かぐや姫2

と、そのときである。いきなり後頭部にがつん！と来た。油断していたせいか、まったく気配を感じなかった俺は振り向きながら「何すんだ！このやろ～！！」と凄んだ。「えっ？ 葵？ お前いつ入ってきたんだよ」「なぁにぃが～“カノジョというか、何と言うか”で

かぐや姫1

新宿東口側にある居酒屋の暖簾を出てきた酔いどれ学生の群れの中に俺は居た。退屈なゼミの飲み会がやっと終わったところだ。2次会をパスした俺は、新宿通りを四ツ谷方面へ向けて足を進めた。「息吹く～ん！ちょっと待ってよ～」さっきまで嫌というほど聞かされた声

招き猫5

俺は美香をタクシーに乗せ、西麻布のワンルームマンションへ連れて来た。ここは、俺が裏の仕事用に借りているアジトのひとつだ。美香をソファーに座らせ、落ち着かせようとサイフォンでコーヒーを淹れる。湯気と共にウルトラマンデリンの芳醇な香りが漂ってくる。マグカップ

招き猫4

「プリクラに美香＆初枝って書いてあるけど、初枝ってもしかしてこのコ？」放心状態の美香を横目に渚に質問をぶつける。「そう。アタシはこの間紹介してもらったばかりなんだけど、美香とは小学校の頃からの付き合いで、彼女の親友なの。でも何で初枝が死体で･･･」「ア

招き猫3

6日後の水曜日、午後9：00。俺は歌舞伎町の一角に佇んでいた。シルバーナイトと書かれた電飾の下に立った瞬間、木製の重厚なドアが開いた。「いらっしゃいませ」2名の黒服が俺を迎えた。最近では、ホストクラブに来る男も珍しくはないらしく、その黒服たちは特別奇異

招き猫2

健一と別れた俺は自慢のロレックスを見て、げっ、もう3時10分じゃないか！彼女の杉原葵との待ち合わせの時間をとうに過ぎていることに気づき、慌ててその場所へと急いだ。やばっ、3時の約束だったのに20分も遅れちまった。待ち合わせのバーガーショップに足を踏

招き猫

世の中には常識では考えられないような不思議な出来事が数多く存在している。しかしそういった類の事象から、常識という概念の範疇を日常としている人間の大半は、目を逸らして暮らしている。実は俺たちが暮らす日常には、もう一つの世界が表裏一体といったカタチ