chevron_left

メインカテゴリーを選択しなおす

cancel
ミステリーな森の生活 https://blog.goo.ne.jp/thomaz_2007

ミステリー(主に洋書)を読む楽しみを伝えたく思います。英語学習、洋画レビューもあります。

thomaz
フォロー
住所
未設定
出身
未設定
ブログ村参加

2007/08/26

arrow_drop_down
  • 君たちはどう生きるか

    アカデミー賞を受賞したとのことで、再度、映画放映されだしたので、「君たちは,どう生きるか」を、先月、見に行った。平日だったせいか、数えるほどの人数で、しかも、私も含め、中年以上が多かった。映像は、さすがという美しさだった。7人の小人ならず、7人のおばばが出てくるのが面白かった。声優に豪華な俳優陣をふんだんに使っているのも、面白かった。ストーリー的には、今までにない新規性は薄かったが、ジブリ的ファンタジーを楽しめた。表題になった「君たちはどう生きるか」の本が映画の中で、最後に出てくるのだが、著者が、吉野源三郎と山本有三の共著になっているのが気にかかった。山本有三は、中学の頃に読んだ「路傍の石」に感動した記憶がある。調べたところ、山本有三が、体の具合が悪く、吉野に委託して作成されたらしい。当初は、共著と表記さ...君たちはどう生きるか

  • 勝負(升田幸三)

    ユニークな将棋棋士として有名な升田幸三の本エッセイを読んでみたくなった。非常にユニークな部分もあるが、文章は、いたって普通なのに驚いた。将棋と新聞社というのは、今もそうだが、繋がりがあり、本著も新聞に連載されたものだ。あとがきで、当初の意図は、若いサラリーマンに読んでもらいたいとのことだったようだ。印象に残ったのは、有名な話で、戦後、GHQに呼ばれ、将棋は、取った駒を使って、捕虜虐待じゃないかと質問され、反論し、チェスは、王様を助けるために、女王を盾にするのはどういうわけかと逆に質問したという。また、殺気を呼ぶため、対局前に血のりのついた太刀を抜き、素振りをして、勝つのだぞと言い聞かせたことがあるという。それから、奥さんに刀は隠されたそうだが。勝負(升田幸三)

  • 忍者群像(池波正太郎)

    池波正太郎の群像シリーズの忍者群像を読んだ。忍者というと、どうしても、甲賀と伊賀の戦いを思い描いてしまう。また、屋根裏をうごめいたり、堀の中を泳いだり、手裏剣をなげあったりである。しかし、この忍者群像に出てくる忍者は、少し違う。どちらかというと、スパイなのである。敵の中に入り込んで、信用され、必要な情報を得たり、敵の作戦を頓挫させるような戦国時代のスパイとしての活動なのだ。本作は、7作の短編小説からなるが、どれも、面白く読めた。さすが、池波正太郎である、非常な忍者にも、人間味や非情でない部分を見せたりするのがうまい。忍者群像(池波正太郎)

  • THE MIDNIGHT LIBRARY(MATT HAIG)

    MATTHAIGのファンタジー小説、「THEMIDNIGHTLIBRARY」を読んだ。書評で、かなりの評価を得ている作品だ。職場も首になり、ペットの猫も事故で亡くなり、絶望から、死にたいと思ったとき、目の前に不思議な図書館が現れ、その書棚から本を選ぶことで、こうすれば良かったと思う人生のやり直しを試せるのだ。誰でも、あの時、こうすれば、どうなっていただろうとか、想像することがあるかも知れない。それが、何度でも、お試し可能なのだから、お得と言おうか、理想と言おうか。しかし、そう簡単なわけではない。何度も試しているうちに、少々、飽きてきて、うんざりしてきてしまう。いったい、このあと、どうするんだ?しかし、心配は無用だ。ちゃんと、素晴らしいエンディングが待っているのだ。文体も、結構、美しい文体のような気がした。...THEMIDNIGHTLIBRARY(MATTHAIG)

  • 海外ミステリー(洋書)読書記録2024年3月27日

    海外ミステリー(洋書)で読んだものを作家別にご紹介します。追加:THEMIDNIGHTLIBRARY(MATTHAIG)①PRESTON&L.CHILDTHUNDERHEADCABINETOFCURIOCITYBRIMSTONERIPTIDEDANCEOFDEATHTHEBOOKOFTHEDEADTHEWHEELOFDARKNESSCEMETERYDANCEFEVERDREAMCOLDVENGEANCETWOGRAVESBLUELABYRINTH②DANBROWNDIGITALFORETRESSANGELS&DEMONSDECEPTIONPOINTTHEDAVINCICODE③DAVIDBALDACCITHEWINNER④DENNISLEHANEMYSTICRIVER⑤HARLANCOBENTELLNOO...海外ミステリー(洋書)読書記録2024年3月27日

  • ミステリウム(エリック・マコーマック)

    このブログに最もあった題名の小説を読んでみた。ちいさな炭鉱町で、記念碑などの破壊のあと、つぎつぎに人が殺害されていく。行政官の命で、この町民の取材をゆるされた主人公が、正体不明の奇病におかされた町民とインタビューをし、謎をとこうとするのである。今までに読んだことのないミステリーと言っても過言ではない。翻訳家は、大変、苦労しただろうと推測される。編集者も、この作家の熱烈なファンのようだから、翻訳家を励まし続けたのかも知れない。読むのも、結構、大変だったが、つぎつぎに終わることのない謎の多さに驚かされる。ちょっと、変な読後感だった。ミステリウム(エリック・マコーマック)

  • 向田理髪店(奥田英朗)

    奥田英朗の「向田理髪店」を読んだ。少し、軽いものを読みたくなると、奥田氏の作品を手に取ることにしている。この作品は、「空中ブランコ」に比べれば、いたって、まじめな作品だ。かっては、炭鉱で栄えたが、今では、寂れ、高齢者ばかりになった北海道の町で、理髪店を営む主人公の物語だ。こんな町では、何の希望もないから、若者は、外に出ていくべきと、悲観的に考える主人公に対して、息子が、帰ってくるという。そして、失敗を恐れず、何かをしなければと考える若者、希望が描かれていく。短編形式で、中国から花嫁がきたり、映画撮影ロケ地になったり、この町にとっては、大きな事件が起きるのだ。ユーモラスに描かれるのだが、リアリティーもあり、最後には、ちょっと、感動もする。向田理髪店(奥田英朗)

  • 帆神(玉岡かおる)

    玉岡かおるの新田次郎賞、舟橋聖一生ダブル受賞作の「帆神」を読んでみた。新田次郎賞受賞作品は、結構、自分の好みにあうようだ。船乗りでありながら、船の新しい帆布の創造、拡大に貢献して、かつ、港の浚渫までやってのけ、士分にまで上り詰めた工楽松右衛門の歴史小説と言える。また、女性作家のせいか、男女の恋愛の想いについても、描かれている。少々、長く、読むのに苦労したが、工楽松右衛門という人物のスケールの大きさと魅力に魅了された。帆神(玉岡かおる)

  • FALSE IMPRESSION(JEFFREY ARCHER)

    JEFFREYARCHERのFALSEIMPRESSIONを読んだ。何とも、盛りだくさんで、スピーディーな物語だった。英国の旧家が、負債に苦しんでいた。そこで、所持する名画を処分して、借金を返済しようとした。しかし、その女主人が、暗殺され、一番の名画が借金を一手に引き受けている銀行に移動されようとする。さて、それからが、大変だ。何しろ、米国の9.11事件の貿易センタービルにその会社があり、飛行機が突入して、ビルが崩れるシーンが描かれるのだ。何とか、旧家の持つ名画を取り戻し、処分して、借金を返済しようとする女主人公と、女殺し屋を使って、自分の欲しい名画を得ようとする悪玉との対決になるのだ。その中では、いろいろな名画が出てきたり、殺し屋との対決もあり、息も付かせず、面白く読めた。FALSEIMPRESSION(JEFFREYARCHER)

  • 雷神(辻堂魁)

    辻堂魁の「雷神」を読んだ。これは、風の市兵衛シリーズの第二弾だ。最後の広告で、何と、既に22巻まで続編が出ていることに驚いた。さすがに、テレビドラマ化しているだけのことはある。テレビドラマのキャストを頭に描いて読むと、頭には入りやすい。主だったキャストについては、うまいこと選んだものだと思う。さて、2巻目だが、内藤新宿で、不当に立ち退きを迫られた老舗に主人公がやとわれ、陰謀に立ち向かうのだ。悪役も、なかなか、怪しく、手ごわく、面白く読めた。機会があれば、また、第3巻も読んでみたいと思う。雷神(辻堂魁)

  • なぜ「星図」が開いていたか(松本清張)

    ときどき松本清張が読みたくなる。正直言って、がっつりは、読んだことがない。最近、テレビで、松本清張の作品をドラマ化したものを見た。「ガラス...」とかの題名だったが、結構、面白かったので、読んでみたくなった。この短編集には、初期作品8作品からなる。一作品、「張り込み」は、読んだことがあると思った。その他の作品は、若干、トリックというか、ネタにこっている感じがした。その辺が、文体などは、総合的には好きなのだが、がっつりはまらない理由かも知れない。「顔」とか「声」とか、なかなか面白い作品だった。ときどき、電話が一家に一台なくて、近くのお店に借りたり、古さを感じるが、それ以外は、ちっとも古さを感じないのがさすがだと思った。電話も一家に一台を通り過ぎて、ひとり一台の携帯電話になっているなど時代の流れを感じた。なぜ「星図」が開いていたか(松本清張)

  • CALICO JOE(JOHN GRISHAM)

    JOHNGRISHAMのCALICOJOEを読んだ。JOHNGRISHAMの作品には、法廷ものと呼ばれるものが多いが、いくつかの作品は、まったく、法廷には関係しないものもある。この作品がそうであり、プロ野球選手の話だ。新人起用され、すさまじい勢いで、ヒットやホームランを量産して、スーパースターになるJOEという野球選手に、ビーンボールが当たり、昏睡状態になる。死線をさまよい、生き延びたが、片目の視力がなくなり、野球選手をやめざるおえなくなってしまう。そのビーンボールを投げた投手の息子は、その現場を目撃する。その息子の物語なのだ。194ページと比較的、短く、野球用語や野球選手の名前が多く出てくる前半は、ちょっと、大変だったが、慣れてきたら、何とか、読み切ることができた。あたかも、実際にあった話のごとく展開し...CALICOJOE(JOHNGRISHAM)

