、首を吊る同業者も多いのではと、深刻になつてきてゐます。もつとも連日報道で騒ぐお陰で、自分たちが目立た...

  • 美味礼讃

    美味礼讃海老沢泰久【著】文藝春秋(文春文庫)刊1994(平成6)年5月発行59歳の若さで亡くなつた海老沢泰久氏。今年は生誕70年といふことです。この人の文章はいいんですよ。何を選んでも良いが、広岡達朗や堀内恒夫などは既に取り上げてゐるので、これまた傑作の誉れ高い『美味礼讃』の登場であります。『美味礼讃』といへば、ブリア・サラヴァンの書物を思ひ浮かべますが、本書は「辻調理師専門学校」の創始者である辻...

  • シシド 小説・日活撮影所

    シシド 小説・日活撮影所宍戸錠【著】角川書店(角川文庫)刊2012(平成24)年11月発行先達て予告した通り、エースのジョーを追悼して、『シシド 小説・日活撮影所』の登場であります。そもそも、如何なる経緯でかかる書物を著したのか存じませんが、これはまことに愉快で痛快な一冊であります。小説と銘打つからにはフィクションなのでせうが、間違ひなく宍戸錠さん自身の体験が色濃く反映されてゐるに相違ありません。...

  • 警察庁 国際刑事課

    警察庁 国際刑事課樫原一郎【著】勁文社(ケイブンシャ文庫)刊1987(昭和62)年3月発行樫原一郎(1919-2004)氏の生誕100年といふことで、こんな本を。と思つてゐたら年越ししてゐました。しかも既に2月。間抜けであります。抒情豊かな『梨の花』とうつて変つて、まことに柔らかい読物でございます。そもそも何故本書が我家にあるのか。その昔、父が書店の文庫本売場で、「梶山季之」の本をがばつとまとめて...

  • 小林旭 マイトガイスーパーグラフィティ

    小林旭 マイトガイスーパーグラフィティ日活株式会社【編】白夜書房刊2004(平成16)年10月発行青山京子さんも逝く。しかし報道の見出しでは「元女優 小林みどりさん」の名前が前面に出てゐます。記事の最後に「青山京子」の名前で活躍した、などと記されてゐて、わたくしなんぞは違和感を抱くのであります。多分記事を書いた記者は、女優・青山京子を知らぬ世代なのでせう。あ、本来わたくしもその世代ですが。美空ひば...

  • 梨の花

    梨の花中野重治【著】岩波書店(岩波文庫)刊1985(昭和60)年4月発行中野重治(1902-1979)の没後40年を記して......と思つてゐたら、年越しをしてしまひました。詩集もいいけれど、ここではわたくしの好きな『梨の花』を登場させませす。中野重治が生まれ育つた福井県の農村を舞台にした、自身をモデルにした「高田良平」の成長物語であります。良平の幼少期から少年期、そして青年の入口あたりまでが描かれて...

  • いのちの食べかた

    いのちの食べかた森達也【著】KADOKAWA(角川文庫)刊2014(平成26)年6月発行もう十年ほど前でせうか、駅で聞いた、大学生くらゐの若い女性ふたりの会話。仮に夫々A、Bとしませうか。どうやら共通の知人宅へ行く為に駅で落ち合つたやうですが...... A:何か買つて来た? B:うん、これ......(と言つて袋の中を見せる) A:ああ、食べ物ばかりだね。 B:まあ、元は生き物なんだけど。 A:さうだね、人間に食べられる...

  • のらくろ上等兵

    のらくろ上等兵田河水泡【著】講談社刊1969(昭和44)年11月発行去る12月12日は、田河水泡が亡くなつて20年目の命日でした。ここで代表作「のらくろ」の登場であります。のらくろは昭和戦前に少年誌にて連載が始まるや、爆発的人気を博したさうです。当初は短期連載の予定が、想定外の人気のため長期連載となり、シリーズはその後いろいろと広がりを見せました。『のらくろ上等兵』は、その最初の一冊。復刻版といふ...

  • 全国鉄道事情大研究 東北・東部篇

    全国鉄道事情大研究 東北・東部篇川島令三【著】草思社刊2017(平成29)年10月発行このシリーズも既に完結してゐますが、最後まで残つたのが東北地方の鉄道。これはやはり、震災による被害が影響してゐるでせう。あまりに大きな被害の為、その実情や復旧計画、その見通しなど、全体像がつかめるまで川島氏も様子見をしてゐたのでは。あの惨状を目にしては、まともな取材もできなかつたといふ事情もあるでせう。著者の愛す...

