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中原中也インナープラネット http://chuya-ism.cocolog-nifty.com/

中原中也ファンのブログです。

およそ80年前の東京の街を孤独な魂は歩いた。その日の魂に見合う詩(うた)を探して…。その歌は2013年の今、数々の文庫として書店の棚にある。ポケットに歌を! さあ、中原中也の魂と会いに出かけよう!

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2009/05/04

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  • 中原中也/秋の詩名作コレクション44/ 修羅街輓歌

    修羅街輓歌 関口隆克に 序 歌忌(いま)わしい憶(おも)い出よ、去れ! そしてむかしの憐(あわれ)みの感情とゆたかな心よ、返って来い! 今日は日曜日 椽側(えんがわ)には陽が当る。 ――もういっぺん母親に連れられて 祭の日には風船玉が買ってもらいたい、 空は青く、すべ...

  • 中原中也/秋の詩名作コレクション43/秋

    秋 1昨日まで燃えていた野が今日茫然として、曇った空の下につづく。一雨毎(ひとあめごと)に秋になるのだ、と人は云(い)う秋蝉(あきぜみ)は、もはやかしこに鳴いている、草の中の、ひともとの木の中に。僕は煙草(たばこ)を喫(す)う。その煙が澱(よど)んだ空気の中をくねりながら昇る。地平線はみつめ...

  • 中原中也/秋の詩名作コレクション42/盲目の秋

    盲目の秋 Ⅰ風が立ち、浪(なみ)が騒ぎ、 無限の前に腕を振る。その間(かん)、小さな紅(くれない)の花が見えはするが、 それもやがては潰(つぶ)れてしまう。風が立ち、浪が騒ぎ、 無限のまえに腕を振る。もう永遠に帰らないことを思って 酷薄(こくはく)な嘆息(たんそく)するのも幾(い...

  • 中原中也/秋の詩名作コレクション41/ 秋の夜空

    秋の夜空これはまあ、おにぎわしい、みんなてんでなことをいうそれでもつれぬみやびさよいずれ揃(そろ)って夫人たち。 下界(げかい)は秋の夜(よ)というに上天界(じょうてんかい)のにぎわしさ。すべすべしている床の上、金のカンテラ点(つ)いている。小さな頭、長い裳裾(すそ)、椅子(いす)は一つも...

  • 中原中也/秋の詩名作コレクション40/港市の秋

    港市の秋石崖(いしがけ)に、朝陽が射して秋空は美しいかぎり。むこうに見える港は、蝸牛(かたつむり)の角(つの)でもあるのか町では人々煙管(キセル)の掃除(そうじ)。甍(いらか)は伸びをし空は割れる。役人の休み日――どてら姿だ。『今度生(うま)れたら……』海員(かいいん)が唄(うた)う。『ぎーこ...

  • 中原中也/秋の詩名作コレクション39/秋の一日

    秋の一日こんな朝、遅く目覚める人達は戸にあたる風と轍(わだち)との音によって、サイレンの棲む海に溺れる。 夏の夜の露店の会話と、建築家の良心はもうない。あらゆるものは古代歴史と花崗岩(かこうがん)のかなたの地平の目の色。今朝はすべてが領事館旗(りょうじかんき)のもとに従順で、私は錫(しゃく)と...

  • 中原中也/秋の詩名作コレクション38/臨 終

    臨 終秋空は鈍色(にびいろ)にして黒馬(くろうま)の瞳のひかり 水涸(か)れて落つる百合花(ゆりばな) ああ こころうつろなるかな神もなくしるべもなくて窓近く婦(おみな)の逝(ゆ)きぬ 白き空盲(めし)いてありて 白き風冷たくありぬ窓際に髪を洗えばその腕の優しくありぬ 朝の日は澪(こ...

  • 中原中也/秋の詩名作コレクション37/雲った秋

    雲った秋1或(あ)る日君は僕を見て嗤(わら)うだろう、あんまり蒼(あお)い顔しているとて、十一月の風に吹かれている、無花果(いちじく)の葉かなんかのようだ、棄てられた犬のようだとて。まことにそれはそのようであり、犬よりもみじめであるかも知れぬのであり僕自身時折はそのように思って僕自身悲しんだこ...

