プロフィールPROFILE

汎武さんのプロフィール

住所
八王子市
出身
佐世保市

写真やイラストなど殆どない、文字だけの地味なブログです。全体のトーンはエッセイ風でありましょうか。ま、ちょっと創作ものも入っていますし、批評めいたものも煩わしくない範囲で書いております。よろしければ覘いてみてください。

ブログタイトル
はなし汎武ん
ブログURL
https://hanbu-y.blog.ss-blog.jp/
ブログ紹介文
日常のあれこれ、本の事、誰彼の事、合気道の事等々、諸事への思いを整列させることもなく書いております。
更新頻度(1年)

154回 / 365日(平均3.0回/週)

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ハンドル名
汎武さん
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汎武さんの新着記事

1件〜30件

  • あなたのとりこ 385

     頑治さんは抑々、前に考えた事もある、と云う土師尾常務の言を虚偽だと勘繰るのでありましたが、まあそれは兎も角、頑治さん如きが考える事くらい自分は疾うに考え付いていたと云う事を、つまり体裁上社長の前で云いたいのでありましょう。 「常務は例えばそう云う会社があるかどうかとか、或いはそう云う仕事をやってみても良いと云う人がいないかを、実際に探してみたのでしょうかね?」  頑治さんは反発の言と取られないように、穏やかな口調で訊くのでありました。 「まあ、少しは当たってはみたよ」  これも、実際は当たってなんかいないのだろうと頑治さんは穏やかな表情の裏で考えるのでありました。万事が上の空のくせに、好い加減な事を如何にもしかつめぶった顔で宣うのは、この人の特技でありますか。要するに一種の法螺吹き気性でありますか。 「少しは、ですか?」  頑治さんは愛嬌の色をやや消して、追及するような険しさ..

  • あなたのとりこ 384

    「それは、まあ。・・・」  土師尾常務は曖昧に、頷くような頷かないような仕草をするのでありました。 「じゃあ出雲さん、早速片久那制作部長に持ちかけてみますから同席してください」  頑治さんは出雲さんの方に顔を向けるのでありました。 「ええ、お願いします」  出雲さんは頑治さんに頭を下げるのでありました。頑治さんは微笑を返して頭を元の正面に戻す序に土師尾常務の顔をチラリと窺うと、仏頂面で眼鏡の奥の目を何度か瞬かせているのでありました。頑治さんの提案を許した事が後々自分の権威を貶める禍根とならないかとか、或いは益々頼りになる上司像に於いて片久那制作部長に差を付けられて仕舞わないかとか、恐らくそう云う辺りをあれこれ秘かに計量しているのでありましょう。  何をどうしてしていいのやら今の今迄皆目見当がつかないと云った按配だったので、出雲さんは感謝に満ちた目で頑治さんを見ているのでありまし..

  • あなたのとりこ 383

     この日比課長の間髪を入れない同調は社長に対するヨイショ狙いと、地方特注営業に対して大した意欲も定見も、端から持ち合わせていないであろう土師尾常務への遠回しの当て擦りの魂胆があると頑治さんは思うのでありました。まあしかし日比課長の魂胆はここでは取り敢えず脇に置いて、頑治さんは出雲さんに向かって続けるのでありました。 「烏滸がましいけど、自分の方から片久那制作部長に話しを振ってみましょうか?」 「ああ、そう云う事ならよろしく頼みます」  出雲さんが藁をも掴むような表情で大いに乗り気を見せるのでありました。  土師尾常務がここで咳払いするのでありました。それは、人を批判する事に総ての言を費やして会話を紛糾させ続ける自分を恥じて、これから先高次元の会議にするための心機一転の咳払い、と云う訳では勿論ないのでありました。はたしてと云うべきか、誰もの期待を裏切らない下らない下心からと云うべ..

  • あなたのとりこ 382

    「誰がそんな事を云いました!」  那間裕子女史の方もなかなかの反応であります。 「だってそう云う事じゃないか!」 「あくまでも実のある話しをしてくれるのなら傾聴はしますよ。でも些末な事の揚げ足取りばかりして、結局実が無いのを誤魔化しているようにしか見えないもの」 「未だこちらが何も喋ってもいないのに、実が無いなんてどうして判るんだ!」 「それじゃあ、聞きましょうか」  那間裕子女史は口元に挑発的な微笑を浮かべるのでありました。「さあ、その実のある話とやらをさっさと喋ってくださいよ」 「何だその云い草は!」 「何だ、じゃないわよ!」  こうなっては収拾も何も付かないと云うものであります。土師尾常務と那間裕子女史の剣幕に怖れをなして他の誰もが口を開かないのでありました。袁満さんはあらぬ方向に目を遣ってあからさまにオロオロと狼狽の身じろぎを見せるし、社長も均目さんも取り成しの言..

