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2018/08/24

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  • 一人旅

    朝日がさしてきた。少し前から目は覚めている。自分はあと何年、いや何日、こうして目を覚ます日が許されているのだろうか。もう八十三才になった。今のところ、健康だ。どこも悪いところはない。今までの自分の人生を振り返ってみる。とても平凡な人生のようで、色々あったけれど、過ぎてみるとどうってこともない。残りの人生どう生きようか、考える時もあるが、すぐ忘れてしまう。できるだけ、元気でいたいと、常日頃から思っ...

  • 桜の花の咲くころに

    ゆるやかな坂道を一人で歩いている。周りはこんもりと木々が茂っている。どこだか分からない。自分の記憶のなかの断片を、つなぎ合わせたような所だった。木が少なくなり、明るく見晴らしが良くなってきた。ゆるやかな坂道はまだ続いていた。気が付くと、道の両端に、柿の木が並木のように植えられている。どの木も赤い柿の実が、たわわになっている。とても美味しそうだ。くだものが大好きで、手を伸ばせば届く。実を採って食べ...

  • 地獄からの脱出

    みさとは、上場企業の社長の家の、長女として育った。二人の弟がいた。みさとは、お嬢様として何一つ、不自由ない暮らしだった。小さい頃から、習い事をたくさんさせられた。英語・フランス語・中国語、優秀な家庭教師がつけられた。他にも、ピアノ・ヴァイオリン、習い事で忙しかった。友達と、遊園地などに遊びに行ったことは一度もなかった。幼稚園からの一貫校だった。高校に入ってからは、それにお茶とお花が加わったのだっ...

  • 帰省

    良人(よしと)は久しぶりにのんびりしていた。家の者は、中学校の校庭で、花火大会があるというので、皆、見物にでかけたのだった。自分も行くつもりだったが、少し微熱があり、だるかったので、留守番をすることにした。疲れも取れたようだ。朝早く、渋滞を避ける為に東京を出発したのだが、実家についた時は昼を少し過ぎていた。良人は毎年、お盆と正月には、東北の田舎にある実家に、家族と共に帰ることにしていた。両親は、...

  • 続 歩く男

    歩く男・全編 男はずっと歩いていた。相変わらず独り。一歩一歩、ゆっくりと歩いていた。いつ頃からか、自分のそばを歩いている人がいる。そのうち、離れて行くのだろうと、気にもならなかった。その人は、深くフードをかぶり、下を向いて歩いている。何も語らず、黙って歩いていた。そして、大きな三つの岩の前に着いた。隣の人が岩の間に入り、地面に円を描いた。初めて口をきいた。...

  • 続・米バア

    米は、大きな町の医者の家で生まれた。代々医者の家系で一人娘だった。父親は、いずれは米に婿を取り、跡をつがせるつもりだった。米にも、薬や医者のことを教えた。血なのか、米は仕事好きで、色々知りたいと勉強するのだった。そんな米の姿を、父親は嬉しそうに見守ってやっていた。米の家には、いずれ医者になりたいという若者が、地方からやってきて、助手や見習いが十数人いた。毎日が幸せだった。...

  • 米バア

    米バアは、まだ五十前のはずだが、七十を過ぎたおばあさんに見えた。でも、この時代は老けるのが早かった。その時代にしたら、平均的かもしれない。江戸の初め頃、やっと世の中が静かになった頃だ。それまでは、いつもどこかで、戦があった。米バアは村のはずれの、粗末な小屋に一人で住んでいた。米バアは拝み屋をやっていた。怪しげな祭壇を作り、もっともらしく拝んでいた。それでも客はあった。色々な悩み事を聞いて、祈り、...

  • 日照りの村

    その村は美しい村だ。中央を幅十メートル程の川が、ゆったりと流れていた。その川の周りに広い田畑が続き、小高い山がせり出している。農家が点在し、のどかな田園風景が広がっていた。農作物は、米も野菜もよく採れた。村人は皆よく働き、善良で、助け合って暮らしていたのだった。ある時、一軒の農家が火事になった。大人たちが野良仕事に出かけ、子供だけで留守番をしていた。いつもは家の外で遊んでいるのだが、お腹が減ってき...

  • 変化

    そこは、高級住宅地にある二階建ての家。広めの庭には、いつも季節の花が咲いている。芝生も、手入れが行き届いて美しい。遠藤家の一日は、鳥の鳴き声とともに始まる。主人の和明は六時に起き、小一時間のジョギングを日課にしている。四十二歳、商社に勤め働きざかり。仕事が楽しく、充実した日々を過ごしている。妻の咲江は四十歳。上品な顔立ちで、年よりも随分若く見える。高校二年の娘亜紀と、中学二年の息子要の四人暮らしで...