  • 中原中也/秋の詩名作コレクション36/秋の夜に、湯に浸り

    秋の夜に、湯に浸り秋の夜に、独りで湯に這入(はい)ることは、淋しいじゃないか。秋の夜に、人と湯に這入ることも亦、淋しいじゃないか。話の駒が合ったりすれば、その時は楽しくもあろう然(しか)しそれというも、何か大事なことをわきへ置いといてのことのようには思われないか?――秋の夜に湯に這入るには...

  • 中原中也/秋の詩名作コレクション35/(秋が来た)

    (秋が来た)秋が来た。また公園の竝木路(なみきみち)は、すっかり落葉で蔽(おお)われて、その上に、わびしい黄色い夕陽は落ちる。それは泣きやめた女の顔、ワットマンに描かれた淡彩、裏ッ側は湿っているのに表面はサラッと乾いて、細かな砂粒をうっすらと附けまるであえかな心でも持ってるもののように、遥(は...

  • 中原中也/秋の詩名作コレクション34/誘蛾燈詠歌

    誘蛾燈詠歌ほのかにほのかに、ともっているのはこれは一つの誘蛾燈(ゆうがとう)、稲田の中に秋の夜長のこの夜さ一と夜、ともっているのは誘蛾燈、ひときわ明るみひときわくらく銀河も流るるこの夜さ一と夜、稲田の此処(ここ)にともっているのは誘蛾燈、だあれも来ない稲田の中に、ともっているのは誘蛾燈たまたま此処...

  • 中原中也/秋の詩名作コレクション34/誘蛾燈詠歌

    誘蛾燈詠歌ほのかにほのかに、ともっているのはこれは一つの誘蛾燈(ゆうがとう)、稲田の中に秋の夜長のこの夜さ一と夜、ともっているのは誘蛾燈、ひときわ明るみひときわくらく銀河も流るるこの夜さ一と夜、稲田の此処(ここ)にともっているのは誘蛾燈、だあれも来ない稲田の中に、ともっているのは誘蛾燈たまたま此処...

  • 中原中也/秋の詩名作コレクション33/ 別 離

    別 離さよなら、さよなら!いろいろお世話になりました いろいろお世話になりましたねえ いろいろお世話になりましたさよなら、さよなら! こんなに良いお天気の日に お別れしてゆくのかと思うとほんとに辛い こんなに良いお天気の日にさよなら、さよなら! 僕、午睡(ひるね)から覚(さ)めてみ...

  • 中原中也/秋の詩名作コレクション32/月下の告白 青山二郎に

    月下の告白         青山二郎に劃然(かくぜん)とした石の稜(りょう)あばた面(づら)なる墓の石虫鳴く秋の此(こ)の夜(よ)さ一と夜月の光に明るい墓場にエジプト遺蹟(いせき)もなんのそのいとちんまりと落居(おちい)てござるこの僕は、生きながらえて此の先何を為すべきか石に腰掛け考えたれどとんと...

  • 中原中也/秋の詩名作コレクション31/秋岸清凉居士

    秋岸清凉居士消えていったのは、あれはあやめの花じゃろか?いいえいいえ、消えていったは、あれはなんとかいう花の紫の莟(つぼ)みであったじゃろ冬の来る夜に、省線の遠音とともに消えていったはあれはなんとかいう花の紫の莟みであったじゃろ※とある侘(わ)びしい踏切のほとり草は生え、すすきは伸びてその中に...

  • 中原中也/秋の詩名作コレクション30/(小川が青く光っているのは)

    (小川が青く光っているのは)小川が青く光っているのはあれは、空の色を映しているからなんだそうだ。山の彼方(かなた)に、雲はたたずまい、山の端(は)は、あの永遠の目(ま)ばたきは、却(かえっ)て一本(ひともと)の草花に語っていた。一本の草花は、広い畑の中に、咲いていた。――葡萄畑(ぶどうばたけ)...

  • 中原中也/秋の詩名作コレクション29/京浜街道にて

    京浜街道にて萎びたコスモスに、鹿革の手袋をはめ、それを、霊柩車(れいきゅうしゃ)に入れて、街道を往く。 風と陽は、まざらない……霊柩車、落とす日蔭に、落ちる涙はこごめばな。 (一九三三・九・二二)(「新編中原中也全集」第2巻・詩Ⅱより。新かなに変えて...

