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誉の日記的物語 https://www.homarex-homare.com/

日記がてら書きたい事を好き勝手に書いています。 小説を書いており面白い小説がかけるようになりたいと、構成などはちゃめちゃですが書いてます。 読んで頂けると嬉しいです。どんな事でも意見貰えると助かります。

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2019/01/19

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  • 感性のままに

    ストーリーに矛盾がないように書いたつもりだが、ほんの隙間時間にふと書きたくなった。 文字と文章が溢れ出る…漏れ出すの方が近いのかも。 なんだか凄く文字に触れたくなる時間だった。

  • 籠り物語 シーズンⅡ

    素直ではない自分を一番良くわかっているのは自分自身で、どうしても無邪気になれない若者。 心の中では勿論嬉しい気持ちもあるのだけれど、何がそうさせたのか卓は今一感情を表に出す事が上手ではなかった。 雪山でのシーズン幾度となく顔を合わせるであろう新しい仲間との出逢いをぼんやりと頭の中に漂わせながらその日の1日が終わりに向かう。 風呂で頭をのぼせさせリフレッシュする卓。「のぼせるまで風呂はいったら頭のなかはぼぉっとしてスッキリするんだぞ」従兄弟のおじさんの言葉をそのまま再現した。 部屋に戻る頃には素直に新しい仲間との出逢いを喜んでいる事に気がついた卓は、少し嬉しい気分でホッとしながら布団に横たわり、…

  • 籠り物語 シーズンⅡ

    その後、ガミくんとフリーランを数本流し仕事に戻る時間が近づいてきた。「僕これから仕事なんでこのまま上がって親のはらの方まで流します」「わかったよ。じゃあまた逢ったらぜひ」ガミくんが声をかけたのに対し卓は軽く振り向いて手を挙げ、目当てのリフトへと既に向かっていた。久々に誰かとスノーボードをした卓は新鮮な楽しさを感じたが、申し訳ない気持ちも同時に抱いていた。 誰かと滑る事は確かに楽しいのだが、卓は同程度に、自分の滑りを妨げる事無く、むしろ必死になるぐらいの相手でない限り自分をあげる事はできないと感じてしまっていた。 プラスとマイナスが入り交じった、少し居心地の悪い気分を吹き飛ばす様にノンストップま…

  • 籠り物語 シーズンⅡ

    そんなマニアックな追及を日々黙々とこなす卓の事などお構いなしに、リフトに一人のスノーボーダーが滑り込むように相乗りしてきた。 「すいません、突然」スノーボーダーにしては礼儀は欠かないタイプなのだと、少しホッとした卓だった。「さっきハン3滑ってるの後ろから見て、必死に追いかけたんですけど見失って、さっき見かけたので急いでこっち来たんです」興奮気味に勢い良く話始める。「そうだったんですね、なんでまた?」卓は本当に謎でしか無く、なぜという思いしか無かった。「あんな滑り見たら誰だって話かけたいと思いますよ!あっ、すいません。俺ガミくんってあだ名なんでよろしくです」「僕は卓です、よろしくどうぞ」自分が褒…

  • 籠り物語 シーズンⅡ

    パンパンになった足をクールダウンするように緩やかに緩斜面を惰性で流す卓はえらく満足そうな立ち振舞いに見えた。 卓は珍しくフラットバーンをこよなく愛するグラトリライダーの集うコースへと降りてきた。なんのきっかけもないはずのフラットバーンも、彼らの手にかかればそこに何かがあるかの如く、平気で3D回転をやってのける強者まで居た。 卓は疲れる事はしないタイプでグラトリはてんでダメだった。だが、自分に無いものを持ったライダー達を尊敬するかのように、物珍しい物を見るように、辺りをキョロキョロとしながらリフト乗り場へと滑って行った。 リフトに乗った後も卓は食い入るようにコースへと目をやり、彼らの動きを熱心に…

  • 籠り物語 シーズンⅡ

    少し寂しさを感じるゴンドラを後に卓はゆったりと、自分の感覚と雪面を感じとるように目的のコースへと滑った。 そこは荒れ果てた不正地のような状態でモーグルコースのように至るところにコブができていた。普段からモーグルコースが好きでモーグラーに憧れを抱いてリスペクトしている卓は、いつか本気でモーグラーとデュアルがしたいと日頃からモーグルバーンを滑っていた。 そんな卓にとって少々荒れたバーンなど気にもならなかった。 コース脇にはコースの事を知らない初心者達が迷い混んで、絶望し座りこんだり、必死にコブを滑り降りようと挑むライダー達がちらほらといた。 卓はお構いなしにコブをしっかりと1ターンずつ丁寧に攻略し…

  • 篭り物語シーズンⅡ

    中間駅へと一気に滑った卓は、足元が甘い感覚を感じひとまず滑りこむ事にした。いつものパウダーばかりを滑るのではなく、斜度がきつく荒れがちな通称ハン3を流す事にした。 中間駅から再びゴンドラへ乗り目当てのコースへと向かう事にした。年末に居た頃とはゲレンデにいる客層はがらりと変わり、篭りの人間ばかりが山に残り若いライダー達が多く居た。 馴れ合うように滑るグループ、卓のように黙々と滑るライダー、様々なタイプの篭りがゲレンデには居た。 卓はそんな篭りの人間と相乗りする事になった。無口な卓はイヤホンをしたまま音楽を聞きぼぉっとしていた。 そんな卓を他所に何やら盛り上がっていた。それでも卓は空気のようにそこ…

  • 篭り物語 シーズンⅡ

    ハイシーズンの白馬、卓が戻ったタイミングは絶好のパウダーチャンスだった。狙いは山頂からのパウダー一択で、他には目もくれずそのコースへと向かった。 昼頃のためコースは既にトラックが何本も入り喰われ放題となっていた。だが、卓はそんな事は気にも止めず気持ちを高ぶらせていた。 与えられた環境で人がしない滑りを全力でできてこそ滑る甲斐があると言う持論があっての事だった。チマチマ人の残飯を処理する様な小さな滑りはしないと言わんばかりに、あれたバーンを敢えてロングターンで豪快に残りのパウダーを食い尽くす。 マニアックな人間が見れば、これ程ネジの飛んだ滑りをするライダーは数多くはないだろう。 荒れたバーンをも…

  • 篭り物語 シーズンⅡ

    安堵と安心感からか卓はもう少し康めしをおかわりし、滑りに行く事にした。卓の中のモヤモヤは少しずつだが着実に晴れていく。 久々の白銀の世界に降り立った卓の背中は少し大きく見えた。卓は大きく息を吸い込む。肺のなかを切り裂くような冷たい空気が充満する。「帰ってきた、やっぱりここやな」そうボソッと呟くと、いつもの様に自販機で缶コーヒーを手に入れてゴンドラへと乗り込んだ。 いつものゴンドラの景色は、卓が大阪へ帰っている間も変わらずに卓を迎えてくれた。清々しい晴れた気持ちで見るゴンドラからの景色は、また一段と輝かしい物に感じられた。 中間駅を越えた辺りから、マナー違反のタバコに火をつけ缶コーヒーで一服を始…

  • 籠り物語 シーズンⅡ

    「なにせ仕事の事は心配せんでえぇから安心しよし」「わかりました。ありがとうございます」「ほんで例の彼女はどうなったん?」チカさんは悪戯な笑みを浮かべ卓に尋ねた。 卓はたまにチカさんや康之さんにそういう話をしていたのだ。 「あぁ、別れてきました。腹くくってたはずやのに以外と悲しいもんなんですね。」卓は少しうつむいた。「でも、自分で決めた事なんで後悔はしてないです。それに、こんなん言うてたら別れた彼女に失礼なので」「あんたにもそういう気持ちがあるの聞いて安心したわ」チカさんは優しく、だが少し悪戯な笑みを浮かべた。「なんや言うてあんたは優しいのわかってるから心配はしてなかったけどな」「そう言ってもら…

  • 籠り物語 シーズンⅡ

    久々の康めしはやはり絶品であった。 少食の卓は普段一般男子の半分程の量しか食べないのだが、康めしの時は大皿に大盛りをぺろりと食べるのだ。 「あんたほんまにこれだけはようさん食べるでなぁ。普段からそんだけ食べたらこっちも作り甲斐があるんやけど」「これだけは別物なんです」そう答えた卓は、ふと気になる事があった。 「そういえば、たかしはまだ帰ってきてないんですか?」この質問に康之さんとチカさんは顔を見合わせた。それから康之さんが「たかしもう来えへんらしいわ、親族がどうこう言うてたけど実際はよくわからん。まぁ本人が決めたんやからしゃあないけどな」「そうなんですね、まあしゃあないですよね。僕はスノーボー…

  • 籠り物語 シーズンⅡ

    時計の針は12時近くを指していた。神戸屋の安心感にすっかり寝入ってしまっていた。 一眠りし、すっかり元気になった卓は今度こそ滑りに行く準備を始める。「ガタン、卓起きてるか?昼飯食うか?」康之さんの声だ。急いで屋根裏のはしごへと近寄り下を覗く。「気づいたら寝てました。お昼頂きます」「りょうかい。滑りに行くんか?」「はい。今用意してました」「ほな用意できたら降りてきい。飯用意しとくから」「わかりました。ありがとうございます、すぐ行きます」 卓はウェアのパンツを履き、ジャケットと小物を持って下に降りる事にした。 厨房には既にお昼ご飯が用意されていた。神戸屋の康之さん特製やきめし、康めしだ。これに味ぽ…

