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2017/11/17

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  • 15

    つくしは大学の寮に着いた。玄関を入ると管理人のような人がいる。「こんにちは。初めまして。牧野つくしと言います。」「牧野さんね。ちょっと待ってね。」管理人の男性は紙をペラペラと捲り「えっと、牧野つくしさんは301号室だね。鍵を渡すからちょっと待って。」そう言うと一つのカギを持ち管理人室から出てきた。「はい。これがカギ。3階の301号室ね。ここは女子寮だけど3階は医学部の生徒が集まってる。だから同室の人...

  • 14

    つくしは卒業式に臨んだ。そして卒業生代表として答辞を読み上げた。これでつくしの英徳生活は終止符を打つ。色々あった三年間だ。その中で最も濃い時期を過ごしたのが一年半前。司に宣戦布告してから目まぐるしく人生が変わった。もちろんそのおかげで沢山の人達と知り合い、今も交流が続いている。それは自分の人生にとってプラスになる事は間違いない。ただ大学生になる事で、そこにも一線を引くつもりだ。つくしは最後に非常階...

  • 13

    年が明け、つくしは共通テストを受ける。それを自己採点したうえで、国公立大学医学部の二次試験の願書を出した。それは寮が完備されている九州の大学だ。寮費と食事代で月4万円ほど。水道光熱費込みで二人部屋。だが大学から近く交通費がかからない。今住んでいるアパートの家賃と水道光熱費、食費を考えると十分賄えるしお釣りも来る。そのお釣り部分を医学部の施設使用料に回せば奨学金の額を減らせる。特待生になる事を期待し...

  • 12

    つくしは英徳の経済学部、都内の医学部の私学を受験する。すると両方とも合格を勝ち取った。だが特待生になるには、入試試験の上位10人で入学した者のみだ。つまり自分がその特待生になるかどうかは入学手続きをするまでわからない。しかも特待生と言っても授業料の250万円が免除されるだけ、残り施設使用料を合わせた400万円近くはかかる。「凄いな。無事合格できたじゃないか。」「はい。」「英徳は特待生間違いない。こ...

  • 11

    類はあきらからの報告を受け驚いていた。てっきり就職、あるいは専門学校へ行くと思っていた。ところが医学部を受験するとは想定外だ。でも、、、何となく牧野らしいと思ってしまう。いつもいつも自分の前に大きな壁を作りそれに登ろうと必死にもがいていた。実際、それを登り切っていたし、時には俺が引っ張り上げた事もある。でも今度は自分一人。俺に出来る事はここから応援するのみだ。頑張れ!!牧野!!「類君?何かいいこと...

  • 10

    一学期も終わろうとしていた。つくしは個人面談の為担任と向き合っている。「成績は申し分ない。よく頑張っているな。」「ありがとうございます。特待生なので必死です。」「TOEICも786点は流石だ。これなら一流企業にも十分入れる。」「ありがとうございます。」「それでなんだが、、、このまま英徳大学へ進学するのはどうだろう?英徳大学も特待生制度がある。充分特待生になれると思うんだが。」担任は学園長から頼まれてい...

  • 9

    類は母親と共に本屋に来ていた。平日に読む本を選ぶためだ。「電子書籍とかも出始めてるけど、やっぱり紙の本の方が目が疲れなくて好きだわ。」「確かに。」「類君は何系が好き?」「推理小説かな?」「推理小説は一気に読みたくなるのよね。こういう文庫本は文字もこんなに小さな文字で、なかなか読めなくなってきたのよね。認めたくないけど確実に老眼になってきているわ。」「こればかりは仕方ない。いやかもしれないけど老眼鏡...

  • 8

    つくしは高校三年になった。進は終業式後に北海道へ行った。突然家族がいなくなり寂しい気持ちはあるが、逆に言えば自分のペースで勉強が出来る。夜も進に気を遣って明かりの位置を調整する必要はない。その為、のびのびと勉強に打ち込んだ。そしてGWになり、桜子に誘われ久しぶりに総二郎、あきら、滋と食事会をした。「牧野。お前、一回り痩せたんじゃねぇか?」「そうかな?」「うん。やつれてるように見える。ちゃんと食べてる...

