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2018/05/04

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  • 終わりの始まり

    夫がアルコールとは無縁の生活を送るに伴い、私も、アルコールのことはあまり考えないようになっていった。 苦しくて、誰にも言えない想いを書き綴っていたこのブログも、苦しみが薄らいできたから、もう手に付けることもなくなっていた。 それだけ私も回復してきたのだと思います。 どんなに苦しくても、きっといつかはそれが過去のことになる。 夫がアルコール依存症を発症してから12年。 6年目には仕事を失い、健康を失い、信用を失い、お金を失い、夫はアルコール依存症によって、沢山のものを失った。 無職だった6年のうち、最初の3年は堕ちるだけ堕ちての地獄の日々。そして最後の3年は、緩やかな回復の日々。 そしてそれはき…

  • 人はやり直せる

    本当にどん底だった。 自分たちが世間から置いてけぼりになっている感覚。苦しみを誰にも話せない辛さと孤独。酒浸りで廃人になっていた夫への失われていく信用と怒り。助けてくれなかった、唯一状況を知っていた夫の家族へのいらだち。こんなに苦しい思いをせずに、普通の暮らしができたらどんなにいいだろうと思っていた。 当時の私は派遣社員で、一日に5時間しか働いていなかった。そして夫は無職。 フードスタンプと呼ばれる、政府からの低所得者への食料の援助の申請をすれば、おそらく通ったと思われるのだが、私はそれをしなかった。幸い、食べ物に困るほどの貧困状態ではなかったし、そこまで落ちぶれたことはしたくないという、変な…

  • 別れなかった理由

    それにしても、私も頑固というか、我慢強いというか、よくここまで耐え切ったと自分でも思います。 酔っていない夫は、頼もしくて一緒にいて気がラクだった。だから、アルコールさえ飲まず、普通の夫のように働いてくれていたら、平和で幸せに暮らせると分かっていた。 だから地獄の日々があっても、どんなに人から別居、離婚を勧められても、夫が断酒さえしてくれれば全てがうまくいくと信じて必死だったのだと思います。 あとは、やはり共依存で私も病んでいたからでしょうね。だから、きっとどこかで正常な判断ができていなかったのかも知れません。 あの頃の私に何か言えるとしたら、「もうあの夫のことは見放して、自分の幸せを考えてい…

  • 私にできること

    夫のアルコール依存症による苦難を乗り越えてきたからこその、今の私にできることを考えてみた。 『今の状態を当たり前だと思わず、いつかまた夫はスリップ(再飲酒)するものだと心の片隅で覚悟を決める』 何十年と断酒が続いている人でも、一杯飲んだだけで脳にスイッチが入り、地獄の日々に戻ってしまう。その一杯のきっかけって、きっと他愛も無いことなのだと思う。「断酒が続いてるし、飲酒欲求もない。今なら、飲んでも普通の人達のように、飲酒をコントロールできるんじゃないか?」という気持ちや、飲んでいる人からの「たまには一緒に飲みましょうよー、大丈夫ですよー、一杯ぐらい!」という誘い。そんな風に、これから先、魔が差す…

  • 酔っ払いへの先入観

    世間の、アルコール依存症者への誤解や蔑みが悔しくて悲しかった。 でも、実は私の方こそ、酔っ払いを見下していたんじゃないか、と何年も経って気付かされた出来事があった。(酔っ払い、という言葉を使うこと自体、見下しているみたいなのだが。) 私は友人に夫のアルコール依存症を告白する時、一緒にある動画を見せることがある。 それは、いつか何かの証拠に、と隠し撮りをしていた、酔っ払って呂律の回らない、夫の私への暴言の動画だ。ゆっくりとした口調、でも支離滅裂で意味不明な内容。そして衝撃的。夫は、その動画の最後に意識を失い、床に倒れ込むのだ。恐ろしいことに、その際夫は頭をテーブルに強く打ち、その頭を打った箇所か…

  • Social gathering

    夫が、仕事終了後の会社のイベントの親睦会に参加するという。そこでは同僚達のバンドも演奏をするとのこと。夫は普段は会社の話をあまりしないので、同僚とそういう場に参加するということに少し安心した。同時に、ついに来たかこの時が!という不安な気持ちにもなった。 その親睦会、当然、アルコールが出るんだよね? 夫は親戚のパーティでは、もちろんアルコールは飲まない。それは、親戚中がみんな夫のアルコールの問題を知っているからであり、また、妻である私が一緒にいるからである。そして、アルコールを飲まない夫に、誰もアルコールを勧めてこない。そんなみんなの無言の協力が、夫にアルコールを飲ませないようにしている。 でも…

  • 新しい生活

    働き始めた夫との新しい生活は、やっと普通の夫婦、家族に戻れた気がして、なんだか新鮮だった。 毎日同じ時間に寝て、同じ時間に起きる。 そして、夫も私もそれぞれの仕事の一日が始まる。 夫が出社する日は私は在宅勤務、または午前中だけ在宅勤務をし、12時間近く犬達を2人きりにさせないように工夫した。 週末は変わらず夫婦で犬達を連れて公園へ。 そんな、普通の夫婦がやっているような普通のことが、やっとできるようになりました。 昔と違うのは、そこにアルコールがないだけ。 以前夫が働いていた時は、そこにいつもアルコールがあった。 アルコール依存症初期の頃は、ただ、仕事終わりに飲んでいただけだったものが、仕事を…

  • 社会復帰

    夫の初出勤の日。 私はあまり大袈裟にならないように、普通の感じで日本語で「いってらっしゃい」と夫を見送った。すると夫は、「昔はいつも僕が仕事に行く時は、それを言ってくれたね。」と少しはにかんだ。「そうだね」と私も笑った。 夫が無職だったこの6年の間に、Covidで世間の働き方はもうすっかり変わり、夫も出社と在宅勤務のミックスで働くようになった。 前職でも在宅勤務はすることはあったのだが、今とは違い、当時は自宅でアルコールを飲みながら仕事をしていたんじゃないかな、と思っている。解雇になる直前にはもう、朝から飲んで出勤していたので、当時は在宅勤務中に飲んでいた事は明白であろう。 前職での11年間は…

  • 夫婦の絆

    久々に夫が凄い人に思えた。 夫が無職の間は、夫のことはグータラで尊敬できなかったけれど、今までの空白の時間を埋めるためにも、夫は働き始めたら、きっと一生懸命に働いてくれると信じている。 遠い昔のことでずっと忘れていたのだが、そういえばそんな風に頑張って働く人だったんだ、私の夫は。 夫がやっと新しいスタートラインに立ち、やっと普通の人達と同じ場所に帰ってきた気がして嬉しかった。 そうなると、自然に私も夫に優しくなる。 夫もとてもやる気になっている。 また、一からお金を貯めていく、と張り切っている。 私は、今まで自分だけが働いていたから、常に気が張っていた。 本当に、夫が働かないというのはものすご…

  • 就活

    夫の貯金が底をついてきた今年の春、夫は言った。 「もう十分静養した。もういい。仕事を見つけるよ!」 仕事を見つけるだなんてセリフ、今までに一体何度聞いたことか。 でも、本当に夫には働いてもらわなければならない。 私は毎日毎日、お金の心配をしていた。 だから、夫にストレスを感じさせないように、月に一度のぺースで、仕事を探すようにお願いした。 絶対に仕事なんて、すぐには見つからないはず。 ましてや、この6年間の空白の時間を、一体どう説明するつもりなのだろうか? 私はいつも、そのことだけが気がかりだった。 夫は約6年間、無職だったのである。 今のジョブマーケットでは、きっと夫の価値はゼロ。 でも楽観…