  • 籠り物語 シーズンⅡ

    今回は到着日時と大体の時間を神戸屋へと伝えていたため、バスで到着した時には見覚えのあるバンが既に卓を待ってくれていたのだ。 車へと近づきドアを開けると康之さんだった。「ただいまです、朝から迎えありがとうございます」そう言って車へと乗り込んだ。「お帰り、長旅ごくろうさん。ほな行くで」 卓を乗せた車は見慣れた雪道を勢い良く走り抜け、あっという間にペンションへと到着した。 「ありがとうございます、早速着替えて仕事しますね」そう言って降りようとした卓に「今日は朝はえぇよ、寝るなり滑りに行くなり自由にしとき」 バスの長時間の移動で疲れた卓にとって、この言葉は有難い事この上無かった。 「わかりました、あり…

  • 籠り物語 シーズンⅡ

    卓は別れも早々に出発の準備をして、夜行バスの出る新大阪へと向かった。 さっき別れ話をした後とは思えない程ドライな感覚で電車に揺られる。 新大阪のバス乗り場にはスキー・スノーボードツアーに向かう客でごった返していた。 卓はバスを待つ。 隅の方で人の居ないスペースに荷物を起き、その上に座り込み携帯灰皿を片手に煙草を吸った。いつも楽しそうな話し声、仲間内で盛り上がるその姿を見て、一人で白馬へ向かう卓は、少し寂しい気持ちになるのだった。 乗り込むバスが到着し案内が始まる。一人であるという姿を隠すかのように、そそくさとバスへと乗り込むのだった。 いつもの如く数ヵ所のサービスエリアでバスは止まる。卓はトイ…

  • 籠り物語

    「まぁせやな」卓も微笑した。 このやりとりのおかげで空気は少し和らいだ。「中途半端な気持ちで関係を続けるのはなんか違う気がすんねん。白馬に行ってせっかくスノーボードにも集中できる環境やし。この中途半端にミホを繋ぎ止める時間も勿体ない時間になるやろし」 卓は自分の都合の良い事ばかり言っている事は自覚しているのだが、本心でミホの輝かしい今の時間を無駄に過ごさせている事に責任を感じていた。無論、高校生の恋愛でそこまで重たく考えるのは珍しい事のようにも思えるのだが… 「うちも卓にはせっかくのスノーボードやし思いっきり楽しんでほしいと思う。卓はきっと言い訳してるみたいで嫌な気分で今喋ってくれたんやろうけ…

  • 籠り物語

    テスト最終日の夜行バスで再び白馬へと戻る予定なのだが、今回の大阪での最大のミッションが今日残されていた。 テストを終え家へと帰った卓はひとまずゆっくりする事にした。 夕方頃から彼女と逢う約束をしていた卓は、先に白馬へと戻る準備を終わらせてその時を待った。 彼女からメールが来た。卓は原付で彼女の家へと向かう。慣れた裏道を通れば信号に一つもかかる事なく10分程で辿り着いた。 家の下で彼女のミホは待っていた。その雰囲気からどんな話になるのか既に悟っているようだった。 「おつかれさん、お待たせ」「おつかれさま」どことなくぎこちない雰囲気が漂う。 卓にとってもミホにとっても話す事は山程ネタとしてあるはず…

  • 籠り物語

    大阪での学校生活へと戻った卓は日々退屈な学生生活を送っていた。 卓は中学の頃から学校が好きでは無かった。友達とも普通に遊ぶし部活もする、しかし、家で一人ゲームをしている時間が一番幸せな時間だった。 何の刺激もない学校生活を淡々とこなし、3年生最後の学年末テストが始まる。 日々の授業をこなすだけで卓にとってテスト勉強等は不要だった。 卓の成績は学年2位だが、クラスでは常にトップだった。 そんな卓はカンニングという行為など全く興味が無いものだったが、仲の良い隣の席の本田をいつも助けていた。 卓のカンニングの手助けはこの上なく大胆なやり方だった。 コソコソと答案を見せるやり方がただ面倒だったのだろう…

  • 籠り物語

    フロントのチカさんを呼びに行き皆で夕食を食べた。 卓はそれほどゆっくりしている時間が無かった。 神戸屋はこれから宿泊客の夕食が始まる。卓はオーナーに夜行バスの乗り場まで送ってもらう事になっていた。 車で送ってもらう道中「学校頑張っておいでや、また戻ってくるの楽しみにしてるからな」そう優しい言葉をオーナーは卓へとかけてくれた。 今晩はまた雪が大量に降り注いでいる。車の窓からそれを焼き付けるように外を眺める。 大阪へ戻ってからの事は後回しにしよう、今はこの景色とこの時間を最後の最後まで噛み締めよう。 また戻ってくるのだからここまで神妙になる事はないのだけれど、卓にとっては今回大阪へ戻るにあたって、…

  • 籠り物語

    帰り支度を済ませ荷物を持って下へと降りた。 自分のために夕食の準備をしてくれている厨房へと行き、いつも通り準備を手伝った。 「そういえばタカシも学校ちゃうの?」「俺は明日帰るよ」「そうか、また来るんやろ?」「そのつもりやで」タカシも同様に卒業の年のため一度名古屋へと帰るのだった。 そんな二人の会話を聞いて康之さんは「しっかりテストクリアして来いよ、補習とかなったらめんどくさいからな」しかし、卓はそんな事全く気にしていなかった。「それは全然大丈夫です、こう見えて優秀なので」卓は自信満々に答えた。 それを聞いたタカシは「僕はなんとか頑張ってきます」そう答えた。「しっかり頼むで。卓えらい余裕やけどお…

  • 籠り物語

    新年からいつもと何ら変わりのない籠りの生活を日々過ごす。しかし、卓は三学期がまだ残っているので、一旦大阪へ帰らなければならない。その日が着々と近づいてくる、帰りたくないのだが仕方ない。 残りの日を無駄にしないよう日々の仕事を一生懸命こなし、毎日全力でスノーボードに明け暮れた。 この時卓は、ただ帰りたくないだけではなく、彼女の事を片付けなければならない、そんな重い悩みも抱えていたのだ。 そんな卓の気持ちとは関係無くその日は訪れる。 朝の仕事を終え、いつも通りスノーボードを終え神戸屋へと帰る。 大阪へ帰る準備をして、一度オーナーの部屋へと挨拶に行き、今日で一度帰りまた来る事を伝え厨房へ向かった。そ…

  • 籠り物語

    盛大な宴の後の朝、卓は意外にもスッキリと目覚めた事に驚いた。それもアラームがなるよりも早く目が覚めたのだ。身体は重たいが頭はスッキリとしていた。 ひとまず煙草に火をつける。昨日の彼女からのメールを思い出し開いた。 メールには卓を祝う言葉と、仕事や身体を気遣う内容が記されていた。卓はさすがに返してあげないと失礼でもあり、かわいそうだと思い、冒頭に謝りの言葉を添えて珍しく丁寧にメールを返信した。 彼女にとっても卓の誕生日は特別な日のはずだった。それなのに当日のうちに直ぐに返信しなかった事を卓は後悔した。新年早々自分を責める事になった、そんな年明けだった。 卓は少し早く下へと降りた。すれ違う宿泊客と…

  • 籠り物語

    オーナーが持ってきたワイン確かに美味しかった。 意外と楽にグラスのワインを飲み干した時、卓に異変が起きた。 卓のすぐ側でゆうきが遊んでいたのたが、ふとゆうきの方を見ると、ゆうきがぐるぐると回って見えたのだ。「やば、何これ」 それから辺りを見てみると全てがぐるぐると廻っている、遊園地のコーヒーカップなど比になら無い程に廻っている。 いよいよまずいと感じた卓は「明日の仕事に影響するので先に寝させてもらいます」すると康之さんが「そば食べんでえぇんか?」すっかり忘れていたのだが、それどころではない卓は「ちょっと酔いが廻って食べれそうにないので」そう断りを入れ「お祝いありがとうございました、お先におやす…

  • 籠り物語

    かといってオーナー一人だけでも充分過ぎる強敵だった。 テーブルのピッチャー二つは瞬く間に空になる。オーナーは水を飲むよりも早いペースでビールを流し込む。 オーナーがグラスにビールを注ぐペースで卓のグラスも満たされる、卓はあっという間に酔いが廻っていた。 空になったピッチャーは新たに満タンになって帰ってくる。卓は地獄を見ている気分だった。 このままではおかしくなってしまう、そう思った卓は一言オーナーへ断りを入れペースダウンする事にした。 その間にもピッチャーはみるみる内に空になった。 この人の肝臓と胃袋はいったいどうなっているんだろう。そんな事を考えながら酔いでふわふわとしていた。 ふとオーナー…

  • 籠り物語

    「雪村君の誕生日を祝って。乾杯」「カンパーイ」それから神戸屋での卓の誕生日兼年越しパーティは始まった。 物珍しいドンペリにワクワクしていた卓だったが、飲んで見ると美味しい物でも無かった。自分の舌が子供なのだろうが、テレビで見るホストクラブの光景を思い出し、こんなものに大金を払う気がしれないと思った。 ドンペリを飲み干すと、すかさずオーナーからのビールのお酌が始まった。「今日はきみは主役なんやからいっぱい飲みなさい」「ありがとうございます」 卓は祝ってもらってる身分、頑張って飲まないと。そう思い必死で飲んだ。 弱いわけでは無いようだが、決して強いわけでもなさそうだった。だが、そんな事はお構い無し…

  • 籠り物語

    テーブルにはオードブルやおつまみ、ピッチャーに入ったビールが二つ。その他にも豪華に用意されていた。 年越しのパーティに誕生日の祝いを盛り込んでくれたのだった。 突然、 「まだビール注いだあかんで!」そう言ってオーナーが何かを思い出したように部屋を出て行った。 直ぐに戻ってきたオーナーの手にはワインの様なボトルが握られていた。「これな、きみの誕生日って聞いたから我慢して置いといたんや」そう言ってラベルを見せてくれた。 卓はテレビで見たことのある名前に反応した。「これがドンペリってやつですね」すかさずオーナーは「テレビでホストがよう騒いでるあれや」にやりとしながら教えてくれた。「せやけどな、あれは…