  • あなたのとりこ 381

    「そんな事を云って、問題をはぐらかさないでくれるか均目君」  土師尾常務は均目さんを睨むのでありました。先程の経緯もあって、均目さんが自分の一睨みに対して思いの外腰が引けないだろと云う感触は、慎に忌々しい事ながら端から有してはいるような風情が、その睨む瞳の中に色として現れているのでありました。 「いやいや、会議の大前提として、常務の了見が抑々おかしいと云っているんです」  均目さんは拘って見せるのでありました。勘繰れば、そこに拘って譲らない振りをしながら、袁満さんへの攻撃の矛先を少し鈍らせてやろうとの意図からかも知れません。 「大体この会議の議題と云うのは、どのような形態に社長や常務が会社をしていく心算なのかとか、会社の将来の見取り図と云うのか、展望を伺うと云う趣旨で我々従業員が提案したものですから、まるで敵味方みたいな感覚で個人攻撃に徒に時間を費やさないで、本来話し合うべき事を淡..

  • あなたのとりこ 380

    「でも今確かにそう云ったじゃないか」 「いやまあ、それは話しを始めるに当たってのちょっとした冗談ですよ」  袁満さんはしどろもどろに取り繕うのでありました。 「そんな冗談や前置きは必要ない」  土師尾常務は不愉快そうに吐き捨てるのでありました。「売り上げが出張に行っていた時と行かなくなってからとでは、どのくらい変化があったのか、それを云えば良い」  そう窘められて袁満さんはすっかりしらけたと云う顔をするのでありました。 「俺が担当していた北関東の各県とか甲信方面とか、それに中部や関西地方の観光地に関しては、これ迄の付き合いとかあるから、今のところ電話対応でもそんなに極端な注文の落ち込みはありません。電話営業だけではなくその内顔を見せろとかは云われるけど、まあそれでも概ね顔を出していた時と同じ程度取引を継続してくれますよ」 「じゃあ、成績は出張していた時と殆ど変わらないと思っ..

  • あなたのとりこ 379

     出雲さんとしては一日中土師尾営業部長と行動を共にすると云うのも息が詰まると云うのに、お辞儀の仕方とか愛想笑いの方法とかで聞いた風な指導をされたり、ひょっとしたら一緒に昼食を摂っている時に、箸の上げ下ろしに迄も一々なっていないと小言を言われたりするのは、実に以ってまっぴらご免蒙りたいと云った心境でありましょう。しかしながら出雲さんの困厄は内心察しながらも、袁満さんも均目さんも出雲さんへの援助の無さを詰った手前、この土師尾常務の提案に異を唱える訳にはいかないのでありました。 「それが良いでしょうねえ」  社長が発言するのでありました。「土師尾君が一緒に付いて行って色々指導するなら、出雲君も特注営業の遣り方をしっかり学べると云うものだ」  出雲さんの心根を慮れば、そんな好都合な話しではなかろうと頑治さんは思うのでありました。袁満さんも均目さんも口には出せないけれど同様の思いでありましょう..

  • あなたのとりこ 378

    「何だその云い草は!」  土師尾常務はいきり立つのでありました。 「云い草の問題にすり替えないでくださいよ」  均目さんは相手にしないような素振りで返すのでありました。しかし目は土師尾常務の目に据えた儘で全く微動もさせないのでありました。土師尾常務の一種の演技として逆上して見せる様子には、何らたじろがないところを確と表明するためでありましょう。 「均目君、そんなに喧嘩腰にならないでも良いだろう」  社長が取り成そうとするのでありました 「こちらは終始冷静で、思った事を淡々と喋っているだけで興奮なんかしていませんよ。寧ろ土師尾常務の方が急にエキサイトしたんじゃないですか。まあ、そうして見せると俺が怯んで、口を噤むとでも考えて態とそうして見せているのかも知れませんけど」  均目さんは至って静かな語調で、冷笑なんかも浮かべもしない無表情で、及び腰にも喧嘩腰にもならないところを見せる..