  • 7

    プロムから帰宅すると、そこには母親の犬である三沢が待っていた。司は身構える。「お帰りなさいませ。」「なんだ?」「お迎えに参りました。これからNYへ向かいます。」「はあ?」突然の事に司は呆けた声を出す。そして隣の海を見る。海もどういう事?という気持ちだ。「海も一緒か?」「いえ。司様お一人です。」「どういう事だ?」「初めからその約束でございました。日本へは一時帰国でございます。ですが司様が暴漢に刺された...

  • 6

    司と海が出口へ向かうのを見て、二組もダンスが終わると直ぐにフロアの隅へ移動する。あきらと総二郎は、滋と桜子にドリンクを渡す。「ありがとう。」「すみません。」喉を潤した後、、、「あったね。」「ありましたね。」「くっきりとあったな。」「あんな目立つ場所につけるなよな。」四人は海の胸にくっきりと点けられたキスマークをチェックしていた。「という事は昨夜も張り切ったという事だね。」「ですね。」「チェリーだっ...

  • 5

    英徳の卒業式そこにF4の姿はない。類はもちろんだが司、あきら、総二郎もサボった。既に卒業は決まっているし、堅苦しい式は元々参列するつもりはなかった。そして夕方からのプロム。ここには卒業生がドレスアップして参加する。もちろんパートナーは誰でも構わないし、一人で出席してもOKだ。そこに総二郎は滋を、あきらは桜子を同伴して現れた。その姿に生徒達は黄色い声を上げる。卒業式に参列しなかった為、プロムも欠席とばか...

  • 4

    つくしは桜子に連れられ英徳のラウンジに居た。そこであきらの驕りでランチを食べている。「牧野。本当に参加しねぇのか?」「うん。桜子と滋さんを誘ってよ。元々あたしはそんな場所に行きたくないし。」「先輩。お二人のどちらかと参加して道明寺さんの鼻を明かすという方法もありますよ?」「ううん。そんな事したくないし会えば必ず嫌味を言われるでしょ?そうなったら折角のプロムが台無しになるじゃない?だからあたしの分ま...

  • 3

    つくしは相変わらずあまり寝られなかった。そして勉強をつづけた結果、思いのほか好成績を残すことが出来た。それは自分でも信じられない成績だ。その日、担任に呼ばれたのだが、それは特待生に推薦するという話だった。思いがけない話につくしは驚くが嬉しくて仕方ない。英徳には特待生制度がある。つまり一年間の授業料が免除される。ほとんどの学生は特待生に推薦された時点で辞退する。お金持ちの子息ばかりでお金に困っていな...

  • 2

    「類君。ありがとう。」「いや。これくらいどうって事ない。」類は花瓶の水を入れ替え病室に置いたところだ。母親が病気で手術をすると聞いたのはNYから帰国後すぐの事。急いで帰って来いという雰囲気ではなかったが、日本では大河原主導の元、司と牧野の恋を応援するプロジェクトが立ち上がっていた。早々に参加するつもりはないと告げていたが、あのまま日本にいたら二人の状況を逐一報告される。それが嫌でとりあえずフランスへ...

  • 1

    「姉ちゃん。もう勉強は良いから寝よう?」「ごめん。眩しかった?」つくしはライトの角度を変える。「大丈夫。でもあまり寝てないよね?」「あぁ。ちょっと眠れなくて。勉強していたらそのうち眠くなるからもう少ししたら寝るね。」つくしは目の下に隈が出来ている。ずっと眠れない日々が続いている。なぜなら、司がつくしの記憶だけを忘れたから。それだけではなく司は海という女性を傍に置き、つくしに向けていた笑顔を彼女に向...