  • 籠り物語

    風呂道具を部屋へと置いてすぐにパブリックスペースへと向かった。 電気はついておらずまだ誰も居ない様だった。 パーティの準備でもしているのかと厨房へと様子を見に行く事にした。しかし、厨房にも誰も居ない。宴会している宿泊客の声が館内に響いている。 卓はひとまずパブリックスペースで待つ事にした。 暗いパブリックスペースを開けると「おめでとう!」卓は驚いて心臓が張り裂けそうになった。 ろうそくの火が灯ったホールケーキと共に「誕生日おめでとう」そう言いながら部屋の影からチカさんが現れた。 神戸屋のみんなが拍手で「おめでとう」と声をかける。 卓は照れながら「ありがとうございます」そう言って微笑した。 「ほ…

  • 籠り物語

    夜の仕事も終わり宿泊客は年越しムードで盛り上がっている。そんな光景を横目に風呂へと向かう。 途中康之さんが居た。「後で皆で年越しそば食べるで」「あっはい。わかりました」卓は年越しらしい雰囲気を味わえるのだと少し嬉しい気持ちになった。 宿泊客は皆酒盛りで風呂場には誰も居ない。さっとシャワーを浴び、大きな湯船を独り占めにしながらくつろぐ。「今日誕生日やけどもう1日終わるなぁ。」独り言を漏らす。 その時、今朝彼女からメールが来て居た事を思い出した。寝る前にでもチェックしようと今は忘れる事にした。 誕生日だからと言っても、ペンションで住み込みの仕事をしている卓にとっては何ら特別に感じなかった。この後、…

  • 籠り物語

    年も暮れに近づき年末年始の休暇に入りゲレンデは大にぎわいとなった。 普段並ぶ事の無いゴンドラにも長蛇の列ができており、いつものように何本もゴンドラを流す事ができない程だった。 それでも、雪は降り続き極上のパウダーとなったゲレンデを卓が放っておくはずもない。一人乗りの人が並ぶレーンは比較的早く進むため、相乗りでゴンドラへと乗車し、時間の許す限り滑り尽くした。 日々のフリーランを延々と繰り返した卓の身体はある程度仕上がってきていた。籠りにとってシーズンインのこの時期のフリーランを滑り込む事はとても重要な事だ。 卓はパークも好きだが山を滑り尽くす事こそスノーボードだと考えており、この時期にしかできな…

  • 籠り物語

    オーナーが持ってきたワイン確かに美味しかった。 意外と楽にグラスのワインを飲み干した時、卓に異変が起きた。 卓のすぐ側でゆうきが遊んでいたのたが、ふとゆうきの方を見ると、ゆうきがぐるぐると回って見えたのだ。「やば、何これ」 それから辺りを見てみると全てがぐるぐると廻っている、遊園地のコーヒーカップなど比になら無い程に廻っている。 いよいよまずいと感じた卓は「明日の仕事に影響するので先に寝させてもらいます」すると康之さんが「そば食べんでえぇんか?」すっかり忘れていたのだが、それどころではない卓は「ちょっと酔いが廻って食べれそうにないので」そう断りを入れ「お祝いありがとうございました、お先におやす…

  • 籠り物語

    気分が乗らず珍しく直ぐにペンションへと帰った卓は、気分を紛らわそうとパブリックスペースで漫画を読む事にした。 普段は小説等の活字しか読まない卓だが、小説は持ってきておらず、神戸屋には漫画しか置いていなかったのだ。 仕方なく棚にずらりと並んだ漫画から、なんとなく背表紙で選び読み始める。読んでいる様で話は全く入ってこない。 すると、カップルがパブリックスペースへとやって来た。宿泊客だ。 「こんにちは、ここって使ってもいいんですよね?」カップルはベッタリとくっつきながら卓に聞いた。「大丈夫ですよ、自由に使って下さい」そういって卓は部屋を出た。「ここもかよ。昼寝でもしよ」ぶつぶつ言いながら屋根裏へと戻…

  • 籠り物語

    部屋へと戻り当たり障りの無いメールを彼女へと返信した。ひとまずはこのまま乗りきろうと思っているのだが、感情の無い虚しい付き合いの時間を彼女に強要しているようで複雑な気分だった。ベッドでそんな事を考えながら眠りについた。 それからクリスマスまで淡々と日々の仕事をこなし、大好きなスノーボードに明け暮れた。 その頃には仕事にも慣れ、ペンション生活にも慣れていた。 クリスマスのゲレンデは初心者のカップルで溢れ帰り、そこら中に座り込んでいるカップルがいた。卓はまるで自分が場違いに感じる程の光景だった。 そんな光景に嫌でも彼女の事を考えてしまう。スノーボードに集中したくても心のそこから楽しめない自分にもや…

  • 読んで頂いている大事な読者様へ

    仕事が変わり1日一区切りの小説ができない日が出てくる状態になりました。 文書を書けないのは自分に取っても苦痛なのですが… 自分勝手に書いているだけなのですが、自分の趣味に目を傾けて頂ける事が嬉しいためこのような事を書いています。 今まで通りみんなに読んでもらえるとは思っていませんが、目を向けてくれている方には一言お伝えしたかったのです。 休みの日に小説をストックして行こうと思いますが、日々途切れる事も出てくると思います。 それでも気長に読んで頂けると嬉しく思います。 突然辞める、小説を辞める事はありえません。 誰もそれを望んでいなかったとしても。 自己満足の小説で誰かが暇を潰す事ができるだけで…

  • 籠り物語

    夕食のセッティングを終え小休止を取っている時、康之さんが「卓彼女おらんの?まぁおってもお前やったら置いてでも来るわな」笑いながら卓に言った。 なんてリアルタイムな質問なんだと卓は思いながら「一応居ます、そして、まさに置いてきてます」苦笑いするしかなかった。 卓は忘れていたさっきのメールを思い出し、少し憂鬱な気分になった。 夜の仕事を終え部屋へと戻り一服しながら、ようやく彼女からのメールを開いた。だが、すぐに返す事はせず忘れようとするかの様に煙草を揉み消し風呂へと向かう事にした。 湯船に浸かりながら物思いに更ける。自分の答えははっきりしてるのだが、切り出すタイミングがわからず、そんな状態をズルズ…

  • 籠り物語

    神戸屋へと到着した卓は乾燥室へ板をしまい、ウェアの裾を捲って部屋へと上がった。 タカシはまだ戻っていなかった。 ウェアを脱ぎ仕事着に着替え一服し、仕事まで少し昼寝する事にした。 滑った後で疲れた身体に暖かい布団の組み合わせは、卓を眠りへと導くのに時間はかからなかった。 目一杯滑り、暖かい部屋へと戻り、昼寝をするこの瞬間も籠りの一つの楽しみと言える程にそれはとても心地よい時間だった。 卓は部屋が開く音で目を覚ました。タカシが帰って来た。 卓は起きて煙草に火をつけた。「卓帰ったの早かったんやな、どうやって帰ったん?」 タカシの言葉に先程の嫌な記憶が蘇る。「滑って帰ったら楽やろ思て滑って帰ってたら、…

  • 籠り物語

    駐車場からペンションへと向かう下りの道に差し掛かった。卓はそこで板を履いた。 除雪された道路はコンクリートを感じる程の雪面ではあったが、かろうじてソールに傷はつかない程度の雪はついていた。 歩いて帰るにはまぁまぁの距離だが、滑って帰ればどうという事は無かった。斜度はほとんど無い道路のためノロノロと滑っていたその時、村の除雪車が後ろから走ってくる音がした。 卓は端に寄って止まった。除雪車が卓の近くに来た時、クラクションが鳴る。明らかに攻撃的な怒りのこもったクラクションだ。 除雪車が卓の横に差し掛かった時、窓が開けられ「ここ道路やぞ!お前どこももんじゃ!どこのペンションのバイトや!」卓は叱られた犬…

  • 籠り物語

    リフト終点タカシは危なっかしい滑りだが転ぶ事なくクリアした。卓は先にビンディングをはめ、既にスタンバイできていた。 タカシのボーゲンの滑りに合わせ卓は並走する。転ぶ事は無いが、スキーをした事の無い卓から見てもドキドキする滑りだった。卓は退屈なので、その場でトリックをしながら遊ぶ様にタカシの速度に合わせて滑った。 リフト一本分付き合った卓は、リフト乗り場で「もうちょい俺軽く流すけどリフトとりあえずもう一本乗る?」するとタカシは「じゃあリフト一緒に乗ろう」「りょうかい、ほないこ」 リフトの上では案の定卓の滑りに対する話題が、タカシから繰り広げられていた。 「ほなちょっと行ってくるわ。気をつけて滑れ…

  • 籠り物語

    リフト乗り場の近くに立っていた卓の元に、ボーゲンで危なっかしい滑りのスキーヤーが近づいて来た。 「お前もしかして素人なん?」卓は籠りに来てるぐらいだから、そこそこ滑れるもんだとばかり思い込んでいた。「何回かやった事あるけど、そんなレベル」タカシは照れ笑いする。「よう籠ろうと思ったな、上手くなりたかったん?」卓にとっては籠り=滑って上手くなるという思考のため、特に意味は無く率直な意見だった。 「スキーはした事あったしリゾートバイト楽しそうやったから」「そういう人もおるんか、寧ろそういう人の方が普通なんかな?」不思議に思いながらも自分がズレているのかという些細な疑問を抱いた卓だった。 「まぁえぇか…

