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Imaginarry Affairr https://blog.goo.ne.jp/nanjouoto

春――。この堤防に桜がさいた。 ずっと一緒だったあなたはもうここにはいない。

一年という月日が流れる間に、簡単に傷つき、見失ってしまう三人の主人公たち。 誰もが逃げては通れない”青春”に、回り道をせず、真っ向から向き合っていく高校一年生を描きます(つもりです)。 テーマは"回復-recovery-"。 自分らしくいられたミドルティーンを思い起こしながら書き綴ります(努力します)。

nanjouoto
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荒川区
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三木町
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2008/09/01

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  • INDEX「桜さく、このうららかな堤」

    桜さく、このうららかな堤-CherryBlossomsonThisSunnyBrightBank-Echoedmanymanysounds.Roughlydirtystreet.Silentsunsettotheholizon.Attheevening,IfeelallwhatIseeisnotinreal.反響する無数の音。がさつな路地。音もなく沈む夕日。景色はすべて実在ではない気がする、そんな夕方。初めてお越しになった方、"春分プロローグ"よりご覧ください。INDEX(本編)Spring春分プロローグ清明-1「晩酌」清明-2「葉桜」清明-3「夜風」清明-4「桜もち」季節の変わり目-i穀雨-1「白昼夢」穀雨-2「青」穀雨-3「ツツジ」穀雨-4.1「針」穀雨-4.2「エプロン」季節の変わり目-ii立夏-1「ピア...INDEX「桜さく、このうららかな堤」

  • 夏至-3「ノウゼンカズラ1」(by水無月)

    キシキシと階段の音が聞こえると、それは"晩酌"の合図だ。「あ~涼しい~」と顔を上気させながら、皐月が部屋に入ってくる。「熱い人が来るから冷やしといたよ」「……何。嫌な言い方」ぽんとコップが置かれる。氷の浮いたスプライトだ。「もしかして絵描いてた?」「うん」「うんって…テスト勉強は?」「だいたいしたよ。今は息抜き」「のんきなのね」そう言って皐月はごくごくと喉を鳴らす。風呂あがりの皐月は、強烈な香りを身にまとっている。この頃は入浴剤に凝っているのだ。ぼくは風呂の順番が一番遅いので、嫌でもその"恩恵"を受けることになる。鼻をひくつかせるまでも無く、今日の入浴剤はどうやらハニーレモンだ。でもどんな香りで包んでも、それが皐月なら、目隠しをしてでも見つけだす自信がある。先のちびた2B鉛筆を置く。『息抜き』のはずがかえって疲...夏至-3「ノウゼンカズラ1」(by水無月)

  • 夏至-2「こもれび」(by水無月)

    夏至を過ぎると、季節は夏だ。気象庁は意固地なものでなかなか梅雨明けを宣言しないけど、季節はそういうものに縛られたりしない。インクを垂らしたような青空は、長い雨に磨き抜かれて、本来の輝きを取り戻している。ぷかりと浮かぶ雲は完璧というほど白くて、夏への自信をにじませている。校庭の片隅に静かなイチョウの木立があって、そこは最近見つけたお気に入りの場所だ。手の平をお椀型に合わせると"光の雫"がすくえるのではないかと思うくらい、光と影がみずみずしいコントラストを作る。そんなこもれびのベンチはこの上なくすがすがしくて、不都合なことなどまるで無い、という気持ちになる。セミもまだ鳴き始めていない。湿度の高い季節特有の、さわさわという風の音もない。静かだ。一年のうちほんの数日、こんな季節がやってくる。だから、午前中の体育の授業く...夏至-2「こもれび」(by水無月)

  • 夏至-1「夕日」(by水無月)

    人の好意を受ける価値がないと思う。一方で、人の好意には誠実でありたいとも思う。「今日はありがとう」一緒にいただけなのに、ありがとうと言われた。ベッドに寝そべって、今日あったことをぼんやりと振り返っていた。皐月ならどうする?これ以上皐月に甘えたらいけないって、思うのだけど……。会いたいと思ったタイミングで、部屋のドアがなる。「やっほー。元気?」元気ではなかったけど、そのしっとりとした声に少し元気になった。「そこ私の特等席なのに」皐月はぼくの勉強机の椅子を引き、そっちに座る。特等席と言うけど、ここはぼくのベッドだ。しばらく雨が続いていたけど、昨日今日あたりからまた日が照るようになってきた。皐月はそれに合わせるように、涼し気な夏服でコーディネートしている。白いコットンのチュニックと黒のショートパンツ。シンプルだけど、...夏至-1「夕日」(by水無月)

  • 季節の変わり目-v(by皐月)

    ――ピピピッピピピッピピピッピピピッ……。ニンジンの形をしたキッチンタイマーは、ちょうど20分で起こしてくれる。その正確な仕事に、私は嬉しいような切ないような気持ちになる。眉をひそめながら、手探りでスイッチを切る。布団からはい出して、また、机に向かう。向かうまではよかったものの、ノートに並んだ一面の和訳に辟易する。今日からテスト週間だ。夕方から雨が降り始めた。でも部活がなくて下校が早くて、何とか雨には降られないで済んだ。雨はいい。雨は気持ちを鎮めてくれる。雨は純粋に気持ちを勉強に向かわせてくれる。だけど天気予報によると『当面の雨は今日で最後』らしい。前線が南下し始めた。梅雨が終わろうとしている。そんな雨の沈静効果に頼ってしまうくらい、このところ、私の情緒は不安定だ。水無月のこと。絵美の恋のこと。潤子からも、複雑...季節の変わり目-v(by皐月)