  • 敵の名は、宮本武蔵(木下昌輝)

    読売新聞の書評で、興味をもって、本書を読んでみた。山本周五郎賞、直木賞、山田風太郎賞の候補になった作品という。題名が、なかなか、刺激的だ。最強と呼ばれた剣豪、宮本武蔵と対戦した相手側からの物語かなと想像させた。7章に分かれているが、最初の3章は、それに近く、中々、面白く読めた。しかし、4章以降、ちょっと、話が込み入ってきた感じがした。第六章で、4~5章の謎めいたものが整理されていくのだが、小次郎や武蔵の父、無二斎の存在が、あまりに、従来のものと違っており、受け入れるのが難しい感じがした。吉川英治の武蔵像が、多くのフィクションでありながら、イメージとして焼き付いているためだろうとは思うが、新しい武蔵像が、ぴんと来ないのだ。山田風太郎の摩訶不思議な剣豪小説を読んだことがあるが、ちょっと、それに近い感じになって...敵の名は、宮本武蔵(木下昌輝)

  • 英国諜報員アシェンデン(サマセット・モーム)

    サマセット・モームは、うん十年前の学生時代、「人間の絆」を読んで以来だ。あの、サマセット・モームが、小説家が主人公のスパイ小説を書いていたのか?それどころか、ウイキペディアによると、サマセット・モーム自身が、実は、諜報活動をしていたという事実に驚愕して、この本を読んだ。小説家が、諜報活動に関わるという設定は、よくある設定らしい。過去読んだ、ジェフリー・アーチャーの作品の中でも、記憶力抜群の小説家が、ロシアの小説家の作品を口述で聞いて丸暗記して、西側で出版するという話を記憶している。今回の主人公、アシェンデンには、そのような特殊な能力があるわけでもなければ、007のようなアクションがあるわけではない。ただ、非常に、冷静であり、人間観察に優れているというものだ。その結果、信頼され、徐々に、より大きな任務につい...英国諜報員アシェンデン(サマセット・モーム)

  • HANNIBAL(THOMAS HARRIS)

    やっと、THOMASHARRISのHANNIBALを読み終えた。約2か月かかった。546ページというから、それほど長かったわけではなかった。しかし、結構、大変だった。過去の羊たちの沈黙では感じなかった格調の高さとでもいうのか、語彙も難しく感じた。イタリアの芸術関係の記述が多かったせいかも知れない。ただ、映画を見ていたのは、おおいに助かった。結末以外は、かなり、原作に忠実に描いているように感じた。映画のクラリスは、ジョディ―フォスターに換わって、ジュリアンムーアが演じていたのだが、ジョディ―フォスターのイメージが強くて、いまだに、クラリスというと、ジョディ―フォスターの顔が思い浮かぶ。結末が変わったのは、この二人の意向らしい。Xファイルのジュリアンアンダーソンがクラリス役の候補になったらしいが、契約上、別の...HANNIBAL(THOMASHARRIS)

  • 東海道をゆく(白石一郎)

    読売新聞の書評で、ゆったりとした作品という言葉につられて読んでみた。十時半睡事件帖のシリーズの7巻目、最終巻らしい。著者の絶筆でもあるらしい。事件帖とあるが、この巻については、事件らしい事件があるわけではない。海洋ものに比べるとかに、ゆったりとした作品だ。丁度、三島近辺に旅行に行ってきて、箱根八里の街道を知ったばかりのせいか、小田原ー三島ー元箱根ー沼津といった地名や、その街道が、身近に感じることができた。話は、主人公の息子が病気とのことで、江戸から、福岡に一時帰ることになった十時半睡が、道中、わけありの武家の女性と一緒に旅をすることになるというものだ。実際の事件帖も読んでみたいものだ。東海道をゆく(白石一郎)

  • 死に山(ドニ―・アイカ―)

    久しぶりに、山関係の作品を読んだ。読売新聞の書評で見つけた本だ。”世界一不気味な遭難事故”と副題がついている。1959年に、ソ連のウラル山脈に登山した9名の若者がテントから一キロ半ほども離れた場所で、凄惨な死を遂げた。氷点下の中で、衣服もろくに付けていなかったり、靴も履いてなかったのだ。最終報告書では、「未知の不可抗力によって死亡」と記載されていた。地元住民は、「死に山」と名付けた。この事件を知ったアメリカ人ドキュメンタリー映像作家の著者が謎の解明に挑む話だ。ネタバレになるので、あまり言えないが、中々、面白く読めた。死に山(ドニ―・アイカ―)

  • 海狼伝(白石一郎)

    白石一郎の直木賞受賞作、「海狼伝」を読んだ。白石一郎の作品は、以前にも読んだことがあるが、久しぶりだ。戦国時代、海で育った笛太郎が、村上水軍の海賊と行動をともにするようになり、新しい船を建設して、当時の中国に旅立つまでを描いている。海洋冒険時代小説の最高傑作と言われているが、なるほどと思った。当時の船同士の戦い方や、いろいろな船の種類、操船の仕方など、海流の影響など、詳細に描かれており、見事な作品だ。まさに、男たちの夢とロマンを描いている作品だ。続編「海王伝」も、いずれ、読んでみたいと思う。海狼伝(白石一郎)

  • 切願(長岡弘樹)

    長岡弘樹の自薦ミステリー集、「切願」を読んでみた。6つの短編集からなるが、どれも、ユニークで、独特の雰囲気を持っている。長岡氏は、短編ミステリーの名手と言われているらしい。後半のちょっと長めの2作、「迷走」と「真夏の車輪」は、中々、面白かった。予想もつきにくかった。切願(長岡弘樹)

  • 黒牢城(米澤穂信)

    ようやく、米澤穂信の「黒牢城」を読めた。直木賞を受賞して、図書館では、長らく、待ちが続いていた。読んでみて、驚いた。時代小説的なのだが、ミステリー小説でもある。織田信長に反旗を翻し、有岡城に籠城した荒木村重の物語だ。大きな合戦が描かれているわけではないが、籠城している中で、種々の事件が起こり、その一つ一つの事件を解決せねば、士気にかかわると、村重が推理を働かせるのだ。緊迫感もあり、面白く読むことができた。本当に、この作家は、今までに読んだこともない世界を見せてくれる。黒牢城(米澤穂信)

  • 草雲雀(葉室麟)

    葉室麟の「草雲雀」を読んだ。葉室麟の作品にしては、少し、軽めの奇想天外な物語だ。主人公は、師範代を務める剣客なれど、兄の世話になり、結婚もできず、女中を妾として、同居している。一方、道場仲間から、用心棒になってくれと、頼まれるのだ。元家老の妾腹の子供であることがわかり、もし、家老になれたら、藩の剣道指南役にして、結婚できるようにするというのだ。引き受けたのは良いが、次々に刺客が現れるのだ。この二人の掛け合いが実に面白い。また、他の登場人物も、ユニークなのだ。それにしても、これだけ、奇想天外にもかかわらず、最後の数ページで、ちょっと、ジンとくる葉室麟ワールドに導いてくれるのだから、うれしくなる。草雲雀(葉室麟)

  • 家日和(奥田英朗)

    ちょっと、気楽に読めるものが欲しい時に、奥田氏の作品は、ぴったりである。今回の短編集も、よくありそうな日常の中で、おこりうる物語をさらりと描いている。inthepoolなどに比べれば、現実的であるのだが、だからといって、それほど深刻でもない。6作の中で、「家においでよ」が、一番、気に入った。突然、妻に別居された男の行動である。自分の若かりし頃の理想の生活を実践するのだ。終わり方が、良かった。家日和(奥田英朗)

  • 真珠湾の冬(ジェイムズ・ケストレル)

    書評で高い評価であり、エドガー賞受賞作の本作品を読んでみた。先日、読んだ佐々木譲の「エトロフ・・」と同じく、真珠湾攻撃の時期を舞台にしているのに興味を持ったのも一つの理由だ。読んでみて、驚いた。自分のイメージしていたものとは、全く、違っていたのだが、自分の好みの文体と、好みのストーリー展開、見事な結末だったのだ。近年、読んだ小説の中でも、5本の指に入る傑作と言っても良いだろう。ストーリーを簡単に述べると、1941年のホノルルが舞台だ。そこで、白人男性と日本人女性の惨殺された死体が発見され、主人公のマグレデイ刑事が捜索にあたる。主人公は、やや、ハードボイルドで、陸軍の狙撃兵も経験した射撃の名手のかっこよさが際立つ。やがて、犯人の手がかりを追って、香港に飛ぶのだが、そこで、仕組まれた罠に落ち、投獄される。そし...真珠湾の冬(ジェイムズ・ケストレル)

  • 天国までの百マイル(浅田次郎)

    浅田次郎「天国までの百マイル」を読んだ。心臓病を患う母の命を救うため、天才的な心臓外科医のいる病院まで、母を車で運ぶ破天荒な末っ子の物語だ。映画やテレビにもなった作品だ。親子の絆、男女の悲しい恋模様を描いた感動の傑作と背表紙にあるが、その通りだと思う。今、何故か、この作品を読んでみたく思った。ちょっと、幸せの黄色いハンカチを連想させるロードムービー的な作品だ。ピーターポール&マリーの500マイルの歌詞が重要な役回りになっている。昔、ギターを覚えたての頃、よく歌っていたが、あらためて、歌詞の意味を確認してしまった。素晴らしい作品に感動したのだが、あまりに、いろいろな思いが込められており、また、自分の今の心境から、言葉で表すのが難しい。天国までの百マイル(浅田次郎)

  • 乳房(池波正太郎)

    池波正太郎の鬼平犯科帳の番外編とも言える本書を読んでみた。ちょっと、不思議な作品と言えるのではないか。主人公は、「お松」という薄幸の女性だが、美人でもなんでもないのだ。しかも、亡父から顔に傷を付けられている。捨てられた亭主にも、「不作の生大根」などと怒鳴られていたのだ。この作品では、その「お松」の数奇な人生が描かれていく。並行して、鬼平の盗賊の捕物が描かれていくのが、中々、接点があるようで、結びつかず、並行して話が続くのだ。そして、最後の数ページにやっと、この表題の意味がわかってくるのだ。この終わり方は、素晴らしい。この終わりを味わいたくて、再読みする人もいるというのが、うなずける。乳房(池波正太郎)

