映画『The Damned』。鉄鋼王エッセンベック家の一室。経営者の座を狙うフリードリヒに、彼の競争相手で民主主義者でもあるヘルベルトの逮捕を告げるアッシ...
本棚に一冊のフォークソング譜面集がある。中学生のとき、ギターに夢中だった私に、叔父が呉れたもので、知らない曲ばかりだったが、何度も繰返して譜を読んでいるう...
奥州は白河の関より入る。古来より、黄金と名馬を朝廷に献じたが、都の人々にとっては、それよりも、伝説と歌枕とによって、内側からぼんやりと照らし出されるように...
私は谷崎潤一郎の『細雪』を読みながら、映画『太平洋の奇跡』の上映を待った。『細雪』の日本人は友禅を纏い嵐山に花見をし、神戸港に洋行の客船を見送り、オリエン...
路地は(中略)今も昔と變りなく細民の棲息する處、日の當つた表通からは見る事の出来ない種々なる生活が潜みかくれてゐる。侘住居の果敢なさもある。隠棲の平和もあ...
私は二二六事件を殊更に美化しようとは思わないけれども、だからと云って、殊更に醜く考えようとも思わない。只、七十五年を経た今日でも、この季節になると事件が人...
去年の『憂国忌』で印象深い話があった。──もっとも以下は、私の曖昧な記憶に基づいていることを最初に弁明して置く──それは登壇された井尻千男氏と遠藤浩一氏の...
日本人が自国に流入した「近代」の奔流をどのように経験したかというイメージを探していたところ、谷崎潤一郎の『細雪』にあった。ただし、この「近代」の正体につい...
今年の紀元節は荒天の一日であった。気象庁の予報したような積雪になるとは思われなかったが、それでも朝から身を斬るような冷たい風に吹付けられた霙混じりの雪が窓...
私は、古い建物を訪れて、そこに暮した人々の気配が微かに空気を揺らして昔日の思い出を繰返し演じながら、しかもそれが真昼の花園のように楽しげであるとき、つくづ...
私は部屋に一人で籠っている。何故と云って歳晩が憂鬱なのだ。街の賑わい、人々の浮いた気分、大売り出しの仰々しさ、みんな一緒の年越し蕎麦、みんな一緒の除夜の鐘...
地下鉄に乗って膝の前に蝙蝠を突いて座っていると、ふいに「ブランメルみたいですね」と隣の女性が云う。女性は髪の長い、色白の人で、唇を固く結び、潤いのある大き...
昭和四十五年十一月二十五日午後零時十分。演説を終えた三島由起夫はバルコニーから総監室に戻ると、手足を縛られたままの益田総監に向かって「恨みはありません。自...
ある夜更け、私は、新内流しの写真が古い雑誌に載っているのを眺めている。「下町の芸に生きる。江戸の残照」という大きな活字は、今にも勇躍して眼を射るのであるが...
ここである貧しい村に迷い込んだとしてみよう。 そこでは、今まさに軍人が3人の村人を壁の前に並ばせ処刑しようとしていた。あなたが「なぜ彼らを銃殺しよう...
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