好きだから・・・ 4

その夜歩は何度も何度も激しく良子を求めた深く深く繋がっていたくて二人の間に何かを残したくて・・・歩の一方的な態度に良子もとうとう口を開いた「今日の歩変だよ」「・・・ゴメン」「そうじゃなくって何か言いたいことあるんでしょ？」「・・・」「言ってくれなきゃ私もわからないよ・・・」「凄く好きだから一緒にいられないってことって実際あるのかな」「それってどういう意味？」「例えばどれだけ相手のことが好きでも解決できない問題は必ずあるよねでも距離を置く事で問題が解決してその結果相手が幸せになるならそれでも良いと思えないといけないんだよね」「一体何を言ってるの・・・」「もし良子が子供を生んで育てたいのなら全面的に応援するよとりあえず良子が納得する人と結婚して子供を作って早い方がいいなら来月にでも私が部屋を出る・・・」パチン！歩は...好きだから・・・4

好きだから・・・ 3

都心へ向かう車の中歩はずっと考えていた良子のことそしてこれからの二人の事今の生活と二人の関係に何も不満はないしかしそれは歩だけが思っているだけのことで本当は歩に合わせて我慢しているのではないかと不安になったのだこのまま二人年を重ねていつかあるとき後悔するときが来るのではないかこのままでホントにいいのだろか・・・「ねェ歩疲れたでしょ」「ううんそんな事ないよとても楽しかったよ」「そうなんだか疲れてるように見えたけど気のせいだったかな」「良子の方が疲れたんじゃない？」「そうねちょっとだけね太陽の下で長時間過す事なんて滅多にないからね」「今夜は混んでるから都心に入るまでまだ暫く掛かるから寝てもいいよ」「それじゃ歩に悪いから・・・」「大丈夫心配要らないから安心して寝ていいよ」等間隔のオレンジ色の淡い光は車窓のガラスを通し...好きだから・・・3

好きだから・・・ 2

「一緒に来て良かったでしょ!」と良子はニッコリ微笑みながら言った「うん凄く素敵なところだね！」二人はゆっくりと流れる時間の中で自然と目のやり場が子供達に向けられた太陽が降り注ぐ緑の芝の上を子猫のようにじゃれあいながら走り回る子供達予想がつかない動きにハラハラしたり滑稽な言動に思わず噴出したり不思議な事に見ていて飽きないのだ「あっ！歩！またこけたよあの男の子」「大丈夫だよ誰も助けてくれないと判ると自分で起き上がるから」「あ～ほんとだぁ今お母さんの方を見たけど気付かれなかったから自分で立ち上がったよねもし彼女が気付いて手を差し伸べようとしたらあの子はずっと助けを待つのかしら・・・」「さぁどうなんだろうね」そこへ2歳ぐらいの女の子が庭先に咲く花を一輪手に良子の前にトコトコ歩いてきたそして黙ってその花を良子の目の前に差...好きだから・・・2

好きだから・・・ 1

その後良子に特に変わった言動は見られなかった歩の前で「子供が欲しい」と言うこともなかったただ30代半ばを過ぎようとする良子にとって仕事の上でも転換期が訪れようとしていた今まではお嬢様系の若手女優として活躍してきたが年齢的にそれも限界があり主婦や母親役が目立つようになった本人も十分その状況を理解していたので普段から役作りの為進んで子供がいる友人のホームパーティーや子供がいる働く女性達と接し情報を得る努力をしていた歩は良子の仕事に立ち入るタイプではないので良子からこのような話を持ち出さない限り外でどのような人たちと会っているかなぜそのようなことが必要なのか詮索はしなかった祝日前夜良子から歩に明日仕事は互いに休みなので午後から良子の知人のホームパーティーに行かないかと珍しく誘いがあった歩は良子と久しぶりにゆっくりする...好きだから・・・1

性 <SAGA> 4

「子供が欲しい・・」良子がポツリとつぶやいたきっと良子が思いつきで放った言葉ではなくずっと心に留めていた思いであることを察した歩はこう返した「良子はどんな子が欲しい？」「何処か二人に似ている女の子」「・・・それで何時頃欲しいの？」「若くはないんだから早い方が・・・でも歩もういいよ」「もういいよって・・・良子」「どうせ無理なんだから仕方がないじゃない！」そして良子は背を向けてしまった。歩にしてみれば同性間の結婚・出産について具体的な知識もなかったので良子の気持ちを壊さないように返事したつもりだったが・・・答えのない言葉遊びに付き合う余裕は今の良子にはないらしい歩はどんなに良子のことを愛していても良子の出産のことまでは心の準備が出来ていなかったそれよりも良子がこのように考えていたことに気がついていなかったことに焦り...性<SAGA>4