  • 幸せって何だ

    美智子は、短大を卒業して二年。大手の会社に務めている。事務をしている。色の白い、目のぱっちりとした美人で、男性にはとても、もてていた。小学校からの一貫校で、小学校の入試以来受験の経験はない。とてもおっとりとして、いかにもお嬢様に見えた。父親は有名な会社の重役で、三人のこの末っ子である美智子をとても可愛がっていた。就職の時も、なかなか内定をもらえず落ち込んでいる娘を見るに見かねて、知り合いに頼んで今...

  • ある家族

    知加は高校二年生で私立の高校に通っている。将来のことはあまり考えていない。なるようにしかならないだろうと物事を深く考える性格の子ではなかった。中学三年の妹がいるが、妹とは趣味や性格がまるで違うので、お互いつかず離れずで、ケンカもあまりした事はなかった。妹は美加といった。美加はしっかりした性格で、何でも計画をたててきっちりやるタイプだ。将来は大学を出て外国に行き、海外の大手の会社に入るのが夢だ。そ...

  • 歩く男

    男は思う。いつから自分は歩いているのだろう。ずいぶん前から歩いているような気がする。とても昔のことで覚えていない。なぜ、自分はいつも歩いているのだろう。時々考えるが、すぐ、どうでもいいような気分になる。砂漠の中のような、石ころだらけの荒地を、ただ、歩いている。時々、その場にうずくまり休むが、すぐ歩きはじめる。何かに追われるように、じっとしてはいられないのだ。自分はずっと寝ていないようだ。何も食べ...

  • 時代をささえた人たち

    おひさは東北の寒村の生まれである。その年は、夏がちっとも暑くならず、雨が降り続いたのだ。冷害だった。田んぼの米は実らなかった。村は皆、貧乏だった。でも、いつも通り、年貢米は納めなければならない。このままでは、この冬は越せそうにない。そんな年は、村に見知らぬ男たちが、どこからかやって来る。人買いだ。一軒一軒、訪れて話をする。男の子でも、女の子でも買うのだった。その時、おひさは買ってこられた。皆、生...

  • 山田 夏とヘルパーの会話

    七時半だ。いつ頃からか、目覚まし時計の鳴る前に目が覚める。ゆっくりベッドから起き上がり、台所の小さなテーブルで朝食の支度をする。昨日、コンビニで買って来た菓子パンと牛乳だけだ。それから顔を洗い、歯をみがく。今日はヘルパーの来る日である。週二回、ヘルパーを頼んでいる。九時、五分前きっかりにやってくる。『 山田さん、おはようございます。 ヘルパーの森田です。 』カギは前もって開けておく。『 ああ、...

  • 若君様

    大沢友貴、十九才。現役で東大に合格した秀才である。二期生である。父は地方公務員で、母は保母の仕事をしている。妹がいる。三才年下で高校生だ。小さい頃から、秀才だの神童だの天才だのと言われていた。勉強だけでなく、スポーツもいつもトップクラスだった。文武両道、と人々は賞賛を惜しまなかった。何をやらせても上手かった。すぐ出来るのである。野球にサッカー、乗馬に剣道、柔道。すぐ上手くなり、次に興味が移るのであ...

  • http://izuminogotoku.blog.fc2.com/blog-entry-22.html

    私を天女にして下さい 花びらのようにふる 雪の中で天上の舞をおどりたい 私を天女にしてください...

  • 人情話

    留吉は家路を急いでいた。知り合いの家で、祝い事があり、遠出をしていた。昨日のうちに帰る予定だったのだが、酒をしこたま飲んで、そのまま泊まることになったのだ。彼岸を少し過ぎたころである。土手はすすきや野菊が咲いている。朝晩はめっきり肌寒くなっていた。急いで帰らねーと、またおふくろに怒鳴られると、小走りにかけていた。朝から雲が厚いと思っていたら、やっぱり降ってきやがった。雨足が強くなってきた。『 こ...

  • 海と老人(パクリじゃない)

    老人は毎日海を見ている。若いころは、腕のいい漁師だった。肌は赤銅色にかがやき、精気に満ちていた。一生懸命働き、四人の子を育てた。無口な妻は、やるべきことはちゃんとやる女だった。だから気に入っていた。海からそれほど離れていない所に、そこそこの家も建てた。自慢の家で、出かける時は門の外で必ずふり返り、しばらく我が家をながめ、満面の笑みをうかべ、歩き出すのであった。天気のいい日は、毎日浜辺に行った。家...

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