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2018/12/03

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  • “多様性”を尊重するって、軽々しく言えないかも…~朝井リョウ著『正欲』を読んで~

    『推し、燃ゆ』(宇佐見りん著)を読み、著者の瑞々しい感性に強い刺激を受けて以来、私は常に自分の意識を覚醒させて認識の再構成を図っていこうと、なるべく若い世代の作家の小説を意図的に選んで読むようにしている。そのような中で今回チャレンジしたのが、『正欲』(朝井リョウ著)である。本書は、朝井氏が自らの作家生活10周年を記念して著した長編小説で、第34回柴田錬三郎賞や第3回読者による文学賞等を受賞し、2022年本屋大賞にもノミネートされた作品である。累計発行部数が50万部を超えて、2023年には稲垣吾郎や新垣結衣等の豪華な俳優陣が共演して映画化もされ、衝撃的な問題作として評価を高めているらしい。 登場…

  • 「親和的な秩序」と「疎遠な秩序」をめぐる考察について~村瀬学著『理解のおくれの本質―子ども論と宇宙論の間で―』から学ぶ~

    若い頃にチャレンジしてみたものの、途中で頓挫してしまった本が数冊かある。その中の一冊に『初期心的現象の世界―理解のおくれの本質を考える―』(村瀬学著)があり、その続編に位置づく『理解のおくれの本質―子ども論と宇宙論の間で―』に至っては40年近くも積読状態になっていて、本の存在自体が私の意識外に置かれてしまっていた。ところが、65歳を過ぎてから松山市教育委員会の特別支援教育・指導員という職に就き、何らかの困り感をもつ子どもに対する適切な関わり方や支援の仕方等について担任の先生や保護者に助言するという立場になった私は、まず発達障害と言われる「自閉スペクトラム症」(ASD)や「注意欠如・多動性障害」…

  • 言語の誕生と進化の謎を紐解き、ヒトの根源に迫る探究の書!!~今井むつみ・秋田喜美著『言語の本質―ことばはどう生まれ、進化したか―』から学ぶ~

    探究による学びの過程をワクワクしながら追体験することができる本に出合った。『言語の本質―ことばはどう生まれ、進化したか―』(今井むつみ・秋田喜美著)である。著者の一人である今井氏は、言語と身体の関わり、特に音と意味のつながりが言語の発達にどのような役割を果たすのかという問題に興味を持ち、成人と乳児、幼児を対象に数多くの実験を行ってきた認知科学・発達心理学者。もう一人の秋田氏は、大学院生の時から一貫して、他言語との比較や言語理論を用いた考察により、オノマトペがいかに言語的な特徴を持つことばであるかを考えてきた言語学者。今井氏が実験をデザインする時にいつも頼りにしてきたのが、世界中のオノマトペ研究…

  • 文化政治としての哲学と「感情教育」による「連帯」の可能性について~「100分de名著」におけるリチャード・ローティ著『偶然性・アイロニー・連帯』のテキストから学ぶ③~

    今回は、いよいよ『偶然性・アイロニー・連帯』の3つ目のキーコンセプトである「連帯」について取り上げる。2月のEテレ「100分de名著」の放送やテキストでは2回分の内容になるので、講師の朱氏の解説を要約するためには、なりの力技が必要になる。私の力量では大変困難な作業になり、文脈が整わない記事になりそうなので、この点について読者の皆様には寛容な気持ちで受け止めて、各自で行間を埋めつつ読んでいただけたら幸いである。 前回、確認した「人間や社会は具体的な姿形をとったボキャブラリー」という本書の中心的なテーゼは、ことばづかいが変われば人間も変わるし、社会も変わるということを意味していた。これをローティは…

  • 「連帯」への希望をつなぐ「リベラル・アイロニスト」について~「100分de名著」におけるリチャード・ローティ著『偶然性・アイロニー・連帯』のテキストから学ぶ②~

    今回は、2月のEテレ「100分de名著」で取り上げられた『偶然性・アイロニー・連帯』の2つ目のキーコンセプトである「アイロニー」について、テキストの中で朱氏が解説している内容を私なりに大胆に要約しようと思う。特に「リベラル・アイロニスト」というあり方に関する内容が中心になるが、まずはローティの言う「アイロニー」という言葉の意味から入っていこう。 アロニーという言葉は一般的には「皮肉」「冷笑的」「斜に構えた」などというネガティブな意味合いを含んでいるが、ローティが言う「アイロニー」は18世紀末~19世紀はじめのドイツ・ロマン派の批評家シュレーゲルらが用いた「ロマンティク・アイロニー」という言葉に…

  • 「哲学が人類の会話を守る」というテーゼと「偶然性」について~「100分de名著」におけるリチャード・ローティ著『偶然性・アイロニー・連帯』のテキストから学ぶ①~

    早いもので今年も3月に入ってしまったが、2月のEテレ「100分de名著」で取り上げられたのは、『偶然性・アイロニー・連帯』(リチャード・ローティ著)だった。私は大変興味があったので先月初旬にテキストを購入し、休日には4回分に構成された解説を予習的に読みながら、各回の放送録画をその都度視聴していった。久し振りに「100分de名著」の放送を活用して自ら学ぶ経験をしてみて、改めて本番組の面白さと醍醐味を味わった。講師の大阪大学招へい教員で哲学者の朱喜哲(ちゅ・ひちょる)氏の要領を得た分かりやすい解説と、司会者の一人タレントの伊集院光氏の相変わらずの的確で具体性に富む解釈によって、私の知的欲求は十分に…

  • 私たちにとって「推しを推すこと」に代わることは何?~宇佐見りん著『推し、燃ゆ』を読んで~

    文学には、純文学と大衆文学との区別があると思うが、私は推理小説や時代小説等の大衆文学の作品が好きで、どちらかというと芸術性の高い純文学の作品は苦手である。その理由は、文章表現における芸術性というものがよく分からないからである。純文学の中の豊かで個性的で言葉遣いや独自性に満ちた比喩的な表現等に接しても、それらから著者が表現したい表象や心情等を読み取り解釈するという能力が乏しいのだと思う。だから、私は芥川賞より直木賞の受賞作品の方を好む傾向がある。芥川賞受賞作品は、よほど何かのきっかけがないと読まないのである。 そんな私が、今回、第164回(2020年度下半期)芥川賞受賞作品『推し、燃ゆ』(宇佐見…

  • 子育てに関する常識的な考えを鵜呑みにすることの愚かさを知る!~本田秀夫著『ひとりひとりの個性を大事にする にじいろ子育て』から学ぶ~

    私には、ともすると子育てに関する常識的な考えを十分に検討し直さないまま鵜呑みにしてしまう傾向があると思う。例えば、「あいさつが基本である。」「たくさんの言葉掛けをする方がよい。」「スマホ育児はよくない。」等々、どれも常識的な子育ての考えだと信じて疑わなかったが、それらに対して「そうでもないのではないか。」と疑問を呈している“目から鱗”の本に出合った。それが今回の記事で取り上げる『ひとりひとりの個性を大事にする にじいろ子育て』(本田秀夫著)である。 本田氏については、以前の記事でも何度か取り上げた本の著者なので、読者の皆さんもご存じの方が多いのではないだろうか。『発達障害―生きづらさを抱える少…

  • 「探究的な学び」の実践とその必要性について考える!~「愛媛教育研究大会」に参加して~

    2月2日(金)に年休を取って、愛媛大学教育学部附属幼稚園・小学校で開催された「第102回 愛媛教育研究大会」に参加した。午前中は、附属小学校で公開された授業の中から6年生のくすのき学習(総合的な学習の時間)の単元「共に燦めけ 道後の町とわたしたち」、1年生のぎんなん学習(生活科)の単元「いちほしたんけんたい!ふゆもたのしもう」、3年生の国語科の単元「深い読みから自己と対話する―成長とは―」の3つを参観させてもらった。また、午後からはくすのき学習の研究協議会へ参加し、その後は体育館で行われた講演「そもそも『探究』は何のため?~その原理と具体的な方法について~」(講師は熊本大学大学院教育学研究科・…

  • 「1980年代まで」に私が影響を受けた「思想」について少し振り返る・・・~佐々木敦著『増補新版 ニッポンの思想』に触発されて~

    1983年9月、最先端の哲学を扱った高度な内容の『構造と力―記号論を超えて―』(浅田彰著)という単行本が勁草書房という出版社から刊行され、何と15万部を超える大ベストセラーになった。それを契機にして「ニュー・アカデミズム」(略称「ニューアカ」)現象が起きて、世の中に一大センセーションを巻き起こした訳だが、この『構造と力』が初版から約40年の歳月を経て、最近やっと文庫化(中公文庫)されたのである。2020年代の混迷する世界を理解する上で今なお新しさを失わないその「思想」を、多くの市井の人々にも知ってもらいたいという思いからであろう。 1983年当時、私は30歳前の年齢で、愛媛大学教育学部附属小学…

  • 私の中にある無意識の「エイジズム」(年齢差別)について~「100de名著」におけるボーヴォワール著『老い』のテキストから学ぶ~

    1月6日(土)の午前中、松山市教育会と松山市教育研究協議会の共催によって実施された「令和5年度 教育を語る会」に私は参加した。内容は、愛媛県教育支援センターの坪田朋也指導主事が「メタバース(仮想空間)上の学びの場による児童・生徒への支援」という演題で行った講演会だった。愛媛県教育委員会がインターネット上のメタバースを活用して不登校生が学べる環境を新たに整備した本年度事業に関する、今までの具体的な取組内容をライブ映像も加えて紹介するものだった。学校だけでなくフリースクールなどの他の教育機関とのつながりもない、完全にひきこもっている子どもたちが、他者や社会とつながるための最初の一歩になってほしいと…

  • 「コンヴィヴィアル」な老いの生き方とは?・・・~岡本裕一朗著『世界の哲学者が悩んできた「老い」の正解』から学ぶ~

    喪中で迎えた今年の元日は例年とは違い、華やかなお節料理が食卓に並ぶでもなく、束になった年賀状が郵便受けに入ることもなかった。恒例行事が中止になったような一抹の寂しさを隠し切れなかったので、全品20%割引のウルトラセール中のブックオフへ行ってみることにした。妻から以前に依頼されていた医学関係の実用書と自分好みの哲学や言語学関係の新書を数冊購入して、私はちょっといい気分を味わうことができた。帰宅後に、それらの書籍をどの書棚に入れるか思案しながら何となく書棚に並ぶ本の整理をしていると、年末に入手していた『世界の哲学者が悩んできた「老い」の正解』(岡本裕一朗著)の背表紙が目に入った。「最近、<〇〇の正…