  • お知らせ

    おはようございます。新連載の『違う、あんた誰?』を一旦引き下げます。もう一度再考してみますが、そのままお蔵入りするかもしれません。今の所、他にストックが三作ありますのでそちらをアップさせていただきます。それで終了かな?と思っています。と言うのも書いていて他作品に似ている部分や同じ展開だよなぁ、、、と思う事が多々あり、しかも最近は思っている事がなかなか文字にならないんです。既に類つくを書き始めて10...

  • 3

    自宅に入ったつくしは扉に体を預ける。これで類との関係は終止符を打つ。もちろん友人関係はこれから先もずっと続くが、休みが合えば二人で行動したりは出来ない。ほんの散歩程度の事でもボディガードのような物がつくと聞いている。それも仕方ない事。それだけの地位のある人と結婚するんだから。でも、かなり不安がある事に間違いない。その不安を口にできるのは類の前だけだった。『結婚は誰でもそんなもんじゃないかな? それ...

  • 2

    送別会もお開きの時間となり、類がつくしを送る事になった。「じゃあ、元気でな。」「まあ一週間後のお前たちの結婚式には出席するんだけどよ。」「その時に、先輩の一世一代の晴れ姿を目に焼き付けますので。」「つくし。 元気でね。 式の後に写真だけでも送ってね。」優紀だけは仕事があり出席できない。だが他のメンバーは出席することになっており、一週間後には再会する。それでも著名人が集まる式ではあまり会話も出来ない...

  • 1

    類、総二郎、あきら、桜子、優紀はつくしの送別会を行っていた。今日はつくしの大学卒業式があったばかり。だが明日にはNYへ行くことになっている。そして一週間後には結婚式が行われる予定だ。そんな中、既に仕事を始めている類、総二郎、あきらも駆けつけた。四年の約束はつくしが大学を卒業するのを待ってとなり、一年延び五年になっている。遠距離もやっと実を結ぶ事となり、皆安堵していた。「しかし、、、いよいよかぁ。」「...

  • 51

    類とつくしは片づけをしながら話をする。「牧野。今の仕事なんだけど、年が明けたら止められる?」「やっぱりアルバイトというのはヤバイ?」「いやそう言うんじゃないけど、どうせなら花沢物産で働いて欲しいかな?と思ってさ。」「大卒でもないしスキルも何もないのに花沢物産で勤まるとは思えない。もちろん類の彼女である事は嬉しいしこれからも一緒に居たいとは思ってる。」(つ:類と一緒に居たいと思うけど不安が大きい。あ...

  • 50

    「将来花沢物産を継いで社長になる予定。」「社長、、、嘘でしょ~~~!!!」(つ:社長?花沢物産って大会社だよ?そこの社長になる人?)つくしは驚きすぎて口をパクパクする。声が出ない為だ。「ちなみに俺は道明寺司だ。道明寺ホールディングスの後継者。」「俺は美作あきら。美作商事の後継者。よろしく!」次々紹介され、つくしは目を丸くするばかりだ。(つ:嘘でしょ?なんで御曹司ばかりがここに居るの?おかしいでしょ...

  • 49

    類の部屋に、司、あきら、総二郎、類が揃い、その前でつくしは呆けている。(つ:何?この人たち。イケメン揃いじゃない?しかもみんな高身長。これだけ見ればホストクラブじゃない?あっ、本物のホストが一人いるけど。それにあの人はメープルで見た人じゃない?つまりあの人も親友なんでしょ?一体何がどうなっているの?)あれから司があきらと総二郎に電話をかけ集合させた。司としては自分を暴力団系と思われた事は腹立たしい...

  • 48

    それからつくしがひたすら誤解していた事を謝った。もちろん類としては笑い転げる事に。ただきちんと『女性が苦手だったのは事実だけどゲイではない』と告げた。そして食事も終わり、車でマンションへ向かった。その間も楽しい時間が過ぎる。車窓から見るイルミネーションは綺麗だし、ツリーが見えたりもする。「あっ!あのツリーはごちゃごちゃ系ですね。」「ほんとだ。今度改めて他のツリーを見に行こうか?」「そうですね。是非...