  • 籠り物語

    気がつくと少し眠っていた。 15分程眠った卓の身体は少し回復はしていたが、少し冷えてしまっていた。暖房の前へ移動し、床に座り込んで軽くストレッチをしながら暖めた。 身体も目もスッキリした所でもう一本ゴンドラで山頂へ向かう事にした。ひとまず一番下まで滑り、それから考える事にした。 山頂から林道を通り、ゴンドラの乗り場の方へと向かって行く。ここからはとてもなだらかな緩斜面で家族連れやカップルなどが楽しそうに声を挙げながら滑っていた。 卓はそんな経験をした事が無く、少し羨ましい気持ちになっていた。 スノーボードをするために来ているとはいえ、滑り仲間が居る事は羨ましいのだ。ただ、卓の滑り仲間とは誰でも…

  • 籠り物語

    スキーヤーが好んで滑るこのコースは、普段はコブになっており、パウダーでも無い限りスノーボーダーはあまり寄り付かない。 卓はスノーボーダーでは珍しくコブを滑る事がとても好きだった。 いつかモーグルコースでスキーヤーと競いたい(到底敵うはずはないとわかっているのだが)と野望を抱いていた。 だが、今のコンディションは絶好のパウダーだ。昼を過ぎているためトラックが無数に刻まれているが、卓はめぼしいラインを決め早速ドロップした。 数日降り続いた雪で、コブは全く感じられず、またあの宙を浮いているような感覚だった。次々に残った吹きだまりのパウダーめがけラインを取る。その度に卓の上げるスプレーが宙を舞い、陽の…

  • 籠り物語

    雪まみれの姿でそのままゴンドラの中間駅へと滑り降りた。 板を外し雪を軽く払い落とすと、レストハウスの側で板を反対に向けて雪面へと置き、その上に腰掛け煙草に火をつけた。 肺いっぱいに吸い込んだ煙を真っ青な空へと豪快に吐き出すと、座っている板から滑り落ちる様に雪面に大の字に寝転がった。「気持ちえぇ、ここは天国やな」澄みきった青空に卓の吐く煙が雲の如く漂う。そんな極上の時間を大の字で身体全身で受け止めながら、大自然の恵みに感謝するのだった。 一服を終えると再びゴンドラへと乗り込んだ。 ゴンドラから目星をつけたコースがあり、見た目にもハードな斜面のためトラックもまだ少ないようだ。卓は次のターゲットを定…

  • 籠り物語

    ゴンドラの中間駅までに準備を終えた卓はカフェオレで一息ついた。中間駅でも人は乗ってこず、山頂まで一人でのんびりと向かう。 昨日降り続いた雪はぱったりと止み、この上なく快晴だ。「ドピーカンやな」卓は独りで呟く。それほどまでの快晴だった。 ゴンドラから見渡す景色はどこを見てもパウダーが残っている事が確認できるが、どこもコース外のため見るだけで我慢する。中にはコース外にトラックがあり、マナーを犯した人達もいるのは言うまでもない。 ゴンドラからある程度コースやバーンの状況を確認した卓は、ひとまず中間駅までアップをかねて流す事にした。 山頂駅へ降り立った卓は刺すような日差しにアドレナリンが溢れでるのを感…

  • 籠り物語

    康之さんの車へと乗り込み、ゲレンデへと向かう。 「お前ほんまにボード好きなんやな、昔おったバイトにもお前みたいなやつおったわ」「そうなんですね、好きな人は好きなんですね。僕は今はスノーボードに命かけてます」卓はおにぎりを頬張りながら答える。「そいつも同じ事言うてたわ、怪我は気をつけろよ」「はい、怪我しても這ってでも仕事はするので」「それも同じ」康之さんは思わず笑った。 そうこうしてるうちにゲレンデへと着いた。 「四時でえぇか?」「はい、大丈夫です。お願いします」「りょうかい、ほな気をつけてな」そう言い残し康之さんの乗った車は走り去った。 卓はゴンドラ乗り場へと向かった。乗り場の自動販売機でカフ…

  • 籠り物語

    一息ついた皆を他所に、卓はすぐに部屋へと向かおうとした。 「卓飯は?」康之さんが咄嗟に声をかける。「おにぎり自分で作って持って行きます。お昼なんて食べてる時間ないです」「おっけ、ほな準備してこい」康之さんは笑顔で卓を見送った。 卓は部屋へ入るなり煙草に火をつけると、一服するのかと思えば、煙草を咥えながらウェアに着替えた。 吸い終わるのと同時に準備を終え、休む間もなく部屋の急なはしごを降りて行った。 そこへちょうどタカシが上がってきた。「早いなぁ、俺も飯食ったら行くわ」「そうか、また山で逢えば」卓はそう言い残しそそくさと厨房へと向かった。 厨房へ入ると、形の良い三角のおにぎりがすでにお皿の上に並…

  • 籠り物語

    別館へ移動しタカシが居る部屋を探していると、チカさんも康之さんも拭き掃除をしてくれていた。 卓が戻った頃にはほとんど終わりかけていたが、今日の内に流れだけは把握しておきたい卓は、あえて掃除では絡みが無かった康之さんに声をかけた。 「おつかれさまです、ヘルプありがとうございます。拭き掃除ほとんど終わってるみたいなんですけど、流れだけ教えて下さい」 すると康之さんは「ヘルプちゃうで、基本的には俺らも参加するし、バイトに全部やらすとかせぇへんから」卓はその言葉に、過去に経験してきたアルバイト先での社員との言い争いを思い出した。 こんな人達だったらあの時のバイトもストレス無くできたのだろう。そんな事を…

  • 籠り物語

    卓も軽くアドバイスしながら、二人で協力して最後のベッドメイクを終えた。 チカさんは厨房で部屋毎の灰皿を洗っていた。 「ベッドメイク終わりました」卓が声をかける。「おっ、ほんなら後は部屋の拭き掃除と全館掃除機で終わりやな。タカシがやり方わかるから聞いてやっといて」「わかりました」 タカシの元へ戻ると部屋の掃除機に取りかかっていた。 「卓は本館の掃除機二階からやっていってくれる?」「りょうかい、全館言うぐらいやから全部やんな?」「そうそう、わからんかったらチカさんに聞いてくれたら」 チカさんにはタカシに聞けと言われたので、チカさんには聞かずに全てのスペースを掃除機する事にした。 細かくする事に関し…

  • 籠り物語

    その部屋のベッドメイクはまだ一つも終わっておらず、二人でちゃちゃっと終わらせるつもりだった。 「ほなさくっとやってまおか、タカシそっち言って」卓が率先して指示を出す。卓は仕事をしている時は、バイトの時でも、相手が社員だろうが先輩だろうがお構い無しだった。 タカシに関しては数日早いだけで、ほとんど変わらないのだが… 先程チカさんとベッドメイクした時と同様に、シーツを広げながらタカシにパスする。 お互い均一にシーツを合わせると、卓はさっと角に三角を作り織り込んで、二枚目のシーツに手をかけ、タカシにパスしようとした。 ふとタカシを見ると、まだ片方の三角で苦戦していた。卓は妙に納得した。 タカシの手が…

  • 籠り物語

    シーツをベッドへと織り込んで一枚目のシーツが終わり、二枚目のシーツと毛布をセットする。 二枚目のシーツと毛布は足元側だけを同じ要領で折り込み、最後に掛け布団をかける。頭側の余ったシーツを掛け布団にかけベッドメイクは完了だ。 枕にカバーをつけ、余りをカバーの中に織り込んで整える。枕は部屋に入って見たときに、織り込みが見えないように部屋の奥を向くようにセットする。 「ベッドメイクはこれで一通りの流れやけど、もうできるよな?」「はい、大丈夫です、終わってない所やってきて言いですか?」まだ終わっていない部屋のベッドメイクへと卓が向かおうとした時「待って、先にゴミ箱と灰皿の処理教える」「わかりました」「…

  • 籠り物語

    広げられたシーツは、上下左右とも均等にベッドに合わせる。 「こっから一緒にやりながら教えるから卓反対回って」卓はチカさんとベッド越しに向かい合う様に立て膝で位置についた。 「ほんまやったら二人でやった方が早いねんけど、うちは部屋数多いから一人でやってもらうねん。手が空いてる時はちゃちゃっと二人でやるけど」「一人でもできるならその方が僕は良いです、手空いたらいつでも手伝えるので」卓は滑る時間の事だけを考えての事だった。 チカさんも恐らく気がついていた。 「あんたやったらすぐ綺麗にできるやろな、さっ、やろか」 「まずは左側からいくで、横に垂れてるシーツを右手でつまみ上げて、上げてできたスペースに左…

  • 籠り物語

    それからチカさんのベッドメイクのレクチャーが始まった。 「まず、ベッドに薄いマットレス敷いてるから、これを綺麗に整える。言わんでもわかるわな」卓に向かって微笑しながら説明を続ける。 「ほんなら、まず一枚目のシーツをベッドに広げて、この時裏表あるから気をつけて。折り返して縫い目のある方が裏やから」卓は頷きながら説明を聞いている。 「シーツを広げる時のコツやねんけど、端を持って広げながら」そう言うと「ほっ」とシーツを反対側へ投げるように器用にベッドの上に広げて見せた。 「この状態で、端を持ったままシーツを素早く、小さく波たたせるみたいにすると、ほら」ベッドの上でシーツが蛇のようにうねりながら波を打…

  • 籠り物語

    補充が終わりタカシを手伝うためにそれぞれの部屋を覗いていく。すると、タカシを見つけるよりも先にベッドメイクしているチカさんを見つけた。 「ベッドメイク教えて下さい、っていうかお腹大丈夫ですか?」お腹の大きいチカさんを気遣って声をかけた。「ありがとう、大丈夫やで、ベッドメイクやろか」ニコニコしながらチカサンは答えた。 卓はベッドメイクは初めてだったため一から教わる事になった。 チカさんはまず、和室の敷き布団に使う和シーツとベッドで使う大きめの洋シーツがある事を説明してくれた。「言われないとわからなかったです」「わかりやすく、ステッチの色が青い方が洋シーツ、赤い方が和シーツって覚えといて」「わかり…