  • 人が“断捨離”できない理由について考える~垣谷美雨著『あなたの人生、片づけます』を読んで~

    いよいよ年の瀬が迫ってきた。この時期になると、我が家でも年末の大掃除、いや小掃除をする。私の分担は、室内の窓やドアの桟の埃を拭き取ったり、玄関周りの掃き掃除や玄関ドアの拭き掃除をしたりして、お正月のお飾りを付けることなのだが、今年は義母が亡くなったのでお飾りはしない。だから、今日の日中にやってしまった。年末の大掃除と言えば、26日(火)の夜、たまたまBS朝日テレビの「ウチ、“断捨離”しました!傑作選 年末スッキリしましょう!スペシャル」を観た。内容は、年末大掃除の参考にしたい回をリピートする放送だった。私には不必要だとしか思うような物が捨てられない人の心について考える機会になった。 そんなこと…

  • 哲学対話で「探究による学び」を探究しました!~「第7回愛媛の探究をつくる会」より~

    12月15日(金)18:30~20:00、愛媛大学教育学部附属小学校の1年教室で、「第7回愛媛の探究をつくる会」が開催された。今回は、『「探究による学び」を探究しよう』というテーマで、私がファシリテーターになって哲学対話をするという企画であった。参加者は、愛媛大学教育学部教授1名、愛媛大学教育学部附属小学校教諭3名、愛媛大学教職大学院生4名(内1名は記録者)、松山大学の学生3名だったので、私を含めて12名。いつもよりは少ない参加者数だったが、本会で初めての哲学対話だったので、気軽に安心して話すことができる環境であるという点で結果的に適当な人数だった。 高校の教員を目指しているという松山大学の学…

  • 「こども哲学」と発達障害の子との相性について~川辺洋平著『自信がもてる子が育つこども哲学―“考える力”を自然に引き出す―』から学ぶ~

    私の職場の隣には市の男女共同参画推進センターの建物があり、その2階にちょっとした図書コーナーがある。昼休みの時間にたまにそこを訪れるのだが、先日ちょっと興味を惹く本を見つけた。それが、今回の記事で取り上げる『自信がもてる子が育つこども哲学―“考える力”を自然に引き出す―』(川辺洋平著)という、私が以前から実践してみたいし考えていた「こども哲学」に関する本である。本書の1~5章までは、親子で「こども哲学」(3歳から小学生を対象)という取組にチャレンジした方々に、著者がお話を聞いてまとめている。さらに6章には、本ブログの以前の記事でも取り上げた『ゼロからはじめる 哲学対話』の編著者の河野哲也氏との…

  • 「心的なもの」という概念の住処とは?~古田徹也著『このゲームにはゴールがない―ひとの心の哲学―』から学ぶ~

    幼稚園に通う3歳半になる娘に、焼き海苔を敷いて巻く卵焼きを得意になって作り弁当に入れていた著者が、何気ない会話の中で実はその卵焼きは娘の好みではないという本音を知りショックを受ける。しかし、著者はそれ以上に娘がその本音を隠そうとしたことに驚いた。それまでの娘は著者にとって裏表のない分かりやすい存在であったから、娘が自分への本当の気持ちを内面に押しとどめ、嘘をつけるようになっていたことに対して、我が子の成長の証と喜ぶとともに純粋で無垢な時間はもう過ぎ去ってしまったという多少の複雑な感慨を覚えたという。そして、このことを「彼女は私にとって遠い存在になり、それによって、むしろ以前よりも近い存在になっ…

  • 弱い心を癒してくれそうな「珈琲屋」の熱いコーヒーを飲んでみたいなあ!~池永陽著『珈琲屋の人々―どん底の女神/心もよう―』を読んで~

    つい2週間ほど前まで夏日が続いていたと思っていたら、最近は最低気温が10℃を下回る日があり、あっという間に晩夏から晩秋、いや冬になってしまった感じがする。もうこの時期なので、当然と言えば当然なのだが・・・。日本の四季は本当になくなってしまうのだろうか。我が国に長く伝えられてきた季節に対応した繊細な感性や情緒性は、衰えていってしまうのだろうか。俳句の季語は、どのように変化していくのだろうか。近年の地球温暖化に伴う異常気象の影響は、日本人の精神性や文化の在り方まで根本的に変化させるのかもしれない…などと、取り留めのない思いを転がしてしまう。 結局“読書の秋”を味わうことがなかった今週初め、私は気軽…

  • 「探究」に関する講演を拝聴しての所感あれこれ~藤原さと著『協働する探究のデザイン―社会をよりよくする学びをつくる―』を参考にして~

    11月19日(日)の午前中、愛媛大学教育学部2号館の4階多目的講義室を会場にして開催されたSDGs研修会の講演「協働する探究のデザイン―すべての教師が大切にされる探究―」を拝聴することができた。講師は一般社団法人「こたえのない学校」代表理事で、『協働する探究のデザイン―社会をよりよくする学びをつくる―』の著者である藤原さと氏。私は今回の研修会の案内チラシを初めて見た時に、「探究」という学びに関する基礎的な知識や具体的な実践例を知りたくなった。そこで、早速、本書を購入して目を通してみた。すると、さらに「探究」という学びについての興味がますます沸き、初めて愛媛県へ来るという著者の講演を直接聞いてみ…

  • 江戸時代の村医者の矜持に共感!~青山文平著『本売る日々』を読んで~

    11月に入って、喉の痛みや鼻づまり、肩こりなどの花粉症のような症状が起きて、ついには声が出なくなってしまったので、2日(金)の午前中に年次有給休暇を取ってかかりつけの耳鼻咽喉科で診てもらうと、何と「風邪だ。」と言われた。この2~30年ほど風邪を引いた記憶がなかったので、「えっ、本当?」と正直思った。でも、よくよく考えてみると、10月最後の土・日に我が家を訪れていた二女たちは微熱を伴う体調不良の状態だったので、もしかしたらその際に何らかの風邪の原因となる細菌かウイルスが感染したのかもしれない。 ともかくも、私は11月3日(金)~5日(日)の3連休中、医師から処方された薬を正しく服用しながら、不要…

  • やっと教員対象の哲学対話にチャレンジできるぞ!~河野哲也[編]『ゼロからはじめる 哲学対話』から学ぶ~

    やっと秋の気配を実感するようになったと思っていたら、10月も下旬になっていた。仕事関係では初旬から「就学児を対象とした秋の教育相談」の運営を行う事務局の業務に追われたり、自身が相談担当をして審議資料を作成したり、中旬には「特別支援学級に在籍する子ども対象の体育大会」の準備や当日の運営等の業務もあったりした。また、その間にも各学校への訪問相談をする業務をこなすなど、何かと慌ただしい日々が続いていた。 また、私的にも孫Hの「秋祭りの提灯行列」や「小学校の運動会」等の行事に参加したり、新居浜市の住んでいる孫Mの所へ行って一緒に遊んだり、また、市教育会の地区支部長の立場で来賓として校区中学校の体育大会…

  • 「サバァン症候群」と「ギフテッド」について考える~柚月裕子著『月下のサクラ』を読んで~

    9月下旬になったのに、まだ真夏日が続いている。朝晩は少しの冷気を含んだ空気になり、微かな秋の気配を感じるようにはなっているが、それでも日中は残暑が厳しい。日本の四季は、本当に夏と冬の二季になってしまうのか。季節の移ろいを楽しむ気分に浸ることができない。また、この老齢の身には連日の残暑は身体にも響いてくる。ましてや先週、先々週の勤務は、週5日間のフルタイムだけではなく、時間外勤務時間も多く激務だった。午前中は何らかの「困り感」をもつ子どもたちの行動観察をするために授業参観に出掛け、午後は夕方から担任や保護者との教育相談のために学校訪問をするという毎日だった。本当に心身共に疲労困憊! また、16日…

  • 夫が妻を介護する老老介護について考える~上野千鶴子著『男おひとりさま道』から学ぶ~

    前回の記事では、『妻の終活』(坂井希久子著)という小説に触発されて、「男おひとりさまの老後を見据えて」の対応について自分事としてとらえ考えたことを綴ってみた。その中で、今後自分がおひとりさまになった時を想定してみると、今から精神的かつ生活的自立を図っておくことの大切さをしみじみ痛感した。また、まだまだ様々な対応についても考える必要があると思い、そのために参考になりそうな本を探し始めた。すると、上野千鶴子氏のベストセラー『おひとりさまの老後』の続編ともいうべき、その名も『男おひとりさま道』(上野著)という本を見つけた。前作と比べて、内容的にはほとんど重複するところはない。両者の出版のあいだにある…

  • 男のおひとりさまの老後を見据えて・・・~坂井希久子著『妻の終活』を読んで~

    「女性の方が平均寿命は長いから、普通は旦那の方が先に逝くんじゃないか。」 「でも、先々のことは神様だけしか分からないから、逆の場合もあるよ。その時は男のおひとりさまの老後になるけど、大丈夫なの?」 亡き義母の遺産相続の手続きをどうするか、義姉夫婦と私たち夫婦の4人で話し合った時の中で交わした会話の一部である。妻と義姉は、今までに何度か無料法律相談の会場へ足を運んでいる。相談の中で担当者から、遺産相続の手続きを司法書士や弁護士に依頼すると、結構な額の手続き費用が掛かると言われたそうである。しかし、自分たちで役所に出掛けて手続きをするのも大変なようなので、これからどのように対応しようかと話し合った…

  • 腎臓の機能低下を防ぐにはどうしたらいいの?~高取優二著『人は腎臓から老いていく』から学ぶ~

    7月20日(木)に当市の医師会健診センターで受けた「日帰り人間ドック」の結果報告書が、8月3日(木)に自宅へ送付されてきた。早速、総合判定を見てみると、何と「5 精密検査を必要とします。」に星印が付いているではないか!一体、何の検査項目が引っ掛かったのだろうか?!私は慌てて検査項目を上から順に目で追った。すると、今までの健診で一度も引っ掛かったことがなかった「尿・腎」の項目に、「5 精密検査を必要とします。」と書かれていた。 私は次にドキドキしながら「指示内容」と「検査項目の数値」等を見てみた。引っ掛かっていたのは、まず「尿蛋白」と「尿潜血」で陽性の判定。また、「尿素窒素(BUN)」で「22.…

  • 後悔しない、真っ当な人生の送り方とは?~勢古浩爾著『人生の正解』から学ぶ~

    前回の記事でとり上げた『ある男』(平野啓一郎著)の内容は、凄惨で不幸な自分の過去を捨てて、全く別人の人生を生き直そうとした「ある男」の身元調査の過程が謎解きになるという、ミステリー仕立てのストーリーだった。フィクションとは言え、「ある男」が置かれた情況が我が身に起こったとしたら耐えられないものだったので、「ある男」が止むを得ず選んだ行動には共感するところがあった。しかし、私たちは自分の人生がどんなに耐え難く悲惨なものであったとしても、その中で生きていくほかないのが現実であろう。だとしたら、自分なりに後悔しない、真っ当な人生を送るためには、どのような在り方をしていけばいいのだろうか。 そのような…