  • 47

    喉を潤し料理を口に入れながら類は考える。(類:牧野が総二郎を好きじゃないことは分かった。じゃあなんで前回外食した時、総二郎と女性を見てショックを受けていたんだ? あれを見て牧野は総二郎の事が好きだと確信したんだけど?)「あのさ。前回、総二郎達と遭遇した時に、牧野は辛そうな表情をしているように見えたんだけど。」「それは、、、」(つ:デリケートな部分だけど話していいのかな?でもここは個室だし他人に聞か...

  • 46

    創作料理店の個室に案内されると、つくしはメニューに目を通す。比較的安価で美味しそうな料理が並んでいる。「色々な物を頼んでシェアしようか?」「はい。」二人で料理を決めるとタッチパネルで注文する。そしてビールとウーロン茶が到着したところで、類が尋ねた。「今日、総二郎と出かけたんだろ?」「はい。とても美味しい信玄餅とお団子のお店に連れて行ってもらいました。」(類:総二郎らしい店のチョイスだな。)(つ:店...

  • 45

    ポツンと店に残された総二郎。とりあえず類に報告を、、とメールを送った。《牧野さんと会って話をしたんだが、どうも噛み合わねぇ。しかも俺の事は好きでもなんでもねぇと言われたんだが? それと俺は探偵じゃねぇと話したら何故かホストをやっていると思われた。 否定する前にサッと帰って行ったんだが少なくとも俺はホストじゃねぇと否定しといてくれよな。》(総:何をどうとらえたら俺がホストに見えるんだ?まあ女遊びが激...

  • 類誕🎶

    2024年 類くんお誕生日チャット会のお知らせ本年の類誕イベントは、都合により開催することが難しくなりました。楽しみにしていて下さった皆様、大変申し訳ございません。その代わりと致しまして、team Rui主催のお誕生日チャット会を開催したいと思います。開催期間:3月29日 21時~ 3月30日 23時59分開催場所:LINE オープンチャット(開催時間まではパスワードがかかっております)メンバーと一緒に、ワイ...

  • 44

    総二郎が口を開いた時、その総二郎に声をかける人がいた。「あらっ?若じゃないですか?」「「えっ?」」(総:げっ!なんでここに師範代夫人がいるんだよ。かったりぃけど挨拶だけはしておかねぇとな。)(つ:今、、若って言った?)「ご無沙汰しています。」「えぇ、ご無沙汰です。それにしても若がこんな可愛らしい方とご一緒だなんて、、もしかして。」夫人はチラリとつくしを見る。(総:誤解すんじゃねぇ。全く関係ねぇから...

  • 43

    甘味処に入ると奥の席へと案内される。カウンターや小さなテーブルなどが並ぶ中、一番大きな席だ。店内は既に満席で、あらかじめ予約を入れていたと分かる。(つ:やる事が凄くスマート。話術も上手い。もしかしてホストって事は無いよね?)「ここの信玄餅は有名なんだ。それとお団子もな。それで良いか?」「はい。」総二郎はサッと注文をする。するとすぐに運ばれてきた。お団子は目の前で焼くようで小さな七輪のような物が置か...

  • 42

    類が帰宅すると、いつものようにつくしの明るい声が聞こえる。「ただいま。」「お帰りなさい。」類はリビングへ入るとジャンバーを脱ぐ。(つ:出かけて行った時の服装と同じ。どこかで着替えているんだよね?)「寒かったですよね?今日はチーズフォンヂュにしてみました。」「へぇ。」類はテーブルを見る。そこにはホットプレートがある。「ホットプレートで?」「はい。ホットプレートの真ん中に耐熱容器に入ったチーズを置くん...