  • THE OVERLOOK(MICHAEL CONNELLY)

    MICHAELCONNELLYのTHEOVERLOOKを読んだ。前作が、ECOPARKのようだが、読んだのに、ほとんど、記憶がなかった。書評の中で、短かったというのがあったが、確かに260ページというのは、短い方かも知れない。ストーリーとしては、殺人の上、放射性物質が、盗まれる。FBIは、放射性物質の行方を追うのを、安全保障のための、最優先事項として動く。ハリーボッシュは、自分のやる仕事、殺人犯を突き止めることにまい進する。FBIや新しい相棒との葛藤の中で、真実にたどり着くという感じだ。非常にスピーディーに話が進み、面白いのだが、ちょっと、今までのハリーボッシュとも違う感じがなくもない。ちょっと、あせりすぎという感じだ。THEOVERLOOK(MICHAELCONNELLY)

  • エトロフ発緊急電(佐々木譲)

    佐々木譲の「エトロフ発緊急電」を読んでみた。山本周五郎賞受賞作だ。真珠湾攻撃前の情報戦が主なストーリーなのだが、非常に内容が濃密であり、大作とも言えるページ数(623ページ)だった。南京大虐殺も描かれており、残虐な戦争犯罪にぞっとした。一方で、主人公である日系米国人の不思議な魅力と、ハーフの女性や、朝鮮人、アイヌなどが、複雑に絡み合い、人種というものの難しさや、愛憎までも描かれている。面白かったが、少々、疲れた。エトロフ発緊急電(佐々木譲)

  • 剣客群像(池波正太郎)

    池波正太郎の剣客群像を読んだ。8篇の短編からなる剣客の物語なのだが、決して、著名な剣客をとりあげているのではないことが面白い。名もなき剣客、創作上の剣客なのだ。池波正太郎は、女性の剣客が好きなのか、2編は、女性の剣客も取り上げている。どれも、剣技だけでなく、人として、人生として一味も二味もある物語となっているのが、面白い。このシリーズは、忍者群像とか、仇討ち群像もあるようなので読んでみたいものだ。剣客群像(池波正太郎)

  • メナハウスホテルの殺人(エリカ・ルース ・ノイバウアー)

    アガサ賞最優秀デビュー長編賞受賞の本書を読み終えた。なかなか面白かった。第一容疑者だった主人公が、自分の嫌疑を晴らすために、いつのまにかシロート探偵になっているのだ。場所の設定も、エジプト、ピラミッドの見れる実際に存在する高級ホテル、メナハウスホテルなのだ。登場人物も、それぞれ、過去に明かせない秘密があったり、怪しい人物も多く登場する。若干、話の展開に無理がある気もしないではないが、主人公とその相棒になる二人の関係もばっちりであり、次作以降が楽しみな作者だ。メナハウスホテルの殺人(エリカ・ルース・ノイバウアー)

  • CAMINO ISLAND(JOHN GRISHAM)

    忙しかったり、途中で、やめた作品があったので、少し、間があいたが、やっと、この作品を読み終えた。異常な暑さのせいで、読書がつらかったせいもある。まず、この作品の出だしのスピーディーさには驚いた。JOHNGRISHAMにしては、珍しいアクション映画でも見ているようなストーリー展開なのだ。厳重な図書館から貴重な直筆原稿を盗み出すという物語だ。5人の一味のうち、2人はあっけなく捕まってしまう。そこで、ガラッと話の展開が変わるのだ。CAMINOISLANDというビーチの町の話になる。そこには、書店があり、その店主はまちに住む作家と交流を持ち、また、貴重な初版本などの収集もしているのだ。この店主が、盗まれた原稿を所持しているとの情報があり、保険会社が秘密裏に調査するのだ。後半は、スローな展開となり、前半とは、ガラッ...CAMINOISLAND(JOHNGRISHAM)

  • きたきた捕物帖(宮部みゆき)

    久しぶりに宮部みゆきの時代劇の小説を読んだ。岡っ引きの親分に拾われた孤児で、本業である文庫(本や小間物を入れる箱)売りで生計を立てる少年の物語だ。親分がフグに当たって亡くなってから、周りの人に助けられながら、事件を解決していくのだ。4編からなる中編小説だが、最初の2編は、やや、ゆっくりとした展開だったが、3編から、もう一人のキタさんが登場し、4編目は、スピード感も出てきて、面白く読めた。登場人物もユニークであり、今後が期待できそうに思えた。きたきた捕物帖(宮部みゆき)

  • ウインダム図書館の奇妙な事件(ジル・ペイトン・ウオルシュ)

    新聞書評でお勧めの本書を読んでみた。ウインダム図書館という創設者の本だけを保存している図書館には、おかしな規約があった。一切、本を増やしたり、減らしたりしてはいけない。それを確認するための監査が入ることがあるというのだ。そのウインダム図書館で、学生が殺害される。主人公がユニークだ。大学の学寮付き保健師の女性なのだ。普段から学生の体調や困ったことの相談にのってやることから、警察をいやがる学生も、信頼して、話をしてくるのだ。少々、こみいった設定もあり、やや、まどろっこしい部分もあるが、いかにも、イギリス人が好きな英国ミステリではないかと思う。中々、最後まで、全貌がわからない面白いミステリーだった。ウインダム図書館の奇妙な事件(ジル・ペイトン・ウオルシュ)

  • 帝国の亡霊、そして殺人(ヴァシーム・カーン)

    新聞の書評で見つけた本書を図書館で見つけて、読んでみた。英国推理作家協会賞ヒストリカル・ダガー賞受賞作とのことだ。インドのボンベイが舞台で、英国外交官が殺害される。はきだめのような警察署の中で、インド初めての女警部が担当となる。女性ということで、警察組織の内外でも逆境に立たされながら、正義感旺盛で、頑固なまでに不屈な主人公が、難事件に挑む。インド、パキスタンの分離独立運動や、共和国化の混沌も描かれており、重厚な作品にもなっている。そして、最後の章での、見事な謎解きは、アガサクリスティーのポアロを思わせる見事さであり、絶賛に値する。作者は、両親はパキスタン人とのことだ。また、読んでみたい。帝国の亡霊、そして殺人(ヴァシーム・カーン)

  • 江戸職人き譚(佐江衆一)

    佐江衆一氏の「江戸職人き譚」を読んでみた。9編からの江戸時代の職人などを主人公にした短編集だ。錠前師、凧師、葛籠師、人形師、大工、化粧師、桶師、女刺青師、引札師などを描いており、そのユニークさに感嘆した。もともと、純文学から初めて、時代小説に移っていったとのことで、文章も素晴らしかった。特に、抑えたエロチシズムとでも言うのであろうか、男女の想いが良く描けていた。気に入ったのは、2番目の笑い凧と最後の思案橋の二人であろうか。江戸職人き譚(佐江衆一)

  • 町長選挙(奥田英朗)

    奥田英朗の伊良部医院シリーズ第3弾を読んだ。すっかり、このおかしなシリーズにはまってしまったようだ。4つの短編からなるが、だんだん、洗練されてきたような気がする。一作目、二作目に負けず劣らずの第三弾だった。第4弾が楽しみだ。町長選挙(奥田英朗)

  • ユージニア(恩田陸)

    恩田陸の「ユージニア」を読んだ。傑作ミステリーとのことで読んだのだが、正直言って、自分にとっては、不完全燃焼だった。話の展開や会話のおもしろさは、さすが、恩田陸だと思ったが、これをミステリーと呼ぶには、もやもやっとしたものだが湧いてくる。もちろん、怪しさや、話が前後左右に振られる目まぐるしさなど、まあ、よく書いたなあという感想はあるのだが・・・最後のユージニアノートなるものが付いていたが、これまた、流し読みするのもつらく感じてしまった。ユージニア(恩田陸)

  • END OF WATCH(STEPHEN KING)

    STEPHENKINGのビル・ホッジス3部作の最後を読んだ。STEPHENKINGの時々、わからない単語、造語、スラングなどにも少し慣れてきた。辞書に出てなくても、まあ、だいたいの意味がわかればよいかと読み進めるのが苦痛でなくなったきたのが不思議だ。今回は、メルセデス事件で捕まった犯人が動けない中で、病院のようなところから、ゲーム端末を使って、催眠術で端末使用者をコントロールして自殺に追い込むのを阻止する物語だ。主人公のホッジス、ホリー、ジェロームが活躍する。後半のスピーディーな対決も面白く読めた。この後も、ホリーが活躍する続編があるようなので、読んでみたい。ENDOFWATCH(STEPHENKING)

  • 大獄 ・西郷青嵐賦(葉室麟)

    葉室麟の「大獄」を読んでみた。西郷さんと言えば、維新前後の話が多いところだが、そこまで行く前の若かりし頃の物語だ。新将軍に一橋慶喜を推し、徳川慶福を推す井伊直弼一派の暗躍に敗れ、月照とともに海に飛び込んで死んだことにされ、奄美大島に名前を変えて隠される。井伊直弼は、安政の大獄の反動で、桜田門外の変で、暗殺される。そういった時代の話だが、面白く読めた。それにしても、島津斉彬という人物の先見の明と薩摩藩という大名の藩主ながら、日本国という国を第一に考える姿には、感銘した。当時、外国に威圧されながら開国を迫られた日本のあるべき姿を描けた数少ない人物だったのだろう。大獄・西郷青嵐賦(葉室麟)

  • 蠅の王(ウイリアム・ゴールディング)

    ノーベル文学賞作家、ウイリアム・ゴールディングの代表作、「蠅の王」を読んだ。子供の時、ロビンソン・クルーソーや十五少年漂流記を歓喜して読んだ記憶がある。自分の海への憧れは、このころ、形成されたのではないかと思われる。今回、読んだ作品には、まったく、違う少年たちの島での生活が描かれる。最後の解説で、初稿の時に、書かれていた共産主義圏と、自由主義圏の間の核戦争勃発によりイギリスの学童が飛行機で国外へ疎開するシーンは編集者の助言でカットされている。だが、さらっとした表現の中から想像できるようになっている。まるで、現代の世界的な危機的状況でありそうなことなのだ。しかし、飛行機から落下もしくは不時着した少年たちの行動がメインに書かれており、そんなことは忘れてしまいそうになる。むしろ、主題でもある少年たち、人間に潜む...蠅の王(ウイリアム・ゴールディング)

