「じゃあ、ハヤトちゃん、これからはおばあちゃんと仲良く暮らしましょう。 また後でね。」 そう言って、急いで踊りの稽古に戻った。 おばあちゃんが生前大好きで稽古してた民踊は《南部坂雪の別れ》 これは歌舞伎や講談で有名な忠臣蔵討ち入りにまつわる美談です。 赤穂浪士が、亡き主君浅野内匠頭の仇を討とうとしてるという 噂が世間ではささやかれていたが・・ あす朝、決行という前日の夜、大石内…
あの娘ったら・・ ただのわがまま娘かと思ってたけど 少しは反省してたのね。 ハヤト猫からママの言付けを聞いたおばあちゃんは言った。 いったい誰に似たのか・・ おじいちゃんは贅沢しない人だし、 私の育て方が間違ってたのかしら。 お嬢様学校で、どうも身分不相応の生活が身についてしまったのね。 私は田舎育ちだから、娘とは気が合わなかったのよ。 でも、ハヤトちゃんにそんなこと言うなんて、少しは…
極楽で、初めておばあちゃんに抱いてもらって すっかり安らかな気持ちになっていたハヤトは 「お空に行ったら伝えて・・」って 飼い主ママが言った言葉を思い出した。 それは・・ “ ごめんなさい ” と “ ありがとう ” おばあちゃんはね、突然の医療ミスで亡くなったから おじいちゃんもママもとてもショックが大きくて 満足に お別れの挨拶ができなかったのよ。 “ ごめんなさい ” は親不…
夕方になると、鳩のクーちゃんが戻ってきた。 飼われてるとき、1度も空を飛んだことが無かったので 極楽では毎日思う存分青空を満喫しているのだ。 家では一番強い存在。 まるまる太ったクーちゃんが身の危険を感じることも無く・・ 猫たちが近づこうものなら くちばし攻撃で追い返した。 S家では、猫キックとクーちゃんのくちばし、 どっちが強いんだろうねえ・・と永遠のナゾであった。 挨拶が済んだところ…
ハヤトは、閻魔大王からの審判を受け、再び極楽へ向かって 歩きだしていた。 六七日(むなのか)忌には弥勒菩薩が現われて、 いつくしみの心を授けられた。 弥勒菩薩は未だ下界には現われてはいない。 5億6700万年もの未来に現世に現れ、人々を救済して下さるという。 (56億7千万年後との説もあるそうだ。) これから5億年もの間に どんな進化がなされるのか。 人間の歴史が続いているのだろうか。 …
ちび子は野良猫だったので、 時々不安になるらしく、 部屋のあちこちに3匹の子猫をくわえては隠そうとしていた。 その都度、飼い主ママは 「どこにもやりはしないよ。 マスコさんとうちで飼うことにしたからね。」 子猫達の乳離れが済んでからは 再び家の外へ出かけて行った。 ある時、マンションの踊り場で 大きなカッコイイ雄猫2匹を 侍べらせているちび子を見かけた。 子猫は茶トラと黒トラだから、旦…
猫のちび子は野良猫で 時々エレべーターが無いマンションの 階段の途中でゴロゴロしていました。 飼い主ママとお隣マスコ家のお母さん・・2人で可愛がっていたので 2軒の間を都合の良いように行き来していたのでした。 三毛猫で、尻尾はまっすぐ。 日本猫ではあるが、美猫の条件を満たしていました。 甘えるような声もせつなく・・ ある時、マスコさんと飼い主ママが井戸端会議をしてる時、 4本の足の間を8…
ちび子お母さん、鳩のクーちゃんから聞いたんだけど、 あのおチビちゃんハヤトがお爺さんになって 極楽にやってくるんだって。 え? あのおチビちゃんのハヤト君が? ええ。 クーちゃんはお空を飛べるから情報早いわねえ。 なんでも 三途の河を船で渡って、草原を歩いたり 日向で寝そべったりしてるのを見たんだって。 それで、さっき閻魔様のお裁き見事に極楽行きが 決まったそうよ。 …
ハヤトは、拾われてから死ぬまでの13年間 1度も土を踏んだことが無かった。。 飼い主の家は都内の小さな一戸建て。 「ウチの庭なんて、ハヤトの額より狭いわあ。。」 そう言って、ママは必ず額をなでるのだった。 狭い庭だが・・ 春には数本植えられた木の花が咲き 金柑の実も成る。 雪柳の揺れる枝先が 網戸越しに鼻先をかすめる。 時に どこかの猫が はきだし窓の下に現れたりする。 最初はお互…
生涯家猫であったハヤトは 憧れの草原を楽しみながら どこまでも歩いた。 途中で 七日ごとの審判を受けなければならなかったが、 その都度 不動明王、釈迦如来、文殊菩薩、普賢菩薩が現われて お助けくださり、、三十五日目 ついに閻魔大王の前に立ったのである。 閻魔大王の審判は、死した者が 来世にどこの世界へ 行くのかを決める大切なもの。 天・人間・修羅・畜生・餓鬼・地獄 この六道には どこ…
死して七日目。 三途の河の激流を自力で渡る者もある中で、 ハヤトは船に乗って難なく岸に着いた。 さて、どうしたら良いのか。 どちらへ行こうか。 迷うと仏様が現れて「西に向かっておゆきなさい。」 「西とはどちらであろう。 ワタシは飼い猫で、外を歩いたことがございません。」 では、朝はお天道様を背にして歩き 昼はお天道様を体の左に見ながらおゆきなさい。 そうして日が暮れたら 気持ちの良い…
死にそうなところを拾われて何年が経ったのか、ワシはもう爺さんだ。 それに、ここはどこなのだろう? きょろきょろしながら歩くと、河が流れているところに着いた。 猫は水が嫌いだから、とても泳げやしない。 まあ、ワシはよく水を飲む方だと言われたがなあ。。 「猫さん、乗りますかい?」 「? どなたですか? この船は向こう岸に連れて行って下さるのかな?」 「私は船頭。 ここは三途の河と言って、…
ふわふわと・・気持ちの良い風に、そっと頬をなでられて ハヤトは目が覚めた。 「・・・? ワシ、どうしたのだろう。。 なんだかとても気持ちが良い。」 前足をちょっと踏み踏みしてみたら思うように動く。。 「ワシ・・ このところ手足の自由が利かなくなって、動けなかったのに・・」 そうだ、飯も食べられず、トイレにも行けなかった。 なのに、今は・・ちょっと若返ったような気さえする。 耳を凝ら…
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