  • 籠り物語

    掃除の時だけチカさんか康之さんが鍵を開ける事になっている。 ペンションの空かずの扉とあって、卓は少年のように胸を踊らせながら、だが表情には出すことなくチカさんが鍵を開けるのを見守った。 南京錠が外れゆっくりと開けられた扉、卓の気持ちをもてあそんだその空間、卓は現実に戻った。 束ねられた洋シーツ、ピローカバー、下の段には掃除機。そこには卓の描いた妄想は何一つ存在しなかった。 下の段の掃除機の横には、厨房のすぐ側にある自販機に補充する缶ジュースがケースで並べられていた。卓は鍵の意味をこの時納得した。 ジュースに気がついた卓を見て「うち2月から大学の合宿で学生が来るねんけど、酔っぱらった学生にジュー…

  • 籠り物語

    チェックアウト済みの部屋のユニット掃除が一通り終わり、最初の部屋から拭きあげをしながら回っていると、またタカシと遭遇した。 それはさっき出逢った部屋の隣だった。「嘘やろ」微かに声を漏らしたがタカシには聞こえてはいなかった。 卓は何か声をかけようかと思って止めた。この時卓はまだベッドメイクを教わっておらず、そんな人間が作業に口出しするのは違うと思ったからだ。 あえて声を掛けず淡々と、だが、確実にペースを上げて拭きあげを進めていった。 最後の部屋を拭きあげている所に「まだあそこか…」と、ぼそぼそ言いながら卓の元へチカさんがやって来た。 やっぱりそうなのかと、卓は思った。 「ユニット掃除バッチリ。そ…

  • 籠り物語

    「ユニットバスは中全部洗剤で洗って、換気扇つけたまんまひとまず全部屋一気に洗ってしまって」すると卓が「やってる間に乾いていくって事ですね」「説明が楽でいいわ」チカさんはニコッと笑みを浮かべる。 「洗い終わったら、使い終わったピローカバー纏めて置いてあるから」そう言って廊下に使用済みのカバーの塊を指差す。「これで拭きあげてくれたらいいから。後はトイレペーパー戻して、予備を二つずつ補充したら完了。トイレットペーパーは最後に教えるから終わったら教えて」「わかりました」ユニット掃除は楽で良かった。 廊下を見渡すと、部屋のゴミ箱、灰皿が出されており、シーツは一枚を風呂敷のように固められていた。 ピローカ…

  • 籠り物語

    「部屋掃除はやる事多いねん、別館は洋室でユニットバスもあるし」すると卓は「じゃあトイレついでに水回りも僕やります」その言葉を聞いてチカさんは「あんたここで働いた事あるんちゃう?」と笑いながら言った。 「なんでですか?」「水回りはまとめて1人で管理した方が部屋毎に分けて誰がどこやったかみたいな無駄なロス無くせるから。それに水回りは濡れるからちょっとした支度もあるし」「そう思ったのでやりますって言いました」 「午前中の掃除あんたに任してえぇか」チカさんは笑いながら、また強めのスキンシップをはかってきた。 「冗談なのはわかってますけど、仕事把握すれば全然任せてもらっても問題無いですよ、スキンシップの…

  • 籠り物語

    本館と別館の残りのトイレの掃除を終え、チカさんにトイレのチェックをお願いしに行くと「あんたのトイレ掃除は大丈夫」すると卓は「僕がサボってたらどうするんですか?それに初日なので一応チェックして下さい」「あんた見かけによらず真面目やな」「それは悪口ですよ」卓が軽く笑みを浮かべる。「ごめんごめん、ほな一緒にチェック行こか」 二人は掃除を終えたトイレを順に周り、想像通りの綺麗さにチカさんも何も注意する所が見当たらなかった。 「卓が嫌じゃ無かったらでいいねんけど、トイレ掃除卓の担当にしてもかまへん?その方が掃除も早終わるし早滑りに行けるし」すると卓は「そうします、滑りたいので」 特段トイレ掃除がどうとも…

  • 籠り物語

    チカさんは謎の驚きの声をあげたと思ったら、扉を閉めて「やっちゃ~ん!」と叫びながら厨房へと走って行ってしまった。 卓は何が起こったのかわからず、何かまずい事をしたのかと、チカさんが戻る迄掃除の手を止めて待つ事にした。掃除初日から何を言われるのか、気持ちよく掃除をしていた卓の気持ちは勝手に青く染まっていった。 「ガチャ」扉を開けたのは康之さんだった。その後ろにニヤニヤしたちかさんの顔が見える。 「立ってるやんけ!なんやったら手止まってるやん」康之さんがチカさんの方を振り返りながら聞いた。「ちゃうねんって!なぁ卓、あんたさっきトイレの床手ついて拭き掃除してたやんなぁ?」卓は答えに戸惑った。そんなに…

  • 籠り物語

    二人がまず入ったのは男子トイレだ。男子トイレには男性特有の便器があるため、説明を一ヶ所で済ませるためだ。ここのトイレには特有の便器が二つ、大便器が三つあった。 「じゃあまず、基本的なルールとして内では節水を徹底してるから水はジャブジャブ使いません」卓は小学生の頃のトイレ掃除で、豪快にホースで掃除をするイメージを抱いていたのだが、特に驚く事も無く「はい、わかりました」と淡々と説明を聞いた。 「基本的に汚れた所は洗剤を使って磨いて、流す時はこの洗面器に水を貯めて、水ですくって流して」「はい、わかりました」「床は水拭きでトイレの床全部拭いて、水滴は残さんといてな」 ひとまずここまでの説明を終えると、…

  • 籠り物語

    休憩を挟み、この日から午前中の部屋掃除と館内の掃除が始まった。タカシは既に経験済みのため、指示を受け先に掃除へと向かって行った。 スタッフの屋根裏がある棟は神戸屋の本館にあたり、本館の各部屋は和室になっている。本館には宿泊客はいないため本館の部屋掃除は無かった。タカシも別館の部屋掃除に向かったのだと卓は思った。 この日卓はトイレ掃除をチカさんから教わる事になった。食事の事は全て康之さんが仕切っているのだが、掃除は全てチカさんが仕切っていた。 卓はこの時チカさんが掃除の鬼である事、神戸屋の掃除ルールの細かい事など全く気にもしていなかった。しかし、チカさんもまた卓の恐ろしく几帳面な面に気づくはずも…

  • 籠り物語

    「ご馳走さまでした」食堂の方から声が聞こえる。ちらほらと朝食を食べ終えた宿泊客が部屋へと戻り始めていた。 卓とタカシは食堂へと出ていき、客が居なくなったテーブルの物を手早く下げる。タカシはそのまま食堂の片付けへと残り、卓は洗い場へと戻った。 下げられた洗い物をお湯へとつけ、手際よく片付けていく。 手早く処理していても、下げられてくる食器の数が多くすぐに溢れかえった。 洗い物をこなしながら空いたスペースへと下げられた食器類を移動させ、タカシが下げやすいようにスペースを確保していった。 食器が下げられてくる間は洗い場は戦場と化していた。卓はまるで千手観音の如く表情一つ変えず食器を黙々と捌いていく。…

  • 籠り物語

    朝食の時間数分前から焼き魚、ご飯、暖かいお茶を順番にテーブルへと出していく。 康之さんから焼きたての脂の乗った鱒の入ったトレーを受け取り、卓は食堂の魚皿へと盛り付けていく。魚の皮が座った時に奥になるように盛り付ける。身が割れてしまっているものは賄いになるため避けていく。そのため少し多めに焼かれているため、賄いには充分すぎる鱒が残った。 魚を盛り付け厨房へと戻ろうとした時、食事を提供するための小窓から、次々とお米の入ったおひつとお米のポットが差し出された。 魚のトレーを中のタカシへと渡し、それらを各テーブルへと運んでいった。 後はテーブル毎に、味噌汁を宿泊客が来た所から順に提供していく。卓は中で…

  • 籠り物語

    タカシは味噌汁用のおわんを人数分準備していた。銀のトレーにおわんを並べ、更にトレーを重ねておわん乗せる、それはまるでタワーの様になっていた。 大量のおわんを場所を取らずに準備できる最高の方法だと卓は思った。 ご飯を混ぜ終わると、康之さんからおひつの場所を教えてもらい、テーブルの数の分用意した。 「ほな食堂のセッティングよろしく」夜の様にタカシにセッティングを教わり、各テーブルに茶碗、おはし、味付け海苔、魚皿をセットして回った。 食堂のセッティングが終わり中へ戻ると、チカさんも中の手伝いをしてくれていた。 「おはようございます」「あっおはようさん、よう寝れたかい」笑顔で優しく語りかけてくれた。 …

  • 籠り物語

    屋根裏部屋は恐ろしく寒い朝を迎える。布団は冷たく、軽く湿っている。 卓は携帯のアラームで目を覚ます。目を瞑ったまま手探りで煙草を探す。起きてすぐに吸いたいわけではないのだが、そうしなければ吸う時間がなかったからだ。 喉を通る煙、肺へと溜まる煙によって、体内へと衝撃を受けたかのような感覚でようやくはっきりと目が覚める。 部屋の温度計に目をやる。-10°の表示に二度見した。ここは人が生活するに値する場所なのかと少しの疑問を抱いたが、寝起きの卓の頭はそれ以上機能する事は無かった。 着替えを済ませると卓は厨房へと降りて行った。「おはようございます」すでに康之さんは朝食の準備を始めていた。「おはよう、ほ…