  • 苛立ち

    夫が仕事を辞めて6年にもなると、さすがに夫の貯金も底をつき、私にも家のローンを負担するように言ってきた。そう、それまでこの生活を支えていたのは、老後の資金を含む夫の貯金で、私は家のローンや生活費は払ってはいなかったのだ。 夫に言ったことがある。 「今のあなたを受け入れていられるのは、あなたがヒモじゃないから。」 これは全くの本心で、もしローンが払えなくなり、家を売らなければならなくなったら、その後の私の人生に夫はいなかっただろう。私が夫と一緒にいるのは、家があり、夫が私達の生活費を払っているから。私の夫は、たとえ働いていなくても、大黒柱のごとく、私達の生活を支えてくれている。それが私の唯一の、…

  • ずっとやりたかったこと

    夫が回復したらやりたいと思っていたことの一つに、自宅でのカラオケパーティがある。 夫のアルコール依存症が酷くなってからは、人を家に呼ぶことができなくなっていた。 だから、人を家に呼ぶことができるようになる、ということが、一つの夫の回復の目安になっていた。 夫の断酒が2年経った頃、私は会社の同僚のカラオケ好きな女の子を一人、自宅に招いた。 お酒が大好きなその子には、「ウチは誰もお酒を飲まないから、飲みたかったら自分で持ってきて。」と伝えた。本当はウチの中にアルコールを置くことも嫌だったのだが、そんなことは彼女には関係ない。彼女は自分用に、ビールを4缶ほど持ってきた。 夫がアルコール依存症になって…

  • あれから3年

    夫が断酒して3年が経った日、私は毎年そうしているように、家のリフォームや家具を作るのが好きな夫に、Home Depot (ホームセンター)のギフトカードをあげた。 AAに行っていない夫は、断酒記念のトークンや賞状を、どこかでもらえたりするわけではない。だから、Congratulationsと書かれたギフトカードが、私からのせめてもの記念品である。 そして義母や義父からもお祝いの連絡が。 これも毎年していることなのだが、私は当日、「今日は断酒して◯年ですよ」と彼らに伝えている。彼らも断酒開始日なんて覚えていないだろうし、そうすることによって夫の断酒を一緒に祝い、夫に「おめでとう!」と言ってもらう…

  • 飲んでなければそれでいい

    夫は、年に一度ぐらいの割合で「今年は仕事を見つける」と宣言していた。 それを適当に聞き流す私。 でも本心では、一刻も早く社会復帰をして欲しかった。 無職歴が長ければ長いほど、仕事につきにくくなる。 私だったら、こんな時間が無駄なことはしない。 私だったら早く仕事を見つける。 そんな気持ちとは裏腹に、夫の前では無関心を装っていた。 とにかく、ストレスを与えることだけはしたくなかった。 それでも夫の両親には本心をぶちまける。 「今すぐ仕事を見つけないなら、もう夫と一緒にはいられない。」 「どうか、夫に仕事を探すように言って下さい!」 私の必死の訴えに、義父は「息子は、働かないといけないことは十分分…

  • 働かない夫

    いつの間にか3年が経っていた。 その間、世間ではCovid(コロナ)が始まり、私は転職し、東京オリンピックが開催され、そしてロシアとウクライナは戦争を始めた。 夫の生活は変わらなくても、世の中は変動している。 この3年間は、平和で穏やかな日々ではあったものの、私の心は夫に対して、幾度となくざわついていた。 断酒してくれていることはありがたかったし、飲まないでいてくれるだけでいい、とさえ以前の私は思っていたものだが、それが当たり前になってくると、夫に対して更なる期待をしてしまう。 夫は働くこともなく、自由な時間を気ままに過ごしていた。 犬達を連れて自然が溢れた公園に行ったり、家のリフォームをした…

  • 過ぎ去りし日々

    2022年、夏。 夫が断酒を始めてから3年が経ちます。 重度のアルコール依存症で、廃人だった夫。 あの頃は毎日が地獄で、夫を取り巻く人間みんなが病んでいた。 あの地獄から抜け出し、普通の暮らしがしたいと切望していた。 今のこのアルコールとは無縁の生活は、当時の状況から考えると、まさに奇跡としか言いようがありません。 そして、夫のような重度のアルコール依存症でも、失敗を繰り返し、時間をかければ徐々に回復していくんだ、と身をもって経験しています。

  • 病と共に生きる

    夏のある日、夫は突然、将来の不安を口にして震えた。 不安とストレスがあると再飲酒してしまうのだと、夫は酷く動揺した。 そして、「今までずっと自分に必要だったものは、AAでも断酒補助薬でもなく、不安を和らげることだったんだ。Anxietyの薬を飲めば不安もなくなり、再飲酒しなくなるかも知れない。」と言い出し、それでAnxietyの薬を飲み始めたのだ。 こういうことも、専門家に診てもらってさえいれば、もっと早く気付けたかも知れないのに、とにかくそんな夫の頑固な性格がジャマをして、なかなか回復への道は険しい。 以前、夫がまだ働いていた頃に飲んでいた Anxiety の薬は、ある時から夫は勝手に飲むこ…

  • a "Piece of My Wish"

    毎日が穏やかに過ぎている。 今の状況を受け入れ、 夫は闘病中で回復中なのだと、 それを静かに見守るのが私の役目なのだと、 そんな風に思っている。 夫に必要だったものは、きっとこんな時間だったんだ。 だから周りの人達には夫の批判ではなく、 離婚の勧めでもなく、 腫れ物に触るようにでもなく、 夫に対して、 私に対して、 「よく頑張ってるね」 と、そう言ってもらえたら、勇気づけられて嬉しくなる。

  • 穏やかな日々

    精神疾患がある人というのは、性格が気難しくなるものなのかも知れない。 夫を見ていると、そんな気がして来た。 心の不健康さは、きっといろいろなところに悪影響を及ぼすのだろう。 反対に、心が健康だと、それが性格にも優しく現れる。 Anxietyの薬を飲み始めた夫は、ギスギスしたところがなくなり、穏やかになってきた。 前のようにアルコールに溺れることもなく、健康に過ごしている。 最近の夫は、毎日犬達を州立公園等に連れて行き、犬達と一緒に森や湖の畔を散歩している。 週末になるとこれに私が加わり、夫婦二人と犬達とで、まるで老夫婦のようなデートをしている。 夫は家や庭の手入れを率先して行い、家事もやってく…

  • 薬のアルコール

    最近、某元タレントの方が薬物で逮捕された。 アルコールも薬物も、合法か非合法かの違いだけで、身体への影響や、依存症になった際の依存度、堕ち方、世間からの蔑み、回復のプロセスは似たようなものである。 薬物やアルコールに限らず、依存症という病は、世間からの理解を得ることが非常に難しく、誤解をされることが多い。世間の方々には、Relapse (再発)してしまったこの彼のことを、白い目で見て攻撃するのではなく、彼の失敗を通じて、依存症の回復の難しさを知ってもらえたら、彼の過ちも無駄にはならないのではないだろうか。 私はこの彼に、別に特別な思いがあるわけでも何でもないのだが、依存症という病の苦しさが分か…

  • 飲酒欲求とストレス

    私の夫は日々、試行錯誤しながら、回復に向けて答えを探している。 何で飲んでしまうのか、どうすれば飲まなくなるのか、何度も失敗を繰り返しながら、夫は自分に合った断酒方法を探している。 今まで夫の断酒が続いていても、何度となくスリップしてしまったのは、身体的依存の他に、二つの精神的な理由があるようだ。 一つは、会話の中にアルコールが出て来た時。 AAで聞く依存症者達のアルコールにまつわる話は、夫に一層飲酒欲求をもたらせた。 この夏、気持ちを改めて夫と二人でAAのスピーカーズミーティングに行ったことがあったのだが、かえって飲酒欲求で夫を苦しめてしまった。 スピーカーズミーティングとは、アルコール依存…