  • あなたのとりこ 377

     全くの正論でありますか。しかしこれが後に出雲さんを思わぬ窮地に陥れる一言になるとは、袁満さんにはこの時点で考えだにしない事なのでありました。 「私は別に特注営業に関して全く指導をしようとしない訳じゃないし、出雲君の新しい仕事に関して冷淡と云う訳でもない。そんな事は当たり前じゃないか」  土師尾常務は袁満さんに敵意剥き出しの視線を向けるのでありました。「ただ、その役目は、先ずは日比君の役目と云う事になるから、控えていただけだ」 「出雲君の直接の上司は日比課長だから、日比課長に任せていると云う訳ですね」  均目さんがここで徐に顔を上げて、土師尾常務に向かって今の言をもう一度聞き質すような言葉を発するのでありました。 「それが筋だからね」  土師尾常務は憮然とした顔をしで腕組みをするのでありました。 「山尾主任が会社を辞めたから、日比課長はその後始末やら何やらで、今に至るまで新し..

  • あなたのとりこ 376

    「ああ、多分そうですね。その数字で先方に見積書を送りましたから」  出雲さんは何度か頷くのでありました。 「先方に商品説明はちゃんとしたんだろうね?」  土師尾常務が出雲さんに聞くのでありました。恐らく土師尾常務の狙いとしては、出雲さんに無理を課して窮地に追い詰める魂胆だったのでありましょうが、どうした按配か出雲さんの仕事に乗って来た会社があると聞いて、ひょっとしたら、等と少しここで当初の目論見をうっかり失念して、妙な色気なんぞを出してみたのでありましょうか。 「いやあ、カタログに載っている商品で、今迄の出張営業で扱っていた物はなんとか商品説明みたいな事は喋れたんですが、特注営業の方に限られた商品に関しては、自分の知識不足もあって、いろんな点であんまり捗々しくは説明出来ませんでしたねえ」 「その、説明出来なかった点、と云うのは?」  日比課長が出雲さんの顔を覗き込むようにして訊..

  • あなたのとりこ 375

    「経費がかかろうがかかるまいが、仕事の効率を考えるならば、目先の経費削減よりも出張扱いの方が良いんじゃないですかね。僕はそう思いますがねえ」  こう返す辺り、どうやら社長は別に察してはいないようであります。 「要するに出張にかかる経費を極力ゼロに近づけようと云う事ですよね」  日比課長が口を開くのでありました。この日比課長の言を一種の助け舟と取るかそれとも自分への批判と取るか土師尾常務は俄には判断出来ないようで、不愉快極まりないと云った顔は一応その儘保持しながら、一つ頷いてもみるのでありました。 「何でもかんでも節約すれば良いと云うものじゃなくて、それが非効率になるようなら、出すところは出すことも必要でしょうよ」  なかなかに気前の良い社長の言葉ではありますが、これは社員に対してさももの分かりが好い経営者だと云う格好を演じて見せているだけで、先の甲斐計子女史への仕打ち等からすると..

  • あなたのとりこ 374

    「ところでどう云う感触なんだろうかな、新しい営業の仕事は?」  社長が出雲さんに目を向けるのでありました。 「はあ、未だ何とも。・・・」  出雲さんはそう訊かれて下を向いて云い淀むのでありました。 「何かしらの成果みたいなものは未だ出ていないのかな?」 「そうですねえ。・・・」  顔を上た出雲さんは申し訳無さそうに愛想笑うのでありました。 「当初こちらが考えていた一日の訪問件数より実数がかなり少ないようだけど?」  土師尾常務がここで口出しするのでありました。 「まあ、朝に遠方まで出掛けて日帰りでこちらに戻って来る訳ですから、そんなには回れませんよ。おまけに車を使える訳でもないですし」  出雲さんは土師尾常務の方に顔を向けず、社長を見ながら応えるのでありました。 「北関東とか静岡県や山梨県なんかの街を回る訳なんだから、向こうに一泊とかして営業する方が都合も効率も良いん..