  • 切羽へ(井上荒野)

    井上荒野の直木賞受賞作、「切羽へ」を読んだ。切羽とは、”せっぱ”と読むと思い込んでいたが、違った。トンネルを掘っていった先のことで、”きりは”と読むらしい。おそらく、このことを知った著者が、両方の意味を含ませて、この作品を作るきっかけになったのではないかと想像する。裏表紙には、繊細で官能的な大人のための恋愛長編とある。恋愛小説を読んだことがあるかと問われたら、おそらく、即座にNOと答えるだろう。もちろん、記憶をたどれば、高校の時に読んだ志賀直哉の「暗夜行路」は、近いかも知れない。英語の授業で読んだチャタレイ夫人は、どうか?この作品についていえば、結構、面白かった。狭い島の中の限られた世界での個性あふれる男女の会話が楽しめた。かたや不倫から抜け出せず、修羅場を見せる同僚の女性教師と対照的に、抑制しながら、た...切羽へ(井上荒野)

  • コロナと潜水服(奥田英朗)

    奥田秀朗の5編の短編からなる「コロナと潜水服」を読んだ。他の書評でも、後半の2編、「コロナと潜水服」と、「パンダに乗って」の評価が非常に高いが、納得だ。この2編は、傑作と言っても良いと思う。じんわり、感動したり、涙腺が緩んで、心地よい気持ちになれた。前半の3篇も、同じ、霊にまつわる話であり、悪くはないが、後半3篇ほどではなかった。「空中ブランコ」ほど、ふざけた感じがないので、笑いは、抑制されているが、「コロナと潜水服」の題名の潜水服が何に使われるか想像できなかったのはうかつだった。奥田氏の作品が、自分好みなのは、世代が近いせいかも知れない。お勧めである。コロナと潜水服(奥田英朗)

  • Will You Please Be Quiet,Please?(RAYMOND CARVER)

    RAYMONDCARVERの最初の短編集を読んでみた。そもそも、この作家の名前は、前回、読んだスティーブン・キングの小説の中に出てきて、知ったのだ。1938年~1988年に短編小説の活性化に貢献したとある。村上春樹が翻訳して、日本紹介の先鞭をつけたようだ。アメリカの労働者階級の生活の断片を181ページ、22編という、時には10ページ未満の長さで描いている。最初、何か、オチのようなものがあるのかと思って読んでいたが、逆転の落ちとかはない。また、感動するような物語も一切なかった。何が言いたいのか?アルコール依存症でもあった著者の人生、生活、世界を淡々と、時には、不可思議に描いたということか。英語は比較的平易で、詩人でもあることから、文章も悪くないと感じた。この世界が好きな人もいるだろう。WillYouPleaseBeQuiet,Please?(RAYMONDCARVER)

  • 潮鳴り(葉室麟)

    「蜩の記」続く羽根藩シリーズ第二弾を読んだ。蜩の記との繋がりは、まったく無いように感じた。役目をしくじっって、無頼暮らしに落ちた主人公が、家督を譲った義理の弟が、切腹したことから、弟の無念を晴らすべく、立ち上がる物語だ。主人公は、剣にも優れているのだが、今回は、あまり、剣劇は見るものがなかった。むしろ、どうやって、いったん落ちた花を咲かせるのか?ぼろぼろになった人間が再生するのかの物語になっている。また、女性の役割が、おおきなウエイトを占めている。最後は、まるで、水戸黄門か、大岡越前ばりの爽快なエンディングとなる。葉室麟の小説は、どれも、読んで損はない。おもしろい。潮鳴り(葉室麟)

  • 地下鉄道(コルソン・ホワイトヘッド)

    コルソン・ホワイトヘッドの「地下鉄道」を読んだ。ピュリッツアー賞受賞作で、書評で薦められていた作品だ。19世紀、アメリカ南部農園の奴隷少女、コーラの物語だ。母親は、少女だったコーラを置いて、農園から、逃亡した。成功した唯一の例だった。とても、無理と考えたコーラも、少年、シーザーから奴隷を逃す「地下鉄道」の話を聞き、一緒に、逃亡するこに決める。それからが、大変な逃亡劇の始まりだった。前半の農園での生活などは、悲惨な生活に少々、うんざりするぐらいだったが、逃亡してからは、かなり、スリリングで、面白くなってくる。アメリカの闇を描いた作品だが、この地下鉄道がフィクションながら、あたかもノン・フィクションのごとく感じる作品に筆者の筆力を感じさせる。地下鉄道(コルソン・ホワイトヘッド)

  • FINDERS KEEPERS(STEPHEN KING)

    洋書読みも本作で200冊となった。よく続いたものだ。1999年からだから実に23年かかったことになる。最初は対訳本からはじめ、2001年からペーパーバックに移った。自分の身長の厚さまで読むと英語が上達するとあったが、80冊~100冊くらいではとてもその実感が得られなかった。その同じ人が、英語の身長の倍読めばと前言を変えていたが、2倍読んでも、それほど実感はない。しかし、最近、精読と速読をまじえるというのは効果があるかも知れないと思い始めている。さて、今回は、2021年に読んだメルセデスの続編だが、すっかり記憶がなくなっており、ウイキペディアであらすじや登場人物を確認してから読み始めた。相変わらず、スラングが多く、登場人物の名前も多く、やっかいなのは、名前を変える人物もいたりして、読みづらくもあったが、前回...FINDERSKEEPERS(STEPHENKING)

  • 将棋であった泣ける話

    「将棋であった泣ける話」という12編からなる短編集を読んでみた。作家は、それぞれ違う作家によるものだ。あまり、知られてない作家による競作だ。この本の扉の広告から、マイナビ出版から、「泣ける話」シリーズが出ていることがわかった。例えば、動物園であった泣ける話とか、東京駅・大阪駅であった泣ける話とか多数あるようだ。アニメの人気声優による朗読ブックも出てるらしい。おそらくこのタイトルをテーマにショートストーリーを書いてくださいと依頼を受けたか、たまたま、将棋に関わるショートストーリーを集められたものだと思う。面白く読めたものもあるが、実際に、ちょっと、うるっときたのは、1作品くらいであろうか。最後の作品の作者の奥さんは、山ちゃんが憧れていた著名な女流棋士であるのに驚いた。面白い企画だ。将棋であった泣ける話

  • 雪旅籠(戸田義長)

    先日読んだ「恋牡丹」の続編である本作を読んでみた。時代劇の中には、歴史小説的なものもあれば、剣劇活劇的なものもあれば、人生劇場的なものもある。しかし、この連作は、時代劇ミステリーというちょっと違った雰囲気がある。謎解きがあるのだ。ということで、読んでみて、さすがに前作の新鮮な驚きに比べれば、ちょっと、驚きも新鮮さも軽減されたというのが感想だ。作者は、エラリークイーンの作品に感銘して、ミステリーフリークになったとあるが、そこは、自分に近い部分だ。また、時代劇好きでもあるからして、自分と波長は、ぴったしなので、今後の作品も期待したくなる。雪旅籠(戸田義長)

  • 錯乱(池波正太郎)

    池波正太郎の直木賞受賞作、「錯乱」を読んだ。5つの短編からなる。4作品は、どんでん返し的な展開もあり、中々、面白かった。最後の「賊将」は、歴史小説的ではある。一番、気に入ったのは、一番長かったが、一気に読んでしまった「秘図」だ。主人公は、若い時分に放蕩三昧をしたのち、こころあらためて、盗賊討伐のため、火付け盗賊改めの責任者になるのだ。それと、秘図と、どういう関連があるのかは、読んでのお楽しみということか。錯乱(池波正太郎)

  • トリカゴ(辻堂ゆめ)

    辻堂ゆめの「トリカゴ」を、やっと読んだ。作者渾身のミステリーということで、最初に読みたかったのだが、やっと図書館で借りれた。虐待や無戸籍者の問題を取り入れた社会派ミステリーとのことだが、無戸籍という世界があるのに衝撃を受けたという書評が多かったが、自分も同じだ。子供の時、捨て子の事件などがあると、お前も橋の下に捨てられてたのを拾ってきたと、冗談を言われて、泣いた記憶がある。捨て子でも、戸籍は作られるが、戸籍のない人たちが居るというのが不思議だ。この題名の曰くについても、驚愕だ。家の中に閉じ込められていた兄妹が言葉もしゃべれなくなり、鳥のようにふるまうようになる事件があったというのだ。少々、長いので、読むのに苦労したが、中々、面白かった。トリカゴ(辻堂ゆめ)

  • CAT O'NINE TALES(JEFFREY ARCHER)

    JEFFREYARCHERは、監獄に入っていたのは有名だが、その間に、いろいろ作品を書いている。この作品も、監獄での他の囚人との話を元に、若干、脚色も入って書かれた9つのショートストーリーだ。ANDTHEREBYHANGSATALEで、結構、JEFFREYARCHERのショートストーリーは、面白いと感じていたが、この9つのショートストーリーは、やや、切れを書いていたり、自分の英語力では、面白みを感じれないものがあった。だが、収監されていると、こんな話が書けるのかと、感心するばかりだ。CATO'NINETALES(JEFFREYARCHER)

  • あの本は読まれているか(ラーラ・プレスコット)

    2019年に著者のデビュー作として刊行され、2020年には、エドガー賞の最優秀新人賞にノミネートされたという。ドクトル・ジバコを書いたロシア作家パステルナークの人生と、CIAのタイピストながら、スパイとして、このドクトル・ジバコのロシア語版をロシア国内に密に手渡しで広めていった物語を並行して描いている。CIAが公開した文書と創作の部分があるというが、よくもこのような小説を書けるものだと舌をまく。そういえば、ジェフリー・アーチャーの本でも、ロシアの作家の本の内容を記憶して、国外で、本にするような物語があったが、国外に原稿を持ち出すだけでなく、ロシア語の本にして、ロシア国内に入れるというのを、CIAのドクトル・ジバコ計画として画策されていたことに驚くばかりだ。タイピスト達の行動については、やや、軽い調子で書か...あの本は読まれているか(ラーラ・プレスコット)