  • 夏の思い出 ~Camping~

    今年の夏は、少し嬉しい進展があった。 夫が回復したら行きたいと思っていた「家族旅行」が実現したのだ。 「予定を立ててどこかに行く」なんてこと、普通の家庭には当たり前のことかも知れないが、それがアルコール依存症者のいる家庭になると、事情は異なる。 まず、いつ夫の容態が急変するか分からないから、旅行の計画など立てられない。 夫の体調がいい頃を見計らって、ようやく旅行の計画を立てても、その旅行の何日も前から夫の様子を伺い、「飲み始めないだろうか?」、「ちゃんと予定通りに旅行に行けるだろうか?」、「夫に失望させられないだろうか?」、「行けなくなったことで娘を傷つけないだろうか?」と毎日ハラハラし、娘に…

  • パニック発作

    夫の精神疾患については、別に医師から正式にそう診断されたわけではなく、これはあくまでも私の推測である。双極性障害については実際のところどうなのかは分からないが、でも夫にAnxiety(不安障害)があることは確かである。 最近夫はAnxietyの薬をかかりつけ医から処方してもらっているのだが、実際に精神科にかかってくれれば、もっと夫の病状がハッキリするかも知れない。今のかかりつけ医も、何年も医師の診察を拒んだ末にやっと見てもらい始めた医師なので、精神科へ行くことも、そう簡単なことではないと思っている。(そこまで医師を拒絶するパワーを、もっと他の所に向けて欲しいものだが。) ハッキリと夫の異常を確…

  • 離脱症状の真実

    2019年、秋。 私達にとって普通になってしまったこの日常を、受け入れることが当たり前になっていた。 今更もう、私が変えられない夫の行動にイライラしても仕方ない。 ただ、心を落ち着かせて、毎日を穏やかに過ごそうとするだけ。 私は今まで夫のことを、アルコール依存症以外に、双極性障害なのだと思っていた。 それで精神科に連れて行こうにも、頑固な夫はそのことに前向きになってくれず、また、私も専門家ではないので、自己流でそう思い込むしかなかった。 何かがおかしいと思っていた。 いくら夫が重度のアルコール依存症とは言え、あの毎度の生死を彷徨う離脱症状は尋常ではない。 精神科医の義兄からは、「これは離脱症状…

  • 親愛なるアルコール依存症の夫へ

    あなたがこの病気になってから、辛く、苦しいことが沢山ありました。 あなたへの信用を失い、あなたを酷く憎み、あなたが時折くれた小さな希望に喜び、あなたの嘘に失望し、あなたの行動に何度も泣き、そうやって、まるでジェットコースターにでも乗っているかのような、アップダウンの激しい壮絶な日々が過ぎて行きました。 でも、きっとこれが私達夫婦の形なのでしょう。 平穏で普通の暮らしではないけれど、こうやって夫と共に病気と闘い、この非日常的な毎日を懸命に生きていることは、恐らく、普通に幸せで何の問題もない夫婦達以上に夫婦関係は濃く、特別な絆がそこにあると思っている。これは私達夫婦に限らず、「アルコール依存症の配…

  • Rehab(リハビリ施設)

    アメリカでのアルコール依存の治療は、リハビリ施設(Rehab)へ行くことが最後の砦だろう。 日本ではアルコール専門病院なるものがあるようで、アルコール依存症者が3カ月程入院をしてそこで治療を受けたり、アルコール依存症についての勉強をするようなのだが、アメリカでは、病院に入院するのではなく、リハビリ施設に入ることになる。 夫も何度か、離脱症状時にアルコール性てんかん発作によるER行きと入院をしたことがあるのだが、どれも3泊~5泊ぐらいして身体が回復すると、そこで退院となった。「この後はリハビリ施設に行った方がいいですよ。」と、看護師からリハビリ施設の情報をいくつかもらい、そこで終わり。(アメリカ…

  • アメリカのアルコール事情

    日本はアルコールに、非常に寛大な国である。 それに比べ、アメリカではかなりアルコールに関する規制が行われており、渡米した当初は驚いたものだ。 アメリカでは、21歳から飲酒することができる。 TVでのアルコールのコマーシャルはなく、街中にはアルコールの広告もない。アルコールの自動販売機は存在せず、リカーストア(酒屋)かビールが買える店に行かなければアルコールは買えない。買う際には年齢確認のためにIDカードの提示を求められる。 州によって異なるのだが、普通の食料品店やコンビニでアルコールは売られていない。(売っている州もあります。)私の住む州では、ここ何年か前から食料品店でもアルコールを売り始めた…

  • 希望の象徴 (Wreaths)

    私が高校時代に英語と同じくらいに、いや、もしかしたらそれ以上に得意としていた教科は、美術である。 私はクラフト作りが好きだ。 作るものはその時によって違うのだが、一度ハマると、延々と作り続けてしまう。 娘を出産してからハマったものは、赤ちゃんのオモチャ作り、ビーズのアクセサリー作り、クレイでのネックレス作り、編み物、そしてキャンバスに絵を描くこと。 一度始めると、集中していくつもの作品を作る。 そんな私が一番最近ハマっていたのは、ドアなどに飾るリース(Wreath)作りである。 夫の状態が一番悲惨だった2017年の1年間で、私は計20個のリースを作った。 当時の私は毎日、仕事に行くことで夫と一…

  • アルコールに感謝してみる

    もし夫がアルコール依存症から回復し、これから先、何年も何十年も、ずっと断酒を続けてくれたら、私はきっと、夫がアルコール依存症になってしまったことに感謝をするだろう。 何故なら、酔っぱらった夫の姿を、もう見なくて済むから。 あの醜態に、嫌な思いをせずに済むから。 昔の私は、夫の酔っぱらった姿に鈍感だった。 夫がどんなに非常識な行動を取っても、それがアルコールのせいだということに気付きもせず、彼の人間性に問題があるのだと思っていた。 私自身はアルコールを飲んで、非常識な行動を取ってしまったことはないし、せいぜい眠くなって寝てしまうだけだったので、アルコールが人格までをも変えてしまうことに、本当に鈍…

  • 断酒補助薬(ナルトレキソン or レグテクト)

    夫は5年前、働きながらアルコール依存の断酒外来プログラムに通っていた。 連続飲酒はまだなく、飲むのは仕事から帰宅してからの、毎晩の一人家飲み。 世の普通のアルコール好きな人達がやっていることと同じことをしていた。 ただ、何度か離脱症状時にERに行かざるを得なかったことがあったため、夫は自らのアルコール問題を認識しており、迷うことなく断酒プログラムに通っていた。 そこで夫は、断酒補助薬にお世話になった。 Naltrexone/Vivitrol(ナルトレキソン)を服用で、そして注射で何度か投与してもらっていた。そのプログラムは半年程で終了したのだが、飲酒量は減ったものの、夫は完全にアルコールを絶つ…

  • 白昼夢 ~ Daydreaming ~

    夫の病気が回復せずにこのまま悪化していったら、私達はいずれ家を失い、家族が崩壊するだろう。 夫がまだ元気に働いていた時、その頃から酷かった離脱症状を見て、義父母は「このままだと仕事を失うよ。」と言った。 そして、それが現実になった。 今、夫が仕事を失って彼らから言われていること。 「このままだと、お金と家と家族と健康を失うよ。」 そして、それはいつか、このまま行けば、きっと現実になるだろう。 もう、疲れました。 もし夫がこのまま堕ちて行き、挙句の果てに私達が家を失ったら、もう夫とは一緒に暮らしたくはない。 もう、夫の病気とは関わらずに生きていきたい。 夫抜きで、私と娘と犬達とで、普通の暮らしが…