  • 老人と海

    老人と海アーネスト・ヘミングウェイ【著】福田恆存【訳】新潮社(新潮文庫)刊1966(昭和41)年6月発行1980(昭和55)年5月改版2003(平成15)年3月改版わたくしが初めて自力で読んだ洋書が、今年生誕120年を迎へたヘミングウェイでした。リライト版ではオスカー・ワイルドだつたけど。Men Without Womenといふ作品で、「女のいない男たち」とか「男だけの世界」などと訳されてゐるやうです。会話主体の...

  • GHQと戦った女 沢田美喜

    GHQと戦った女 沢田美喜青木冨貴子【著】新潮社(新潮文庫)刊2018(平成30)年2月発行沢田美喜及びエリザベス・サンダース・ホームについては、通り一遍の知識しかありませんでしたので、一発『GHQと戦った女 沢田美喜』を読んでみました。日本人は敗戦後、米国の進駐軍兵士が街を跋扈し、狼藉に振る舞ふのを看過するしかありませんでした。そして米軍兵士と日本人女性との間に生まれた混血児が多く誕生したのであります...

  • 脅迫者によろしく

    脅迫者によろしく都筑道夫【著】新潮社(新潮文庫)刊1983(昭和58)年1月発行故・都筑道夫氏は今年で生誕90年。わたくしの好きな作家の一人でしたが、なぜか拙ブログではまだ取り上げてなかつたので、今回初登場させる訳であります。この人は短篇やショートショートにその実力を発揮する推理作家で、従つて本格派といふよりも、都会を舞台にした洒脱なミステリの印象が強いですな。今回の『脅迫者によろしく』も同様であ...

  • 可愛い子には鉄道の旅を

    可愛い子には鉄道の旅を 6歳からのおとな講座村山茂【著】交通新聞社(交通新聞社新書)刊2009(平成21)年6月発行著者によると、所謂「キレル」子供が増えてゐるのは、最近は比較的自分の思ひ通りにさせてもらえる境遇にあるからではないかと推測してゐます。それが大人になつて、人生の荒波に放り出されると、当然思ひ通りにならぬ事の方が多いのであります。それまでぬくぬくとした環境で育つてきた反動が大きいのでは...

  • 君はウルトラマン80を愛しているか

    君はウルトラマン80を愛しているか円谷プロダクション【監修】辰巳出版(タツミムック)刊2006(平成18)年2月発行俳優の中山仁さんが他界されたとのニュウスを知り、吃驚しました。この人も逝去後、ひと月ほど経つてからの発表であります。かなりの人気俳優だつたのに、各メディアにおける訃報の扱ひが小さいやうに感じます。かういふ芸能人は特に、晩年の注目度でその評価が定まつてしまふところがありますね。例へば樹...

  • 天皇はどこから来たか

    天皇はどこから来たか長部日出雄【著】新潮社(新潮文庫)刊2001(平成13)年5月発行天皇陛下の即位を祝ふパレイドが無事に終つたのであります。「祝賀御列の儀」と呼ぶさうですね。これを以て、5月より行はれてきた「即位の礼」の行事は、すべて終了といふことです。近年は皇室と国民の距離感が随分と縮まつたなあ、といふ感じがします。良い意味でも悪い意味でも。その点ではKK君も貢献してゐると申せませうか。いや余計...

  • これが週刊こどもニュースだ

    これが週刊こどもニュースだ池上彰【著】集英社(集英社文庫)刊2000(平成12)年9月発行「いい質問ですね」などの言葉とともに池上彰さんがブレイクした頃、池上さんを紹介する枕詞として「NHK週刊こどもニュースのお父さん役でお馴染みの」といふフレイズが多用されてゐました。しかしわたくしはその番組を知らなかつたので、何となく疎外感を抱いたものであります。で、後で知つてみると、「ああ観たかつた喃」と思ひま...