  • 41

    つくしは仕事へ行こうと身支度をしていると店長から電話があった。「はい、牧野です。」『牧野さん。悪いんだけど今日は臨時休業することになったから休みで。』「えっ?」『コンロの故障で修理に時間がかかるらしい。だから今日は店を開けられないから。』「分かりました。」『今日中に修理をしてもらい明日はオープンできるようにするから。突然ですまない。』「いえ。まだ自宅なので大丈夫です。では明日伺います。」『本当にす...

  • 40

    ※類君の発言を分かりやすくするため少し太字にしています。それぞれの心の葛藤をお楽しみくださいませ。類は寝る前に総二郎へ電話をかけた。もちろんアレの最中なら電話に出ないと思うが、何度でもかけるつもりでいた。すると数コールで総二郎が電話に出た。『はい。』「総二郎。お前、案外早いんだな。」(類:もう終わった?あれからホテルへ行ってシャワーを浴びて、、と考えると1時間も経っていないんじゃない?)つくしはなか...

  • 39

    レストランを出ると類はサッとつくしの手を握る。途端つくしは動揺する。「えっ?」「今だけで良いから握らせて?」(つ:類さんがあたしの手を握った?それだけ総二郎さんの行動にショックを受け、誰でも良いから縋りたいんだ。あたしで良ければ何時でも幾らでも遠慮なくどうぞ。)(類:かなりショックを受けているだろうな。総二郎の代りになるとは思えないけど、震えを止めるぐらいはできないかな?俺なら何時でも幾らでも繋い...

  • 38

    総二郎の声に類とつくしはサッと入り口を見る。(類:えっ!!)(つ:何でここに総二郎さんが?)つくしはサッと視線を類に戻す。そこには驚きの表情で総二郎を見つめている類がいる。(つ:かなりショックを受けてる。それに類さんがこんなに驚いているという事は相手の女性は知らない人という事。つまり会社のスタッフではない。)つくしはサッと顔を下げる。(つ:以前あたしが見た女性も浮気相手かもしれない。類さん、、、大...

  • 37

    「じゃあ今夜19時に。」「はい。」「遅くなるようならメール入れるから。」「はい。」こうして類は仕事へ向かった。つくしは急いで家事を熟し仕事へ向かう。オフホワイトのハーフコートの下は明るいグレーのセーターに紺のズボンだ。昨夜、何度も服を体に合わせ悩みに悩んで決めた物だ。元々服はかなり少ないがそれ以前にスカートが無い。動きやすい服=ズボンというイメージだし、そのズボンも冬物は一着しかない。後はジーパン...

  • 36

    「ただいま」「お帰りなさい。すぐ夕食にしますね。」「ありがとう。」類はジャケットを脱ぐと手を洗いつくしの手伝いをする。そして二人向かい合って食卓に着いた。「今日は白菜が安かったのでお鍋にしました。色んな食材が食べられるしお酒にも合うと思うので。」「だから日本酒なんだ。」机には日本酒が置かれている。(類:わざわざ日本酒を買ってくれたんだ。だから昨日日本酒は飲めるか確認されたのか。確かにこの料理には日...

  • 35

    更に一か月が経った。類は総二郎に何も言えず悩んでいた。(類:総二郎に牧野の恋心を告げるべきか?だが総二郎が牧野の事を好きとは到底思えない。現に面白がって同棲生活を聞くことはあっても牧野の事を聞くことはない。しかも今も女性と遊び歩いている。気になるなら女性関係には気を付けるはずだ。それに牧野の気持ちを俺が話すのはおかしい。頼まれたわけでもないんだから。何より俺自身が二人の橋渡しをする事を躊躇っている...