  • ホテルローヤル(桜木紫乃)

    直木賞受賞作「ホテルローヤル」を読んだ。7つの短編集からなる。しかし、すべて、ラブホテルである「ホテルローヤル」に関係したストーリーになっている。正直言って、最初の2作品を読んだ時点では、あまり、面白いと思えなかった。まるで、リアリティーに欠けるような奇異な設定のような気がしたのだ。ところが、3~7作品と読み進むうちに、ほほーとうなされるような面白みを感じるようになった。まず、この連作は、時系列とは逆に並んでいるのだ。第一作が、ホテルローヤルが廃墟と化した後の物語になる。それ以降が、ホテルローヤルの物語で、第7作が、ホテルローヤルが始まる前の話になっている。実際に刊行されたのも、この順番とのことだ。その発想に驚いた。好きな作品としては、4~6の作品、特に、6作品目の「星を見ていた」は、秀作だと感じた。ホテルローヤル(桜木紫乃)

  • THE PARTNER(JOHN GRISHAM)

    JOHNGRISHAMのパートナーを読んだ。基本的にJOHNGRISHAMの本は、いつか全作品読破を目指している。最近、ちょっと、毛色の違う作品を選んでいるが、これも、今まで、読んだ作品と違っていた。何しろ、主人公は、弁護士ながら、多額のお金を盗んで、自分は、死んだことにして、逃亡しているのだ。しかしながら、そのお金は、悪党が、不法に稼いだ金であり、彼を執拗に追いかけて、捕まえて、どこにお金があるか拷問にかけるのだ。最近読んだジョージオーウエルの1984年にも、凄惨な拷問シーンがあったが、こちらの拷問もえぐいものだった。さて、2転3転の末、結末を迎えるのだが、この結末については、他の書評でも、あまり、感心してないのが多いようだったが、私も、同感だった。思わず、理解が足りないかと、最後の数ページを2度読みし...THEPARTNER(JOHNGRISHAM)

  • 峠しぐれ(葉室麟)

    葉室麟の「峠しぐれ」を読んでみた。何を読んだらよいか迷ったときには、葉室麟の未読の作品を選ぶことが多くなっている。裏表紙には、真摯に生きる夫婦の姿が胸を打つ傑作時代小説とあるが、ちょっと、違和感があった。峠の茶屋の夫婦の物語だ。主人は、実は、あまり聞きなれない流派の剣の達人だ。また、妻は、「峠の弁天様」と呼ばれる、お金のない旅人には、タダで、茶や団子を提供してしまう心優しい美人なのだ。いわくありげな茶屋に、ちょっとした事件が起こり、最初は、まるで短編小説がつながっているかのような印象を持つ。やがて、すべてが、つながって、一つの物語になるのだ。今まで、読んだ葉室麟の作品と、ちょっと、違う感じを持ったが、いつのまにか引き込まれていって、後半は、一気に読み終えた。面白かった。峠しぐれ(葉室麟)

  • 恋牡丹(戸田義長)

    戸田義長の「恋牡丹」を読んでみた。裏表紙に、心地よい人情と謎解きで綴る四編とあるが、なるほどと読んでいると、えっと驚くミステリーのトリックと謎解きが描かれているのだ。主人公は、北町奉行所に勤めるが、早々と引退して息子にあとを継がせる。その親子2代の同心が事件を解決するのだが、普通の時代劇の同心ものと思って読んでいると違うのだ。それが、新鮮でもあり、面白く読めた。恋牡丹(戸田義長)

  • 罪悪(フェルディナント・フォン・シーラッハ)

    先般、過去に読んだ作品を選んでしまったので、別の作品も読みたいと、本書を選んだ。「犯罪」を凌駕する短編集とのことだが、正直言って、少し、この作家の短編に慣れてしまったのか、初めて、「犯罪」を読んだときの、驚きなどは、起きなかった。15作品からなる短編ということで、中には、かなり、短いものもある。最後の作品、「秘密」などは、何と、4ページしかないのだ。まるで、小話のような趣だ。どれも、本当にあった話なのだろうか?だとしたら、世の中には、おかしな話はつきないものだと感じた。罪悪(フェルディナント・フォン・シーラッハ)

  • 博士の愛した数式(小川洋子)

    第一回本屋大賞受賞作の本著を読んでみた。表題に以前から惹かれていたのだが、読んでみて、不思議な魅力を感じた。芥川賞他、いろいろな賞も受賞し、海外でも高い評価を得ている著者とのことだが、なるほどと思えた。80分しか記憶が維持できなくなった数学博士の物語だ。毎回、初対面となってしまう家政婦とその10歳の息子との心のふれあいを描いているのだ。書評を書くのは、きわめて難しい作品だ。ただ、その着想や、アイデアには、感嘆するばかりだ。博士の愛した数式(小川洋子)

  • XO(JEFFERY DEAVER)

    JEFFERYDEAVERのXOを読んだ。キャサリンダンスシリーズなのだが、今までにない試みというか、プロジェクトに基づいて描かれている。魅力的なカントリー女性シンガーが、ストーカーにおびえる。キャサリンダンスの友達ということで、コンサートに私的に応援に行くのだが、そこでも、ストーカーが、現れる。そして、ついに、女性シンガーの元彼で、スタッフが、殺される。個人的な旅行だったキャサリンダンスは、事件に関与しざるおえなくなるのだ。ストーリーとしては、最初は、ストーカーということで、ちょっと、興味を持ったが、ちょっと、無理のある展開、どんでん返しもあり、評価に賛否があるのが理解できた。もうひとつの楽しみは、この物語の女性シンガーが作り、歌っている曲の詩をもとに、事件が起こるのだが、これは、よく、ミステリー小説で...XO(JEFFERYDEAVER)

  • 犯罪(フェルデイナント・フォン・シーラッハ)

    読売新聞の書評を読んで、この本を図書館から借りたのだが、シーラッハという名前に記憶があり、調べたところ、何と、2011年、12年前に、はやり、読売新聞の書評でこの本を借りていることに気が付いた。内容については、まったく、覚えていなかったが、作者の名前のみ薄っすらと記憶があったわけだ。その時のブログの抜粋を書くことにしよう。-------------------------------------------------非常に淡々と描かれているせいか、異様な事件であっても、水墨画で描かれたかのように血なまぐさくないのだ。その中で、最後の作品、”エチオピアの男”が、自分としては一番、好きだったし、救われたような終わり方に好感を持てた。最後に”これはリンゴではない。”という言葉が記されている。何を意味するのか。...犯罪(フェルデイナント・フォン・シーラッハ)

  • 新田義貞(新田次郎)

    新田次郎の「新田義貞」を読んでみた。新田次郎と言えば、山岳ものの小説が多いが、武田信玄などの歴史小説も書いており、面白い。ひとりの作家で、過去、一番読んだのが、おそらく新田次郎の作品だと思う。その中で、最近、新田義貞について、興味を持ち、本作品を読んでみた。新田義貞が、鎌倉を攻め、足利尊氏が、京を攻め、鎌倉幕府の北条氏を滅ぼしたのだが、そのあとに、足利氏の反乱により、足利氏の室町幕府へと移行する。実は、足利氏と新田義貞は、同じ源氏の流れをくむのだが、本家本元を争い、分ちざるおえない間柄だったのだ。長い作品なので、少々、読むのが大変になり、上下巻の下巻からは、かなり流し読みになってしまった。また、各章の終わりに、小さな字で、背景や付記がされているが、ほとんど読む気力がわいてこなかった。しかしながら、新田義貞...新田義貞(新田次郎)

  • 孤狼の血(柚月裕子)

    柚月裕子の「孤狼の血」を読んだ。柚月裕子は、この作品を書くにあたって映画の仁義なき戦いを見て、多いに影響を受けたらしい。物語は、広島、ヤクザとの癒着の噂される刑事、大上に新しい若い部下、日岡が配属される。大上の強引で、違法な捜査に戸惑いながら、日岡は、次第に、魅力を感じ始める。いわゆる悪徳デカなのだが、これほど魅力を感じる悪徳デカを描かれたことがあったであろうか?正義とは、何か?違法でない捜査で結果が出ないよりも、多少、強引でも、結果を出せる方が良いのではないか?不思議な魅力を感じながら、面白く読めた。孤狼の血(柚月裕子)

  • VOID MOON(MICHAEL CONNELLY)

    今年の初洋書は、MICHAELCONNELLYのVOIDMOONを選んだ。MICHAELCONNELLYのシリーズ物ではない作品だ。それだけに、ハリーボッシュや、他のシリーズものと全く違った印象を持った。何しろ、主人公は、女性の盗人なのだ。それからして、いったい全体、どんな作品なのだろうかと思ったが、最初の方は、やや、説明も多く、スピーディーさに欠ける感じがした。勝手、カジノのホテルに入った彼氏の盗人が、失敗して、窓から、落下してしまう。主人公の女性は、共犯として、服役する。しかし、出獄後、カーディーラーで働いている主人公は、再度、盗人を働こうと考える。後半は、サイコパスのような殺人鬼も出てきたり、中々、面白く読めた。さすが、マイケルコナリーの作品にはずれは、ないと感心した。VOIDMOON(MICHAELCONNELLY)

  • 深重の海(津本陽)

    津本陽の直木賞受賞作、「深重の海」を読んだ。津本陽と言えば、時代劇、剣豪の物語と思い浮かべるが、この作品は、まったく違う。紀伊半島の太地湾での、鯨取り漁の物語だ。伝統的な捕鯨漁を生業とする数百人の漁師が小舟を使って、クジラに向かう様子は、まさに、人間と鯨の戦いといっても良い。代々、その組織の頭を受け継いできた若者が主人公だ。面白く読めたが、これでもか、これでもかと、試練が続く。そして、最後も、また、悲惨な終わり方になり、やや、重苦しい読後感となってしまった。そういえば、ちまたでは、大阪の淀川に、よどちゃんと呼ばれたマッコウクジラが舞い込んできて、話題になっており、不思議なタイミングだった。投稿日時<inputid="entry-created-time"class="flatpickr-input"typ...深重の海(津本陽)

  • NINETEEN EIGHTY-FOUR(GEORGE ORWELL)