  • 電車をデザインする仕事

    電車をデザインする仕事 ななつ星、九州新幹線はこうして生まれた!水戸岡鋭治【著】新潮社(新潮文庫)刊2017(平成28)年11月発行「ななつ星in九州」に代表される水戸岡鋭治氏のデザインの数数。わたくしはかういふ、庶民に関係のないものには関心がありませんでした。むしろ背を向けてゐたといふか。それよりも沿線住民が便利になるやうなダイヤを組み、ごく普通の人が利用しやすい列車を走らせていただきたいと思ひ...

  • 最高殊勲夫人

    最高殊勲夫人源氏鶏太【著】角川書店(角川文庫)刊1980(昭和55)年発行映画「最高殊勲夫人」を観たので、その原作たる本書が登場です。源氏鶏太は流行作家でしたので、何かとその作品は映画化されたものです。特に『三等重役』は「社長シリーズ」の原点といはれてゐますので、東宝は源氏氏に感謝せねばなりません。今さら遅いけど。かういふものは、カヴァーの紹介文をそのまま引用すると都合が良い。 三原商事秘書室に勤...

  • 消費税 政と官との「十年戦争」

    消費税 政と官との「十年戦争」清水真人【著】新潮社(新潮文庫)刊2015(平成27)年11月発行いよいよ来月から、消費税が現行の8%から10%に引き上げられます。わたくしのやうな貧乏人にはつらいのであります。景気低迷を避けるために軽減税率とかいろいろ画策してゐるやうです。それにかけるカネも相当なもので(5兆円規模とも)、ならば税率はそのままでいいぢやんといふ声も聞こえて参ります。しかしいづれにせよ...

  • スペリングの面白さ

    スペリングの面白さ Spelling Made Fun松本亨【著】パイインターナショナル刊1971(昭和46)年5月発行英語教育界の巨人・松本亨氏の逝去から早くも40年であります。時蠅矢を好む。彼は生徒たちに英語を教へる過程で、綴字の間違ひが多い事に気付きました。スペリングですな。ところで、略して「スペル」と言ふ人がゐますね。わたくしの高校時代にも、矢鱈と「ここ、スペルが間違つてるよ」などと生徒に指摘する教師がゐ...

  • キスカ島 奇跡の撤退

    キスカ島 奇跡の撤退 木村昌福中将の生涯将口泰浩【著】新潮社(新潮文庫)刊2012(平成24)発行キスカ島撤退作戦については、映画『太平洋奇跡の作戦 キスカ』を観たくらゐで、特に知識を持ち合せてはゐませんでした。三船敏郎がかつこ良かつたねえ。数多い東宝戦争映画の中でも、かなり見応へのある作品でした。その三船敏郎が演じてゐたのが「大村少将」。そのモデルが、今回の一冊『キスカ島 奇跡の撤退』の主人公で...

  • 文車日記

    文車日記 私の古典散歩田辺聖子【著】新潮社(新潮文庫)刊1978(昭和53)年7月発行田辺聖子さんも逝つてしまひましたねえ......もう三か月以上も経つてしまひましたが。わたくしが読書の愉しみを知つた頃に活躍してゐた作家さん達が、一人またひとりと天に召されてゆきます。諸行無常であることだなあ。田辺さんと言へば恋愛小説のイメエヂがありますが、わたくしは余りその手は読みませんので、ここでは古典エッセイ『文...

  • 言ってはいけない中国の真実

    言ってはいけない中国の真実橘玲【著】新潮社(新潮文庫)刊2018(平成30)年4月発行橘玲氏による中国私論であります。本人の言によると、自分は専門家では無い為、中国専門の研究者やジャアナリストの成果に負ふところが大きいといふことです。まあこれは事実半分、謙遜半分でせうか。といふのも、橘氏は自らの足で何度も中国各地を旅し、その都度中国の変化に驚いてきた人であるからです。専門家と呼ばれる人たちの中でも...

  • 人狼

    人狼ボリス・ヴィアン【著】長島良三【訳】早香書房刊1984(昭和59)年4月発行ボリス・ヴィアン逝去から60年。今回は短篇集の登場であります。長島良三氏の「解題」によりますと、ヴィアンの短篇集には『蟻』『みせかけの時間』『人狼』の三冊があり、そのうち『みせかけの時間』は後に長篇『赤い草』の一部になつたので、残る『蟻』『人狼』から11篇をチョイスしたものだといふことです。「全集」なんだから全作収録し...