  • 芒種-4.2「水たまり」(by絵美)

    「ふあー。濡れちゃったね」やっと電車に乗り込んで、あたしは気の抜けた声を出す。傘を忘れた帰り道、ようやく一息ついた。「寒くない?」「大丈夫。ありがとう」左腕についた雫をぱんぱんと払いながら答える。水無月くんはそんなあたしを見つめながら、何やら意味深な表情を浮かべて、それを隠すように窓の外を眺めだした。けれどそれも束の間、今度は我慢できなくなったようにくすくすと笑い始める。「な…なに?」あたしはにわかにドキドキしだす。何かおかしいかな。「……変なの」短い言葉が胸にぐさっと突き刺さる。しっ…失礼な!「水無月くんだって濡れてるじゃない」あたしは猛然と異論を唱える。でも水無月くんは笑うのをやめない。――違う違う、と言う。「そういう意味じゃないんだけど。でも、笑ってごめん」それきり何も言ってくれないので、訳がわからない。...芒種-4.2「水たまり」(by絵美)

  • 芒種-4.1「アジサイ」(by絵美)

    一歩ごとにピシャンピシャンと水滴が跳ねる。ようやく冷静になってきた。まず、ここまでの話をしよう。時間は少し遡って午後6時すぎ。学校の下駄箱の軒下から話は始まる。――自分のバカさ加減と降り止まない雨を呪う。通りすぎていく傘たちを恨めしく見つめながら、ねずみ色の空を振り仰ぐ。話すとややこしいけど、とにかくあたしは雨を前にして帰る手段をなくしていた。傘もなければ、入れてくれる知り合いももういない。雨も止みそうにない。脇をすりぬけるグレーの傘。向こうに二つ、ピンクとグリーンの傘。ぼんやりと網膜ににじんで広がる。……仕方ない。お母さんに電話しよ。ため息をついて、短縮1番をコールする。とるるるる……と耳の中で音が鳴り始める。何となく目で追っていたグレーの傘が、立ち止まるのを見た。半身でこちらを向いている。傘のフチがするする...芒種-4.1「アジサイ」(by絵美)

  • 芒種-3「月夜」(by絵美)

    ぶぁあ――――、というドライヤーの容赦ない音に髪が踊る。恥ずかしい話だけど、髪にドライヤーをあてる習慣が身についたのは高校に入ってからだ。それまではこの音がどうも気に食わなかった。皮膚が乾いて、削ぎ落とされそうな気がする。がちゃん。スイッチを切る。生乾きだけど、いいや。0時12分。また日付が変わってしまった。あたしは要領が悪い。多分、同じくらいの成績の子と比べても、同じ宿題を片付けるのに1.5倍くらいの時間がかかる。「絵美はじっくりタイプだもの」お母さんにもよく言われる。中学生の頃からそうやって来たし、もう慣れている。明日(というか今日)の時間割を合わせると、ようやく一日が終わる。枕もとの電気スタンドは残したまま天井の明かりを消したとき、カーテンのすき間から洩れる光に気付いた。月夜だ!夢中になってベッドの窓から...芒種-3「月夜」(by絵美)

  • 芒種-2「曇天」(by絵美)

    いらっしゃいませ。何名様ですか。お席へ案内いたします。ウェイトレスさんのよく通る声が響く。それぞれが思い思いの格好で時間を過ごす空間。そういうのって、けっこう好きだ。午後3時すぎ。レストラン兼喫茶店みたいなお店のテラスで、おやつ代わりにアイスクリームを食べている。今日は吹奏楽部の三人がそろって出かける初めての日だ。遊びと言っても、そんなにはしゃぐわけでもない。買い物と言っても、そんなにお金があるわけでもない。のんびりと、ゆったりと、一緒に時間を過ごしている、そんな休日。食べているのは皐月ちゃんがストロベリーアイス、潤ちゃんは何を思ったのか醤油アイス。あたしはバニラにしたら潤ちゃんにバカにされた。「もっと何か面白くする気は無いの?」と。そんな潤ちゃんは「うわあ、これ、うわあ」とか言いながら、うすら茶色いソフトクリ...芒種-2「曇天」(by絵美)

  • 芒種-1「サツキバレ」(by絵美)

    晴れた!青い空に白い雲。久しぶりに晴れたよ。梅雨の合間のサツキバレってやつだ。やっぱこうじゃなきゃ。今日はもう、朝からエンジン全開だよ。「行ってきます!」まだ乾ききっていないアスファルトに靴を鳴らす。歩を進めながら、ちらっと腕時計を見る。「ちょっとやばいかも」あたしは小走りを始めた。学校はちょうど更衣期間だ。空模様を見て、今日から夏服にすることにした。中学校はセーラー服だったけど、高校は半袖のブラウスに白いベストにワインレッドのネクタイという出で立ちだ。スカートも冬服のチェック柄がなくなって無地になった。シンプルでさっぱりしている。「ねーちゃんが着てもなあ」と言う祐樹。今度つねってやろう。あたしは似合ってると思っている。カンカンカンと駅の階段を駆け降りる。「あ~、待って!」閉まりかかったドアが開き直す。助かった...芒種-1「サツキバレ」(by絵美)

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