  • あなたのとりこ 373

    「じゃあ会議を始めたいと思いますが、主な議題は、営業部の改変がどのような会社のこれから先の見取り図によって行われたのか、その辺を伺いたいと云うものです」  袁満さんが誰に云われるでもなく議事進行役を担うのでありました。何となく前の春闘時の団体交渉時の空気と同じ色合いを頑治さんは感じるのでありました。社員側から提案した会議であるから、まあ尤もとは云えるのでありましょうが、何となく労働組合と経営側と云う対立図式がその儘ここにも持ち込まれて仕舞うような気配でありますか。 「会社の経営方針に関わる事は別に君達社員全員と相談して決める事ではなくて、経営者の専権事項なんだから、それに君達が一々口出しする権利は無いんじゃないかな」  冒頭から早速、土師尾常務が例に依ってこの会議を台無しにするような言挙げを行うのでありました。この会議を提案されたこと自体が不本意なのでありましょう。 「経営の決めた..

  • あなたのとりこ 372

    「もう全員揃っているのなら、未だ終業時間前だけど、ぼちぼち始めるとしましょう。別にそれでも仕事上の不都合は無いよね?」  社長は土師尾常務に聞くのでありました。 「未だ日比君が帰って来ていませんが」  土師尾常務がそう云い終らない内に、当の日比課長が扉を押し開いて事務所の中に入って来るのでありました。日比課長は社長の姿をすぐに認めて、別に特段後ろめたい訳ではないけれどそこに社長が居る事が意外だったせいか、少し臆したような表情をするのでありました。日比課長は全体会議が夕方ある事は既に知っているのでありました。 「これで全員揃ったかな」  社長にそう訊かれた土師尾常務が日比課長、袁満さん、それに出雲さんを無表情で順に見るのでありました。それから返事まで未だ少し間を取るのは、甲斐計子女史も勘定に入れてして、制作部の二人もちゃんと居る筈だと頭で確認する作業なのでありましょう。 「唐目君..

  • あなたのとりこ 371

     土師尾営業部長は眉根を寄せるのでありました。袁満さんに依ればその目にはたじろいだような色が浮かんだと云う事であります。例に依って会議の件は片久那制作部長にすっかりお任せの心算でいたのでありましょうから、その怯みも宜なる哉でありますか。  これも後に聞いた袁満さんの言に依るのでありますが、土師尾常務はすぐに片久那制作部長の家に電話を入れたのでありました。勿論片久那制作部長に全体会議の件で指示を仰ごうとしての事でありました。しかし電話の様子では、発熱のために不機嫌になっているであろう片久那制作部長に、自分の器量で適当に切り抜けろとか返されてけんもほろろにあしらわれたようで、困じた顔をして受話器を架台に戻したのでありました。  こうなるとどうして良いものやらさっぱり見当も付かず、暫し自分の机で椅子の背凭れに身を預けて腕組みして考えを回らせていたのでありましたが、ふと何やら方策を思い付いたの..

  • あなたのとりこ 370

     当初からお流れ派の筈の袁満さんが、ここでなかなかきっぱりしない素振りを見せるのでありました。まあ、信義に於いて正当な意見と云うべきではありますが。 「事実とか方針だけ聞き質すと云うスタンスで、出来る限り内容の具体的な議論を避ける、と云う態度で臨むかな。どうせ土師尾常務相手では話しを掘り下げようとしても実のある議論にならないだろうから。そんな風に会議の意味が薄くなるのを承知で、円満に短時間で切り上げる事のみ念頭に置けば、一応会議を要請したこちらの顔も立ちはするか」  均目さんが一種の打開策を披露するのでありました。 「そう云う事なら、態々会議をする意味なんか無いじゃない」  那間裕子女史が舌打ちするのでありました。 「そりゃそうだけど、土師尾常務との余計な軋轢回避のみを考慮して、ま、会議を予定通り開くは開くとしても、あんまり意気込まないで、チャッチャとやっつけ仕事的に片付けると云..

  • あなたのとりこ 369

     袁満さんは均目さんの言はさて置いて、眉根を寄せて首を横に振るのでありました。  そこに、例に依って別に悪びれた風も無く、二十分遅刻の那間裕子女史が姿を見せるのでありました。那間裕子女史は朝っぱらから袁満さんと日比課長が揃って制作部スペースに来て、二人で同じような渋い顔をしているのを当然訝るのでありました。 「何、どうかしたの?」 「片久那制作部長から、風邪で今日は休むと云う電話が今し方入ったんですよ」  頑治さんが説明するのでありました。頑治さんはその日は池袋の宇留斉製本所に朝一番で向かう予定でありましたが、何となく出そびれて未だ居残っていたのでありました。 「へえ、片久那さんはお休みなの、今日は」  那間裕子女史が云うのでありましたが、それは驚きの口調ではあるものの、聞きように依っては少し弾んだような云い草と云えなくもないものでありました。一向に反省の様子も無く例に依ってそ..