  • 命のまもりびと

    命のまもりびと 秋田の自殺を半減させた男中村智志【著】新潮社(新潮文庫)刊2017(平成29)年6月発行 本書の主人公は、サブタイトルにもありますやうに、秋田県の自殺者減少に尽力してゐる、佐藤久男氏。佐藤氏は、NPO法人「蜘蛛の糸」を立ち上げ、自らカウンセリング活動をしてゐます。犍陀多真ッ逆さま。何でも秋田県はかつては自殺率ワーストだつたといひます。中小企業の経営者が、倒産に追ひ込まれ困窮した結果、自...

  • 晩年

    晩年太宰治【著】新潮社(新潮文庫)刊1947(昭和22)年発行1968(昭和43)年改版2005(平成17)年改版今年は太宰治の生誕110周年であります。何だかつひこないだ、100周年だつたやうに感じますが、改めて時の流れは早い。時蠅矢を好む。で、今回は『晩年』の登場であります。第一作品集なのに、ジジ臭いタイトルをつけたものです。どうやらこの作品集を上梓した後に、自殺しやうと目論んでゐたフシがあり...

  • 拉致と決断

    拉致と決断蓮池薫【著】新潮社(新潮文庫)刊2015(平成27)年4月発行最近の北朝鮮の動きをみると、結局米中会談などは何の役にも立たなかつたやうです。それでもトランプくんは北に甘い。弾道ミサイルを放つても、問題視しないだと。この大統領は、案外本気で「ノーベル平和賞」を狙つてゐるのかも知れませんな。これでは、拉致問題解決などはとても覚束ないと存じます。なにがしといふ日本の首相は、自分の任期中に拉致問...

  • 二十歳の原点

    二十歳の原点高野悦子【著】新潮社(新潮文庫)刊1979(昭和54)年発行高野悦子さんが鉄道自殺を遂げてから50年。20歳で亡くなつてゐるので、即ち生誕70年といふことにないます。生きてゐれば現在70歳になるのか.........念のために申し上げますと、映画活動家の高野悦子さんとは同姓同名の別人であります。これは中学生の時に初めて読んだのですが、その時は割かし共感した記憶がございます。わたくしも当時は、姿...

  • 東西「駅そば」探訪

    東西「駅そば」探訪 和製ファストフードに見る日本の食文化鈴木弘毅【著】交通新聞社(交通新聞社新書)刊2013(平成25)年12月発行のつけからかういふ事を述べるのも気が引けますが、わたくしは「駅そば」なるものを殆ど食しません。ある程度の距離を乗るなら駅弁を買ひますし、ちよつとした移動ならホームの「きしめん」を求めます(まあ東海地方限定ですが)。ではお前はそばは嫌ひなのかと問はれると、いやさうでもな...

  • 眠れる美女

    眠れる美女川端康成【著】新潮社(新潮文庫)刊1967(昭和42)年11月発行川端康成、生誕120年であります。ここでは戦後の代表作たる『眠れる美女』が登場します。『古都』もあるぞといふ意見もございませうが、それに関しては既に拙ブログに登場済でありますゆゑ。江口老人は木賀老人なる人物から、「眠れる美女」のゐる宿を紹介されます。その宿は、布団の中で少女が全裸で眠る部屋がウリであります。少女は特殊な薬を飲...

  • ザ・シェフ

    ザ・シェフ 剣名舞【原作】加藤唯史【画】日本文芸社(ニチブンコミックス)刊1986(昭和61)年8月発行先達てその死去が報ぜられた、漫画家の加藤唯史氏。しかし実際に亡くなつたのは、1年7か月も前の2017年10月だつたといひます。遺族の意向らしいですね。代表作は何か。わたくしの世代では『ロン先生の虫眼鏡』の印象も深いのですが、一般的にはやはり『ザ・シェフ』ですかな。この漫画は一応料理漫画なのですが...

  • 第二阿房列車

    第二阿房列車内田百閒【著】旺文社(旺文社文庫)刊1979(昭和54)年10月発行内田百閒は今年生誕130年。記念の年に、『第二阿房列車』の登場であります。阿房列車三部作の真ん中に当る作品なのです。阿房列車にはパタンがあつて、まづ旅の目的は無い。無目的で、ただ汽車に乗りたいだけであります。そして一等車が連結されてゐれば必ず一等車に乗り、連結されてなければ三等車に乗る。中途半端な二等車には乗りたくない...