  • 機能しない人

    夫が連続飲酒と離脱症状で廃人化し、人として機能しなくなる時、私は夫を自分の視界に入れないようにする。夫の存在を消し、私は一家の主となる。 冬の大雪の時、ご近所さん達が夫婦で仲良く協力して雪掻きをする中、私は一人で雪掻きをする。 夏は庭の芝生を、手押しの芝刈り機で、数時間かけて私が一人で刈る。 秋は家の周りの落ち葉を、私一人でかき集める。 男手がないシングルマザーの方は、こういう時は大変だろうなと思う。男手があるにも関わらず、使えない私の夫のことは、もういないものだと割り切り、一人で頑張るしかない。 「あそこの奥さん、働き者だなぁ~。ご主人は家で何やってるんだろ?」などとご近所の噂になっていなけ…

  • フラッシュバック

    夫が断酒中に、アルコールとは関係なく、単に夫の体調が悪くて寝込んでいる時、私の心はザワついてしまう。 夫がだるそうに昼間から寝ているその姿に、私は夫の体調を心配するどころか、あの飲酒時のダラダラしている姿とオーバーラップしてしまい、怒りが込み上げて来るのだ。 体調が悪くなる前に、医者に診てもらえばよかったのに! あの時診てもらっていたら、今頃回復していたかも知れないのに! もう何もかもが飲酒時と重なり、私は夫にイライラしてしまう。 そうでなくても、アメリカ人は痛みなどに大げさなのだ。 いや、本当に痛いのは分かるのだが、そこまでドラマチックにアピールしなくっても・・・!と思ってしまう。 そしてダ…

  • 被害妄想

    アルコール依存症者は、泥酔時に身近な家族に暴言を吐き、時として被害妄想に落ち入って家族を責め立てるようなのだが、私の夫も例外ではない。 私がよく夫の泥酔時に責められたことは、「お前が自分と一緒にいるのは、お金目当てなんだろう!」というもの。 はぁ!? ・・・である。 何でそんな発想になるのか、何でそんな風に責められなければならないのか、私はあっけにとられてしまった。 私がそんな人間でないことぐらい、夫が一番分かっているはずである。 別に大金持ちというわけでもなければ、ましてや何で無職の夫と一緒にいることが金目当てなのか? 家のローンや生活費を夫自身が払っているからそう思うのか、それともこんなに…

  • Fragile

    心が折れそうになる。 本当に、独りなんだなって。 誰も助けてくれないんだなって。 人に期待してはいけないのだが、この苦しみを、独りで抱えていることが辛い。 頼りにならない義父母。 夫の病に関わりたくない義兄と義妹。 彼らはただの静観者。血は繋がってはいても、他人事。 それが分かるから、義兄にも義妹にも、私から夫についての話はしない。 されても返答に困るだろうし、無視されるのも嫌なので、自分からは言わない。 とは言っても、向こうからも聞いても来ないのだが。 だから義母にそれとなくお願いしてみた。 「夫に精神科で断酒補助の薬をもらうように、義兄から言ってもらって下さい。」 義兄はあれでも精神科医。…

  • 非道な心

    私は自分がする夫への非情な対応に、自己嫌悪に陥る時があった。精神が病んだ末にやってしまったことだとはいえ、とても心がある人がすることだとは思えないことをしていた。苦しむ夫を無視したり、助けずに放置したり、気にかけてあげなかったり。これらは本来の健全な自分の姿ではなく、魂を悪魔に売り渡してしまったような心境になった。 ああ、私はこんなに冷酷な人間になってしまった。 心がなくなってしまった。 鬼になってしまった。 そんなことを思い、でもだからと言って、次から夫に優しくしようとも思わなかった。 それほど、私の心は病んでいた。 でも後から知ったことなのだが、世話を焼かないこの対応は、実は間違えではなか…

  • 非情な対応

    夫が飲酒をすると、最初の頃は懸命に夫の世話をしていたものだが、夫の状態が悪化するにつれ、私は夫を無視して放置するようになった。 泥酔して床で寝ていても、ブランケットをかけてあげることもなく、そのままそこに放置。家の玄関や庭へのドアに挟まって寝ていても放置。カラのボトルや飲んだ後のグラスが溜まって置きっぱなしになっていても、これは夫の責任だから放置。離脱症状でもがき苦しんでいても、これは夫の問題だから放置。 今にも死にそうな夫を無視し続けた私の当時の心情は、”YOU DESERVE IT ! DEAL WITH IT ! (当然だ!自分で対処しろ!)” というもの。 「こうなることが分かっていて…

  • アルコールで身を滅ぼす有能な人達

    世間の多くの方々がいまだに思っているように、アルコール依存症は、意志が弱くてだらしない人達がなるというわけではない。アルコールを毎日大量に飲み、それが何年にもわたると、誰もがこの病気になってしまう可能性があるのだ。そして適切な治療を受けずそのまま放置していると病気は進行し、やがて全てを失い、命を失う。 私の夫は、離脱症状で起こるアルコール性てんかんによる死と隣り合わせの時期が長くあり、夫の病気に巻き込まれて私も心が病んでいた。だから普通の、誰もが送っているような平凡で当たり前な生活を切望し、日々必死に生きていた。 時々思う。夫がアルコール依存症になっていなかったら、どんな人生だっただろうと。夫…

  • 親心

    夫の連続飲酒中は、気をしっかり持つべく、私自身のために楽しいことをしようと思ってはいても、何だかんだで気分が沈む。 同じアルコール依存症でも、夫が仕事をしてくれているなら、どんなに家族の気持ちが楽になるだろう。こんな底辺の生活にも慣れてしまったが、仕事もしていないアルコール依存症の夫なんて、世間から見たら、とんでもないルーザー、ろくでなしである。 私、一体何にしがみついてこんな夫と一緒にいるんだろ? 人として、夫として、尊敬などできるわけがない。 「Move on!(気持ちを切り替えて前に進め)」、と悪魔の、いや、天使の囁きが聞こえてくるようだ。 夫は働くことができない。 シラフの時は、時折自…

  • もうひとつの病

    夫は、断酒に必要不可欠なことを何もやっていない。 リハビリ施設にも行かず、専門家の治療も受けず、断酒補助の薬も飲まず、AAにも行かず、で、自分はそれでいいと思っている。本当に難しい男である。 スリップされた日は、私は仕事中でもそのことを思い出して心が苦しくなり、胸がキューっと痛くなった。 夫は自分の飲酒がどれだけ家族に大きな影響を与えているかなんて、深刻に考えてもいないだろう。 アルコール脳になってしまったせいなのか、夫には現実が見えていないような気がする。夫は、何があってもいたって楽観的なのだ。 仕事だって、レジュメを出せばすぐにオファーが来ると思っている。 無職のこの2年半の空白期間を、面…

  • アンガーマネジメント

    夫に期待することをやめ、アルコール依存症の回復過程でスリップするのは当たり前のことなのだと分かってはいても、ある程度断酒が続いた後にスリップされると、メンタルのダメージが酷い。 「レジュメをアップデートして、仕事を探すよ!」などと前向きな発言をしていた矢先に、先日、夫はまたスリップした。 予測できていたことではあるのだが、「ここまで断酒してきたのに、何で!?何で今なの!?また振り出しに戻ったじゃん!」・・・と私は夫をボコボコにしたくなる。 「怒っちゃダメだ!責めたらダメだ!本人が一番自分を責めてるんだ!」・・・と自分に言い聞かせてみても、私の夫への失望感は素直に態度に出てしまう。だから、この怒…