  • 34

    「類さんの探偵社には女性の探偵さんもいますか?」(類:初めて俺の仕事について聞いてきた。そろそろ怪しいと思い始めたかな? ここはどう返事する? 本当の職業を話す良いキッカケなんじゃない?)(つ:あっ、類さんが訝しがってる。 これってあたしが類さんに興味があるように思われてるんじゃ? もちろん興味はあるけどそれは契約違反だよね? って事は総二郎さんの事を確認するのは大丈夫かな? でももし女性の探偵さ...

  • 33

    つくしが仕事を始めて一か月が経った。仕事にもだいぶ慣れ疲れもそれほどなくなってきた。そして昨日、初給料がもらえた。もちろん満額ではないが自分が自由に使えるお金だ。しかも今日は仕事が休みの為、早速買い物へ行こうと思っている。「類さん。今日は買い物へ行ってきますね。ジャンバーかコートを見てきます。」「ん。もっと早く買えばいいのに。朝晩は寒いだろ?」(類:頑なに買おうとしなかったんだよな。電車の中は温か...

  • 32

    「類さん。明日から仕事へ行きますね。」「えっ?」類は箸で摘まんでいたジャガイモをポロリと落とす。それぐらい突然だった。(類:仕事?確かに看病が無くなったんだから全然構わないんだけどあまりにも突然すぎる。それにもう少しゆっくりしていいんじゃない?まだ母親が亡くなって二週間しか経っていないだろ?)「見舞いに行かなくなったので時間があるんです。それにここに住まわせてもらっているのに何もお返し出来ません。...

  • 31

    マンションに戻った二人。類はすぐに後飾り祭壇を組み立てる。「ここで良いよな?」「すみません。」つくしはその中央に骨壺を置き、ロウソクと線香を立てる。そして二人は手を合わす。「いろいろありがとうございました。あのっ、葬儀代とか病院の清算とかいくらでしたか?」「あぁ。それは俺が出すから良いよ。」(つ:えっ! かなりの金額になったはず。 お坊さんの手配もしてもらったし棺に入れるお花も大量にあった。)「そ...

  • 30

    同棲生活は順調に進む。類は車の中でスーツに着替え、帰宅する時も車の中で私服に着替える。つくしは家事を熟しながら毎日病院へ見舞いに行く。そして二か月ほど経った頃、突然その日が訪れた。夜中につくしのスマホが鳴り始めた。つくしは腕を伸ばしサッとスマホを取り相手を見る。そこには千恵子が入院している病院が表示されている。「はい。牧野です。」『千恵子さんの娘さんの携帯でしょうか?』「はい。」『実は千恵子さんが...

  • 29

    日曜日類が目を覚ますと既につくしは病院へ行っていた。そして机の上にはメモが置かれていた。《おはようございます。病院へ行ってきます。17時ごろ帰宅予定です。》綺麗に片づけられたキッチン。ベランダには洗濯物が見える。(類:洗濯も終わってる。いつの間に?牧野もいないし今のうちに仕事の続きをやっておこうか。)類はコーヒーを煎れるとパソコンをリビングへ持ってきて仕事を始める。そして昼を過ぎた頃、ふと手を止めベ...

  • 28

    病院からの帰りに二人は少し遅いランチを取るためにうどん店へ入った。セルフサービスのうどん店の為、出来上がりが早い。その割にもちもちしていて美味しい。しかも安い。「安いけど美味しい。」「類さんはこういう店は初めてですか?」「セルフは初めて。気にはなっていたんだけどね。」(類:田村と出かけた時に気にはなっていたんだけど、スルーしてしまっていたんだよな。)「注文の仕方とか分からなくてさ。」「分かります!...

  • 27

    週末、類はマンションへ向かった。「ごめん。母親が変な事を言い出して。」「とんでもないです。あたしの方こそ上手く伝えられたかどうか不安で。でもあたしと類さんの関係を疑ってはいないという事ですよね?」「そうなる。」(つ:あっ、はしゃいだ言い方になったかな?類さんとしては総二郎さんに誤解を与える事になるから同棲は断固として嫌だったはずなのに。)(類:確かに俺達が恋人同士だと疑ってはいないけど、牧野が俺と...