  • ウドウロク

    ウドウロク有働由美子【著】新潮社(新潮社)刊2018(平成30)年5月発行ウドウロク。「有働録」を仮名にしたのかと思ひましたが、実は「黒有働」を逆から読んだものらしい。NHK時代に、周囲からさう言はれてゐたさうです。そんなにこの人は黒いのか。まあ読んでみませう。「1 いろんな人から、いろんなことを言われました」のつけから物議を醸した「わき汗」の話題であります。こんなに苦情が寄せられてゐたとは。そんな...

  • 習近平

    習近平 なぜ暴走するのか矢板明夫【著】文藝春秋(文春文庫)刊2014(平成26)年9月発行またもや更新が滞りました。本は読んでゐるのですが。PCを開ける時間が中中とれぬのです。スマホでやればいいぢやんと言はれさうですが、どうもあれは落ち着かない。まあよろしい。『習近平 なぜ暴走するのか』の話。文字通り中国の最高指導者の習近平国家主席の半生を描いた一冊。同時に、中国の知られざる政治状況も解説してをりま...

  • 組長の娘

    組長の娘 ヤクザの家に生まれて廣末登【著】新潮社(新潮文庫)刊2016(平成28)11月発行「平成最後の~」といふフレイズが各所で言はれます。わたくしは少々食傷気味なのであります。しかし、以前ゐた会社の社長は、「どんなに小さなキッカケでも、それが自分を変へるチャンスである」と語りました。それなら、令和時代の開幕を機に、新しい事に挑戦しやうとかするのはアリでせう。過去に囚はれずに新しい自分を作れるか...

  • 体の中を風が吹く

    体の中を風が吹く佐多稲子【著】新潮社(新潮文庫)刊1968(昭和43)年3月発行実際には体の中に風は吹かないと存じますが、主人公村松章子の中には寒風が吹きすさんでゐるのでせう。村松章子は今ふうに言へばバツイチで、別れた夫は立田数馬といひ、仕事もせず、ギタアばかり弾いてゐる、まあ大人になりきれぬ夫でした。しかも浮気性で章子は愛想を尽かしたといふ訳。子供は長女マリ子(小学生)、長男晃一(四歳)の二人で...

  • 全国鉄道事情大研究 北海道篇

    全国鉄道事情大研究 北海道篇川島令三【著】草思社刊2017(平成29)年4月刊おお。うつかりしてゐました。前前作『中国篇②』から前作『青函篇』まで七年のブランクが空きましたので、どうせ次作もかなり先になるだらうと勝手に思つてゐましたが、もうすでに『北海道篇』『東北東部篇』『東北西部篇』と立て続けに出てゐたのですねえ。完全に油断してゐました。といふことで、早速本書を読む。北海道の鉄道は札幌付近を除い...

  • 昭和最後の日

    昭和最後の日 テレビ報道は何を伝えたか日本テレビ報道局 天皇取材班【著】新潮社(新潮文庫)刊2015(平成27)年8月発行平成最後の日が迫る中、『昭和最後の日』を取り上げませう。平成⇒令和への変更に関しては、天皇の生前退位といふことで、歓喜一辺倒であります。今後もこれでいいのではないでせうか。死ぬまで象徴を勤めるのは、一種の残酷物語であります。どうせ死期が近くなると、皇太子が公務を代行するのは常で...

  • アンダンの騒乱

    アンダンの騒乱ボリス・ヴィアン【著】伊東守男【訳】早川書房刊1979(昭和54)年5月発行『アンダンの騒乱』といふ作品はボリス・ヴィアンの処女小説であります。1947年に執筆されてをりますが、発表は死後の1966年となってゐます。姉妹編たる『ヴェルコカンとプランクトン』は早々に世に問ふてゐるので、何らかの理由で発表を見合はせたのでせう。解説の伊東守男氏は、アルフレッド・ジャリの影響が濃く出過ぎてゐ...

  • ワシントンハイツ

    ワシントンハイツ GHQが東京に刻んだ戦後秋尾沙戸子【著】新潮社(新潮文庫)刊2011(平成23)年8月発行日本は戦後から半世紀にわたつて、アメリカ合衆国に憧れを抱いてゐたと申せませう。無論「俺は違ふぞ」といふ人もゐるでせうが、まあ多数の人はさうであつて、米国を見本にし、日本もあんな素晴らしい国にするのだ、と先達は頑張つたのであります。東京の人にとつて、この『ワシントンハイツ』も米国への憧れを増幅...

