「スカイライン・キョート」

午前5時38分。 目を覚ますと、目がチクチクした。 コンタクトレンズを外すのを忘れて寝てしまったのだ。 体には毛布がかけてあった。 希美子か理...

「同じ顔」

私は、もう一人の自分に出会ってしまった。 その女は、私と同じ顔をしておきながら、 スタイルが良く 化粧が上手く 料理が出来る。 髪の毛は...

「残像」

彼は、一人暮らしをする大学生である。 ここ最近 就職活動で精神が弱り、 不気味な画像ばかりをパソコンで見ている。 そんな日々が、一ヶ月経と...

「町を出る話」

19歳の時、私は 「とにかくこの町を出たい」とばかり言っていた。 普通電車しか停まらないし、 近所の噂が煩わしいし、 ご飯の量が多くてダイエッ...

「雲が生まれる時」

朝。 京都行きの急行は、早足で路線を駆け抜ける。 新田辺駅を過ぎた電車の窓からは 雨上がりの町の景色が見渡せた。 町のずっと奥は青い山がそ...

「りんご飴」

りんご飴を持った少女がいた。 何もおかしくない。 お祭りなのだから。 でも、 その少女の持つりんご飴は 真っ赤なガラスの塊のようだった。 ...

「先を越された」

地球にはもう住めない。 西暦28XX年。 地球の人たちは戦争もそこそこに、 移住計画を進めていた。 移住先は火星。 地球で裕福な身分...

去年の春は

卒業する先輩にアルバムを作ろうと、 パソコンに移したデジカメの写真を整理していると、 去年の春、撮った写真が出てきた。 桜を見ている、母の後ろ姿だ。...

「飼い主が死んだネコ」

ぼくの名前は、かりんです。 酒井家という人間の家で暮らしています。 今年で15歳になります。オスです。 もう、7年前になりますか。 ぼくを可愛...

「空を掻き回す」

これは、僕が三歳の時の話です。 僕の家の裏は川原で、僕は小さい頃、その川原でよく遊んでいました。 遊ぶといっても、まだ友達もいなかったものですから...

「鳥になったら」

もし、鳥になったら 何をしよう？ 空を飛んで、たくさんの写真を撮って、 国境線が無いことを、証明するのだろうか。 もし、花になったら 何をし...

「夢を売った男」

S氏は会社員、35歳。 ペットボトルのパッケージをつくる会社で働いている。 会社に入りたての頃は海外の子会社で経験を積み、そこで今の奥さんと出会...

「口が無ければ･･･」

晩夏の西日は、表面がでこぼこした窓を通り抜け、診察室をビール瓶のような琥珀色に包んでいた。診察室は一見書斎のようで、実際、四方の壁にはぎっしり医学書が詰...

「クリオネの部屋」

今夜は、僕の部屋を紹介しよう。 僕の部屋は、いつも暗い。朝も、昼も、夜もずっと･･･。 部屋には窓がなく、机と椅子とベッド。それに本がぎっし...

「真夜中の牛丼屋」

深夜、1時過ぎ。 時速80キロで飛ばす車に混じりながら、大学生の由美は白い軽四の車を運転していた。由美も70キロ近くで運転していたが、まわりの車は次...