  • 26

    麗はニコッと笑った後、再び質問する。「探偵業という事に関してはどう思われてる?」「不確かな収入だと思いますし、体が資本だと思います。私も今は類さんに甘えていますが、母親の事が終わりましたら働きます。決して類さんだけに負担を負わせません。もちろん家事は好きで苦ではありません。贅沢な料理は作れませんが仕事に邁進してもらえるよう頑張ります。突然の事でお母様にはご心配をおかけしていますが、どうぞ温かく見守...

  • 25

    「あらっ?」(つ:しまった~~~!写真を立てかけたままだった!結婚していると思われたよね?結婚したことにする?いや、それは逆効果。勝手な行動は親子の信頼関係を失うはず。じゃあどうする?どうする?どうする~~?)(麗:そうそう。この写真の事も確認したかったのよ。 ちょうどよかったわ。)「結婚? したのかしら?」(つ:怒ってる!確実に怒ってるよね。かなり低い声になってる!そりゃぁ母親に報告することなく...

  • 24

    麗につくしをマンションに住まわせていると話をしてから既に3週間が経った。その間も類は週末にはマンションで過ごしていた。「まだ母さんは来ていない?」「うん。まだ来られていない。」(類:忙しいと言っていたけど本当に忙しかったんだ。でなければすぐにでも顔を見に来るはず。それだけ関心が高いと思ったんだけど違ったか?)「もしかしたらあたしが病院に行っている時に来られたのかも?」「かもしれないな。まっ、考えて...

  • 23

    類が自宅に帰ると、待ってましたとばかり麗が話しかけた。「デートしてきたんでしょ?」「ん。まあ。」(類:関心が高いな。まあ相手が気になって仕方ないんだろうけど。)「どこでデートしたの?映画?」(麗:まさか一日中マンションに籠っていた訳じゃないわよね?)「いや?買い物、、、」(麗:何かをプレゼントしたのかしら?それって物で彼女の心を繋ぎとめている事にならない?)(類:夕食の材料を買っただけだけどね。で...

  • 22

    日曜日。つくしは類を起こさないようソッと部屋を出る。するとマンションの入り口で総二郎とバッタリ会った。「あっ、牧野さん。今から病院?」「はい。」総二郎は和装だ。その姿につくしは思わず魅入ってしまう。「総二郎さん。その格好は?」(総:あっ、やべぇ。探偵だったな。)「潜入の為にちょっとな。」「そうなんですか。」(総:俺もまだまだだな。この姿を見ても茶道に結びつかないし西門流が認知されてねぇ証拠だ。)(...

  • 21

    土曜日になり類はマンションへ向かった。《明日は9時には病院へ向かいます。買い物をして16時頃に帰宅予定です。》昨夜のメール通り、マンション内につくしの姿はない。室内は綺麗に掃除されベランダには洗濯物が干されている。(類:几帳面な女性なんだろうな。それに俺の睡眠を邪魔しないため早々に見舞いに行ったんだろう。帰宅時間を書いたのは、音を立てるかもしれないからだろう。探偵という偽りの職業を言ったせいで寝不足...

  • 20

    水曜日の夜。あきらから電話があった。『類。今大丈夫か?』「ん。家だから。」『じゃあ大丈夫だな。山尾拓海の件なんだが、名前も偽名だ。本名は萩原信二。33歳。現在の仕事はコンビニアルバイト。既に別の女性と付き合っている。その全てがマッチングアプリだ。付き合っている間に女性に貢がせて結婚話が出始める頃に一方的に別れてるみてぇだ。電話も女性が変わる度に替えているみてぇで、別れると同時に音信不通になる。もち...