  • あなたのとりこ 368

     那間裕子女史は珍しく冷の日本酒のグラスを片手に、頑治さんと均目さんの、先の居酒屋での弱腰を詰るのでありました。頑治さんと均目さんは恐縮の態で那間裕子女史のイチャモンを、首を竦めて頭の上に遣り過ごしているのでありました。その内屹度酔い潰れて目と口を閉じるでありましょうから、要はそれ迄の辛抱と云うところであります。  月曜日の全体会議に片久那制作部長は出席しないのでありましたが、これは慎に以って不測の事態でありましたか。片久那制作部長は前日の朝から、風邪で熱が四十度近く出て仕舞って、身動き儘ならないから欠勤すると云う電話をかけてきたのでありました。  先ずその電話を取ったのが甲斐計子女史で、上のような欠勤理由が述べられた後、電話は片久那制作部長の指示で均目さんに回されて、均目さんはその日の仕事の指示をあれこれ受けるのでありました。因みに電話が均目さんに回ったのは、例に依って那間裕子女..

  • あなたのとりこ 367

    「金額そのものは山尾さんの退職金と比較して、妥当かどうかを判断する必要があるわ。到底妥当性なんか無くて、自分達に都合好く計算をして分捕ったと本人たちが自覚しているのなら、甲斐さんが云うように後ろめたいものだから、誤魔化すために荒い言葉を吐き散らしてくるでしょうし、そうなるとそれはつまり馬脚を現した事になるわね」  那間裕子女史が皮肉っぽい笑いを口元に浮かべて云うのでありました。 「土師尾常務は妙な体裁や外聞には気を遣うけど、元々恥とか矜持とか云う感覚が薄いし、そんな感覚に嫌になるくらい縁遠い人だから、当然今の那間さんの試すような意図の向けられる先は片久那制作部長に対して、と云う事で良いのかな」  均目さんがややまわりくどい云い方をして、那間裕子女史の一種の覚悟を確かめるような事を訊くのでありました。 「そうなるわね。片久那さんが言葉を荒げて何やかやと弁解するなら、どんなに正義面した..

  • あなたのとりこ 366

    「退職金を貰うのは許せないと云う怒りは我々の感情の部分であって、世間一般の制度として瑕疵は無いとなれば、それを云い出しても結局詮無い話しだと云う事だよなあ」  均目さんがやや消極的な気色を見せるのでありました。 「でも何も云わないで置くと、何だかあの二人の遣りたい放題を許す事になっちゃうんじゃないの。そう云う事が行われたと判っていながら、一言もこちらの不愉快を表明もしないのは、あの二人を憚って只管気後れしているだけると云うものよ」  那間裕子女史はあくまでも月曜日の会議でその件を取り上げたいようであります。 「でも特段の問題は無いと云うのに、一種の憤慨に任せて態々問題視すると云うのは、態度としてどんなものかなあ。問題だと捉える論拠が無い、或いは薄いために、結局すごすごと引っ込む事になるなら、全く以って格好の悪い話しじゃないかなあ」  均目さんは那間裕子女史に気弱そうな笑みをして見..

  • あなたのとりこ 365

    「まあ、行われた事は問題が無いとしても、支払われた退職金の額が妥当であるのかどうかは、一応確かめてみる必要はあるかも知れませんけど」  頑治さんは、四人の鋭角な視線に怖じたからと云う訳ではないのでありましたが、そんな風な、多少四人の剣幕に阿るような事を口にするのでありました。 「それはそうだな。退職金が土師尾常務と片久那制作部長の云いなりに、或いは社長の恣意に任せて支払われているのなら、これは問題だ」  均目さんが頑治さんの言に早速乗るのでありました。「ウチの退職金の規定はどうなっているんだろう。退職金に関してはこれ迄何も話し合ってはいなかったからなあ」  均目さんは云い終ると甲斐計子女史を見るのでありました。 「あたしは何も知らないわよ、そんな退職金規定の事なんか」  酒を飲めないから一人だけグレープフルーツジュースを飲んでいた甲斐計子女史が、そのグラスをテーブルに置いて手を..