  • 愛に過去は必要なのだろうか?~平野啓一郎著『ある男』を読んで~

    暑い!本当に暑い!!四国地方の梅雨明けは例年より少し遅かったが、その前から酷暑の日々が続いていた。そのため、私は早くも夏バテ気味になり、当ブログの更新もままならない情況だった。書斎のクーラーが故障していて、パソコンでキーボードを打つなんてことは地獄の所業なのである。もちろん冷房の効いたリビングにパソコンを持ち込めば、涼しい環境で記事を綴ることはできる。しかし、仕事場から帰宅したらもう汗びっしょり。夕食を取りながらビールを一缶飲み干すと、なかなかパソコンに向かう気にはならないという状況に陥っていた。だから、今日は約半月ぶりの記事である。月が変わり8月になったので、気分を一新し衰えた気力をなんとか…

  • 誰でも「普通」ではない面があるのではないの?~村田沙耶香著『コンビニ人間』を読んで~

    私は時々、昼休みの時間を利用して職場近くにある市立中央図書館へ足を運ぶことがある。つい先日も暇つぶし程度の感覚で訪れ、特に当てもなく小説のコーナーをうろついていた。すると、私の目が、黄色地に黒の字で書かれたある本のタイトルに惹き付けられた。以前、私が初めて参加した紹介型の「読書会」で、やはりその時に初参加していた20~30代くらいの女性が紹介していた『コンビニ人間』(村田沙耶香著)である。第155回(2016年)芥川龍之介賞・受賞作。翻訳本を含めて全世界発行部数は累計100万部を突破した作品である。 当時のテレビ・ニュースで著者の若い女性が受賞の喜びをコメントしていた映像が、私の脳裏に微かに残…

  • 人と人との関係性は発生的に変化していくのがよく分かる物語!~砂原浩太朗著『高瀬庄左衛門御留書』を読んで~

    年に何回か「時代小説が読みたい!」という思いに心が囚われて、古書店の時代小説の棚にどうしても足が向いてしまう時がある。それが6月下旬だった。以前に新刊本が出た時に、「面白そうだな。」と思って気に留めただけの時代小説の単行本を、今回二冊購入した。私の好きな作家の青山文平氏(2016年、『つまをめとらば』で第156回直木三十五賞を受賞)の著作『泳ぐ者』と、私にとっては初めての出会いになった作家の砂原浩太朗氏の著作『高瀬庄左衛門御留書』(第134回山本周五郎賞・候補作、第165回直木三十五賞・候補作!)である。 『泳ぐ者』は、過去の当ブログで取り上げた『半席』の続編になる。今回も、御家人から旗本に出…

  • 「読む」ことについて考える~高橋源一郎著『「読む」って、どんなこと?』から学ぶ~

    先日の日曜日、車で約1時間半の場所に住んでいる二女とその長男M(私たち夫婦にとって二人目の孫)を訪れた。父親は、市役所の秘書課勤務なので日曜日でも出勤していて不在。Mとは久し振りの再会だったが、すぐ私たちに甘えてくれた。まだ2歳4か月なのだ。でも、身の回りの物や色等の名前を言うことができ、簡単な会話なら言葉でのコミュニケーションもできて、よくおしゃべりをするようになった。また、絵本の読み聞かせをすると、興味を示してじっと聞いている。平仮名やアルファベットなどの文字にも少し関心を示すようになっていて、もうすぐ「読む」ことができるのではないかと、その成長ぶりに驚くばかりである。 「成長」と言えば、…

  • 二つの〈良心〉が和解(相互承認)することができた理由とは?~西研著『ヘーゲル・大人のなりかた』から学ぶ~

    前回の記事で、5月のNHKのEテレ番組「100de名著」で取り上げられたヘーゲルの『精神現象学』で述べられている「精神」の成長過程を、講師の斎藤幸平氏のテキストを参考にして素描した。そして、「精神」の最終的な到達点である<良心>の和解(相互承認)、つまり「絶態精神」や「絶対知」についても簡単に触れた。しかし、二つの〈良心〉が和解(相互承認)するプロセスについて触れる余裕がなく、その内実を分かりやすくまとめることができなかった。 私はこのことが気になっていて、次の記事では二つの〈良心〉が和解(相互承認)する過程について綴ってみたいと思っていた。そのような面持ちの中、確か昔読んだ本の中でこの点につ…

  • 分断を乗り越える思想とは?~「100de名著」におけるヘーゲル著『精神現象学』のテキストから学ぶ~

    四国地方はすでに梅雨入りし、カレンダーも6月のページになってしまったが、今日は先月放映されたEテレの「100de名著」の話題を取り上げよう。5月に取り上げられた名著は、「近代哲学の完成者」とも称されるゲオルク・ヴィルヘルム・フリードリッヒ・ヘーゲルの『精神現象学』であった。極めて難解な哲学書として有名であり、読破した人はほとんどいないのではないかとも言われている書である。もちろん私などには手が出る哲学書ではないが、今までにヘーゲル哲学について触れた哲学関連の本を何冊か読んだことがあったので、ちょっとした興味をもった。また、講師が「100de名著」で以前にカール・マルクスの『資本論』を取り上げた…

  • 様々な刺激を受けた初参加の読書会!~『読書会入門―人が本で交わる場所―』に触発されて~

    随分前になるが、『読書会入門―人が本で交わる場所―』(山本多津也著)を読み、著者が「読書会に慣れ親しむことで、同じでなくてはならない、同じ言葉しか使えないといった強烈な同調圧力も軽減されるのではないか」という理由で読書会を学校の授業に取り入れてほしいと提案していた箇所に共感を覚えたことがあった。つまり、同じ一冊の本を読んでも、10人いれば10通りの読み方があることに気付くことができ、人間の本来の多様性を実感することができる場が、読書会である。 私は、機会があれば読書会に参加してみたいと思っていたが、コロナ禍を理由に断念していた。ところが、今月初旬に新型コロナウイルスが感染症法上、2類相当から5…

  • 人間をトータルにみるための視点について~榊原哲也著『医療ケアを問いなおす―患者をトータルにみることの現象学―』から学ぶ~

    書店で『医療ケアを問いなおす―患者をトータルにみることの現象学―』(榊原哲也著)という書名を見た時、私はサブタイトルの「トータルにみる」と「現象学」という言葉に強く惹かれた。その理由の一つは、私が現職中に子どもの問題行動を理解する視座として、「子どもをトータルにみる」という言葉をよく使っていたからである。また、もう一つの理由は、そのためには「現象学」という哲学的アプローチが有効ではないかと考えていたからである。 本書は、そもそも病いということはどういうことか、病いを患う人をケアするとはどういうことなのか、「現象学」という哲学の視点から改めて考えてみた上で、「医療ケア」を見つめ直していこうという…

  • コロナ禍で見失っていた哲学的な問いとは?~國分功一郎著『目的への抵抗 シリーズ哲学講話』から学ぶ~

    先日、久し振りにジュンク堂書店三越店へ行き平台に置かれている本たちを何気なく見ていると、帯の「自由は、目的を超える。『暇と退屈の倫理学』がより深化。東京大学での講話を収録!」という言葉が目に飛び込んできて、止むに止まれぬような気分になり『目的への抵抗 シリーズ哲学講話』(國分功一郎著)を購入した。以前、國分氏の『暇と退屈の倫理学』を読んで、あまりにも面白かったので当ブログの記事において10回連続で、各章の内容概要や簡単な所感を綴ったことを思い出し、あの時に味わった知的興奮が蘇ってきそうな予感が沸いてきたのである。 本書は、第一部「哲学の役割―コロナ危機と民主主義」と第二部「不要不急と民主主義―…

  • 勉強とはこれまでの自分の自己破壊である!~千葉雅也著『勉強の哲学~来るべきバカのために 増補版~』から学ぶ~

    今年のゴールデンウィークを9連休にするために、5月1日(月)と2日(火)に年次有給休暇を取った。ただし、4月29日(土)~30日(日)に二女が趣味でやっているフラダンスの発表会に出演するために、孫Mと共にやって来て一泊して帰ったので、ゆっくりと休養という訳にはならなかった。でも、久し振りにMと一緒に遊んでやることができたので、充実した時間を過ごすことができた。今年2月に満2歳の誕生日を迎えたばかりのMだが、とてもおしゃべりが上手になっており、ほとんど日常的なコミュニケーションには困らないほど語彙も増えていた。歌やダンス、模倣遊びなども自然にするようになり、遊びの相手をしていても飽きることがなか…

  • 「イメージができない子」に対する支援のあり方について~岡田尊司著『発達障害「グレーゾーン」―その正しい理解と克服法―』から学ぶ』~

    4月中の勤務内容はまだほとんどが「研修」なので、今まで気になっていたことについて考えを深めてみようと思い、最近購入した『発達障害「グレーゾーン」―その正しい理解と克服法―』から学ぶ』(岡田尊司著)を読み進めた。本書は、発達障害の徴候はあるが診断は下りない「グレーゾーン」の人が、時には診断が下りている人よりも深刻な事態に陥っており生きづらくなっている実態を報告し、その正体と対策について分かりやすく解説している。私が気になっていたのは、今まで教育相談を受けた子どもの「困り感」の中で今一つ支援内容がすっきりとしていなかった「イメージができない」という特性についてなのだが、本書には「グレーゾーン」の人…

  • 生前の義母との思い出、あれこれ…

    4月12日(水)の午後11時47分、義母が急性心臓病で亡くなった。享年94歳。 その週の日曜日に、私たち夫婦は義母とお弁当やおはぎを一緒に食べようと実家を訪れたが、義母は食欲がなく、おはぎをほんの少し食べただけでお弁当は口にしなかった。次の日も食べ物を口にしない状態が続いたので、火曜日に義姉と妻は義母を掛かりつけの病院へ連れて行き診察してもらったが、詳しい検査が必要だからと近くの総合病院を紹介してもらった。そこで検査を受けた後で主治医から「炎症反応値が高くなっているが、その原因ははっきりしない。取り敢えず点滴を打ち様子を見てみよう。」と言われたそうである。点滴のお陰か義母は火曜日には食欲が少し…