  • 鉄道計画は変わる。

    鉄道計画は変わる。 路線の「変転」が時代を語る草町義和【著】交通新聞社(交通新聞社新書)刊2014(平成26)年2月発行書名を見て、「鉄道計画は変わる? 当り前ぢやん」と思つた人、わたくしと一緒であります。お前と一緒にするなと言はれさうですが。まあ鉄道計画の変遷を見ながら、その背景となる社会状況、我田引鉄、地元の発展もしくは衰退などにも言及する一冊なのでせう。第一章の「東京~大宮間鉄道計画の変転」...

  • 事件

    事件大岡昇平【著】新潮社(新潮文庫)刊2014(平成26)年4月発行朝日新聞に連載中は、『若草物語』といふタイトルだつたさうです。当初は青春小説の心算だつたらしい(ただし若者の犯罪を通して青春の無軌道さを描く心算だつた)。完成作品とは似ても似つかぬタイトルですな。それが執筆を続けるうちに、裁判小説となり、表題も『事件』と改題されました。19歳の若者・上田宏くんは、神奈川県の田舎町に住む好青年。その...

  • 筑紫哲也のこの「くに」のゆくえ

    筑紫哲也のこの「くに」のゆくえ筑紫哲也【著】日本経済新聞社刊1995(平成7)年5月発行ああああ、忙しい。否忙しいのではなく、段取りが悪く、時間の使ひ方が下手糞なのでせう。お陰で「源氏川苦心の快楽書肆」の更新がまつたく出来なかつたのであります。もつとも読者がほとんどゐないので、誰にも迷惑をかけてゐないといふ自負はあります。えへん! 下らぬ話はどうでもいい。『この「くに」のゆくえ』の話であります。順...

  • 柳生十兵衛

    柳生十兵衛大塚雅春【著】春陽堂書店(春陽文庫)刊1971(昭和46)年12月発行わたくし、剣豪では柳生十兵衛が好きなのです。これは大好きな役者である近衛十四郎が当り役だつたのも関係あります。『柳生一族の陰謀』での千葉真一さんも良かつた。ちなみにこの作品はテレビドラマ化もされ、それには上川隆也さんが十兵衛を演じてをり、意外に(といふと失礼ですが)素晴らしい演技でした。さて本書『柳生十兵衛』も、十兵衛...

  • 苦海浄土 わが水俣病

    苦海浄土 わが水俣病石牟礼道子【著】講談社(講談社文庫)刊2004(平成16)年7月発行十日付の新聞で、石牟礼道子さんが亡くなつて一年、との記事が載りました。さうか、もう一年かと思ひ、代表作たる『苦海浄土』の登場となりました。水俣市は代々続く漁業の町。その町で魚が獲れなくなり、人も不思議な奇病にかかる。水俣病であります。いはゆる公害病で、原因も特定できず(後に有機水銀が原因とされる)、治療法も無い...

  • 〈図解〉超新説 全国未完成鉄道路線

    〈図説〉超新説 全国未完成鉄道路線 ますます複雑化する鉄道計画の真実川島令三【著】講談社(講談社+α文庫)刊2010(平成22)年2月発行本書は『〈図解〉新説 全国未完成鉄道路線』の加筆改題であります。買つてみてから気付きましたが、その本は持つてゐました。川島氏の本は似たやうなタイトルが多い上、文庫化に際して改題されることも多多あるので、購入の際には注意が必要であります。さて、その改題された『超新...

  • 目撃 ある愛のはじまり

    目撃 ある愛のはじまり夏樹静子【著】光文社(光文社文庫)刊2007(平成19)年6月発行こんにちは。昨年12月に、故夏樹静子さんが生誕80年を迎へました。例によつて年越しの紹介でございます。以下は、角川文庫版カヴァーの紹介文であります。 剣道の早朝げいこの帰り道の公園で、少年恭太は、崖から落ちるところを中年の男に助けられた。だが、男はその朝発生した金融業者j殺しの犯人だった。同時刻、夫の出張中に愛...