性 <SAGA> 3

セクシャリティーを男性女性の両極だけで分けた延長線上に「男らしさ」「女らしさ」という枠が実際にあるとすればそれぞれが社会生活していく上で言えること言えないこと容姿や行動が周囲に望まれる望まれないなどのステレオタイプ的な判断が生じるのは仕方がないそれ故にその枠からこぼれ落ちないようにそれぞれの「～らしさ」を追求し磨き上げるのも本人が納得しているのであればなにも問題はないだからといって「～らしさ」から外れてしまってもなんら問題はないと思う元々のセクシャリティーや本質的なものは周りがとやかく言っても所詮変えれるものではないのだから・・・「自分らしさ」として上手に付き合っていけばいいだけのことまして他人にあてがわれたセクシャリーティーで愛し合うには限界がある一見男性的な歩と女性的な良子の場合見た目のセクシャリティーとは...性<SAGA>3

性 <SAGA> 2

カウンター越しに見える良子の横顔新しい舞台の台本に目を通している様子最近では台詞を覚える時の良子の癖にも慣れてきた台本を見ながら一人で不意に話し出したり笑ってみたり・・・歩がいることを忘れてその世界に入り込み一人芝居をしているのだ最初はその異様さに驚いたが今では何が起ころうと気にしなくなった・・良子の邪魔にならないよう良子の視界から外れ成り行きをボーっと眺めているのも楽しい何時間も掛かりそうな時はそっと家を出て夕飯の買い物したりDVDを借りたり自分の時間を楽しむことができた一人暮らしが長かった二人は幾ら気心の知れた相手でも一緒に生活するには多少の躊躇があった今まで築きあげてきた快適な生活を変えなくてはいけない不安「好きだから無理をする」「好きだから我慢する」「好きだから諦める」これでは二人でいる意味がないとって...性<SAGA>2

性 <SAGA> 1

満たされていく悦びのなか波打つシーツの上を二人は泳いでいくそして二人がたどり着く先には相手を思い遣る愛おしさに包まれた暖かな光が二人を待っていた飽くことのない挑戦良子の眉がピクリと動く何かに耐える苦悶の表情が歩の情熱を掻き立てるもっと深くもっと淫らに・・・良子の吐息が漏れる良子はとても敏感なようだ反応の一つ一つがたまらなくいとおしい心地よい疲れを感じながらそれでも二人はゆっくりと泳いでいくもう一度あの暖かな光に包まれたくて・・・「愛する事は与えること・愛する事は放つこと」だから沢山良子を愛してあげたい二人の逢瀬は時間の許す限り続いた性<SAGA>1

ともだち以上・恋人未満 4

ドアベルが鳴った深夜遅くきっと何処かの酔っ払いが部屋を間違えたのだろう数回鳴らした後ドアを何度も叩き始めたうるさいなぁ・・・ご近所の手前そのままにしておく訳にもいかない歩は暗闇の中手探りで玄関に向かった覗き窓から外を見るが誰もいない「えっ？おかしいなぁ・・・」とりあえず何か悪戯でもされていては困るので外を確認しようとドアを開けようとしたところがドアが思うように開かない何かが玄関先に置いてあるのだろうか・・・歩は警戒しながらゆっくりと隙間から覗いたするとそこにはさっきまで携帯で話していた良子が丸くなって座っていた歩の顔を見るとヨロヨロと立ち上がり何も言わず抱きついてきた良子の手も髪もとても冷たかったずっとここに居たのだろうか歩は無言のまま良子を部屋にいれドアを閉めた困惑する歩の顔を見ると良子は冷たい手で歩の頬を優...ともだち以上・恋人未満4

ともだち以上・恋人未満 3

柔らかな唇の感覚TAXIの中での記憶の断片を一づつ拾ってつなぎ合わせる二日酔いの良子は昨夜の良子とはまるで別人のようだ歩の好意に対する拒絶の言葉だけでなく何かに対して激しく怒りをあらわにするそんな良子に戸惑いながらも一体何が起こったのか歩は何故良子に誤っているのか何故そうしたかったのか自分は何者なのかこれからどうしたいのか考えていたふと10年近く会っていない聖子の顔が浮かんだ心の奥深くずっと閉じ込めていた激しく切ない思いが蘇る聖子のためなら何でも出来ると信じていたころの力強い感覚忘れてしまった筈なのに目の前にいる良子に同じように感じているのだ長い間自分の気持ちを誤魔化すことに慣れて痛みに触れないようにしてきた結果自分の気持ちが何処にあるか全く見えていなかったのかもしれないところが無情にも良子は歩の思いを笑い飛ば...ともだち以上・恋人未満3