  • 無償の愛 ~ Unconditional “Doggy” Love ~

    シラフの夫は、相変わらず気難しくて扱いにくい男ではあるものの、まぁ頑張って断酒を続けてくれている。 夫が断酒前と変わったこと。 犬達の散歩に、喜んで進んで行ってくれるようになりました。 夫の犬達への接し方は、見ていてこっちの顔が緩んでしまうほど、ラブリーで愛情に溢れたものである。そして、それに私はいつも癒される。どんなに気難しくても、犬好きの人に悪い人はいないと思う。 しかしながら、酔っぱらい全盛期の頃の夫は、犬達を可愛がりはするものの、散歩などという面倒くさいことは一切やらなかった。たまに天気がいい日には犬達を車に乗せ、近くの州立公園に一緒に行くことはあったのだが、そんな楽しい場所ではなく、…

  • 堕落した夫の責任感

    生活の変化が怖いと感じている私ではあるのだが、いつまでもこんな生活を続けているわけにはいかず、やはり夫には、早くちゃんと仕事に復帰して欲しいと願っている。 最初の頃は必死だった。 夫にリハビリ施設へ行ってもらい、断酒補助の薬を飲んでもらい、AAにも通ってもらい、そんなオーソドックスな断酒への道を歩み、早く仕事を探して欲しかった。 でも結局夫は長い時間をこんなに無駄にし、リハビリ施設にも行かず、薬を飲むこともなく、AAに行くこともやめてしまった。それでも何とか今は断酒が継続してはいるのだが、やはりちゃんと社会復帰してこそ、やっと普通の生活に戻れるのだと思っている。 私は働いているとはいっても、私…

  • 私の回復

    夫の断酒、継続中。 そんな時の私は、平穏な日々に安らぎを覚えると共に、スリップ(再飲酒)という時限爆弾を抱えている心境で、怖くもなる。 これは儚い、嵐の前の静けさなのだと、そんな気持ちがいつも心の片隅にある。 そして、断酒が続いていて嬉しいはずの私は、その裏返しなのか、つい夫に不機嫌な態度を取ってしまう。まるで夫にアルコールの問題がないかのように、してはいけない態度で夫に接してしまう。 まさか私は、夫と共依存関係にあることに、自分でも気付かない喜びを感じているのだろうか?厄介で複雑な病気になってしまった夫を支え、夫と一緒にこの病気と闘っている自分の状況に、まさか、酔いしれているのだろうか? い…

  • One Day At A Time ~ 今日一日だけ ~

    アルコール依存症からの回復を目指している方々は、今日一日、飲まないでいられるようにと、日々飲酒欲求と闘っている。飲まない日々を毎日数え、ああ、今日も飲まずにいられたと、明日のことは分からないけれど、今日は飲まない一日が無事に終われるんだと、そんな風に毎日を生きている。 無情にも襲ってくる飲酒欲求は、ストレスなどがキッカケとなり、再飲酒へと逆戻りしてしまう。 そして、そこからまた地獄の日々が始まる。 この病気になってしまった彼らにとって、飲酒は致命的な行為であり、それを分かっていながらも、命を削りながら、自分の意志に反して、飲まずにはいられなくなる。 飲酒の副作用は恐ろしく、脳を委縮させ、人格崩…

  • 告白

    私は去年の秋あたりから、徐々に、ほんの一握りの人達だけになのだが、信頼のおける友人達に夫のことを話し始めた。 話せるようになってきたのは、夫の状態が少し落ち着いてきたからだ。 これが一年前だったら、苦し過ぎてまだ話すことはできなかった。 今振り返ってみると、夫の状態が一番酷かったのは、2016年の暮れ~2018年の夏にかけてだった。今でも夫は問題を抱えており、夫の病気は一生ついてまわるものだが、あの酷い時に比べたら、今は夫がシラフでいる時間が長くなり、それだけで平穏な時間が過ごせている。私の幸せの基準が大幅に下がってしまったのかも知れないが、夫が断酒してくれているだけで、私は安らかな幸せを感じ…

  • 夫の健康状態

    夫が一番最後に医師の診察を受けたのは、会社から救急車でERに搬送された、2016年8月のことだった。ここでも以前大まかに書いたのだが、かなり割愛してあり、あの日の出来事とそれ以降の夫の様子は、今思い返しても胸が苦しくなる。 それから約2年半の間、何十回も離脱症状があったにも関わらず、夫はどんなに酷い状態でもERに行くことを拒否し、健康診断にさえ行かなかった。 アルコール依存症は否認の病気と呼ばれ、通常アルコール依存症者は自分がアルコール依存症であるということを認めたがらないそうなのだが、これは夫には当てはまらず、夫は最初から素直に自分がアルコール依存症であるということを認めている。 むしろ、「…

  • アメリカ人の衛生観念

    私はアメリカは嫌いではない。むしろ、元々好きだったからこそ渡米して来たという過去がある。 アメリカ人の大らかで適当なところは、良くも悪くも受け入れて来たし、郷に入れば郷に従えで、ここでの暮らしに、自分を順応させてきた。 そんな私ではあるのだが、在米歴20年を前に、未だに我慢ならないことがある。 到底理解できない、アメリカ人の衛生観念についてである。 アルコール依存症とは関係ないのだが、それは私のストレスを助長させる、大きな要因となっている。 彼らは、家の中を土足で歩くということは言うまでもないのだが、何故か、外では裸足で歩くことがある。室内が土足で、屋外は裸足って!?と、全く理解ができない状況…

  • セキュリティカメラが捉えたもの

    我が家には、セキュリティカメラが数台設置してある。 防犯のためというより、昼間みんなが不在中に、犬達がどう過ごしているのかを見たいという、遊び心で設置したものだ。 犬達は、私達が外出から帰って来ると、必ずベイウィンドウ(出窓)に座って外を眺め、私達の帰りを待っている。 果たして私達が外出してから一日中ずっとそこにいるのか、それとも、私達が想像だにしていないことをしているのか、誰にも犬達の一日の様子は分からなかったのだが、カメラのお陰で、彼らの実態が判明した。 『彼らは、私達の不在中、ずーっとベイウィンドウに座って外を眺め、私達の帰りを待っている』 のだ! 目新しくもない発見ではあるのだが、カメ…

  • 春を待ちながら

    夫は2019年の目標として、アルコール依存症からの回復、そして、社会と仕事に復帰することをあげている。 期待をしても、今までに何度も失望させられてきたから、私はそれをただ黙って聞いている。 それでも、彼の前向きな気持ちを聞いて少し安心する。 仕事復帰にまでは辿り着かないかも知れないが、今はただ、断酒を続けて行って欲しい。 この病気の進行に、これだけの長い年月を費やしてきた。 回復にも時間がかかって当然なんだと、そんな風にゆったりと構えながら、これからも毎日、One day at a time(1日ずつ)で夫の回復、そして私と娘の回復を目指して、ゆっくりとでも前に進んでいけたらといいなと思ってい…

  • 失われた信用

    かつて私達が日本に行く時、いつも空港まで車で送ってくれ、また、迎えに来てくれていた夫は、ここ数年の日本への里帰りでは、もうそれができなくなっていた。 夫が離脱症状で苦しんでいる最中、義母に夫の様子を見に来てもらい、運転ができない夫の代わりに急遽、事情を知っていた友人に、朝早く空港まで車で送ってもらった時もあった。あの時は、苦しむ夫を残して日本へ経つことへの罪悪感と、ここまで堕ちてしまった夫を想い、後ろ髪を引かれる思いで、空港へと向かう車内で泣いた。それが、夫が私達を空港まで連れて行けなくなった最初の時だった。帰りも夫は迎えに来てくれることができずに、私は友人に空港まで車で迎えに来てもらった。 …