  • 一〇〇年前の女の子

    一〇〇年前の女の子曳舟由美【著】文藝春秋(文春文庫)刊2016(平成28)年7月発行「一〇〇年前の女の子」とは、栃木県足利郡筑波村高松(現在は足利市に編入されてゐます)に生まれた寺崎テイさんのこと。著者・船曳由美氏の実母ださうです。本書は、このテイさんを主人公にした物語。なんだ、身内のエッセイか、と侮つてはいけません。高松とは字名ですが、地元では「高松村」と呼称してゐたやうです。栃木県ですが南端に...

  • 論文の書き方

    論文の書き方清水幾太郎【著】岩波書店(岩波新書)刊1959(昭和34)年3月発行昨年没後30年を迎へた清水幾太郎氏。例によつて愚図愚図してゐるうちに、年越しをしました。『論文の書き方』は、清水氏の数多い著書の中でも、よく読まれ、かつ現在もロングセラアになってゐます。新書といふ手軽に読める形態も拍車をかけました。いづれにせよ、昔も今も論文作成に四苦八苦してゐる人が多いといふことですな。「Ⅰ短文から始...

  • 日本の観光 きのう・いま・あす

    日本の観光 きのう・いま・あす 現場からみた観光論須田寛【著】交通新聞社(交通新聞社新書)刊2017(平成29)年2月発行須田寛氏の著書は拙ブログにたびたび登場しますが、改めて述べると、JR東海の初代社長で、会長を経て現在は相談役。国鉄時代は「ディスカヴァー・ジャパン」のキャンペインを成功させ、優先席(当時はシルバーシートと呼称)を導入し、初のプリカ「オレンジカード」を開発、JRになつてからは、「...

  • 日本への直言

    日本への直言土光敏夫【著】東京新聞出版局刊1984(昭和59)年9月発行土光敏夫氏も、昨年没後30年を迎へたのであります。勿論昨年用意してゐたのですが、『近代文学をどう読むか』の項でも述べた通り、ずぼらの所為で年をまたいでしまひました。まあ良い。ところで本書はわたくしが就職活動をしてゐた頃、中日新聞社のセミナアに参加した時に貰つたものであります。貰つたと言つても参加費を徴収してゐたので、本代もそれ...

  • 北の保線

    北の保線 線路を守れ、氷点下40度のしばれに挑む太田幸夫【著】交通新聞社(交通新聞社新書)刊2011(平成23)8月発行鉄道の保線については、かつて『新幹線 保線ものがたり』といふ本を取り上げましたが、本書は新幹線のやうな高速鉄道ではないけれど、雪国の鉄道路線の保線作業を中心に解説したものです。副題に「氷点下40度のしばれに挑む」とあります。そんな厳寒は経験がありません。かつて釧路市内で-27度の...

  • 近代文学をどう読むか

    近代文学をどう読むか中村光夫【著】新潮社(新潮選書)刊1980(昭和55)年3月発行えー新年おめでたうございます。全然めでたくないぞ、といふ人も中にはゐるかもしれません。何を隠さう、このわたくしがその一人。様々な事があつて、意気消沈してをります。まあ2007年頃から毎年さうなんですが。とりあへずインフルエンザ予防接種をして気分一新(そんなことでと言はれさう)して参りました。あ、挙母神社へ初詣にも行...

  • アンネの日記

    アンネの日記 増補新訂版アンネ・フランク【著】深町眞理子【訳】文藝春秋(文春文庫)刊2003(平成15)年3月発行おお。おお。更新が一か月以上滞つてしまひました。と言ひつつ別段誰も待つてゐないだらうので、本心は全然気にしてゐませんが。なぜこれほど間があいたのか。いろいろ理由はございますが、余りくだくだしく言ひ訳をすると、貴ノ岩に殴られさうなのでやめときます。ついでに、気分を変へる為、テンプレートも...

  • 未完の遺書

    未完の遺書佐野洋【著】角川書店(角川文庫)刊1983(昭和58)年3月発行佐野洋氏であります。佐野洋子氏とは関係ありません(多分)。生誕90年といふところで、ここで一冊『未完の遺書』を登場させます。文庫本のカヴァー紹介文を載せます。わたくしが喋々するよりも的確かと思ふので。 葉子が再婚話しを断わってバー勤めを続けてきたのも、小学校4年生になる一人息子の秋男の成長を思えばこそであった。だが、その秋男...

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