  • 「感覚過敏」と「感覚鈍麻」って、同居するの!?~井出正和著『発達障害の人には世界がどう見えるのか』から学ぶ~

    3月末~4月上旬に掛けて、長女たちは新しく購入したマンションへ引っ越しをした。私たち夫婦は、土日はもとより平日の夕方などを活用してその手伝いをしていたので、何かと慌ただしい私生活を送っていた。また、公的にも年度末の人事異動による転任者を送る諸行事や、新任者を歓迎するための諸準備に余念のない日々を過ごしていた。そのような中で新年度が始まり、今日は職場で新任者の方々との新しい出会いがあった。私たち特別支援教育担当の部署では、指導主事1名と指導員2名が新たに加わり、指導主事3名と指導員7名の計10名の態勢が整った。「このメンバーで本年度の担当業務をよりよく遂行していくのだ。」と、年甲斐もなく気分が高…

  • 「いいね」によって束ねられる健常発達者の危うさ!~兼本浩祐著『普通という異常―健常発達という病―』から学ぶ~

    3月も中旬を過ぎると、ほとんど各学校からの教育相談業務はなくなり、私たち特別支援教育指導員の仕事は開店休業状態になる。こんな時は、自分の課題意識に即した特別支援教育関連の本を読んで研修をしようと、私は少し気合を入れて読む必要があると思っていた新書を購入した。以前に職場近くの大型デパート内にある紀伊国屋書店で目にして、パラパラとページを捲ると内容的にちょっと難しそうだったので、その時は買うのを止めた『普通という異常―健常発達という病―』(兼本浩祐著)という新書である。 <後書き>の中で、著者の愛知医科大学医学部精神科講座教授の兼本氏は、本書を執筆中に亡くなった木村敏氏と祖父江逸郎氏という二人の大…

  • 「主体的・対話的で深い学び」の視点で授業改善を図ることの妥当性は?~小針誠著『アクティブラーニング』から学ぶ~

    前回の記事で、2020年度から小学校で全面実施となった新学習指導要領で謳われている「主体的・対話的で深い学び」(「アクティブラーニング」のこと)を、私は無意識に「エセ演繹型思考」によって受容していたことを反省し、意識的に「帰納型思考」を駆使することを通してもう一度とらえ直す必要があると述べた。そして、そのためにこれから具体的にどのような作業をすべきかを考えなければならないとも綴った。 そのような課題意識を抱きつつ薄い霧の中を彷徨っていた私にとって、その霧を少しは吹き飛ばしてくれそうな本と出合う好機が訪れた。つい先日、いつもの古書店へ出掛けて行き、私の課題解決に役立ちそうな本を物色していると、現…

  • エセ演繹型思考に基づく文科省の教育改革の問題点とは?~苅谷剛彦著『コロナ後の教育へ―オックスフォードからの提言―』から学ぶ~

    全国の小学校は2020年度から新学習指導要領を全面実施する予定だったが、政府が3月から5月まで新型コロナウイルスによる感染症対策の一つとして各学校の全国一斉休校措置を取ったために、思わぬ事態に陥り全面実施どころではなくなってしまった。特に、新学習指導要領で謳われていた「主体的・対話的で深い学び」(「アクティブ・ラーニング」のこと)を視点とした授業改善への気勢がそがれてしまう結果となった。だからという訳ではないが、私が2021年7月より特別支援教育指導員として各学校を訪問して参観させていただいた授業の多くは、旧態依然とした授業展開であった。 ところが、従来の授業風景とは全く違う場面と出合うことが…

  • 「やりたいことをやりましょう」は〈奴隷の道徳〉なの?!~古川雄嗣著『大人の道徳―西洋近代思想を問い直す―』から学ぶ~

    先月10日(金)の「愛媛の探究をつくる会」が終わった後、附属小学校の道徳科を研究している先生と「道徳科教育の在り方」について少し意見を交わすことができた。主に道徳科と他教科等との合科的・関連的な指導を構想するカリキュラム・マネージメントの大切さについて、共感的な対話ができたことが印象に残っている。また、熊本大学の苫野一徳氏が主張している「自由の相互承認」をねらいとする「道徳科教育の在り方」に関して少し話題にしたことも記憶している。 そのような経験をきっかけにして、私はここのところずっと「道徳科教育の在り方」に関する原理的なことを考えていた。そのような中、私に改めて「学校教育においてなぜ道徳が必…

  • 久し振りに学び合う楽しさを体験した!②~「愛媛の探究をつくる会」に参加して~

    前回の記事で、2月3日(金)に開催された第101回愛媛教育研究大会において、体育科の公開授業を参観したり研究協議会へ参加したりした内容の概要と簡単な所感を綴った。実は、その大会当日にわずか10分間ほどだったが、私は1年生の「ぎんなん学習」(生活科と特別活動等を統合して運用している附属小独自の領域名)の公開授業も参観していた。単元名は「おもい出いっぱい キラわく じぶんたんけん」で、本時(6/14時)のテーマは「『じぶんたんけん』で見つけた『じぶんのせいちょう』をつたえよう」だった。 私は午後の研究協議会は体育科の方へ参加したので、当然「ぎんなん学習」の方へは参加できなかった。しかし、「ぎんなん…

  • 久し振りに学び合う楽しさを体験した!①~「愛媛教育研究大会」に参加して~

    2月3日(金)に開催された第101回愛媛教育研究大会(幼稚園・小学校の部)へ参加させてもらった。新型コロナウイルスの感染拡大のために、この2年間はオンラインでの開催だったので、対面での開催は3年振りである。私は午前中2つの体育科の公開授業を参観し、午後からは体育科の研究協議会に参加したので、今回はそれぞれの内容の概要と簡単な所感をまとめてみたい。 1年生の体育科「つながるベースボール~投げて走ってあつまって~」の公開授業は、1チーム4人で攻撃が一巡したら攻守交替をして3回まで、ボールを打つのではなく投げる、攻めは投げる人以外は塁いて満塁の状態で攻撃し一人ホームインで1点、守りは捕球者とその他の…

  • 思春期のADHD児に対する支援について~小栗正幸著『発達障害児の思春期と二次障害予防のシナリオ』から学ぶ~

    今年も早や2月を迎え、本年度は後2か月ほどで終わる。本年度の勤務状況について振り返るにはまだ早いかもしれないが、特別支援教育指導員として昨年度とは少し内容が異なる教育相談を担当することがあったので、今回はそのことについて綴ってみようと思う。 その教育相談というのは、中学1年生のADHD(注意欠如・多動症)児に関するものである。一つ目の事例は、昨年の4月、入学式を終えてまだ2週間ほどしか経っていない時期に、市内のある中学校から「1年の男子生徒2名(A君とB君)が授業中に立ち歩いたり、 教室を飛び出したり、高所に登るなど危険な行為を繰り返したりする。また、注意をしても反抗的な言動を取ってしまうため…

  • 「考える」って、どうすることなの?どのようにすればできるの?~安野光雅著『かんがえる子ども』と野矢茂樹編著『子どもの難問~哲学者の先生、教えてください!』を読んで~

    今の職場の隣に、半年間勤務して約2年前に退職した職場である当市の男女共同参画推進センターがあり、その2階に図書コーナーが設置されている。主には男女共同参画推進に関する本を所蔵しているが、小説やエッセー、子育て本等も少しは並んでいるので、勤務していた時には昼休みの時間を利用して数冊の本を借りることもあった。その懐かしい図書コーナーに、今月13日(金)の昼休みに久し振りに足を運んでみた。 しばらく何気なく見回っていると、子育て本の書棚の中に面白そうな本を見つけた。一冊は、私の好きな絵本作家の安野光雅氏のエッセー『かんがえる子ども』。もう一冊は、当ブログの前々回の記事で取り上げた『難しい本を読むため…

  • 久し振りに「シャーデンフロイデ」を投影する池井戸作品の痛快さを味わった!~池井戸潤著『半沢直樹~アルルカンと道化師』を読んで~

    以前に、『「恨み」という感情をコントロールするには?…』(2020.4.12付)という記事の中で、「正しい恨みの晴らし方」の一つに「シャーデンフロイデ」(他人の失敗や不幸を嬉しいと思う感情を表わすドイツ語)を活用する方法があると綴った。その際は、自分に沸き起こってきた「恨み」を晴らす方法としては誤魔化しだと否定的にとらえていたが、この感情を小説やドラマなどの創作エンターテイメントに投影していることに対しては、内心ではどちらかといえば肯定的な受け止め方をしていた。 私は基本的に因果応報を信じており、悪いことをした人はその報いを受けるべきだと考えている。だから、「忠臣蔵」や「水戸黄門」、「大岡越前…

  • 上質の歴史小説は面白いなあ!~葉室麟著『実朝の首』を読んで~

    今月8日(日)、松本潤主演のNHK大河ドラマ「どうする家康」の初回放送を視聴した。今までの徳川家康像とはかなり異なるイメージだったからか、ちょっと拍子抜けした感じだった。また、テーマ曲も題字も、豊かな感性に乏しい私には少し違和感があった。多くの視聴者は、どんな感想を持たれただろうか。因みに平均世帯視聴率は、15.4%(関東地区、速報値/ビデオリサーチによる)だった。前作の小栗旬主演「鎌倉殿の13人」の初回が17.3%だったらしいから、1.9ポイントのダウン。この10年間でも、2018年の鈴木亮平主演「西郷(せご)どん」と同率の最下位になっている。今後、「どうする家康」をどれだけの国民が視聴する…

  • 読解の秘訣としての「解釈学的循環」という概念について~山口尚著『難しい本を読むためには』から学ぶ~

    2023年元日。昼前に長女たち家族3人、昼過ぎに二女たち家族3人が、我が家へ年賀の挨拶に来てくれた。皆で華やかなお節料理を囲みながら、成長著しい孫たちの話を酒の肴にして愉快な時間を過ごした。食後は、娘たち夫婦と孫Hは任天堂スイッチ・スポーツのゴルフで盛り上がっていたので、私は孫Mを抱っこして近所の散歩を楽しんだ。つい2週間前にも二女とMがお泊りをしたので、Mはもうすっかり我が家や近所の様子には慣れたのかリラックスした表情に満ちていた。久し振りに賑やかな元日になり、私たち夫婦にとって爽やかな新年のスタートを切ることができた。 さて、私の新年最初の読書対象は、昨年最後の出勤日になった12月26日に…

  • 気骨ある“精神の革命児”逝く!~渡辺京二著『さらば、政治よ 旅の仲間へ』読んで~

    今年のクリスマスの日、日本近代史家で評論家の渡辺京二氏が熊本市の自宅で老衰のために92歳で亡くなったことが報じられた。渡辺氏のことについては、幕末・明治期に訪日した外国人たちの滞在記を題材として、江戸時代を明治維新によって滅亡した一つのユニークな文明として甦らせた『逝きし世の面影』の著者として知っていた程度であったが、私はこの訃報に触れてある種の喪失感のようなものを抱いた。その理由はよく分からないが、もっと渡辺氏の生きざまについて知っておくべきだったという悔恨があったからではないか。しかし、私は今までに一度も渡辺氏の著書群に目を通すことはしていなかった。私は弔意を表するつもりで、手元の本箱の中…