  • 不穏な日々

    2019年、冬。 私と娘は、4年振りのお正月を日本で過ごしていた。 今回の滞在は2週間。年末年始で慌ただしいながらも、夫から解放されて、平和に過ごせるはずだった。 断酒がある程度継続できたアルコール依存症者なら、きっと誰もが一度は思うことなのだろう。 「ずっと断酒しているから、もう治ったんじゃないか?」 「一杯だけなら、飲んでも大丈夫なんじゃないか?」 そして私達が日本へ経つ少し前に、夫は見事、再飲酒してくれました。 一旦アルコール依存症になってしまうと、もう二度と普通の人達のように飲酒をコントロールすることができない。 それを十分分かっていたはずの夫は、ビール一口だけなら大丈夫なのではないか…

  • 年の瀬に思うこと

    もう2018年も暮れになり、私の、「夫のアルコール依存症」との闘いにも年季が入って来た。 最初は苦しくて仕方なかった今の状況、もちろん今でも苦しくて、深刻だからこそ人に言えないでいるのだが、最初の頃に比べると、これが当たり前の生活になった今、慣れと諦めと受け入れで、何とか身を持ち堪えている。 夫のアルコール依存症が、ここまで悪化するとは思ってもみなかった。 仕事のストレスで飲酒量が増え、それでアルコール依存症になってしまったのだから、そのストレスの元凶である仕事から離れれば、ストレスもなくなり、飲酒する必要もなくなると思っていた。 甘かった。 アルコール依存症になってしまったら、もう飲む理由な…

  • 身体のストレス

    夫のアルコール依存症問題によって私にもたらされたストレスは、私を精神的にだけでなく、身体的にも深い影響を及ぼした。 思えば、娘と二人で日本に里帰りをしている時を除けば、私達は毎日、同じ屋根の下で夫と寝起きを共にしているのだ。日によって異なる夫の状態。平穏と地獄の日々を繰り返し、結果、心だけでなく、身体も悲鳴を上げ始めた。 胃が何週間にも渡って痛んだり、帯状疱疹になったり、Cold Sore(口唇ヘルペス)になったりもした。私のストレスはすぐに唇に現れるらしく、初めて夫がアルコールで入院した時には、まるで美容整形に失敗したかのように、ビックリするほど唇が痛々しく腫れてしまった。 そして、夫のこと…

  • 心への影響

    夫のアルコール依存症問題は、私に多大なストレスを与えた。 今の悲惨な状況を悟られないように心に壁を作り、やがて、私は人と深く付き合うことができなくなってしまった。 私の場合、自分が精神的にいっぱいいっぱいであるということを仲良くしていた友人達に話すことができず、だんだんと付き合いも悪くなり、孤立し、ある時突然、何の前触れもなく、無言で友人関係を切られてしまった。 きっと、夫のアルコール依存症問題が特殊で辛過ぎて、友人達に心を開いて話すことができなかった自分がいけなかったのだろう。でも、事情を尋ねてもくれずに、あえてそういう非情なことをしてきたことに酷く戸惑い、ただでさえ傷ついている心にこのよう…

  • 料理のアルコール

    私はアルコールを飲まないと言いながらも、料理では普通にお酒を使う。 料理で使う酒やワインが、いくら加熱でアルコールが飛んでいるからと言っても、アルコール依存症の夫にとって、これらの料理を口にすることは大丈夫なのだろうか? オーブンで約2時間半煮込んだ、赤ワインを使ったポットロースト、気のせいであって欲しいのだが、意識して食べてみると、脳で微かにアルコールのクラクラ感を感じてしまった。(そのように思い込んでしまっただけなのかも知れないが。) それを食べながら、夫がアルコールに気付いてしまうのではないかと、恐る恐る夫の様子を伺ってみる。 少量のアルコールにも敏感に反応してしまう私ではあるが、こんな…

  • 飲みの誘い

    飲酒は、アルコール依存症でない普通の人達にとっては、ごく当たり前で楽しいことなのだということは、私にもよく分かっている。 だから、そういう人達からの飲みの誘いを断ることは、アルコール依存症の夫を持つ私としては、複雑な心境になる。 日本から来たばかりの駐在員の男の子が、仕事中、わざわざ私の席にやって来てこう言った。「Hopeさん(←私の名前)、今度XX君と、Hopeさんと一緒に飲みに行きたいねって話してるんですよ。」 アメリカ人の社交辞令を聞き流すことには慣れている。(アメリカ人は、日本人が思う以上に社交辞令を言うので、彼らの言う「〇〇しよう!」、「〇〇するね!」は、挨拶程度に思っている方が賢明…

  • AA(アルコホーリクス アノニマス)

    アメリカには様々な宗教があるが、夫は無宗教であり、atheist(無神論者)である。 夫の父や妹もatheist、そして夫の母、兄は敬虔なクリスチャン。片や神を信じていない父、片や神を信じている母、で、価値観の異なる両親が離婚に至ったのもうなずけるような話である。 そういう夫は、神だか、それに似たようなものが出てくるAAに参加することに、全く積極的ではなかった。 私はAAのことはよく分からないのだが、私も一度参加したことがあるAl-Anon(アラノン/アルコール依存症の家族の会)でも、何やら神のことを言っていたような気がする。ちなみに、信仰している宗教を持たない私は、夫と同じatheist の…

  • 夫の断酒方法

    夫の断酒が続いている。 信じられないことに、あの重度のアルコール依存症の夫が、2カ月近くもアルコールから遠ざかっている。 心配していた「35日の壁」もようやく乗り越え、今は一日一日を、どうにかサバイブしている。 リハビリ施設にも行かず、専門家の助けも得ず、断酒の薬も処方してもらわず、一時積極的に行っていたAAにも行かず、こんなに性格が難しい夫は、やっと自分に合った断酒方法を見つけたようだ。 あの夫が、断酒には不可欠だと言われている外部からの助けを得ずに、2カ月近くも断酒が継続できているということは、今までの経緯を振り返ると、奇跡に近いものがある。 夫に一体、何が起こったのだろうか? これが断酒…

  • 夢のまた夢

    夫の病気がもし、いつか回復して安定してくれたら、家族みんなで旅行に行きたい。 アルコール依存症者と一緒に何かをする計画は、結局最後になって予定が変わることが多い。前日までシラフだったのに、旅行当日に飲酒を始めて計画を中止にせざるを得なくなったり、酷い時には泥酔しながらの旅行になり、結局旅行そのものが台無しになってしまう。それで今までにも何度も失望させられ、その分、皮肉にも、私は娘との二人だけの想い出が増えた。 犬達を迎え入れてから、家族での飛行機で行くような遠出の旅行はしていないが、車で行けて、犬達も泊まれるホテルがあるところならどこでもいい。 犬達を含めた家族で行ける旅行先として一番現実的な…

  • 私のこと

    私は何故、夫の病気のことを人に言えないのだろう? 私は昔から、自分のことを人にペラペラ話すのがあまり好きではなかった。 友人達だけではなく、それは親に対してもそうだった。 自分のことを話さないのは、きっとおとなしい性格のせいなのだろう。 今でこそオバチャンになってしまったが、若い頃はそれなりに綺麗な(?)お姉さんだったと思う。 20代の頃は、そこまでする必要もなかったお化粧と体のラインが強調される服装で着飾り、その見た目で「飲める子」だといろんな人に勘違いされ、かつ、見た目と性格のギャップに驚かれることもよくあった。 そう言えば、オバチャンになり、身なりが地味になった今でさえも、「飲める子」だ…