  • 中原中也/秋の詩名作コレクション28/夏過けて、友よ、秋とはなりました

    夏過けて、友よ、秋とはなりました友達よ、僕が何処(どこ)にいたか知っているか?僕は島にいた、島の小さな漁村にいた。其処(そこ)で僕は散歩をしたり、舟で酒を呑(の)んだりしていた。又沢山の詩も読んだ、何にも煩(わずら)わされないで。時に僕はひどく退屈した、君達に会いたかった。しかし君達との長々しい...

  • 中原中也/秋の詩名作コレクション27/秋になる朝

    秋になる朝たったこの間まで、四時には明るくなったのが五時になってもまだ暗い、秋来る頃のあの頃のひきあけ方のかなしさよ。ほのしらむ、稲穂にとんぼとびかよい何事もなかったかのよう百姓は朝露に湿った草鞋(わらじ)踏みしめて。僕達はまだ睡(ねむ)い、睡気で頭がフラフラだ、それなのに涼風は、おまえの瞳を...

  • 中原中也/秋の詩名作コレクション26/幻 想

    幻 想1何時(いつ)かまた郵便屋は来るでしょう。街の蔭った、秋の日でしょう、あなたはその手紙を読むでしょう肩掛をかけて、読むでしょう窓の外を通る未亡人達は、あなたに不思議に見えるでしょう。その女達に比べれば、あなた自身はよっぽど幸福に思えるでしょう。そして喜んで、あなたはあなたの悩みを悩...

  • 中原中也/秋の詩名作コレクション25/脱毛の秋 Etudes

    脱毛の秋 Etudes1それは冷たい。石のようだ過去を抱いている。力も入れないでむっちり緊(しま)っている。捨てたんだ、多分は意志を。享受してるんだ、夜(よる)の空気を。流れ流れていてそれでもただ崩れないというだけなんだ。脆(もろ)いんだ、密度は大であるのに。やがて黎明(あけぼの)が来る時、...

  • 中原中也/秋の詩名作コレクション24/死別の翌日

    死別の翌日生きのこるものはずうずうしく、死にゆくものはその清純さを漂(ただよ)わせ物云いたげな瞳を床にさまよわすだけで、親を離れ、兄弟を離れ、最初から独りであったもののように死んでゆく。さて、今日は良いお天気です。街の片側は翳(かげ)り、片側は日射しをうけて、あったかいけざやかにもわびしい秋の午...

  • 中原中也/秋の詩名作コレクション23/(宵に寝て、秋の夜中に目が覚めて)

    (宵に寝て、秋の夜中に目が覚めて)宵(よい)に寝て、秋の夜中に目が覚めて汽車の汽笛の音(ね)を聞いた。 三富朽葉(くちば)よ、いまいずこ、 明治時代よ、人力も 今はすたれて瓦斯燈(ガスとう)は 記憶の彼方(かなた)に明滅す。宵に寝て、秋の夜中に目が覚めて汽車の汽笛の音を聞いた。 亡...

  • 中原中也/秋の詩名作コレクション22/(月の光は音もなし)

    (月の光は音もなし)月の光は音もなし、虫の鳴いてる草の上月の光は溜(たま)ります虫はなかなか鳴きまする月ははるかな空にいて見てはいますが聞こえない虫は下界のためになき、月は上界照らすなり、虫は草にて鳴きまする。やがて月にも聞えます、私は虫の紹介者月の世界の下僕(げぼく)です。(「新編中原中...

  • 中原中也/秋の詩名作コレクション21/秋の夜

    秋の夜夜霧(よぎり)が深く冬が来るとみえる。森が黒く空を恨(うら)む。外燈の下(もと)に来かかればなにか生活めいた思いをさせられ、暗闇にさしかかれば、死んだ娘達の歌声を聞く。夜霧が深く冬が来るとみえる。森が黒く空を恨む。深い草叢(くさむら)に虫が鳴いて、深い草叢を霧が包む。近くの原が疲れて眠...