  • 二人の孫の成長を実感したクリスマス会~孫たちの現況報告を兼ねて~

    世間でいう「クリスマス」は今日だが、我が家の「クリスマス会」は先週の土曜日にもう済ませた。久し振りに長女と二女がそれぞれの長男(私たち夫婦にとっては孫たち)を伴って来訪してくれたので、家族そろって妻の誕生日(12月29日)の前祝いを兼ねて行ったのである。妻が丹精を込めて作った料理と、クリスマスとバースデイを祝うケーキなどが並んだ我が家の食卓は、普段とは違って華やかな雰囲気に満ちていて、二人の孫たちも会の始まりを今か今かと待ち望んでいる様子だった。特にHは、妻が味付けたローストチキンにかぶりつきたくて我慢ができないようで、何度も食べる素振りを見せていた。それに対してMは、食卓に並んだ料理を不思議…

  • 何でも「歳をとる=老化」のせいにしてはならない!~平松類著『老化って言うな!』から学ぶ~

    「歳をとると、眼も老化するからしかたないね。」 「白内障の手術をすることにしたよ。」と妻が告げた後の私が言った言葉。 「歳をとると、首を痛めることがよくあるよ。」 「原因は分からないけど、首の左側が痛いのよ。」と妻がつぶやいた後の私が言った言葉。 どちらの言葉も、白内障や原因の分からない首の痛みを「歳をとる=老化」の現象と考えての発言である。ところが、ところが…である。それらは、老化ではなく、「心身の正常な変化」であるという、目から鱗の本に出合った。『老化って言うな!』(平松類著)である。 著者の平松氏は、現在、二本松眼科病院、三友堂病院に勤務する眼科専門医であり、今までに延べ10万人以上の高…

  • 「最後の活動期」と言われる70代をどう過ごすか?~和田秀樹著『70歳が老化の分かれ道―若さを持続する人、一気に衰える人の違い―』から学ぶ~

    前回は、久し振りに「健康・スポーツ」のカテゴリーの記事を投稿した。ここ数年は自分の第2の人生をどう過ごしたらいいか、新たに始めた特別支援教育指導員の仕事をどうしていけばいいか、また二人の孫とどう関わったらいいかなどについて考えることが多く、「人生・生き方」や「子育て・教育」のカテゴリーに関する記事の投稿が多くなっていた。その間、「健康・スポーツ」について関心がなくなった訳ではないが、コロナ禍でテニスコートの使用が制限されたために、還暦を過ぎてから始めた「硬式テニス」をする機会がなくなってしまったことも影響して、趣味としての「スポーツ」の実践から遠ざかってしまった。また、今年は「腰椎脊柱管狭窄症…

  • 「心療整形外科」で腰痛を治す!~谷川浩隆著『腰痛は歩いて治す―からだを動かしたくなる整形外科―』から学ぶ~

    先日、5回目の新型コロナウイルスのオミクロン株対応2価ワクチンを接種した。幸い副反応はほとんど出なかったので、いつも通り食後のウォーキングを妻と共にした。そもそも私がウォーキングを始めたきっかけは、55歳の時に受けた人間ドックの結果、中性脂肪やLDL(悪玉)コレステロールが高値になったために、「脂質異常症」と診断されたこと。その予防のための運動療法の一つとして始めたのである。それ以来、2度の「虚血性腸炎」による短期入院や「腰椎椎間板ヘルニア」による約2月間の療養生活等による何度かの中断はあったが、その度に再開して今まで続けてきた。現在は週4日程度、夕食後に1時間弱のウォーキングと約5分間のスト…

  • 「がんばればできる」という不自由!~浜田寿美男著『心はなぜ不自由なのか』から学ぶ~

    「やればできる!」 最近、テレビでよく出演しているお笑いコンビ「ティモンディ」の高岸が連発するキャッチフレーズである。このフレーズのルーツは、高岸の母校・済美高校の校歌の中にある、『やればできるは魔法の合言葉』という歌詞である。元高校球児の高岸が、試合に勝って校歌を歌う時にこの歌詞に励まされていたことから、様々な人を応援するという意味を込めてこのフレーズを使っているらしい。 確かにこのフレーズはとてもポジティブであり、困難なことに出会って逡巡している人々の背中を押してくれる言葉である。「やる」「やらない」は個人の自由であるが、何かを成し遂げようとするなら、まず「やる」という行為を選択する必要が…

  • 「無意識データ民主主義」という構想に未来を託したい!~成田悠輔著『22世紀の民主主義―選挙はアルゴリズムになり、政治家はネコになる―』から学ぶ~

    私がたまに観る報道や討論等のテレビ番組で最近よく目にする、メガネのフレームの左右が丸と四角になっている男性コメンテーターがいる。肩書はアメリカのイエール大学助教授。聞くところによると、日本では半熟仮想株式会社の代表をしているらしい。また、経済学者やデータ科学者の肩書もある。私は“半熟仮想”や“データ科学者”という聞きなれない言葉に、興味をもった。さらに、ある番組の中でインタビュアーが「これからの社会で注目する人は、どんな人ですか。」という質問をした時、彼が「変な人です。例えば、不登校になって引きこもり、テレビゲームしかせずに生きている人とか…。」と発言したことにも、私の関心バロメーターの針が触…

  • 「限界哲学」という考え方って、面白い!~上原隆著『こころが折れそうになったとき』から学ぶ~

    もう一週間が経ってしまったが、10月19日(水)は私の68回目の誕生日だった。先々週の日曜日には、娘二人と孫二人が自宅を訪れてくれて、バースデーケーキを一緒に食べて前祝いをしてくれた。また、当日の夜は妻と二人で、女性に人気がある近くの居酒屋に行き祝杯をあげた。久し振りに外でアルコールを嗜みながら、少し贅沢なディナーを楽しんだ。普段の食事は妻が健康のためを考えて、塩分の少ない薄味の料理を作ってくれているので、当夜の食事は私の舌には味が濃いように感じた。でも、美味しかった。「食」は油断すると、強い欲望を駆り立てる。「美味しいものを食べたい!」という衝動に突き動かされてしまうので、健康のためには日々…

  • 生活保護の受給申請を扱う窓口対応のあり方について~中山七里著『護られなかった者たちへ』を読んで~

    円安が止まらず、物価も高騰している。公的年金も減額されて、年金生活者の暮らしは楽ではない。幸い自宅の住宅ローンは退職金の一部を充てて完済したので、住居費はいらないから私たち夫婦は気が楽である。また、私たちは重症化している持病らしきものがなく、医療費もほとんど掛からない。だから、家計の主な支出は光熱費と食費、衣料費、さらに意外と高い各種の税金ぐらいである。今のところ、私は仕事をしてわずかの給料を得ることで、何とか現職時代の生活レベルをほぼ維持しているが、完全にリタイアした後は倹約しなければならないだろう。しかし、それでも老夫婦だけの所帯としては、世間的にはまだマシな方かもしれない。 小泉政権時代…

  • 学校を「共生社会」にするために大人ができることとは?~本田秀夫著『学校の中の発達障害―「多数派」「標準」「友達」に合わせられない子どもたち―』から学ぶ~

    秋らしい日が続くようになったので、私は久し振りに昼休みを利用して、職場近くのデパートに入っている紀伊国屋書店へ行ってみた。特別にはっきりした目的があったわけではない。最近、書店へ行く暇もなかったので、どのような新刊書が並んでいるのか知りたいという程度の目的であった。時間を気にしながら、足早に店内を見回っていると、興味を引く新刊本を見つけた。『学校の中の発達障害―「多数派」「標準」「友達」に合わせられない子どもたち―』(本田秀夫著)という今の仕事に役立ちそうな本である。私は、今まで本田氏の著書を数冊読んで、「発達障害」をもつ子どもたちへの適切な支援のあり方について有益な示唆を得ていた。だから、早…

  • やっぱり紙の本の方がいいなあ!~塩田武士著『騙し絵の牙』を読んで~

    日々の雑用に追われ、ブログを更新することができない日々を送っていたら、もう10月になっていた。朝晩が涼しくなったなあと思っていたら、秋祭りの時期を迎えて急に日中の気温が20℃ぐらいになり、足早に秋本番を迎えた。“秋”と言えば、「食欲の秋」「行楽の秋」「芸術の秋」等の言葉が思い浮かぶが、私はやっぱり「読書の秋」が一番しっくりくる。酷暑の外気に包まれた冷房の効いた室内での読書より、私は少し冷気を含んだ外気に触れながら、じっくりと本の世界に浸る方が好きである。ただし、最近は“じっくり”と過ごす時間的・精神的な余裕のない日々を送っているので、就寝前後の寝床での読書時間を少し長めに取っている。 夏頃から…

  • 約20年前の「村上龍」の学校教育に対する問題意識とは?~村上龍著『希望の国のエクソダス』を再読して~

    前回の記事で、村上龍著『オールド・テロリスト』を取り上げて、私の「村上龍」作品の読書体験の概要を述べた。その際に、私の興味内容の転換点に位置付けたのが、教育問題に対する彼の課題意識の高さを表した『希望の国のエクソダス』という作品であったことに触れたのだが、では彼の学校教育に対する問題意識とは何だったのだろうか。私はそれを改めて確かめてみたい衝動に駆られて、約20年前に読んだ本書を再読してみた。 そこで今回は、本書を再読した簡単な所感を綴った後で、約20年前の「村上龍」の学校教育に対する問題意識について、本作品の中でポンちゃん(不登校の中学生グループの一つASUNAROのリーダー)が国会中継で語…

  • 現代社会におけるマスコミの自己欺瞞について~村上龍著『オールド・テロリスト』を読んで~

    隣の市で「本」をキーワードにした活動を展開している団体が、毎月第1土曜日か日曜日に同市のJR駅近くの手作り交流市場で「古本交換会」(1冊につき1冊交換)を開催している。私は、今年になって気が向いた月には、不要になった文庫本を数冊車に乗せて、この「古本交換会」へ片道約20分掛けて行っている。もちろん気に入った古本があれば交換して帰るのだが、今までの交換本10冊ほどは積読状態になってしまっている。でも、今回読んだ『オールド・テロリスト』(村上龍著)という文庫本は、先月の交換本でありほとんど積読状態を経験しなかった本である。 では、なぜ本書をすぐに読もうと思ったか。それは、「村上龍」が著した比較的最…