  • Insanity (狂気の沙汰)

    アルコール依存症の夫と共に暮らしていると、時折どっと疲れが押し寄せて来る。 やるせない気持ちに、絶望的になる。 投げやりになり、暴言を吐いてしまう。 怒鳴り過ぎて、声が枯れる。 関わるだけで、気が狂いそうになる。 アルコール依存症の夫に、私の立場や苦悩なんて、到底分からないだろう。 夫は「アルコール依存症」という病に、そして私は「アルコール依存症の家族」という病にどっぷりと浸かってしまっている。 家族の中にアルコール依存症者がいるとどんな暮らしになるのか、きっと経験者以外には誰も想像はつかないだろう。 誰もが容易に思い浮かべられるような、酔っ払っての暴言や暴力、そんな目に見えるような簡単で単純…

  • 降りやまぬ雨

    夫は3年程前に、友人をアルコールで亡くしている。 直接の死因は、禁止されていた、処方された薬を服用しながらアルコールを飲むということをしてしまったせいみたいなのだが、彼もアルコールに問題があり、アルコールがらみで内臓をやられ、それで亡くなったらしいのだ。夜、普通にベッドに入り、朝になったら冷たくなっていたらしい。 この友人は、朝からアルコールを飲んで出社したことで、会社から解雇されている。詳しくは知らないのだが、泥酔でもしていたのだろうか。またこの友人は、飲酒運転で警察に捕まり、法によって、アルコールの外来プログラムにも強制的に行かされていた。夫はこの彼のアルコール問題を、「もうしょうがない奴…

  • NO REGRETS (後悔はしていない)

    アルコール依存症は進行性の病気である。 長い時間をかけて、徐々に、ゆっくりと身体を蝕んでいく。 夫は十代の頃から、約20年間アルコールを飲み続けている。 夫がアルコールで変貌し始めたのが約10年前。 当時の私は、酔った夫のことを、酒癖が悪くてもう嫌だなー、というぐらいにしか思っていなかった。 アルコールを飲み過ぎない方がいいということは何となく分かってはいたが、何せ私は自分では飲まないので、夫の飲酒量を異常だとは思ってもおらず、あまり関心も持っていなかった。 夫がアルコール依存症という恐ろしい病気になってしまうと分かっていたなら、もっと早い段階で休肝日を設けるなり、飲酒量を減らすなりのアドバイ…

  • アルコールと私

    愛と憎しみは紙一重と言えど、私のアルコールに対する憎しみが愛に変わることは決してない。いや、というより、もともと愛があったものが憎しみに変わったという、まさに結果として紙一重状態だったということなのかも知れない。若い頃の私は、確かにアルコールがある場所が好きだったのだ。 飲みたかったから飲んでいたのではなく、その場の雰囲気に馴染みたくて、「大人」であることを感じていたくて、背伸びをして周りに合わせて飲んでいたような気がする。 そんなに頻繁に行っていたわけではないが、たまにバーやクラブ、居酒屋などでアルコールを飲み、「あれ?私って、実はアルコールに弱いの?」と徐々に気付いてきたあの頃。一杯飲んだ…

  • せつない想い

    私の夫はよく嘘をつく。 正確に言うと、アルコール依存症という病気がつかせる嘘のことであり、飲んでいるのに「飲んでない」という嘘のことである。 それが嘘だということは一目瞭然なのに、何でこう、何度も何度も繰り返し分かりやすい嘘をつき続けるのだろうか。その嘘でこの私を騙せるわけがないのに、夫は懲りもせず、毎回「飲んでない」と飲酒したことを否定する。 仮に、たとえ最初は私を騙せたとしても、飲むにつれて酔いが顕著になっていき、いづれはバレるのだから、どうせ飲んでいるなら自分の口から「飲んだ」と告白された方が私の気持ちはまだ平静でいられる。そのことを夫に訴え続けて早や数年、最近になってやっと夫は、「飲ん…

  • 普通の幸せ

    普通であることがどんなに幸せなことなのか、普通の人にはきっと分からないだろう。 普通であるが故にその幸せに気付かず、普通でなく優れているからこそいいのだと、そういう価値観の中にいることが苦しくなってきた。 私にとっての幸せとは、普通で何気ない平和な日常。 それはアルコール依存症に限らず、心や身体の健康を損なった人達、または今まで当たり前のようにあった物質的なものを失った人達なら、きっと誰もがこの気持ちを分かってくれるだろう。 失って初めて気付いた普通の幸せ。 そんな当たり前だった幸せが、徐々に、緩やかに、何処かへ消えてしまった。

  • 娘のこと

    私の娘にとって、何が一番いいのだろうか? 夫と離婚すること? それとも、このまま家族で一緒に暮らすこと? 彼女はアルコール依存症のいる普通でない家庭、異常な環境で育っているという割には、そんな暗い影を見せることもなく、無邪気で明るく、社交的で、いつも楽しそうで沢山の友達に囲まれ、心も見た目もまるっきりアメリカンな女の子である。 これは、夫がアルコール依存症と言えど、私も娘も、夫から身体的な酷い暴力を一度も受けたことがない、または、夫は泥酔しても暴れたりしない、ということが少しは助けになっているのかも知れない。 この際、夫の酷い暴言と意味不明に絡んで来られる精神的苦痛は、そういう身体的な暴力とそ…

  • 素面への苦しみ

    私には時々、思いもよらないイマジネーションが働く。 夫の離脱症状を待ちわびながら、この感覚が、何かに似ていることに気が付いた。 静かに「陣痛」を待つあの感覚だ。 今か今かと待ちわび、緊張し、不安になり、そして突然展開される劇的なドラマ。 今度の離脱症状は、どのくらいの時間がかかるだろうか? どのくらい苦しいだろうか? 出産が離脱症状、産みの苦しみは、シラフへの苦しみ。 産んだ後には平和で穏やかな喜びが、そして、離脱症状が終わった後にも平和で穏やかな喜びが。 神聖なる出産と、堕落した酔っぱらいの末路を一緒にしてしまい、申し訳ございません。 ただ、夫の離脱症状を待ちわびながら、ふとそんな思いが浮か…

  • Relapsed(再飲酒)

    夫の断酒が止まった。 週5日AAに参加し、そしてそのAAの帰り道、ウォッカを買ってしまった。 私はその夜、すぐに微かなその香りに気が付いたのだが、確信が持てなかった私は、それは気のせいだと思うことにした。 でもその晩の夫の寝入る姿は、飲酒時のそれと同じだった。 不自然な恰好で、床で寝転がっている夫。 そしてその次の日の夜も、夫は床で、同じ姿で寝入ってしまった。 それでも私は、夫がアルコールを飲んでいるかも知れないという可能性を考えないようにしていた。・・・というより、考えていなかった。 その日、特にアルコールの匂いに気付いたわけではなかったからだ。 AAにも行ったし、夫の様子におかしいところも…

  • 義理の継母とその元パートナー

    私に強く離婚を勧めてくるのは、義父の再婚相手、義理の継母である。 彼女は、義父とは不倫を経て、25年程交際した後に、5年前に義父と結婚している。 彼女は初婚ではあるが、事実婚だったパートナーとの間に娘をもうけている。 このパートナーは、アルコール依存症だったかどうかは分からないが、相当な酒飲みだったらしい。 ただ、私の夫より症状は軽く、目立った離脱症状はなかったらしいから、ただの酒乱オヤジだったのだろう。 義理の継母はこの元パートナーと、アルコールにまつわる数々の修羅場をくぐり抜けてきたらしい。 今はこの元パートナーも何かの病気で亡くなっているのだが、事実婚だった30年程前、今ほどカップル間の…