    GEORGEORWELLのNINETEENEIGHTY-FOURを読んでみた。名作と言われる本作品を急に読んでみたくなった。1949年に全体主義国家によって分割された近未来世界の恐怖を描いているが、まさに、現代において、想起される内容でもあるのに驚いた。第三次世界大戦後、オセアニア(アメリカ他)、ユーラシア(ソ連ほか)イースタシア(中国、日本他)の3つの超大国に分割される。どの国も、一党独裁である。英単語も難解なものがあったが、それ以上に、種々の定義や概念がわからないと理解できない部分が多く、読むのに苦労した。ウイキペディアで、一部、頭に入れてはいたが、それでも、つらかった。ただ、個人の思想や人格を無視した全体主義の支配する世界というのが、いかに、恐ろしい世界かは、理解できた。また、主人公の信念を徹底的に...NINETEENEIGHTY-FOUR(GEORGEORWELL)

  • イン・ザ・プール(奥田英朗)

    奥田英朗のイン・ザ・プールを読んだ。先日、読んだ「空中ブランコ」に負けない面白さに笑えた。5作品のうち、2番目のは、この表題いいの?と思わず、うなってしまった。何と、「勃ちっぱなし」なのだ。現代人がかかえる精神的な病を材料にしているのだが、その解決方法が、奇妙奇天烈なのだ。また、この著者のほかの作品も読んでみたいものだ。自分には、合っているのだから仕方ない。イン・ザ・プール(奥田英朗)

  • 果てしなき渇き(深町秋生)

    「このミス」大賞受賞の本著を読んでみた。正直言って、何が、面白いのかわからなかった。暗くて、不快に感じるだけの作品だった。途中までは、何等かの期待感があった。しかし、何の、ミステリー性も感じなければ、意外性もなく、ストーリー的にも、面白くなかった。この作者の著作は、読むことは、今後、ないだろうと感じた。果てしなき渇き(深町秋生)

  • 人斬り剣、奥儀(津本陽)

    何とも、物騒な表題だ。10篇からなる短編集だが、ほとんど、どれも、十分楽しめた。有名な剣客の話だけでなく、むしろ、あまり知られていない剣客の話が面白かった。例えば、「抜き、即、斬」では、11歳で果し合いをした若武者が描かれる。果し合いを申し出た者が、ほとんど、討たれるとのことだが...最後の2編も、ちょっと、吉村昭を想起させる作品もある。「剣光、三国峠」の戦闘場面は、素晴らしかった。また、囚人が、脱走を企てる「ボンペン小僧」も、気に入った。人斬り剣、奥儀(津本陽)

  • 空中ブランコ(奥田英朗)

    奥田英朗の直木賞受賞作、「空中ブランコ」を読んだ。伊良部総合病院の神経科を舞台にした5編の短編集からなる。どれも、設定がおかしくて、会話も楽しめた。思わず、笑わずにはおれないなんて、久しぶりの快感だった。最近のお笑いは、無理やり笑わせようとしているようなところがあり、この作品群のように、自然に笑わざるおえなくなるのが、新鮮な気持ちだった。このシリーズの前作のインザプールも読んでみようと思う。空中ブランコ(奥田英朗)

  • MAGPIE MURDERS(ANTHONY HOROWITZ)

    久しぶりに、ANTHONYHOROWITZの作品を読んだ。このミステリーはすごい、本屋大賞などなどを受賞したMAGPIEMURDERSだ。こんな複雑なミステリーを書くのは、現代では、アンソニーホロウイッツ以外、いないのではないかと思えるような構成だった。何しろ、ページ数が、通しではないのに驚く。1.殺人事件と2.その作品を書いた作者の殺人事件が進行するのだが、ページが違うのだ。1.ページ1~275,278~3122.ページ1~230、231~234どちらも、複数の容疑者が出てくる。謎解きは、1.名探偵2.編集者となっている。名探偵は、余命宣告されており、殺人事件を解決するのにも時間制限有りという厳しい条件だ。書評を読むと、やはり、肯定的な人もいれば、否定的な人もいるようだ。ミステリー好き、アガサクリステイ...MAGPIEMURDERS(ANTHONYHOROWITZ)

  • 果つる底なき(池井戸潤)

    池井戸潤の江戸川乱歩賞受賞作、「果つる底なき」を読んでみた。江戸川乱歩賞受賞作を読むのは久しぶりだ。直木賞受賞作の「下町ロケット」が、ちょっと、長そうだったという不純な理由からだが、中々、面白かった。元銀行員だった作者の経歴、知識を活かしたリアリティーにあふれた作品だ。友人の債権回収担当の銀行員がアレルギー性ショックでなくなる。その謎を解くべく、組織の派閥に背を向けた男が、動くのだ。面白いのだが、読み終えてみると、少し、無理な筋書きのような気もしないではない。それを、ハードボイルドな雰囲気が消してしまうのが、ちょっと、不思議だ。果つる底なき(池井戸潤)

  • 暗殺の年輪(藤沢周平)

    藤沢周平の直木賞受賞作と他4編からなる「暗殺の年輪」を読んだ。驚いたことに、他4編のうちの3編は、直木賞候補にあがっていたのだ。それだけに、どれも、濃密な作品だった。どれも、後味は、少々、辛めで良いとは言えない。男と女の愛憎や、人間の嫉妬も描かれている。自分としては、直木賞とは関係のない「ただ一撃」という短編が、一番、気に入った。ちょっと、剣客商売の老剣客を思い出す剣客の物語だからだ。暗殺の年輪(藤沢周平)

  • 火天の城(山本兼一)

    山本兼一の松本清張賞受賞作、「火天の城」を読んでみた。巨大な安土城築城の真相に迫る物語だ。なかなか、読み応えのある重厚な時代小説だった。よくこれだけ複雑な物語をまとめあげて一つの小説にできたと思う。後に取材協力先なども記載されていたが、大変だったのだろうなと想像できる。信長の夢、天に聳える五重の天主の城を建てよの号令に答えた棟梁親子の物語だ。無理難題、妨害、困難に会いながら、このプロジェクトを実現していく姿は、何とも、爽快だが、最後は、必ずしも、ハッピーではない。なぜなら、安土城は、今では、焼失しているからだが、その謎にも迫ろうとしているのだ。巨大な蛇石という石が使われたが、それを運ぶため、何百人もの犠牲者が出たという。しかし、いまだ、発掘されてないとは、安土城とは、謎の多い城だと思う。火天の城(山本兼一)

  • 外道クライマー(宮城公博)

    山と渓谷の2018年1月号の中の、登山者のためのブックガイド2018は、登山関係の本を読み漁るきっかけになった。そのノンフィクション部門で、印象に残っていた題名の「外道クライマー」を読んでみた。その表題から、もしかして、ヤーさんかもと想像していたが、それは、あっさり外れた。沢やとして生きる宮城公博氏の冒険の記録なのだ。那智の滝での逮捕の記録があるので、外道というのも一部、あっている。それにしても、すごい冒険の連続だ。どれも、一冊の本になりそうな冒険が、てんこ盛りになっている。特に立山の称名廊下と称名滝の動画がネットに出ていて確認したが、こんな風景が日本にあるなんて信じられなかった。また、タイのジャングル46日間の沢登りなども、いったい、どんな神経の持ち主なのだろうと思ってしまう。ブットい5Mの蛇との格闘の...外道クライマー(宮城公博)

  • 消えた子供(ウイタカ―)

    副題では、トールオークスの秘密と書かれている。英語の表題は、単純に、TALLOAKSとアメリカ西海外の地名だけだ。読売新聞の書評でおすすめであり、CWA(英国推理作家協会)新人賞受賞作だ。CWA受賞作では、たぶん、読んだのは初めてかも知れない。いたって平和な小さな町で、三歳の子供が、嵐の晩に忽然と消える。住民総出で、捜索するも手掛かりも出ない中で、母親は、毎日のように各家を訪問したり、ポスターを貼り続ける。奇妙な住人たちが描かれ、とても、悲惨な子供の失踪事件とは、違ったコミカルな場面も多い。多くの容疑者や怪しい人間も描かれるが、誰も予想できない真相が姿を現す。単純などんでん返しを狙った作品ではなく、不思議なことに、人間の闇と光が描かれているのに好感が持てる作品となっている。不思議な味わいの作品だ。消えた子供(ウイタカ―)

  • 王とサーカス(米澤穂信)

    米澤穂信は、今、最も注目している作家の一人だ。2015年に三つの年間ミステリーランキング一位に輝いた記念碑的傑作と言われる「王とサーカス」を読んでみた。この作家は、前回読んだ短編集「満願」の中にも、海外のビジネスマンを主人公にしていた短編があったと記憶するが今回も、ネパールが舞台となる。ネパールの2001年に実際に起きた国王他が射殺された事件の渦中に、ネパールにきていた主人公は、取材に走る。その中で、ある死体が転がっている現場に行き会う。読んでみて、まったく、新しいスタイルのミステリーだと思った。いわゆる現実の事件の渦中で、同時に起きた別の事件の犯人、関連性を追いかけるのだ。その発想には、どぎもを抜かれた。リアリティーと、ミステリーの謎解きの要素もある作品なのだ。また、別の作品も読んでみたいと考えている。王とサーカス(米澤穂信)

  • THE GHOST(DANIELLE STEEL)

    DANIELLESTTELのTHEGHOSTを読んだ。DANIELLESTTELの本としては、THEGIFT以来2冊目だ。CNNENGLISHTEXPRESSの巻頭インタビューで薦められていたためだ。ストーリーとしては、立ち直れないほどのダメージを受けた妻に裏切られた夫が、夫からのひどい虐待から新天地アメリカに逃げた勇気ある昔の女性の日記を読んで、自分の人生の再生にめざめる物語だ。勇気ある昔の女性は、魅力的に書かれているが、主人公の男性が、少々、女々しく書かれており、書評などでは、賛否両論があるようだ。ダニエルスチールの作品の中でも、お勧めランキングに入ってないのは、そのせいだろう。ただ、勇気ある昔の女性の物語は、中々、面白く読めたし、信じていた妻に裏切られた男の落ち込みようとは、こんなものかも知れない。...THEGHOST(DANIELLESTEEL)

  • 河のほとりで(葉室麟)