  • 子どもは小さな科学者!~現代教養講座(放送県民大学)で学んだこと~

    9月4日(日)の午前中、私は本県の生涯学習センターが主催するコミュティ・カレッジを初めて受講した。なぜ受講してみようと思ったかというと、本講座のテーマが「小さな科学者としての子ども―幼児教育の再発見―」だったからである。特にサブテーマに即した内容に興味を惹かれた。私が地元の国立大学教育学部附属小学校に勤務していた頃に低学年を担任することが多く、そのために同じ敷地内にある附属幼稚園と連携して「幼年教育研究」を進めていたことがあり、一時は研究責任者を任されたこともあった。また、現在の仕事においても、保育園や幼稚園、小学校低学年の子どもたちと接することがよくあり、私は幼児教育に対してずっと課題意識を…

  • 人生は、他者だ!~西川美和著『永い言い訳』を読んで~

    10日間の自宅療養期間が終わって、23日(火)に久し振りに出勤したら、その翌日から当市の教育支援委員会が2日間予定されていた。今回の教育支援委員会は、来年度小学校へ就学する幼児で何らかの「困り感」がある子にとって、どのような学びの場が適切かを判断する会議である。事前に対象児の保護者や園の先生等と教育相談をしたり、対象児と面談をしたりした内容に基づいて、調査員が適切だと考える学びの場や支援内容等を書いた資料を作成する。そして、教育支援委員会の場にその資料を提出し、医療や福祉・教育等を専門とする委員さんたちに内容の妥当性や是非について慎重に審議していただき、決定してもらうのである。 私たち特別支援…

  • 「子どもを苦しめる親」について考える~水島広子著『「毒親」の正体―精神科医の診察室から―』から学んだことを基に~

    私の自宅療養期間も今日で終わる。「濃厚接触者」だった妻が倦怠感や発熱等の症状が出始めたのは15日(月)で、お盆休みの中やっと見つけた病院で抗原検査を受けて陽性の判定が出たのは16日(火)。それから既に1週間が経った。今では二人とも平熱になり、自宅で隔離されている以外は比較的自由な生活を送っている。食事については、生活協同組合の宅配と妻の姉による買い出しによって何とかなっているので、私たちはある意味でのんびりとした日常を過ごしていると言ってもよい。 そのような中、数日前に私はそろそろ仕事に復帰する心身の準備をしようかなと考えていた。すると、私の脳裏に、ある場面が突然フラッシュバックしたように蘇っ…

  • 自由意思の尊重より、運命論の方が慰めになる!?~平野啓一郎著『マチネの終わりに』を読んで~

    8月13日(土)に新型コロナウイルスの陽性判定を受けた。前日の夕方から発熱し夜には38.2度まで上がってしまったため、24時間対応の受信相談センターへ架電した。その際に紹介された市内のある耳鼻咽喉科での抗原検査の結果である。覚悟はしていた。というのも、職場で私の斜め前に座っている同僚の女性が11日(木)に陽性が判明したことを聞いていたので、「もしや」と思っていたのである。 私もその同僚の女性も10日(水)には終日、事務所内で勤務していた。私は定義上の「濃厚接触者」には該当していなかったが、昼食時に默食していたとはいえ、当然お互いにマスクを外していた。室内に置かれた一つの扇風機の風上にその女性が…

  • 多忙生活の中、学校生活支援員研修会で講話をしました!~小崎恭弘著『発達が気になる&グレーゾーンの子どもを伸ばす 声かけノート』から学んだことを基にして~

    お泊まりをしていた孫Hと遊んだり世話をしたりすることに追われた7月末の土日が過ぎ、ちょっと一息入れたいと思っていた8月に入っても、私の多忙生活は続いていた。第1週目には、市内の4つの児童発達支援センターへ通っている重い障害のある年長児に関する教育相談があった。対象児の園での生活の様子を参観して行動観察を丁寧にした上で、保護者と担任の先生と話し合った。成育歴や具体的な障害特性等について保護者に詳しく訊いたり、対象児の発達状況や普段の園生活の様子等について担任の先生から情報を得たりする面談は、いろいろと神経を使うので疲れる。また、収集した情報に基づいて審議資料を作成する労力を考えると、ややもすると…

  • 多忙な日々を過ごしたこの2週間ほどを振り返る!

    先週から今週に掛けて、公私ともに超多忙な日々を私は送っていた。そのため、当ブログの記事を綴ることはもちろん、読書の時間を確保することもままならなかった。ブログの更新を2週間ほどできなかったのは、久し振りではないかと思う。別に決めている訳ではないが、週5日フルタイムの勤務の仕事をし始めた昨年の7月以来、まとまった時間を確保することができる週末の土日にブログを更新するのが習慣のようになっていたので、ここ数日は何だか後ろめたい気分になっていた。さりとて取り上げる読了した本もない。そこで、今回の記事は、この超ハードな約2週間の私の生活ぶりを取りとめもなく綴ってみようと思う。 まず、公立学校では第1学期…

  • 「本当の自分」の本質とは何なのか?~山竹伸二著『「本当の自分」の現象学』から学ぶ~

    衝撃的なニュースだった。「参議院選挙に向けて奈良県で応援演説をしていた安倍元首相が、背後から凶弾を受けて倒れ、その後運ばれた病院で死亡した!」…「ロシアがウクライナへ軍事侵攻した!」という報道が流れた時と変わらない、否、それ以上の衝撃を私は受けた。世界の中でも治安のよさで知られ、銃規制もしっかりになされている我が国で、このような許し難い蛮行が行われたことに、ほとんどの日本人は茫然自失になったと思う。死亡した安倍氏は67歳。人生100年と言われる時代を迎える現代ではまだまだ若い年代であり、内閣総理大臣の連続及び通算在籍年数が憲政史上1位という実績をもつ元首相のこれからの政治活動に期待する国民も多…

  • 「分人」って、何のこと?~平野啓一郎著『わたしとは何か―「個人」から「分人」へ―』から学ぶ~

    例年よりもかなり早く6月末には梅雨が明け、厳しい暑さが連日続く中で7月に入った。私が当市の教育委員会で特別支援教育・指導員として働き始めて、丸1年が過ぎた。現在、午前中は、派遣相談申請のあった学校へ出向き、何らかの「困り感」のある子どもの授業中や休憩時間等における様子や行動を観察したり、学級担任や特別支援教育コーディネーターの先生方から当該児に関する情報を収集したりして、それらの内容をなるべく詳細にメモに取って帰る。帰庁後は、そのメモを基にして当該児の受理簿(教育相談記録簿のようなもの)に必要な事項をパソコン入力する。午後になると、今度は既に行動観察等をしてきた子どもが在籍する学校へ出向き、1…

  • 日本には「愛」が存在しなかった?!~長谷川櫂著『俳句と人間』から学ぶ~

    私は、「プレバト!」というテレビ番組をよく観る。特に、梅沢富男氏や東国原英夫氏などの芸能人がお題に沿って創作した俳句を、講師役の夏井いつき氏が「才能あり」「凡人」「才能なし」とランク付けし辛口で批評する俳句査定のコーナーが好きである。俳聖・正岡子規と同郷でなおかつ出身小学校までもが同じでありながら、今まで苦手意識から俳句に対して距離を取っていた私にとって、当番組は俳句をより身近に感じさせてくれた。もちろん夏井氏の批評ポイントが絶対的な基準とは言えないかもしれないが、俳句作りにおける一つの着眼点としては面白い。「散文的な説明の言葉は必要ないのか。」とか「場所や場面等の映像化が大切なのか。」とかと…

  • 「食べる」ことについてちょっと考えた~吉村萬壱著『生きていくうえで、かけがえのないこと』を読んで~

    『生きていくうえで、かけがえのないこと』という本を当ブログの以前の記事(2021.8.19付)で取り上げたことがある。ただし、その時の著者は批評家の「若松英輔」氏であったが、今回は芥川賞作家の「吉村萬壱」氏である。なぜ二人が同じタイトルの著書を発刊したかというと、亜紀書房のウェブマガジン「あき地」の中の「生きていくうえで、かけがえのないこと」という連載を二人が担当し、それぞれ10個(計20個)の動詞を選んで同じテーマでエッセイを執筆したものが元になっているからである。前回は同タイトルの若松氏のエッセイ集を読んだのだが、その際は吉村氏のものは読まなかった。私は「吉村萬壱」という小説家が芥川賞を受…

  • 「未来への責任」を問う倫理学の全体像について~戸谷洋志著『ハンス・ヨナスの哲学』から学ぶ④~

    なかなか筆が進まない。つくづく自分の理解力と文章力の乏しさを痛感する。しかし、老年を迎えて認知機能の衰えを少しでも遅らせようと始めたブログ記事の執筆。自分の課題意識に即して読んだ(インプットした)本を取り上げ、その内容概要や読後所感等を綴っていく(アウトプットをする)雑学スタイルを基本にすると決めた初心を忘れず、何とかここまで足掛け5年にわたって続けてきたので、今さら根を上げてしまうのは情けない。週5日でフルタイムの勤務をしながらの読書とブログ記事の執筆は、たとえ趣味の領域といっても高齢者の仲間入りしている身では時間的・体力的にキツイ。しかし、カメの如き歩みであっても続けていきたいと思っている…

  • 存在と当為を結びつける「責任」という概念について~戸谷洋志著『ハンス・ヨナスの哲学』から学ぶ③~

    いよいよ今回から2回続けて、『ハンス・ヨナスの哲学』(戸谷洋志著)を再読しながら、彼が独自に構築した倫理学の全体像の概要をまとめてみようと思う。ヨナスは、前回までの記事にまとめた「哲学的生命論」と「哲学的人間学」を理論的基盤にして、「未来への責任」を問う倫理学を構築した。それは、現代の科学技術文明において自明視されている没価値(善いとも悪いとも言えない)的な存在論とは異なる、存在と当為(「~するべし」という規範)を接続し得る存在論の可能性を切り開くものであった。そして、彼は存在を根拠とする当為の概念を「責任」と呼んだのである。 そこで今回は、まずヨナスの倫理学におけるキーコンセプトとも言える「…

  • 「未来への責任」を問う倫理学のもう一つの理論的基盤「哲学的人間学」について~戸谷洋志著『ハンス・ヨナスの哲学』から学ぶ②~

    前回に続いて、「ハンス・ヨナス」が構築した「未来への責任」を問う倫理学の理論的基盤について綴ってみたい。前回はその一つ「哲学的生命論」の内容の概要をまとめてみたが、今回はもう一つの「哲学的人間学」の内容について、『ハンス・ヨナスの哲学』(戸谷洋志著)を再読しながら、その概要をまとめてみようと思う。前回も書いたように、ヨナスの理路はなかなか複雑なので正確に理解するのは難しいのだが、私なりに消化したレベルで要約していくしかない。この点、くれぐれもご容赦願いたい。 さて、ヨナスは生命の進化のプロセスを、自由が増大していく過程として解釈し、人間を最も自由な生物種として説明しようとする。これが彼の「哲学…