  • あなたのとりこ 364

     袁満さんの発声に皆はジョッキを少し持ち上げて和するのでありました。考えてみればこんな場面で屡、律義に乾杯をするのは全く以って無意味な慣習であるなあと頑治さんはふと思うのでありましたが、まあ、それは取り敢えずさて置くのでありました。 「あたしが頭にきたのは、今袁満君が云った事に尽きるのよ」  那間裕子女史がジョッキを顔の前から下げて、口角に付着していたビールの泡を吹き飛ばしながら云うのでありました。「結局、あの二人を優遇するために、あたし達の賃金や一時金は抑えるだけ抑えようって云う魂胆でしょう。ふざけているわよ」 「あの土師尾常務と片久那制作部長の二人だけが会社に必要な人間で、俺達は居ても居なくてもどうでも良い存在だと云う訳だよなあ。だから待遇面だけじゃなくて、今度の妙な人事異動なんかを敢行して、俺達を酷く扱うんだ。一応組合が出来たんで体裁上はそれなりの回答をしたけど、あの二人の優遇..

  • あなたのとりこ 363

    「唐目君は向うの味方なの?」 「いや、別にそう云う訳ではありません。俺は何時でも正義の味方ですから」  頑治さんはそんな通則的な軽口をうっかりものしたものの、これは見るも無残に適宜性の著しく低い冗談と云うものであって、云うべき時でない時に云って当然に滑った全く以って間抜けな言葉であると、云った傍から内心大いに悔やむのでありました。 「まあ、繰り返すけど、今度の会議の席上で、あの二人に退職金が出た話しを持ち出すかどうかは、未だ判らないと云う事だけどね」  均目さんはその点を頑治さんに念押しするのでありました。 「会議の席で、文句を云うかどうかも含めて、組合員全員で話し合うと云う事よ」  那間裕子女史もそう云うのでありますが、女史の顔は退職金の話しを一等最初に会議に持ち出す気満々、と云った風情に見えるのでありました。  全体会議は週明けの月曜日に開催すると土師尾営業部長から提..

  • あなたのとりこ 362

    「この件は一応組合員で話し合う方が良いのかしら?」  那間裕子女史が均目さんと頑治さんの二人を交互に見るのでありました。 「その方が良いんじゃないかな。遣り口が如何にも不愉快だし」  頑治さんがそれはどうだろうかと疑義を挟むより先に、均目さんが使っていた箸を取り皿の上に揃えて置きながら頷くのでありました。「まあ、組合として話し合って、その結果あの二人や社長に何か文句を云うかどうかは、今のところ別にして」 「一応組合員全員で、あの二人に退職金が支払われた、と云う事実を共有しておく方が良いと云う事ね。あたしも確かにその方が良いと思うわ」  那間裕子女史はそう云った後頑治さんの方に顔を向けて、頑治さんの考えを質すように首をほんの少し傾げて見せるのでありました。 「全員で共有するのは別に反対ではないですが、抑々組合が口出し出来る事柄なのかどうかの点は、俺としたら少し疑問がありますけど」..

  • あなたのとりこ 361

    「ざらに聞きますよ。その退職金で会社の株を半ば強制的に購入させられる、とか云う話しなんかも良く耳にします。だから一概に虫の良い話しとは云えないでしょう」  頑治さんは那間裕子女史の剣幕に油を注ぐ愚を犯さないように、大いに内心配慮した物腰でそんな言葉を返すのでありました。この点に関して、那間裕子女史も均目さんも知見が無いようでありました。頑治さんは大学生時代からすっとやっていた色々なアルバイト先でそう云う事例が時にあったものだから、偶々知識が有ったと云う事であります。考えてみれば、そんな事例は普通の会社員にとっては全くの無関心事でありますかな。 「あの人達も退職金で会社の株を買わされるのかしら?」 「さあ、ウチの会社の場合に関しては、俺には判りませんけどね」 「ウチは一応株式会社だけど、別に株を公開している訳じゃなくて、社長やその親族辺りが分け持っているんだろう、多分」  均目さん..

  • あなたのとりこ 360

     頑治さんはその場に居なかったからこの袁満さんと土師尾常務の遣り取りの光景は、後に自席でそれとなく様子を窺っていた甲斐計子女史から聞いたのでありました。その折にもう一つ、少々気になると云えば気になる情報が甲斐計子女史から齎されるのでありました。それは、新たに役員になった土師尾常務と片久那取締役制作部長の二人には、従業員時代の退職金が、けじめ、として支払われるようだと云うものでありました。  まあ確かに役員になったのだからその時点で一応は退職扱いになるので、退職金の支払いは当然であり何も問題が無いと頑治さんは思うのでありました。しかしそれを頑治さんに告げる甲斐計子女史の口調が如何にも憤怒に満ちているような具合で、頑治さんとしてはその甲斐計子女史の云い様がちょいと気になったと云う事でありました。  要するに甲斐計子女史としては、これは全く承服ならない事態だから、組合として大いに問題視すべき..