    小説だと思い込んで図書館から借りたが、随筆集だった。同じ時代劇作家、歴史作家の作品の書評もあり、なかなか、面白く読めた。また、藤沢周平を読んでみようかとか、山本兼一という作家にも興味を持った。この随筆集の中で、医者にもっと、運動しなさいと言われ、ジョギングを始めたが、その分、腹が減り、食べて、痩せられないと言った文がある。これが、2017年7月だが、葉室麟が亡くなったのが、2017年12月だから、たった、5か月しかたってないのに驚いた。締め切りで、徹夜もある不健康な生活だったらしいが、自分と変わらない年で、亡くなっているのが残念だ。50歳代からデビューということで、12年あまりの作家活動ながら、多くの作品を残して、楽しませてくれている。河のほとりで(葉室麟)

  • いなくなった私へ(辻堂ゆめ)

    「十の輪をくぐる」を読んで、その才能に驚いた辻堂ゆめのデビュー作で、このミスの優秀賞受賞作である本書を読んでみた。ゴミ捨て場で目を覚ました人気絶頂のシンガーソングライターの女性が、誰からも認識されず、自殺したとニュースが流れているという設定から始まる。何とも、無茶苦茶な設定で、このミステリーどうまとめるのだろうと心配しながら読み終えたが、結果は、見事の一言だった。今まで、知らなかった若い作家の中に、とても、才能豊かな人が多く、彼女も、その中の一人だ。本書を書いたのが、22歳くらいの時で、まだ、31歳だ。最後のエピローグでは、感動で、目元が緩む気持ちの良い終わり方も味わえた。もっと、他の作品も読んでみたくなる作者だ。いなくなった私へ(辻堂ゆめ)

  • 水よ踊れ(岩井圭也)

    驚くべき才能の塊の作家が現れたものだ。デビューして5年、まだ、35歳という。香港で、一人の少女がビルの屋上から事故で落ちた。日本人の青年は、恋人だった少女の死の原因を調べるため、建築学院の交換留学生として、香港の地を再び踏む。当時、香港は、英国から中国へ返還されようとしており、一国2制度など信用しない学生運動が起きていた。香港の問題、現代、将来を描いただけでなく、人間としての生き方、恋愛までも、描いている。これだけ、重厚な作品を読んだのは、久しぶりのような気がする。他の作品も是非、読んでみたいものである。水よ踊れ(岩井圭也)

  • PRAYING FOR SLEEP(JEFFERY DEAVER)

    JEFFERYDEAVERのシリーズものでない作品の中から、比較的初歩の作品(1994年)を選んでみた。精神病院から脱走した男は、殺人事件の犯人でもあった。証言した女への復讐を果たすために脱走したと考えられ、彼女の夫、元警官、主治医が、それぞれの想いを持って、追跡を開始する。戦慄のサイコ・サスペンスとあるだけに、ホラーに近い緊迫感を味わえる。今まで読んだジェフリー・ディーバーのどの作品とも違う感じがした。前半は、やや、じれったくなる感じもしたが、最後の50ページは、一気に読めた。PRAYINGFORSLEEP(JEFFERYDEAVER)

  • 蜜蜂と遠雷(恩田陸)

    直木賞受賞作のおすすめでは、常にトップくらいに入ってくる本屋大賞も受賞の恩田陸の「蜜蜂と遠雷」を読んでみた。ピアノコンテストでの若きピアニスト達の苦闘を描いた秀作だ。以前、テレビで、浜松のピアノコンテストのドキュメンタリーを見たが、それが、思い出された。クラッシック音楽は、正直言って、門外漢ではあるが、息子が、オケに入ってたため、オケを聞きにいく機会はあった。この作品は、上下巻にわたり、長いのだが、あっという間に読み終えた。それだけ、夢中にする話運びなのだ。驚いたのは、音楽を言葉で表現する著者の卓越した表現力だ。それがあって、読者に、その場の臨場感であったり、その音楽の素晴らしさ、その演奏の素晴らしさが伝わってくるわけだが、十分、目的は達成できたのではないかと思う。蜜蜂と遠雷(恩田陸)

  • 人工知能で10億ゲットする完全犯罪マニュアル(武田人造)

    読売新聞の書評で興味を持った武田人造氏の早川SFコンテスト優秀作の本作を読んでみた。興味を持ったのは、著者の名前と、AI(人工知能)からだ。SFと呼べる作品を読んだのは、いったい、いつ以来だろう?子供の時は、ジュールベルヌファンだったし、映画では、スターウオーズや、スタートレックなどSFも、結構見ている。本作は、SFと言っても、近未来であり、人間臭さがプンプンにおう作品だ。しかし、AIだったり、ドローン兵器などは、がんがん出てくる。登場人物のキャラが濃いのが、本作の面白みをアップさせている。特に、主人公は、人口知能技術者なのだが、悪事は、反対なのだが、技術者の好奇心をくすぐられると、悪事に加担してしまうのだ。不思議なのは、ドローン兵器などが出てくるのだが、不思議と、残酷なシーンがないのがホットするところだ...人工知能で10億ゲットする完全犯罪マニュアル(武田人造)

  • 吉原手引草(松井今朝子)

    直木賞のおすすめに入っていた本書をよんでみた。花魁の頂点にたつ葛城が、忽然と消えた。一体何が起きたのか?失踪の謎を追うため、関係者のひとりひとりと、葛城について話を聞いてゆく。吉原そのものを鮮やかに描き出した時代ミステリーの傑作。と背表紙にうたっているが、まさにその通りだろう。まるで、ミュージカルのコーラスラインを想起させるインタビュー形式の物語だ。いつまで、続くのかと思いきや、最後まで、この形式は続く。そして、最後の方まで、いったい、どんな事件が、起きたか判らないようにしているのが、素晴らしい。吉原手引草(松井今朝子)

  • ANGELS FLIGHT(MICHAEL CONNELLY)

    MICHAELCONNELLYのANGELSFLIGHTを読んだ。久しぶりのせいか、ちょっと、読みにくく感じた。というか、序盤は、少し、じれったい、ストレスのたまる展開だった。しかし、中盤くらいから、徐々に展開が早まり、終盤になる直前で、崖っぷちから落とされ、そこから、意外な終局に導かれた。ストーリーは、黒人の人権問題を扱う弁護士と、たまたまそこにいた女性がANGELSFLIGHTと呼ばれるケーブルカーで殺害される。その弁護士は、ロサンゼルス警察の警察官を告訴して恨まれていたため、警察官が犯人ではないかと疑いをもたれる。二人の黒人の部下を持つボッシュが、人種差別のない公平な捜査をイメージするため、任命される。そこに、ボッシュの妻、エレナ―との愛情のもつれも、描かれる。ボッシュシリーズは、まったく、順序不動...ANGELSFLIGHT(MICHAELCONNELLY)

  • 生存者ゼロ(安生正)

    このミステリーがすごい大賞受賞作のおすすめのひとつの本作を読んでみたが、本当に、すごいと感じた。北海道の沖に浮かぶ石油掘削基地で無残な死体が発見され、自衛隊員の主人公が調査に派遣される。また、更迭されていた天才的な感染症学者が、調査に駆り出される。北海道はもとより、日本の存亡をかけての危機的な惨劇が起きようとしているのだ。これを読むと、東日本大震災当時の無能な政府を連想する政府が登場する。また、現在、コロナ感染が世界的に大問題になっているが、本作は、2014年に刊行されているので、コロナ感染前の話なのに、まるで、予期していたかのような内容であるのに驚く。また、その感染症や、自衛隊などについての知識には、びっくりする。後半は、まさに、ページターナーと言って良い勢いで、読み進めた。面白いの一言だ。生存者ゼロ(安生正)

  • チーム・バチスタの栄光(海堂尊)

    このミステリーがすごい大賞受賞作のおすすめの一つの本作品を読んでみた。以前、テレビで、海堂尊氏のインタビューも見たことがあるので、気にはなっていた。医師である海堂尊氏だから書ける非常に専門的な知識を駆使した作品である。連続術中死発生の調査を命じられた外科とは全く無関係な医師の物語だ。読んでみて、ちょっと、評価に困った。とてつもなく面白い部分があるにも関わらず、いくつか自分には合わないなと感じる部分もあったからだ。合わないと感じたのは、1.不愉快な登場人物が出てくる。2.動機に納得がいかない。3.トリックが、専門的すぎ。4.意外性を狙いすぎ。などなどだ。表題がかっこ良いので、期待したストーリー展開と異なったせいかも知れない。ドクターXや、ブラックジャックなど、医療関係の物語は、結構面白いのだが、どうしても、...チーム・バチスタの栄光(海堂尊)

  • カリフォルニア・ガール(T.ジェファーソン・パーカー)

    T.ジェファーソン・パーカーが、米国のエドガー賞を2度目に獲得した「カリフォルニア・ガール」を読んでみた。最初の受賞作、「サイレント・ジョー」に負けない厚さ(646ページ)にちょっと、疲れたが、読み終えると、その満足感に浸ることができた。首を切り落とされて殺害された女性の幼いころを知るベッカー家の4兄弟の物語だ。長男は、牧師。次男は、刑事。三男はベトナム従軍。四男は、記者。とそれぞれの人生の中で、事件に関わっていく。面白いのは、ニクソンが副大統領で出てきたり、チャールズ・マンソンがフォークシンガーとして出てきたり、実名で出てきて、リアリティーな雰囲気を出している。アメリカのその時代の風俗を描きながら、読み切れないミステリーを仕上げた作者の力量に感嘆する。また、その終わり方も素敵な終わり方だ。傑作と言って良...カリフォルニア・ガール(T.ジェファーソン・パーカー)

  • THE PELICAN BRIEF(JOHN GRISHAM)

    JOHNGRISHAMの洋書も、20冊目になった。前から読みたい本ではあったが、読んでみて、その着想の素晴らしさに驚いた。また、JOHNGRISHAMの今まで読んだどの本とも、ちょっと、違う印象を持った。いわゆる、逃亡劇、スパイ物などに近いのだ。しかし、難点もいくつかあった。一つは、登場人物の多さである。登場人物の名前をメモしながら、読み進めたが、おそらく、過去読んだ洋書の中で、一番から2番かの多さだった。また、もうすこし、スピーディーに展開させた方が、ハラハラ、ドキドキだったのではないかとも感じた。ストーリーとしては、二人の最高裁判事が暗殺される。その犯人像をある法学部の女学生がレポートとしてまとめる。そのレポートが彼氏でもある教授から、友人のFBIの顧問弁護士に渡ると、今度は、その教授と女学生にも、魔...THEPELICANBRIEF(JOHNGRISHAM)