  • 「未来への責任」を問う倫理学の理論的基盤の一つ「哲学的生命論」について~戸谷洋志著『ハンス・ヨナスの哲学』から学ぶ①~

    マルティン・ハイデガー著『存在と時間』を取り上げた4月の「100de名著」の番組の中で、指南役の戸谷洋志氏が「ハンス・ヨナス」という哲学者の業績等について解説しているのを視聴して、私は彼のことを初めて知った。師であるハイデガーから多大な影響を受けながらも、ナチスに加担したハイデガーとの対決を試み、これを克服しようと自らの独自な哲学を打ち立てた大陸系哲学者であり、応用倫理の論客でもあった「ハンス・ヨナス」。私は彼の哲学の中身について強い興味をもった。私は市内の大型書店へ出向き、戸谷氏の著書『ハンス・ヨナスの哲学』を入手して、早速読み始めた。本書は、著者が未来倫理を中心としながら彼の哲学を再構成し…

  • <支援>と<共治>を志向する教育委員会のあり方について~山口裕也著『教育は変えられる』から学ぶ~

    今年のゴールデンウィークも終わり、気が付けば5月も中旬になっていた。何らかの「困り感」をもつ子どもの学級担任や保護者に対する「教育相談」業務が少しずつ増えてきて、特別支援教育指導員としてやっと腰が落ち着いた勤務状況になってきた。ただし、通常の勤務場所が昨年度までの4階別室から、本年度は3階の本市教育委員会・学校教育課へ移動してきたので、職場環境の変化にはまだまだ順応できていない。この学校教育課本体は、当市の学校教育の行財政の役割を担っている教育委員会事務局として機能しており、多くの市職員と指導主事の先生方が所属している。私たち7人の指導員たちは、その方々と同じフロアで机を並べることになったので…

  • 自分らしい生き方を探り出すために求められる「先駆的な決意性」について~「100de名著」におけるハイデッガー著『存在と時間』のテキストから学ぶ~

    5月2日(月)を年休にしたので、私のゴールデンウィークは4月29日(金)から5月5日(木)までの7日間だった。その間、二女と孫Mが一泊したり、長女と孫Hが日中遊びに来たりしたので、久し振りに二人の孫たちとじっくりと関わる時間が取れた。満1歳2か月になったMとは、抱っこして自宅周辺を散歩に連れ出したり、自宅2階の和室や寝室の中を探検させたりして遊んだ。屋内で伝え歩きをしているMを見守りながら一緒に遊んでいる時、初めて2・3歩一人歩きをした姿を目の当たりにして、感激してしまうことがあった。満5歳2か月になったHとは、自宅近くの川沿いにある公園に行き、広い河原を歩いて水面をスイスイ進むアメンボを一緒…

  • 「栗本慎一郎」から受けた思想的インパクトを回想する!~仲正昌樹著『集中講義 日本の現代思想―ポストモダンとは何だったのか―』を再読して~

    私は千葉雅也著『現代思想入門』を読んだことをきっかけにして改めて日本における「現代思想」について振り返ってみたくなり、書棚に並べていた仲正昌樹氏の著作群の中から『集中講義 日本の現代思想―ポストモダンとは何だったのか―』を取り出し、先月中旬頃から暇を見つけては再読していた。「再読」と言っても、今から15年ほど前に、私の関心の高かった箇所だけを拾い読みしたようなものだったので、全体を通読したのは今回が「初読」と言ってもよい。その中で、1980年代に私がハマった「現代思想」の輸入経緯や日本における具体的展開等について、改めて確認することができた。特に、日本における戦後マルクス主義や大衆社会における…

  • 教育学のメタ理論体系について~苫野一徳著『学問としての教育学』から学ぶ~

    昨年7月から本市教育委員会の学校教育課で特別支援教育指導員として勤務し始めて、この4月で10か月目を迎えた。年度が変わって職場環境が4階の学校教育課分室から3階へ移動し、7名の指導員の座席も通路を挟んで4名と3名の2つに分かれるという変化があったので、本当に新たな気持ちでスタートすることになった。しかし、まだ年度当初ということもあり、今のところ本来の教育相談業務よりも環境整備や事務の補助等の業務をすることが多い。 昨年度は、勤務したばかりの頃から教育相談業務が中心だったが、本年度になっての今までの業務内容はこれからの教育相談に向けての雑用的な業務のような感じである。本来の日常的な教育相談の業務…

  • 山間部の中学校に勤務していた頃の苦い経験を振り返る!~池永陽著『青い島の教室』をきっかけにして~

    当ブログの以前の記事(2020.7.28/2021.5.16付け)で取り上げた『コンビニ・ララバイ』や『珈琲屋の人々』シリーズの著者である池永陽氏の『青い島の教室』という作品を読んだ。都内の中学校で体罰問題を起こし、伊豆諸島の離れ小島に飛ばされた国語教師・柏木真介は、教育に対するやる気を失って適当な教師生活を送り、生徒たちから「ぐうたら先生」というあだ名をつけられていた。しかし、勤務校において虐めや学級崩壊、モンスターペアレントなどの問題が起きる中、ある夏休みに思いもよらない事態が起きる。…荒れた学校現場を描いた小説を読んでいると、私は現職中に遭遇した苦い経験をついつい思い出してしまった。 そ…

  • グレーゾーンにこそ<生きること=学ぶこと>の醍醐味がある!~千葉雅也著『現代思想入門』の「はじめに 今なぜ現代思想か」に共感して~

    最近、私のTwitterのタイムラインで評判になっている『現代思想入門』(千葉雅也著)を読んでみた。今、再度読み直しているのだが、改めて「はじめに 今なぜ現代思想か」の内容が私の心に深く沁み込んでくる。というのは、今から約30~40年前に私が地元の国立大学教育学部附属小学校に勤務していた頃に、二人の先輩(10歳上と20歳上)教師から、戦後に流行した「実存主義」の哲学や1960年代にフランスで大ブームとなった「構造主義」、さらに構造的な二項対立の脱構築を図る「ポスト構造主義」等の考え方を取り入れた教育論について学んだ経験を想い起したからである。 当時、どのような教育をすれば子どもの自己実現を図る…

  • 脱原発を志向する哲学とは?②~國分功一郎著『原子力時代における哲学』から学ぶ~

    前回は、私の原子力に対する認識の再構成を図るきっかけにすべく読み始めた『原子力時代における哲学』(國分功一郎著)の本編前半の概要についてまとめた。まず、核兵器に対する絶対的な拒否の半面、「原子力の平和利用」という原発については大勢が受け入れようとしていた20世紀半ば、原子力そのものに対して根本的な批判をしていた唯一の思想家・哲学者は、マルティン・ハイデッガーであった。その彼の技術(テクネー)についての独自の考え方、つまり「技術とは自然が持っている力を外に導き出すことだ」という考え方について簡単に紹介した。しかし、「現代技術である原子力の技術は、その技術論とは相反して自然を挑発するものである」と…

  • 脱原発を志向する哲学とは?①~國分功一郎著『原子力時代における哲学』から学ぶ~

    ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が始まって約3週間が過ぎた。ウクライナ軍の思わぬ抗戦に遭って戦争が長期化してきたために、プーチン大統領は当初の思惑とは違った展開になり焦っているのではないか。国際的な非難はもとより、膨大な軍事費や国内経済の疲弊等による打撃、そして何よりも国内の徹底した情報統制に綻びが見え始め、国民世論の戦争反対への傾斜という事態の推移が、その焦りの要因になっているのではないかと思われる。そのような中、プーチン大統領はウクライナの降伏を早めるために、化学・生物兵器のみならず核兵器も使用するのではないかとの憶測が流れ、もしかしたら現実化するのではないかという国際的な不安が起こって…

  • 「解離性障害」って何?~柚月裕子著『ウツボカズラの甘い息』を読んで~

    ロシアによるウクライナへの武力侵攻が激化し、3月4日には稼働していたウクライナ南部にある欧州最大級のサポロジェ原発を砲撃し、制圧した。稼働原発への軍事攻撃は史上初であり、もし誤って稼働している原子炉を砲撃していたら1986年のチェルノブイリ原発事故を上回る大惨事になりかねない蛮行である。ロシア側としては、電力という重要なインフラを手中に収めることでウクライナへの圧力を強めることが狙いであろうが、その軍事作戦はあまりにも無謀なものであり、人類の平和と安寧への願いを無視するものである。私は、改めて「原子力の平和利用」と言われる原発の安全性に対する国際的な保障体制を見直す必要性を痛感した。 原発事故…

  • ネットなどの二次的情報の後追いへの偏重に気を付けて!~養老孟司著『子どもが心配―人として大事な三つの力―』から学ぶ~

    長年愛用している腕時計の電池が切れて針が動かなくなったので、近くのイオンモールに入っている時計店へ持って行った。電池を入れ替えてもらっている間に、階上のフロアに入っている書店で新刊の本を物色していたら、気になる新書を見つけた。東京大学名誉教授で400万部を越えるベストセラーになった『バカの壁』の著者である養老孟司氏と、日常子どもたちに接している4人の碩学の対談を書籍化した『子どもが心配―人として大事な三つの力―』である。サブタイトルの三つの力というのは、一つ目が対談者の立命館大学教授で児童精神科医である宮口幸治氏が重視している「認知機能」、二つ目が慶應義塾大学小児科の医師で主任教授である高橋孝…

  • 出臍コンプレックスについて~帚木蓬生著『風花病棟』所収「チチジマ」に触発されて~

    今年の1月、埼玉県ふじみ野市の住宅地で、男が散弾銃を発砲し、在宅クリニックの医師を殺害するという事件があった。殺された医師は、その人柄や診療振りが地域の人々や患者から評判のよい良医だったという。長らく介護していた母親を事件前日に亡くした容疑者は、「これから先、いいことはない。」と自暴自棄になって負の感情を爆発させ、凶行に及んだらしい。このような事態に巻き込まれた訳だから、医師にとって全く理不尽極まりない事件である。私は殺された医師と遺族の心情に思いを馳せ、何ともやるせない気持ちになってしまった。亡くなった医師に対しては心からご冥福をお祈りするとともに、遺族に対しては慎んでお悔やみを申し上げたい…

  • 「子ども虐待」という発達障害?~杉山登志郎著『発達障害の子ども』『発達障害のいま』を読んで~

    「子ども虐待」によって死に至らせたのではないかと思われる痛ましい事件が起こった。テレビニュースによると、神奈川県大和市で母親が7歳になる次男を窒息死させたという殺人容疑で逮捕されたらしい。今までに、その母親の長男、長女、そして三男も、生後半年未満で死亡している。母親は今回の容疑を否認しているらしいが、亡くなった次男の後頭部には強い圧迫痕が残っていたという。母親は限りなく黒に近いと私は思うが、まだ容疑者の段階なので犯人扱いをしてはならないので、本件についてこれ以上に言及することは控えたい。しかし、それにしても近年、「子ども虐待」に関連する事件の報道が多いように思う。 子どもを虐待する養育者の動機…