  • 籠り物語

    部屋へ戻る途中ふとパブリックスペースを覗くと、そこには漫画を読むタカシの姿があった。 卓は疲れていたためパブリックスペースへは立ち寄らず、自動販売機で一番搾りを買って部屋へ上がった。もう一度言うが卓は19歳で未成年だ。 部屋へ戻り一番搾りを一気に半分程流し込む、喉を切り裂くような刺激とともに至福の瞬間が卓を襲った。 一息ついた所で、濡れた髪をドライヤーで乾かす。部屋の冷ややかな空間でのドライヤーの熱風は、風呂上がりで身体は火照っているにも関わらずなんとも心地よかった。濡れて束になっていた髪の毛が、乾いていく毎に一本一本宙を舞うようになびいている。 卓の髪の毛は肩甲骨の辺りまで長く、乾かすのに時…

  • 籠り物語

    風呂場はすでに宿泊客はなく、広々とした風呂場を卓は一人で満喫する事ができた。シャワーで汗を流し湯船へと向かう。 少し手をつけ温度を確かめる。寝起きで体温が下がっている卓にはとても熱く感じた。 洗面器でつま先から順に少しずつお湯をかける。熱さのあまりかける度にその場で足踏みをする。ようやく肩から全身お湯を浴び、なんとかお湯に慣れた。 恐る恐るつま先を湯船へと侵入させる。さすがにまだ暑さを感じるが、思い切って入ってみた。太股辺りまでお湯に浸かっているが、暑さで脚全体が激しく脈打つ。 じわじわと身体を湯へと落とし込み、ようやく全身がお湯へと浸かる。「うぅ、あっつ…あぁ、でも気持ちえぇなぁ」 1日の疲…

  • 贅沢な悩み

    小説をもっと自由に書く時間が欲しい。それを実現するためには、まず時間を確保するそして収入を確保するということが必要になってくるのだ。 自己啓発まがいの事ではないので。 並大抵のことでは実現できない、そのことを日々模索しながらも時間を見つけては執筆を続ける、書くことも好きだが小説を読む時間も欲しい。とてもわがままだ。 欲があるからこそ日々頑張れるのだと自分は思うのだが、欲が多すぎて時間が足りなくなっている事も事実。 ただ言えることは、自分が目指す形が明確なことだけははっきりしている。 時間はかかるだろうが、目の前の事を一つ一つクリアしていくしか方法は無い。不器用でアナログな自分にはこれしかない。…

  • 籠り物語

    卓は煙草に火をつけベッドに倒れ込む。大量に煙を吐き出し「疲れたぁ」と独り言を漏らす。 一緒に部屋に戻ったタカシが風呂のセットを抱え「俺風呂行くけどいく?」さすがに少し一服したかったので「後で入るからいいよ」そう答え煙を大きく吐き出す。「そしたら先行くわ」そう言ってタカシは風呂へと向かった。 フィルター近くまで短くなった煙草を揉み消すと、頭の後ろで手を組みベッドの天井をぼぉっと見つめる。 朝からハードな1日を過ごした卓は、またそのまま寝入ってしまった。 どれ程眠ってしまったのだろう。 「風呂入らな閉められるで」その声に目を覚ます。タカシが風呂に入っていた間眠っていたのだ。「悪い、ありがとう。入っ…

  • 眠れない夜

    眠いはずなのに眠ろうとしないと言った方が正解なのかもしれない。 不思議な感覚。 いつもの様に煙草の煙が部屋中に漂う。 煙がまるでシアターかのように、実家の家族の光景を写し出す。 いつまでたっても恋しい物だ。 先日兄が電話で言っていた。 おかんはもうこの家の事は良いから早く帰ってきてほしいと常々こぼしているのだと。 なんとも居たたまれない感情になる。 おかんが望むならそれも良いだろう、だがすぐにとは行かない。 生きるという事は思うようにいかない事も多々あるのだ。 今はひとまず眠ろう。 夢でも良い、久々に大阪へ帰ろう。

  • 籠り物語

    食事を提供している間は、下がってきた食器をお湯を溜めたシンクへと次々と放り込んでいく。料理を提供している際は洗い物などしてる暇がないのだ。 デザートはタカシに任せ卓は洗い物をすることにした。貯めていたお湯には洗剤も入っており、つけていた食器の汚れはスポンジで軽くこするだけでするすると落ちていった。 汚れの取れた食器は食洗機へ入れるため、専用の食器入れと並べていく。こうした作業を食器がなくなるまで延々と続ける。 下げられてくる食器を洗っている傍で、たかしはせっせとデザートの準備をしていた。 この日のデザートはチョコレートケーキだ。神戸屋では、デザートも全て手作りでクオリティもかなりのものだった。…

  • 中学生の頃から

    凄く綺麗な月だったなぁ。 月が綺麗ですね。 これには有名な逸話がありますが、それは置いといて。 ふと中学生の夏休みの課題で感想文を書いた事を思い出した。 当時流行っていたハリー・ポッターと賢者の石。 中学生にしてはこの本ですら高価な物だった。 感想文もあるし読みたいなぁと言った所、おかんが買っといでと小遣いをくれた。 あの時の嬉しさ、おかんの優しさは今思い出しても胸が踊る。そしておかんの些細な優しさに今になって有り難みを感じる。 この頃から自分の本好きはすでに始まっていたのだろうか? かなり長い間気づかないでいた。 夏休みの間食らいつくように読み、感想文を書く。 今思い出すと、あの頃の自分は本…

  • 籠り物語

    夕食の時間数分前になると宿泊客はぞろぞろと食堂へと集まりだす。 テーブル毎に揃った所から食事を順次提供していく。神戸屋では一般の宿泊客はコース料理になっている。 ホールを担当しているお腹の大きいちかさんが小窓を開けて外から人数を告げる。 予め用意していた皿枠で重ねられたオードブルを人数分小窓から外へと出していく。 オードブルはすぐに食べ終わり続々と下げられてくる。各テーブルで全て下げ終えると、そのタイミングでチカさんは人数をなかへ伝える。 卓はスープと人数分の食器を準備して、伝えられた数だけ皿を横に置いていく。何人入ったか忘れないようにするためだ。 スープを注ぐ卓を見て康之さんが「スープ注ぐ時…

  • 籠り物語

    中へ戻り厨房で使う分の食器を人数分用意した所で「ちょい休憩しよか、卓コーヒー用意して」康之さんにカップの位置とコーヒーセットの入ったケースの位置を教わり、チカさんと康之さんの専用のマグカップに二人の決まった分量をカップへと入れる。バイト用のカップも2つ用意してコーヒーを人数分用意した。 神戸屋では夕食の用意が一段落して宿泊客が来るまで、こうしたティータイムを挟むのだ。康之さんの好物のココナッツサブレを一緒に食べながらしばし団欒する。 「卓タバコ吸わんのか?」康之さんに質問され卓は答えに戸惑った。確かに卓はタバコを日常的に吸っていたがまだ19だったからだ。「良いんですか?」恐る恐る聞き返す。「本…

  • 馴染みの場所を離れて

    スノーボードを現役のライダーとして活動していた大阪の頃。 スノーボーダーにとってはホームがそれぞれあり、自分はどちらかというと1つに留まると飽きてしまうため、転々としていた。 滑る頻度の高いゲレンデでいわゆるゲレンデヒーローになる事などなんとも思わない。 小さなフィールドでちやほやされる事に意味など無いと思うからだ。 そんな事よりも、初めてのゲレンデでどれだけ輝き、爪痕を残せるかという事を常に意識している。 こんな話をしたい訳では無かった。 大阪時代の仲間から◯◯君とやっぱり滑りたい。 こんなに嬉しい事は無い。 中には◯◯おらんから滑るの上がらん。 北海道に移住しても尚、みんなの活力的な存在で…

  • 籠り物語

    厨房の入り口の真向かいに食糧庫があり米はそこへ運び入れた。 厨房へ戻るとタカシは人数分の食器を持って食堂で作業をしていた。「おつかれ、どうやった?」悪戯な笑顔で康之さんが卓へ問いかける。「半端無かったです。先に教えて下さいよ」卓は笑いながら答えた。「先に言ったらやる前からしんどいやん、何事も経験やで」良い事を言っている様にも聞こえるが、康之さんの悪戯心だと卓はそんな気がしていた。 「タカシが食堂で食器並べてるから手伝ってきて、やり方はタカシが知ってるから」「わかりました」卓は厨房と食堂が繋がった扉を開け食堂へと出る。 メインフロアにはテーブルセットがありスカイブルーのクロスに濃紺のブルーのクロ…

  • 感謝しかない

    初めての体験だった。 自分のブログを紹介して頂いた。 ブログをされている方なら些細な事なのかも知れない、ただ自分にとってはこれ程嬉しい事は無いと思える程感激した。 スノーボーダーとして活躍していた頃、多少なりともチヤホヤされる事はあった。 今新しく始めた小説の分野で、小さな出来事かもしれないが前に進めているのかなぁと実感できる。 それが勘違いでも別に良い、勘違いの秘める力を自分で理解しているからだ。 益々書く事が楽しくて仕方がなくなってしまった。文章を書けない時間が途方もなく感じる。 これからも、些細な出来事に感謝し日々精進。 ご紹介して下さったyu-hanamiさん、本当にありがとうございま…

  • 連載と完結

    小説を書いていて、素人の書き物に目を通してくれている読者の方々には頭が上がりません。 いつも投稿する際に思う事がある。 タイトルの通り連載と完結についてだ。 ブログなので完結にしてしまうと文字が多くなり過ぎる。連載ではマンネリ化してくる。(そこまで誰も待っていないだろうが) 書き手としては背景がどうであれ少なくとも考えてしまう。 本来1つの作品として書き上げようと書いている籠り物語だが、恐らくボリュームもそれなりになるだろう。 それを連載にすると、最初の頃のストーリーはもはや忘れられている。 それならば完結した物語を出した方が自分的には読みやすい。 妄想だろうとなんだろうと読み手を意識せずに書…