  • 鍵のない夢を見る(辻村深月)

    直木賞おすすめミステリートップ10の一つの本作品を読んでみた。アマゾンでは、評価が分かれることもあって、どうしようか迷ったが、読んでみて、なるほど、評価が分かれるわけだと思った。5作品の短編集になっている。例えば、最初の作品の題名は、「仁志野町の泥棒」のように実在しない地方の町に起こった事件名になっている。残りの4作品も、放火、逃亡者、殺人、誘拐となっていて、このアイデアは、中々のものだと感心した。最初の作品が、一番、気に入った。読みやすい文体で、人間と人間の関わりや、記憶や、人それぞれの重さの違いなど、いろいろなことを想起させる作品だった。期待して、2作目以降を読み進んだが、正直言って、徐々にがっかりしていき、最後の作品の時は、流し読みになってしまった。アイデアに溺れて、無理やり、創作した作品群のような...鍵のない夢を見る(辻村深月)

  • 裏切りの日(逢坂剛)

    確か、読売新聞の書評で見て、読んでみようと思った。逢坂剛の長編処女作である。逢坂剛の「百舌の叫ぶ夜」のテレビドラマは、結構、見ていたが、小説を読むのは初めてだった。人質を盾に、ビルの9階からエレベーターで1階に降りた犯人は、消えていた。犯人は身代金も、放置して逃げたのだ。一方、同日、右翼の大物が、近くのマンションで、狙撃される。二つの事件に絡んでいた二人の公安の刑事の物語だ。文句なしに面白い小説と言えるのではないか。それは、意外性、トリック、キャラクターなどからだ。ただ、読後感が良いかと言えば、それほどではないかも知れない。直木賞受賞作もあるというので、いつか、読んでみたいものだ。裏切りの日(逢坂剛)

  • 黄色い牙(志茂田景樹)

    直木賞受賞作のお勧めで、絶版になったが、再刊された本書を読んでみた。志茂田景樹と言えば、何十年も前だが、その風体に驚いたものだ。その風体と、この作品のギャップに更に驚かされた。まさに、硬派な真面目な作品、名作なのだ。何しろ、またぎの世界、熊と人間の対決を描いた作品なのだ。きっかけは、志茂田景樹の父が、北海道で働いていたおり、皆でヒグマを狩った記念写真が送られてきたそうだ。おそらく、この作品を描くにあたって、相当、またぎの世界を勉強したに違いないと思った。人は、見た目で判断してはだめだという言葉を思い出した。黄色い牙(志茂田景樹)

  • THE NOTEBOOK(NICHOLAS SPARKS)

    NICHOLASPARKSのTHENOTEBOOKを読んだ。213ページで、英語も平易であったため、2週間かからず読むことができた。ジェフリー・アーチャーの7冊を読み終えた中で、ちょっと、毛色の違った本を読みたくなった。「君に読む物語」という日本語訳で有名であり、映画化もされているので、以前から、興味があった。アマゾンの評価の中にも、その静かな文体と流れに、深呼吸の心地よささえ覚えます。一文一文の温度と湿度、音を感じ取って味わって読んでください。二人の心の動きが、文字から静かに響いてきます。初めてのペーパーバックとして、お勧めします。と絶賛しているものがあったが、わかるような気がする。美しい詩が引用されているが、それをもっと、理解できてたらなあと度々、感じた。ストーリーは、前半と後半に分かれる。前半は、離...THENOTEBOOK(NICHOLASSPARKS)

  • 私が殺した少女(原寮)

    直木賞お勧めミステリートップ10から、本書を選んだ。裏表紙に、緻密なストーリー展開と強烈なサスペンスで独自のハードボイルド世界を確立し、日本の読書会を瞠目させた直木賞受賞作。とある。読んでみて、なるほどなという感じだ。この作品は、著者の2作目だそうだが、1年半を要したという。まず、その設定には、驚かされる。探偵が出てくるのだが、その探偵が、いつのまにか、誘拐事件に巻き込まれていくのだ。とても、現実離れしていると思われるストリーだが、それが、そうでもなく感じる不思議な筆致なのだ。少々、長くかんじながら、面白く読めたし、それなりに、満足もできた。あまり、ストーリーの内容については、触れないでおこう。私が殺した少女(原寮)

  • THIS WAS A MAN(JEFFREY ARCHER)

    クリフトン年代記全7巻を読み終えた。長かったが、まあ、飽きずに読み終えた。この7巻目は、少々、今までの、嵐のような出来事もなかったので、それほど、わくわく、ひやひやする展開は、少なく感じたが、それなりに、面白かった。特に、ベルリンの壁の崩壊が描かれ、その場を訪れ、壁のかけらを取りにいく姿が描かれたりする。ベルリンの壁の崩壊に歓喜し、自由を謳歌した者が多くいた中で、おそらく、プーチンは、ロシアの権力の衰退としか感じなかったのだろうかと考えしまう。そして、いつか、また、復権するのだと決意したのだろうか?ロシアの作家がスターリンのことを書いたがために、監禁される。主人公は、この作品を、出版し、このロシアの作家を解放させるため、尽力する。これなども、まさに、今、起きている現実の世界に近いものである。プーチンは、ス...THISWASAMAN(JEFFREYARCHER)

  • 無間人形(大沢在昌)

    大沢在昌の新宿鮫シリーズで、直木賞受賞作の無間人形を読んでみた。これも、直木賞お勧めミステリーにランクされていたものだ。新宿鮫という言葉は、映画化されているせいか、何となく耳にしているが、確か、真田が主役だったと記憶しており、そのせいか、もっと、アクションが多いかと思っていた。著者いわく、誰でも思いつくような話を、誰が読んでも面白いと思わせるにはどうしたよいか考えたというだけあって、特別な展開やトリックがあるわけではないが、面白く読めた。無間人形(大沢在昌)

  • 春風伝(葉室麟)

    葉室麟の本格歴史小説、「春風伝」を読んだ。葉室麟の小説は、ジャンルは違うが、新田次郎と同じく、いつか、全作読んでみたいと思っている。それだけ、どの作品も、読後の満足感が高い。この作品は、高杉晋作の生涯を描いたものだ。正直言って、時代劇小説ファンなのだが、維新の有名人ながら、高杉晋作については、あまり、知ってなかった。どこか、坂本竜馬と混乱しているところがあったが、おそらく、高杉晋作が持っていた拳銃を坂本竜馬にあげたりしたせいかも知れない。また、奇兵隊と海援隊を混同していたのかも知れない。今回、高杉晋作の生涯を読んで、いかに魅力のある人物であるかがわかった。わずか、28年かの人生だが維新10傑の一人と言われるだけのことはある。,春風伝(葉室麟)

  • 錨を上げよ 4.抜錨篇(百田尚樹)

    「錨を上げよ4.抜錨篇」を読み終えた。結論から言うと、この4巻目は、結構面白かった。特に最後のエンディングも気に入った。第一巻と第四巻は、ちゃんと読んだが、第2巻は、流し読み。第3巻にいたっては、ページをめくって、ところどころ字を追っただけながら、まあ、それは、それで、自分の辛抱のなさだったのかも、しれないが、致し方ないとも思う。第四巻は、347ページなのだが、本文は、304ページまでだ。ということは、最後の解説と著者のあとがきが、43ページと長い。おそらく、私が読んだなかで、一番の長さかも知れない。内容についていうと、女に翻弄された人生を送る主人公だが、主人公にとって、一番は、愛に生きることだったのだ。しかし、それは、簡単そうで簡単ではなかった。そこに太い幹になるテーマがあったということだと気が付くと、この長...錨を上げよ4.抜錨篇(百田尚樹)

  • COMETH THE HOUR(JEFFREY ARCHER)

    クリフトン年代記の6作目を読み終えた。悪いやつらが一掃され、念願のセバスチャンとサマンサの再会や、ロシアの作家がノーベル賞受賞により、牢獄から出獄など、良い展開になるかと思いきや、エンディングでは、更なる展開が起きるという目まぐるしい物語だ。しかし、その展開の速さが、飽きずに読み続けられる理由だ。COMETHTHEHOUR(JEFFREYARCHER)

  • 鉄道員(浅田次郎)

    浅田次郎の直木賞受賞作、「鉄道員」を読んだ。直木賞受賞作のお勧めトップ10にも入っている。直木賞は、長編だけでなく、短編集も入ることがある。この鉄道員も8篇の珠玉の作品集だ。「鉄道員」は、高倉健の映画で有名だが、実際には、見ていないが、高倉健のポスターは印象に残っている。解説を読むと、熱烈なファンには、4派にわかれるという。「鉄道員」「ラブレター」「角筈にて」「うらぼんえ」の4派らしい。女性ファンには、「ラブレター」が人気があるらしいが、私も最初に読んだときには、これが一番と感じた。最後の浅田次郎のあとがきにかえてを読むと、浅田次郎のひととなりが見えてくる。長編で、直木賞の受賞を逃した失意の中で、この初めての短編集を出したところ、直木賞を受賞したらしい。奇蹟をモチーフにしたものを集めたらしいが、浅田次郎自身は、...鉄道員(浅田次郎)

  • 風の市兵衛(辻堂魁)

    久しぶりにキンドルを充電してみて、読んでない時代劇小説があったので、読んでみた。TVでも、向井が主人公を演じた算盤さむらいこと、風の市兵衛だ。なかなか面白かった。だから、その後、シリーズものとして30巻も続き、テレビ化もされたのだろう。一気に、2日で読み終えた。流し読みではなく、堪能しながら読んで、2日で読み終えたのだから、いかに、面白かったかがわかる。テレビでも見ていたので、主要登場人物のイメージが、ぴったりなのもわかった。追記:2015年に読んでいることに気が付いた。しまった!面白かったのだから、まあ、いいか。風の市兵衛(辻堂魁)

arrow_drop_down

ブログリーダー」を活用して、thomazさんをフォローしませんか?

ハンドル名
thomazさん
ブログタイトル
ミステリーな森の生活
フォロー
ミステリーな森の生活

にほんブログ村 カテゴリー一覧

商用