  • 発達障害のある子の育て方で大事なポイントについて~本田秀夫著『子どもの発達障害―子育てで大切なこと、やってはいけないこと―』から学ぶ~

    昨日、新型コロナウイルスの第3回のワクチンとして半分量のモデルナを接種した。テレビニュースによると、「第1・2回がファイザー、第3回がモデルナという交互接種による抗体の増え方は第3回もファイザーを接種した場合よりも約1.5倍あるが、副反応の方は発熱を起こす割合が約2倍になる。」と言っていたので、少しビビッていた。しかし、今、接種後24時間以上を経て、接種局部の多少の筋肉痛以外の副反応はないのでホッとしながら、この記事を書いている。 新年を迎えてオミクロン株が感染爆発して、感染者が一気に高齢者や子どもにも拡大してきた。3学期になり当市の小中学校の関係者でも陽性者や濃厚接触者が出てきて、一時は学校…

  • 哲学とは何か?~萱野稔人著『哲学はなぜ役に立つのか?』から学ぶ~

    私は今までの人生において様々な困難に出合った時、それをどのように克服すればよいかと思案する中で、ともすると安易で短絡的な解決策を取ろうとする気持ちが起きることがあった。しかし、その度に「それでいいのか。その解決策は自分の良心に恥じない選択になっているのか。」と自問自答しながら、たとえその解決策が自分にとって苦しい選択であったとしても道徳的に考えてより善い行いだと判断すれば実行してきたつもりである。ただ、そのような決断は本当に妥当だったのかという問いをいつまでも引きずってしまうこともあった。だから、その決断の妥当性を確かめたいという欲求から、「哲学」や「倫理学」という学問に関心をもち、時々はそれ…

  • 「伝達>生成」モードの授業を「伝達<生成」モードの授業へと転換していこう!~伊藤亜紗著『手の倫理』から学ぶ~

    当ブログの2021年9月19日付けの記事で、『日本哲学の最前線』(山口尚著)という新書を取り上げた際に、日本の「J哲学」の担い手の一人である美学者・伊藤亜紗氏の『手の倫理』について言及した。記事の中で、私は本書で使用されていた「道徳」と「倫理」という言葉の概念を援用して、今回の学習指導要領において新設された「特別の教科 道徳」の授業は「倫理」を中核にした議論を大切にすべきではないかと提言しておいた。しかし、その時はまだ『手の倫理』を読んでいなかったので、『日本哲学の最前線』で述べられていた内容を拠り所として私なりの思いを綴ったものであった。 ところが、先日、その『手の倫理』を市立中央図書館で見…

  • 特別支援教育って、「発達障害」のある子どもたちを支援する教育のこと?~岡崎勝編著『発達障害 学校で困った子?』から学ぶ~

    愛知県名古屋市で40年以上、小学校教員を経験して現在は非常勤講師(理科)をしている「岡崎勝」という人がいる。おそらくもう70歳を迎えようとする年齢ではないかと思うが、今から約30年前に私は彼の名前をある本を読んで知った。その本というのは当時、愛知教育大学教授で体育・スポーツ社会学を専攻していた影山建氏らと共に刊行していた『スポーツからトロプスへ―続・敗者のないゲーム入門―』である。私が地元国立大学教育学部附属小学校で体育科の実践研究に取り組んでいる中で、勝利至上主義に陥っていたスポーツ指導の在り方を相対化し、新しい発想で行う運動文化を創造できないかと模索をしていた際に、大いに刺激を受けた本なの…

  • コロナ禍で「濃厚接触」という言葉の導入がもたらした副作用について~古田徹也著『いつもの言葉を哲学する』から学ぶ~

    新型コロナウイルスのオミクロン株の感染力がすごい。東京都はあっという間に過去最高の1万人超えになり、本県でも過去最高の新規感染者数を連日記録している。今のところ重症化するリスクは低く、無症状や軽症の陽性患者が多いらしい。しかし、だからといって完全に安心することはできない。どのような後遺症が現れるか分かっていないし、その軽重度も見極めることはできていない。できるだけ感染しない方がよいのである。ただ、これだけ感染者数が増えてくると、特にエッセンシャル・ワーカーがオミクロン株に感染して仕事ができなくなると、社会・経済活動の停滞が起きて通常の生活機能の維持が困難な状況になってしまう。しかも、隔離期間が…

  • 生活保護受給者のケースワーカーの矜持とは?~柚月裕子著『パレートの誤算』を読んで~

    懲りもせず、また読んでしまった。…私はある小説家の作品を最初に読んで気に入ったら、その人の他の作品も読んでみたくなり、機会を見つけては次々と読んでしまう癖がある。年初めの勤務日の昼休みに職場近くの市立図書館で借りて、ここ一週間ほど同時並行で読んでいた3冊の本の中の一冊、柚月裕子の『パレートの誤算』もそのような癖が出てしまった本である。『あしたの君へ』を読んで以来、柚月作品の魅力に取りつかれてしまった私は今までに同書を含めて九作品を読んできた。(『孤狼の血』は未読だが…)だから、本書で十冊目になる。そして、その内の『あしたの君へ』『検事の死命』『慈雨』『朽ちないサクラ』を当ブログの記事に取り上げ…

  • 町内に駄菓子屋さんがあった頃の思い出、あれこれ~上原隆著『こころが傷んでたえがたき日に』に触発されて~

    「成人の日」の祝日を含んだ先週末からの三連休は、フジグランやニトリなどへ妻と一緒に日用雑貨やソファベットを買いに行ったり、久し振りに孫Hが「ランバイク」(商品名「ストライダー」)専用のコースを設置しているオフィシャル・パーク「マテラの森」へ行きたいというので連れて行ったりして、結構忙しく過ごした。それでも、夕方から夜にかけては少し自分の時間を持つことができたので、哲学書や小説・コラム集の3冊の本を同時並行的に読み始めていた。その中で最初に読了した『こころが傷んでたえがたき日に』(上原隆著)を、今回は取り上げてみようと思う。 本書は、雑誌『正論』に2009年11月号から2018年3月号に掲載され…

  • 「皮膚感覚」の敏感さと「姿勢保持」の弱さとの関連について知る!~長沼睦雄著『子どもの敏感さに困ったら読む本―児童精神科医が教えるHSCとの関わり方―』から学ぶ~

    新年になってあっという間に、新型コロナウイルスの感染が急拡大してきた。“第5波”が収束してしばらく感染者が少なくなっていたので、昨年は大事をとって控えていた年末年始の帰省や旅行をする人が増えて人流が活性化したことや、デルタ株よりも感染力が強くなっているオミクロン株が市中でも感染するようになったことなどが、その主な原因になっていると思われる。いずれはと覚悟はしていたが、とうとう感染爆発の“第6波”が襲来してきた!これは、今まで以上に感染予防対策を徹底しなくてはならない。改めて、私たち老夫婦も気を引き締め直しているところである。 ところで、年始休暇が終えた翌日の1月4日(月)も年休にしていた私は、…

  • 「吃音」が出る時とその対処法について~伊藤亜紗著『どもる体』から学ぶ~

    新年が明けて2日のお昼には長女夫婦と孫Hが、3日のお昼には二女夫婦と孫Mが、年始の挨拶代わりに我が家を訪れて一緒におせち料理やお雑煮等を味わってくれた。老夫婦だけの食卓とは違い、正月らしい賑やかな食卓になった。また、それぞれの孫と一緒に遊んだり、孫の今後の成長を見守り支援していくための手立てなどについて子どもたちと話し合ったりすることができたことも愉快なことであった。正月早々、本当に幸せな時間をもつことができ、「今年もよい年になりそうだなあ。」と頬を緩ませる自分がいた。 ところで、普段は滅多に行くことはない市の北西部にある市立図書館から借りてきた『どもる体』(伊藤亜紗著)を大晦日から読み始め、…

  • 教育相談における「エビデンス」の問題について考える~國分功一郎・千葉雅也著『言語が消滅する前に』から学ぶ~

    12月中旬に、昼休みの時間を利用して散歩がてら職場近くの大型書店へ出掛けた際に、興味深い本を見つけた。それは『言語が消滅する前に』(國分功一郎・千葉雅也著)というちょっとショッキングな書名の新書版だった。私の手は自然と伸びて、本書の目次ページをめくっていた。第一章は國分氏の著書『中動態の世界―意志と責任の考古学―』、次いで第二章は千葉氏の著書『勉強の哲学』の各々の刊行記念対談を活字に起こしていることが分かり、「読んでみたい!」という強い欲求が高まった。さらに、目次ページを捲って「第五章 エビデンス主義を超えて」を見た時に、「現在の私の課題意識と重なっている!」と直感し、本書を購入しようと即決し…

  • どんな時に「吃音」が出るのか?…~重松清著『きよしこ』と重松清・茂木健一郎の対談『涙の理由―人はなぜ涙を流すのか―』を再読して疑問に思ったこと~

    今月18日(土)の夕方、NHK総合1で「吃音」のある少年が様々な経験をしながら成長していく姿を描いた小説を映像化した、土曜ドラマ『きよしこ』の再放送があった。最近、「吃音」のある年長の男児の保護者から適切な学びの場について教育相談を受けたことがあり、また当ブログで数回前に「吃音」の克服に関する記事を綴ったこともあり、私は興味深く視聴した。原作は、私の好きな作家の一人である重松清氏の同名の小説であり、随分前になるが一度読んだことがあった。ドラマの展開を追いながら、「あー、そんな場面があった、あった!」と呟いた。私は何だか懐かしい思いにとらわれ、もう一度原作を読んでみたくなり、重松清作品が並んでい…

  • 保護者との教育相談で心掛けていること~宮口幸治著『どうしても頑張れない人たち―ケーキの切れない非行少年たち2―』から学ぶ~

    10月になって学級担任が変わったことがきっかけになり、授業中に多動性や衝動性が強く現れるようになり、自学級では対応できない状況になったので、一時的に隣のクラスに入って学校生活を送っているという児童に関する教育相談を、私が主になって担当することになった。いつものように、学校へ出掛けて対象児の授業中の行動観察をし、それに基づいて学級担任や特別支援教育コーディネーターなどの先生方との教育相談をして、それらを踏まえた上で対象児の保護者と教育相談をするという一連の流れで業務を遂行したいった。その際の保護者との教育相談で、私自身がいろいろと心掛けたことを整理しておくことが必要だと思うようになった。その訳は…

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