  • 籠り物語

    「おはようございます」どこでもこういう使われ方はするのだろうが、仕事が始まるという意味でこの挨拶と決まっている。 厨房へ入り専用のスリッパに履き替え、まず手を洗う。「何からすれば良いですか?」コンロの前に居る康之さんに尋ねる。 「タカシはわかるな?今日30な!」そう言われたタカシはせっせと食器の入った乾燥機付きの棚を開け作業を始めた。「卓はおれと米取りに行こう、付いてきて」「はい」そうすると康之さんは乾燥室へと向かった。 卓も後について行く。乾燥室にあるなら指示だけで良いのでは?そう思いながら乾燥室へと入ると、康之さんは自分のウェアを着ていた。卓は戸惑った。「倉庫まで行くからウェア着ていくで」…

  • 籠り物語

    夜の仕事も考え初日という事もあり少し早めに切り上げ神戸屋へと戻る。 部屋にタカシの姿は無かった。 デニムにパーカーというラフな仕事着に着替えひとまず一服する。部屋中に紫煙が立ち込める。ひとしきり吸い終えるとそれを揉み消し、ベッドに横になり極上のパウダーの余韻に浸っていた。 ふと我に帰る。うとうとしてる間に向こうの世界へと吸い込まれていた。 「いってっ!」飛び起きた際に二段ベッドの上のベッドに頭をぶつけた。時計を見るとまだ仕事の時期にはなっておらず胸を撫で下ろす。「初日から遅刻とか笑えへん」また寝てしまわぬよう下の階へ降りる事にした。 神戸屋にはパブリックスペースと呼ばれる漫画を大量に揃えた部屋…

  • 諦めがつかない文字の仕事

    なんとか文字で生きて行きたいという願望。 もはや欲望と言っても良いだろう。 仕事をしていてはどうしたって文字へ割く時間は限られる。 日常では雑務も入り本当に自由な時間は皆無に等しい。 それが生活する、生きるという事なのだろうけど、一生は一度しかないのにそれで良いのか。 素人が漠然と文字で生きて行くと言っても簡単では無いのが現状。 勿論一度経験したライティングなどの文字の仕事もあるが、素人がそれで生計を立てるのはそう簡単でもない。 専門性、スキルを高めれば可能な事は百も承知、努力と時間を惜しまなければ。 だが、生活するにはそんな時間も中々難しい。 誤解を解くため一言、楽をしたいという話ではない。…

  • 籠り物語

    二人を乗せた神戸屋のバンはゲレンデに着いた。「帰りはシャトルバスあるからそれに乗って帰ってきなさい。夕方の仕事は16時からやから遅れないように」 「ありがとうございました。」礼を言うなりオーナーはそそくさと帰って行った。 卓はシーズン券を申し込んでいたのだが、シーズン券はゲレンデで引換券と交換してもらうシステムになっている。 「シーパス交換してくるから先滑っといて」タカシにそう告げ事務所を探してレストハウスへと向かった。 タカシと別れ無事シーズン券の交換を済ませた卓はゴンドラへと向かった。 卓のいつものルーティーンは一本目にゴンドラへ乗り、山頂までの間に缶コーヒーを飲みながら、ブーツを絞めたり…

  • 籠り物語

    初日という事もあり、この日の朝の仕事は休みで良いとチカさんが休みをくれた。「滑りに行っても良いですか?」長旅の疲れを感じさねない程に弾むような声色で卓は目を輝かせていた。 スノーボードができる、ただそれだけで満足だった卓は休んでなどいられないといった感じだ。 「かまへんよ、ゲレンデまで送ってあげるわ」その言葉を聞いた途端「すぐ用意してきます!」と卓は屋根裏へとかけ上がっていった。 屋根裏で支度をしている所へタカシがやって来た。「俺も滑りに行こうかなぁ」部屋でだらだら寝転びながら漏らす。「時間無くなるから行くなら早くして」卓は今すぐにでも山へ行きたい気持ちを抑えきれずに、だらだらするタカシに少し…

  • 束の間の春気分

    大寒波が来たと思ったら春のような陽気。 この世の全てが晴れ渡っているかのように感じる。 まだ2月の中頃で春はまだ遠いが、ほんの少し春の便りを感じられた今日。 この辺りは曇りが多く、日々重たくのしかかり、なんでもないのに心まで覆ってしまう、曇りは苦手だ。 こんな晴れの週末はヒノヒカリを家中に取り込み、掃除をするに限る。 陰陽を逆転させるかのようなヒノヒカリが全てを取り払ってくれる気分だ。 たまには何も考えず1日中小説を書き進めるのも良いだろう。 何かに日々終われる中、どんな時であろうと立ち止まる事も又必須。 今日はそんな、だらけた贅沢な1日に身を投じよう。

  • 籠り物語

    フロントへ行くなり「雪村君さすがに口のピアス外して」卓は、はっとして直ぐに取り外す。あまりにもバタバタしていたため初顔合わせの瞬間すらつけたままだった事に今気がついたのだ。 「すいません」素直に頭を下げる卓に「履歴書あんな真面目そうな顔やったから来た時びっくりしたわ、詐欺やで」と笑いながら冗談を交えて注意した。「まさか口に穴空いた子来る思わへんかったから」と居心地悪そうにしている卓に気を遣ってくれていた。 フロントには卓と同じぐらいの歳の男がもう一人居た。名古屋から来て先に神戸屋のバイト生活を始めていたタカシだった。「はじめまして雪村卓です、これからよろしくお願いします」卓が挨拶を交わすと、タ…

  • 籠り物語

    外観はかなり立派な木製のペンションだ。誰もが想像するであろう、これぞペンションといった所か。 この年は例年とは比べ物にならないほどの大寒波の襲来により、雪の量は想像を遥かに越えた量だった。ペンションの玄関前は3mを越える雪壁になっており、ペンションを囲む塀の様な形になり、まるで大豪邸の庭に居る気分だった。 玄関の扉を開け「おはようございます、今日からお世話になる 雪村 卓《ゆきむらすぐる》です。」 挨拶すると共に玄関に置かれた大きな段ボールが目に止まる。 卓がこのペンション生活をするのに必要であろう生活雑貨等を大量に詰め込んだ物だった。 卓が段ボールに気を取られていると「よ~おこし~、一家族ぐ…

  • 暖かい人

    シンプルに嬉しく思うので書きたくなった。 はてなブックマークについて書いたら色々教えてくれる方々が居て、またデジタルの中の温もりを感じた。 みなさん優しいですね。 自分は勝手に思い込んでそうしよって事を書いたのだけれど、こうすればとか、これは大丈夫とかわざわざコメントしてくれる。 みなさん暇ぢゃないだろうし、少なからず自分のブログにコメントやブックマークなどで書く作業に時間を裂いてくれる。 なんて事無い事なんだろうけど、自分には新鮮で温かかった。 改めて、お気遣い感謝します。 尊敬する皆さま方へ 誉

  • はてなブックマーク

    だめなのか。 せっかく読んで貰えた方との数少ない交流だったのにあんまり使うと良くないんだってね。しらんけど。 自分はみなさんの記事を見た痕跡として使っていたので、それをするとみなさんにも迷惑がかかるかも知れないって事ですよね? はて困ったもんだ。 ひとまず、人に迷惑がかかりそうなリスクがある事はしないに限る。 交流したい時はコメントを使うしかない。 そこまで時間を割くことが果たしてできるのだろうかとも思う。 不義理と捉えられたらそれはそれで仕方ないんだ。 自分は今まで通り好き勝手書いていくので、アクションが無くなってもかわりません。 勿論あれば嬉しいに決まってますがね。

  • 籠り物語

    どれ程歩いただろう。ゲレンデからポツリポツリとしか建物も無くなっていき、辺りは真っ白てな雪で除雪された一本道がそこにはあるだけ。 不安になりながらもたはだひたすらに汗を流しながら歩き続ける。そこでようやく1つの分岐が現れる。そのまはま真っ直ぐ行く道と樹々が生い茂っている右に曲がるT字路だ。 「どっちや…」休憩がてらしばらく考えた末に奥に入っていくのは違うと真っ直ぐ行く事にした。だが、こういう時に選ぶ方は大抵違う方を選んでしまうのが人間だ。 案の定いくら歩いても目的のペンションらしい物は見当たらない。さらに進むとトンネルのようなコンクリートの造形物に差し掛かった。「これ越えたらエリア変わるって事…

  • 久々にのんびり

    ようやく晴れた。 大寒波で家の中で息は白く、風呂場は凍り、食材の解凍のつもりが再冷凍。 今日は溜まってた洗濯に掃除、魚のさばきリベンジと全て片付いた。 やっぱ晴れは善き。 気分も明るくなる。しいて言うなら気持ち良くてうとうとしてしまい、時間を無駄にしてしまう。 それもここの所の寒波に耐えた自分へのお天道様からのご褒美ととらえよう。 小説も順調に進んでいる。 久々にゆっくり小説を読もう。 均一棚で見つけた三島由紀夫の潮騒、何回読んでも面白い。 面白いなんて稚拙な言葉で片付けて良いものかとは思うが… 順調に積んでいた本約30冊…のんびり消化しよう。