  • 離婚について

    夫の病気と、それによってもたらされる私の理不尽な苦労を知る数少ない私の知り合い達から、私は時折こう言われる。 「離婚した方がいいよ!」 「何で離婚しないの?」 はい、アドバイスどうもありがとうございます。 私も、もし私が彼らの立場だったら、今の私を見て、「離婚した方がいい」としか思わないだろう。 それなのに今の私の中で離婚という選択肢がないのは、私も十分、夫のアルコール依存症という病気に巻き込まれているからなのかも知れません。 でも、夫婦というのは、夫婦間にしか分からないものがあり、他人には分からない夫婦間での情、絆が存在しているものです。 どうか、「離婚した方がいい」だなんて言わないでくださ…

  • 勇気づけられるもの

    アルコール依存症は、とても厄介で絶望的にさせられる病気だ。 飲酒時の人格豹変、連続飲酒がもたらす、普通の生活ができなくなる廃人化と、離脱症状の壮絶な光景はこの世の地獄。その凄まじさは、アルコール依存症者とその家族を、精神的にも肉体的にも擦り切らせる。 何で私の夫が、何で私が、こんな理不尽な病と闘わなければならないのだろう? それも一生涯。 逃げ出したくなるような、気の遠くなるような長い時間。 もう何年も、何十年も断酒を継続されているアルコール依存症の方々、そしてそのご家族の方々には、もう本当に頭が下がる思いです。 ある種、悟りを切り開いた方々だと思っています。 そして彼らは私に希望を与えてくれ…

  • 35日の壁

    夫は週5日、AAに行き始めた。人生経験の浅い若者達が多く集まるミーティングより、自分より年上の、人生経験が豊富なメンバーがいるミーティングに好んで参加した。 そこで知り合いもできたようだ。 今の夫に必要なのは、そういう自分と同じ境遇にあり、断酒を続けている仲間の存在だ。 AAに通い始めて2週間が経った頃、夫は自信タップリにこう宣言した。 「もう大丈夫!仕事に復帰するよ!Corporate world(ビジネスの世界)に戻るよ!」 まだ断酒して2週間。 夫のこの自信は、いつも私を不安にさせる。 いちいち真に受けて喜び、結局失望させられるパターンは既に確立している。 だから私も、夫の言うことをいち…

  • 心の変化

    2018年夏、夫がAAに行き始めた。 私と娘が夏休みで10日間程日本に帰国していた間に連続飲酒を始め、離脱症状で18時間も嘔吐し続けた末での決断だったのであろう。 離脱症状から数日過ぎた頃、夫は私にこう言った。 「AAに行くよ。」 ・・・やっと来たか! 「だから前から何度も行きなさいって言ったじゃない!こんなに時間を無駄にして、あなたは本当に頑固なんだから!あなたの脳ミソは委縮してイカれてるんだから、自分の判断を信用しちゃダメだって言ったじゃない!私達のアドバイスを聞きなさいって言ったじゃない!」 そう言いたかったのをぐっと堪え、「分かった」とだけサラッと言った。 もう夫が何を言ってきても動じ…

  • Hope(希望)

    世間ではまだまだアルコール依存症は「アル中」という言葉で知られていると思う 「アル中」・・と聞くと、どんなイメージがあるだろうか? 手を震わせながら一日中飲んでいる。好きで飲んでいる。飲み方をコントロールしようとしない。だらしない人間。最低の人間。 悪いイメージしかありません。アル中というだけで世間の見る目が違うのです。アル中、アルコール依存症は病気です。薬物依存症と同じ、脳の病気なのです。 その病気になるまで、好きで飲んだのだから自業自得。そう言われてしまえばそうかも知れません。でも、そのみんなが普通にしている合法的な飲酒が長期に渡ると、このような病気になり得るということを知って欲しい。 他…

  • 自堕落な日々

    解雇された時、夫は正直ホッとしていた。もうあのストレスから解放され、アルコールを飲む必要もなくなるからだ。 私は彼に、「今まで一生懸命に働いてくれてどうもありがとう。」と戸惑いながらも感謝をした。嬉しい感謝ではない、悲しみを伴った感謝である。まさかこんな形であっけなく解雇されてしまうなんて、平静ではいられなかった。 夫が仕事を辞めたら、もう飲むのは辞められると誰もが思っていた。ストレスがなくなるから、もう飲む必要がなくなるからだ。 当初新しい仕事を見つけることに意欲的だった夫は、この週末ゆっくりして、月曜日にレジュメ(履歴書)を作り、仕事探しをすると言っていた。幸い、会社はその翌月まで夫の籍を…

  • 夫のこと

    夫は有能なITコンサルタントだった。娘が生まれる直前から11年間、家族のために頑張って働いてくれた。難しい性格ではあるのだが、職場での彼への評価は高かった。体面を非常に気にする彼は人と争うことなく、黙々と仕事に打ち込み、みんなからの厚い信頼を得ていた。 夫の飲み方がおかしくなってきたのは、彼の仕事への真面目さゆえに感じてきたストレスからだった。それでも朝は普通に会社に行き、帰宅してから家でアルコールを飲むという、ごく普通の一般的な社会人だった。アルコールを飲まない私は、夫の飲む量が異常なのかそうでないのか、知る由もなかった。アルコールを飲む人っていうのは、そういうものなのだと思っていた。 この…

  • 葛藤

    夫は意志が弱いわけではない。自分がアルコール依存症であることをちゃんと自覚し、本気で辞めたいと思っている。それなのに飲んでしまうのは、これが病気だからである。 アルコールの恐ろしさは、一般にはあまり知られていないと思うが、実は、ヘロイン等の薬物以上に中毒性が高い、最も危険な合法ハードドラッグだと言われている。また、離脱症状も他の薬物中毒以上に、死に至ってしまうほど危険なのである。 夫は常々、「アルコールを違法にしなければならない」と言っている。ここまで一般に浸透しているアルコールを今更違法にしてしまうことには無理があるだろうが、そのくらい、他の違法薬物と同じくらい身体を蝕むものなのである。 連…

  • 優等生妻と不良亭主

    私達夫婦は、性格が真逆である。Opposites attract(正反対同志は惹かれ合う)という言葉があるが、こんなに違う性格の者同士が長い間一緒にいて、大きな喧嘩をしないわけがない。 元々温厚で人との争いを好まない私ではあるが、長年の夫婦生活の中で、私は夫に対してだけは言いたいことを言い、時には般若のような恐ろしい形相で夫に対して怒鳴りつけるようになった。それだけ夫とは気を遣わない関係だといえば聞こえはいいのだが、私は本来こんな人間ではなかった。私の性格は、夫によって大きく変わってしまった。 私はアルコールを全く飲まない。煙草も一切吸ったことがない。日本在住だった20代の頃は、飲み会の雰囲気…

  • 義理の兄と妹

    夫の兄は精神科医だ。でもだからと言って夫の病の助けになったことなど一度もない。むしろ、失望しかない。違う州に住む義兄は年に数回家に来るのだが、でもだからといって積極的にアルコール問題について夫に問いただすわけでもない。アメリカ人が大好きな政治の話やたわいもない話をただ普通にして、何事もなかったかのように去っていくだけ。「アルコール依存症は、弟個人の問題だから自分には関係ないってこと!?」と、私が非常に腹立たしくなる瞬間だ。 一度、会社から切羽詰まって義兄に電話をしたことがある。会社に何度も泥酔した夫からの異常な電話やテキストがあり、連絡が取れなかった義父母の代わりに、義兄に夫を遠ざけて欲しかっ…

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理不尽な病 〜アルコール依存症の夫と暮らして〜
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