  • あなたのとりこ 359

    「まあ確かに、今唐目君が云った通りかなあ」  袁満さんが頑治さんから目線を外して頷くのでありました。 「じゃあ、社内全体会議を提案するとして、それは組合として提案するのかしら?」  那間裕子女史が頑治さんの顔を見つめながら訊くのでありました。 「まあ、組合の存在を後ろに匂わせて提起する方が、向こうに対して滅多な対応は出来ないぞと云う、多少の威迫感は伝えられますかね」  行きがかりから頑治さんが那間裕子女史に向かって応えるのでありました。 「それはそうかな。じゃあ、何時その提案をするかな」  袁満さんが天井に視線を投げて考える風の表情をするのでありました。「会議開催に向けての、こちらの用意もあるからなあ」 「いや、そこで議論すると云うのではなく、向こうが描いている将来の会社の見取り図を聞き質す会議なんだから、こちらの用意は取り敢えず要らないんじゃないですかね。まあ一般論として..

  • あなたのとりこ 358

     那間裕子女史が甲斐計子女史を見ながら一度頷いて見せるのでありました。 「若しそれが本当だったら、酷いわね」  甲斐計子女史は眉を顰めて頑治さんの顔を上目に見るのでありました。それは別に、頑治さん当人に対して険しい感情を向けた訳でないのは、頑治さんとしてもちゃんと判るのでありましたが、しかしそれでも頑治さんは少し怯むのでありました。 「つまり土師尾さんとしては出雲君と日比さんを馘首して、自分と山尾さんの二人でウチの社の営業を回して行って、ひょっとしたら近い将来には袁満君の出張営業も廃止する心算だった訳よ。これが恐らくリアルな、会社の斜陽を挽回する土師尾さんの策ね」  那間裕子女史が概括するのでありました。 「と云う事は俺もその内馘首になる訳か」  袁満さんが自分を指差しながらやや声を上擦らせるのでありました。 「そんな事をして、会社はやっていけるのかしら」  甲斐計子女史が..

  • あなたのとりこ 357

     袁満さんも何故自分ではなくて出雲さんがそちらに回されたのかは、実は明快には判らないようでありました。まあ、何事にも保守的で進取の気象と云う点では今一つもの足りない性向の袁満さんとしては、急に全く新しい仕事を押し付けられるのは御免蒙りたいでありましょうから、自分じゃない事に内心胸を撫で下ろしたでありましょうし。 「今度の出雲君が就く事になった仕事と云うのは、土師尾さんが前からずっと胸の中で温めていた営業形態だったのかしらね?」 「いやあそうじゃなくて、出雲君を今までの出張営業から切り離すために、急場凌ぎに思い付いたんだろうなあ。元々、そんな創意工夫なんか端から期待出来ない人だしね」 「要するに出張営業の縮小が狙いで、そのための方便みたいに思い付いたって事ね?」 「まあ、そんなところだろう」  袁満さんは何度か頷いて見せるのでありました。「正月の会議の時は山尾主任も会社にまだ居たか..

  • あなたのとりこ 356

     袁満さんが時間と実働の兼ね合いをざっと勘案するのでありました。 「そう聞くと、全く非効率と云う感じだなあ」  均目さんが呆れたようなもの云いをするのでありました。 「車が使えたなら、もう少し時間が有効に使えるかも知れませんけど」  これは出雲さんの実感でありましょう。 「いや、そう云う問題じゃなくて根本的なところで、仕事として成立しているか、と云う疑問が当初から俺にはあるんだけどねえ」  均目さんが首を傾げるのでありました。「そう思わないか、唐目君は?」  急に自分に疑問を振られて頑治さんは少しどぎまぎするのでありました。 「車が有るか無いかに関わらず遠距離にある街に日帰りすると云うのが、先ずは非効率の元凶かな。全くの新規開拓の訪問販売的な仕事と云う点は、出雲さんにはきついかも知れないけど、ざらにある仕事と云えばざらにある仕事と云えなくもないかな」  これは冷たい云い草..

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