  • 籠り物語

    何度かこの苦痛をやり過ごし、ようやく目的地の栂池高原スキー場の駐車場へと到着した。 と思っていたのだが、もう1つ奥のゴンドラ乗り場のある駐車場が本当の到着地だったのだ。そこまでバスが行くとは思っておらず降りてしまった。 そんな事は知らずに周辺マップを探し目的地のペンションの場所を探す、その距離に違和感を覚えると同時に愕然とする。 何かがおかしい。近くにいた駐車場のスタッフに確認し、自分が犯したミスにようやく気がついたのだ。 「バス行ってもうたししゃあないわなぁ…」1人事を良いながらなぜかすんなりとその絶望的な距離を受け入れて歩き出していた。 キャスター付きのボードケースにキャリーバッグを雪の上…

  • 篭り物語

    ふと冷ややかな冷気がバスの窓から漂う。その寒さに目を覚まし、少しカーテンを開けて外を覗く。深い闇の真っ只中だが、ぼんやりと白い雪景色が確認できる。時計を見るとちょうど夜中の3時を示していた。 「まだ結構かかるなぁ…」心の中で呟き、毛布替わりの茶色のスタジャンを被り直し、再び眠りに落ちた。 バスが止まりドアが開く、空いたドアからは眠気も吹き飛ぶほどの極寒の冷気が勢いよく襲いかかり思わず身を縮こめた。 夜行の高速バスはすでに長野県の白馬村へと入っていた。そこからは各ゲレンデの主要なバス乗り場毎に止まり、スノーボードのツアー客達が順番に降りていく。 目的地はこのバスの終着点で、白馬村よりもさらに奥地…

  • 解放感がたまりません

    やっと終わりました。 慣れてない事やると体力的よりも精神を削られる。 3日ぶりにまともなご飯食べて、フリーな時間を満喫。 初めて受けたライティングのタイミングが悪く、仕事初日から連日の大雪、そして雪をかく…ふぅ ライティング再開、1日一食お茶漬け…外を見ると同じぐらいの雪…さっき掻いたはず…現実から目を背ける。 次の日、玄関開かず…あぁあ。 雪をかく…またライティングからのお茶漬け。 そろそろ叫びたくなってくる。外はまた雪。 いとこのおばちゃんが鱒とホッケをまるごと差し入れてくれたが、さばく暇も無く凍りつく部屋にダンク。 長旅びでしたが今こうやって文字を書いているという事で無事に帰還しました。

  • やっぱやって見たらわかる事は多い

    わかったんだ。 文字も文章も好きな事もわかった。 でも方面が違ったんだわ。 ライティングという形で書きたいと思っていない文字を書き連ねる事は楽しくないって事がやっとわかった。 表現したいというかなんというのか、そこははっきりわからないけど、こうして書いている今がやっぱり好きだ。 文字を仕事にすると漠然と楽しいと思っていたけど、ひとまずこれは違ったって事。 小説を書く時間が今は一番幸せな時間でストレス発散になる。 一概に文字といってもその世界の広さを実感できた良い経験だった。 文字は色々あってみんな良い。 まだ全部終わってないが、やり遂げたらこの世界からは離れよう。 好きな方の文字の世界に帰ろう…

  • 凄くざっくり

    さくっと5分ぐらいで書いてみましたが。 あらすじ、いや、あらすぎ? こんなに適当に書いてはいけないのはわかってはいるのだが… ひとまず書いてみた物を載せてみるので、もしよければ何か意見とかもらえると嬉しいです。 勿論スルーしてもらって大丈夫です。 これも書きたいだけなので。 書いて文字にして出したいので。 はじめます。 プロを目指しスノーボードに明け暮れる毎日。しかし、日本のスノーボードの業界の金の絡む汚い裏側を知りプロではない真の意味でのスノボーダーを目指す。 ペンションで働きながら毎日スノーボード、その日常で起こる人との関わりや恋愛、スノーボードに対する心境の変化。 恋愛はハッピーエンドを…

  • 落とし穴それはあらすじ

    あらすじって何。 ストーリーから骨子だけを残して荒く書いた筋…それが難しいのですよ。 意味は理解できるのだけれど、プロットと同じ様に解釈してしまって先に進まないのだ。 どうしたもんか… 小説の中身だけを書いてもあらすじが無ければメニューが無いお店に入るようなものだと表現されている一文が自分の目の前をかすめる… しかし、次の工程は流れて気にあらすじを書く所に居る。 書き終わってから書くの方がやり易いようななんともいえないあれなやつ。 ブログに投稿するならそれでも良いかと妥協、甘えがふわふわと目の前で宙を舞っております。 これを書いていて思いました。 考えて手が止まるぐらいなら書きながらではだめな…

  • 小説と物語の違い

    そもそもわかってなかったんだ… 自分が書いている物を胸をはって(内容とかクオリティーではなく)これは◯◯ですって言えない自分に今更気がついた。 いつもそうだ、やりたい事見つけたら何も考えずとりあえずやる…後で色々知る。 良い事もあれば悪い事もあるが。 まぁそれはそれとして。 作者が好き勝手書くのが小説、話し語る事が物語って感じ…どっちもやん… 自分勝手に好き勝手書くの方がしっくり来る、語るって堅苦しい感じも違うから小説ってことだな。 なので自分の書いている物は物語では無くて、小説やエッセイ(細かい事は置いておいて)なのだと。 厳密な定義はよくわからないが、そんな事よりも中身だな。少しスッキリし…

  • 文字で趣味を表す kotton mouth kings

    ちょっと一服がてら趣味的な事を少々。 恐らく、いや、ほとんどの方は僕のイメージとあわないと思うかもと勝手に想定する。 刺激的なので画像等は載せませんが。 大好物なんです。何するにも聞いています、なくてはならないもの、空気レベル。だからなに?だね。 好きな物を好きな文字で文章にしてみただけなのだ。 ラップメタルといえばlimp bizkitが最も有名。 westsideのラップメタルといえばkotton mouth kings。 これを聞かずにラップメタルを好きとは言えないと勝手に思うのだ。 聞いて下さいとかではないので。 重い音にラップの格好よさ、DJが繰り出すお洒落で一度聞いたら頭から離れな…

  • おかんへ書く手紙 (完)

    あの時はさすがにもう終わりやなぁって思ったわ。それでえぇ思ってたし。まぁ何はともあれって感じやな。 永遠は今おかんの実家である北海道の登別に住んでいる。じぃちゃん、ばぁちゃん共に居なくなって家を引き継いで住むためにこっちへ引っ越したのだった。 この家は永遠にとって思いでのたくさん詰まった家でそのまま無くなるのは嫌だと、なかば強引に引き継いだ。 おかんも無くなるのは寂しいと言っていたし、おかんの姉もできれば残したいという思いもあったのでそれも後押しした。しかし、永遠が強引にでもここを残さなければと思う一番の理由はおかんのためだった。 俺がこっちに住むって言うた時おかんはきっと理由わかってたんやろ…

  • おかんへ書く手紙 七話

    それからちょっと経った頃やったかな。完全に俺の中で線が切れたのは。 俺はバイトから夜中3時頃に帰った時やったな。開くはずのない玄関のドアが開いておかんが帰ってきた。俺何が起こったんか最初わからんかったわ。おかんもばれちゃったみたいな顔して笑ってたし。 永遠は部屋におかんを呼び込んで事情を聞いた。なんとなくだが察しはついていたのだが、確信を得るためだった。「どこいってたん?ってかどういう事?」永遠は怒りで声を震わせながらおかんに問う。この怒りの矛先はおとんに対する物であったが、夜中に女一人で出ていったおかんに対する物も無かったわけではない。「カラオケで一人で時間潰してた…」おかんは何故か笑ってい…

  • 今更ですがイニシエーション受けました

    イニシエーションラブ、まんまと綺麗に気持ち良い程に騙されました。 読み始めて、物語が単調に過ぎて行く。 男女の恋愛が少しリアルに、少し残酷に、少し生々しく。 このまま終わるのか、なんか寂しい終わり迎えるんやなぁ… えっ?てなりますよね。 2回読みたくなるってなりますよね。 どこにそんな面白さあるんだろう。生意気にも思ってました。人の書き物評価するとかそんなじゃないですよ。 そんなおこがましい事できませんから。 こんな面白いもの書けたら書いてるだけで楽しいのに、尚更楽しくなるでしょうね。 ミステリーかぁ… よし、別の本読もう。

  • おかんへ書く手紙 六話

    それからちょっと経った頃やったかな。完全に俺の中で線が切れたのは。 俺はバイトから夜中3時頃に帰った時やったな。開くはずのない玄関のドアが開いておかんが帰ってきた。俺何が起こったんか最初わからんかったわ。おかんもばれちゃったみたいな顔して笑ってたし。 永遠は部屋におかんを呼び込んで事情を聞いた。なんとなくだが察しはついていたのだが、確信を得るためだった。 「どこいってたん?ってかどういう事?」永遠は怒りで声を震わせながらおかんに問う。この怒りの矛先はおとんに対する物であったが、夜中に女一人で出ていったおかんに対する物も無かったわけではない。「カラオケで一人で時間潰してた…」おかんは何故か笑って…

  • おかんへ書く手紙 五話

    俺が専門学校通ってた時終わってからバイトで帰ってくるんは夜中3時か4時やったよな。いつもおかんはご飯作ってくれてラップしておぼんに置いてくれてた、今思い出してもほんまに感謝しかない、ありがとう。睡眠時間帯ほとんど無くてあの頃はきつかったなぁ… それは良いとして、おとんが酔っておかんに罵声浴びせてる時にチラッと聞こえた来た時の事やけど、今思い出しても心臓えぐられるみたいな胸の痛み感じるわ。 おとんが「わざわざお前がしんどい思いしてまであいつの飯の用意なんかせんでえぇやろ!」俺は耳を疑ったわ。俺が言われてる事にも多少なりショックはあったけどそんな事はどうでも良くて。 俺のためにおかんが優しさでやっ…

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