  • 中原中也/秋の詩名作コレクション20/(秋の夜に)

    (秋の夜に)秋の夜に、僕は僕が破裂する夢を見て目が醒(さ)めた。人類の背後には、はや暗雲が密集している多くの人はまだそのことに気が付かぬ気が付いた所で、格別別様のことが出来だすわけではないのだが、気が付かれたら、諸君ももっと病的になられるであろう。デカダン、サンボリスム、キュビスム、未来派、...

  • 中原中也/秋の詩名作コレクション19/さまざまな人

    さまざまな人抑制と、突発の間をいったりきたり、彼は人にも自分にも甘えているのです。※彼の鼻は、どちらに向いているのか分らない、真面目のようで、嘲(あざけ)ってるようで。※彼は幼時より変人とされました、彼が馬鹿だと見られさえしたら天才でしたろうに。※打返した綿のようになごやかな男、ミレー...

  • 中原中也/秋の詩名作コレクション19/さまざまな人

    さまざまな人抑制と、突発の間をいったりきたり、彼は人にも自分にも甘えているのです。※彼の鼻は、どちらに向いているのか分らない、真面目のようで、嘲(あざけ)ってるようで。※彼は幼時より変人とされました、彼が馬鹿だと見られさえしたら天才でしたろうに。※打返した綿のようになごやかな男、ミレー...

  • 中原中也/秋の詩名作コレクション18/Qu’est-ce que c’est que moi?

    Qu’est-ce que c’est que moi?  私のなかで舞ってるものは、こおろぎでもない、秋の夜でもない。南洋の夜風でもない、椰子樹(やしのき)でもない。それの葉に吹く風でもないそれの梢(こずえ)と、すれすれにゆく雲でない月光でもない。つまり、その……サムシング。...

  • 中原中也/秋の詩名作コレクション17/ カフェーにて

    カフェーにて 醉客の、さわがしさのなか、ギタアルのレコード鳴って、今晩も、わたしはここで、ちびちびと、飮み更(ふ)かします 人々は、挨拶交わし、杯の、やりとりをして、秋寄する、この宵をしも、これはまあ、きらびやかなことです わたくしは、しょんぼりとして、自然よりよいものは、...

  • 中原中也/秋の詩名作コレクション16/追 懐

    追 懐あなたは私を愛し、私はあなたを愛した。あなたはしっかりしており、わたしは真面目であった。――人にはそれが、嫉(ねた)ましかったのです、多分、そしてそれを、偸(ぬす)もうとかかったのだ。嫉み羨(うらや)みから出発したくどきに、あなたは乗ったのでした、――何故(なぜ)でしょう?――何かの拍...

  • 中原中也/秋の詩名作コレクション15/秋の夜

    秋の夜夜霧(よぎり)が深く冬が来るとみえる。森が黒く空を恨(うら)む。外燈の下(もと)に来かかればなにか生活めいた思いをさせられ、暗闇にさしかかれば、死んだ娘達の歌声を聞く。夜霧が深く冬が来るとみえる。森が黒く空を恨む。深い草叢(くさむら)に虫が鳴いて、深い草叢を霧が包む。近くの原が疲れて眠...

  • 中原中也/秋の詩名作コレクション14/処女詩集序

    処女詩集序かつて私は一切の「立脚点」だった。かつて私は一切の解釈だった。私は不思議な共通接線に額して倫理の最後の点をみた。(ああ、それらの美しい論法の一つ一つをいかにいまここに想起したいことか!)※その日私はお道化(どけ)る子供だった。卑小な希望達の仲間となり馬鹿笑いをつづけていた。(い...

  • 中原中也/秋の詩名作コレクション13/或る心の一季節――散文詩

    或る心の一季節 ――散文詩最早(もはや)、あらゆるものが目を覚ました、黎明(れいめい)は来た。私の心の中に住む幾多のフェアリー達は、朝露の傍(そば)では草の葉っぱのすがすがしい線を描いた。私は過去の夢を訝(いぶか)しげな眼で見返る………何故(ナニユエ)に夢であったかはまだ知らない。其処(そこ)に...

  • 中原中也/秋の詩名作コレクション12/秋の愁嘆

    秋の愁嘆ああ、秋が来た眼に琺瑯(ほうろう)の涙沁(し)む。ああ、秋が来た胸に舞踏の終らぬうちにもうまた秋が、おじゃったおじゃった。野辺を 野辺を 畑を 町を人達を蹂躪(じゅうりん)に秋がおじゃった。その着る着物は寒冷紗(かんれいしゃ)両手の先には 軽く冷い銀の玉薄い横皺(よこじわ)平らなお顔で笑...

  • 中原中也/秋の詩名作コレクション11/無 題

    無 題緋(ひ)のいろに心はなごみ蠣殻(かきがら)の疲れ休まる金色の胸綬(コルセット)して町を行く細き町行く 死の神の黒き涙腺(るいせん)美しき芥(あくた)もみたり自らを恕(ゆる)す心の展(ひろが)りに女を据(す)えぬ緋の色に心休まるあきらめの閃(ひらめ)きをみる静けさを罪と心得(こころえ...

  • 中原中也/秋の詩名作コレクション10/秋の日

    秋の日秋の日は 白き物音むきだせる 舗石(ほせき)の上に人の目の 落ち去りゆきしああ すぎし 秋の日の夢空にゆき 人群(ひとむれ)に分けいまここに たどりも着ける老の眼の 毒ある訝(いぶか)り黒き石 興(きょう)をおさめてああ いかに すごしゆかんかな乾きたる 砂金は頸(くび)をめぐりてぞ 悲...

  • 中原中也/秋の詩名作コレクション9/(秋の日を歩み疲れて)

    (秋の日を歩み疲れて)秋の日を歩み疲れて橋上を通りかかれば秋の草 金にねむりて草分ける 足音をみる忍從(にんじゅう)の 君は默(もく)せしわれはまた 叫びもしたり 川果(かわはて)の 灰に光りて感興(かんきょう)は 唾液(だえき)に消さる人の呼気(こき) われもすいつつひとみしり する子のまな...

  • 中原中也/秋の詩名作コレクション6/朝

    朝 かがやかしい朝よ、紫の、物々の影よ、つめたい、朝の空気よ、灰色の、甍(いらか)よ、水色の、空よ、風よ! なにか思い出せない……大切な、こころのものよ、底の方でか、遥(はる)か上方でか、今も鳴る、失(な)くした笛よ、その笛、短くはなる、短く! 風よ!水色の、空よ、...

  • 中原中也/秋の詩名作コレクション5/いちじくの葉

    いちじくの葉夏の午前よ、いちじくの葉よ、葉は、乾いている、ねむげな色をして風が吹くと揺れている、よわい枝をもっている……僕は睡(ねむ)ろうか……電線は空を走るその電線からのように遠く蝉(せみ)は鳴いている葉は乾いている、風が吹いてくると揺れている葉は葉で揺れ、枝としても揺れている僕は睡ろうか…...

  • 中原中也/秋の詩名作コレクション4/秋の日曜

    秋の日曜私の部屋の、窓越しにみえるのは、エヤ・サイン軽くあがった 二つの気球青い空は金色に澄み、そこから茸(きのこ)の薫(かお)りは生れ、娘は生れ夢も生れる。でも、風は冷え、街はいったいに雨の翌日のようではじめて紹介される人同志はなじまない。誰もかも再会に懐(なつか)しむ、あの貞順(ていじゅ...

  • 中原中也/秋の詩名作コレクション3/いちじくの葉

    いちじくの葉いちじくの、葉が夕空にくろぐろと、風に吹かれて隙間(すきま)より、空あらわれる美しい、前歯一本欠け落ちたおみなのように、姿勢よくゆうべの空に、立ちつくす――わたくしは、がっかりとしてわたしの過去の ごちゃごちゃと積みかさなった思い出のほごすすべなく、いらだって、やがては、頭の重みの現...

  • 中原中也/秋の詩名作コレクション2/幻想

    幻 想 草には風が吹いていた。出来たてのその郊外の駅の前には、地均機械(ローラー・エンジン)が放り出されてあった。そのそばにはアブラハム・リンカン氏が一人立っていて、手帳を出して何か書き付けている。(夕陽に背を向けて野の道を散歩することは淋しいことだ。)「リンカンさん」、私は彼に話しかけに...

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