  • 19

    つくしは起きると直ぐに洗濯を始める。そして朝食を済ませると掃除をし洗濯物を外に干す。昨夜のうちにほとんどの片づけは終わっている。結婚式の写真もテレビの横に置いてみた。(つ:類さんが来る週末には隠すけど、それ以外は出しておいても良いよね? 綺麗に撮れているし契約結婚をしていると自分を戒めるために使いたいんだよね。 自堕落な生活をしてはダメ! 類さんの好意で住まわせてもらっているんだから、手を抜くこと...

  • 18

    佳世が類の部屋にコーヒーを持ってきた。「佳代。暫くマンションの掃除洗濯は必要ない。」「と言いますと、他の方を雇われたという事でしょうか?」「まあそう言う事。また必要になったら頼むから。」「畏まりました。」「それと母親には内緒にしてほしい。知られるとうるさいから。」「畏まりました。」佳世は一礼して下がっていく。類はこれで暫く安泰だと思いながらコーヒーを口にした。同じころ自室に戻った麗はあれこれ考える...

  • 17

    ベッドサイドの引き出しに避妊具を入れた総二郎はニヤリとしながら類に告げる。「まあ万が一の時の為だからよ。ぜってぇ捨てるなよ。その時になって慌てふためくのはカッコ悪りぃぜ。」類は不貞腐れながら部屋から出る。それに続くように総二郎も出た。「それにしてもこの部屋で生活するにはこんなに足りないものがあったんだな。」「そうみたい。物干し竿も炊飯器も無かったしね。」「確かにそうだな。単にお前が寝るためだけの部...

  • 16

    類は初めてファーストフードのハンバーガを口にする。決して美味しいとは思わないが値段を考えるとこんな物だろうという感じだ。「今日も病院に行く?」「ちょっと顔を見に行ってきます。」「ここの片づけはどうする?」「ゆっくりやります。仕事もありませんし。」類はリビングに置かれた大量の品物を見る。(類:牧野が使う物ばかりだから牧野自身が片付けた方が後々分かりやすいと思う。)「空いているスペースは自由に使って構...

  • 15

    ホームセンターに足を踏み入れた類は驚く。広々とした店内の床はコンクリートむき出しだ。そこに大きなカートを押しながら人々が行き交っている。つくしも大きなカートを手に取るとそこに買い物かごを二つ置いた。「じゃあ、先に調理器具コーナーへ行きましょう。」「あっ、俺が押すよ。牧野は必需品をここに入れて?」「はい。」こうしてキッチン用品コーナーから回り始めた。メモを手に必要な品の場所へ来ると数ある中から安価な...

  • 14

    つくしがドライヤーを終えリビングへ戻ってきた。「牧野。車の手配をしたから明日は10時に出ようと思う。」「ありがとうございます。」(つ:本当に探偵社の車を借りたのかな?それともタクシーかな?)「それで何を買うかリストは出来た?」「とりあえずリストアップは終えました。」つくしはメモを類の前に置く。そこには沢山の品が書かれている。「数店舗回る必要があるな。まずは電気店からか?」「もしメーカーに拘らないのな...

  • 13

    類が先にお風呂に入る。ゆったりとしたバスタブは類が足を伸ばせる大きさだ。このマンションは花沢所有の物。最上階のこの部屋は類が室内を改装した。ぶち抜き寝室を広くすることも考えたが、解約後他者に貸すことを考え二部屋のままにした。それはすぐに功を奏した。類のマンションに親友達が泊りがけで遊びに来た時にもう一部屋を使うことが出来るから。風呂から出てシャンプーをする。(類:そう言えばこのシャンプーは男性用か...

  • 12

    約一時間ほど病室で過ごした後、二人は帰る事にする。「じゃあまた明日来るね。」「そんなに毎日来てもする事ないわよ?」「その時はその時。単にあたしがママと一緒に居たいだけだから。じゃあね。」つくしは千恵子に手を振る。類はぺこりと頭を下げ病室を出た。「ママと二人っきりの時、何か聞かれましたか?失礼な事は言ってなかったですか?」「失礼な事じゃないけどこの結婚に疑問を持っていたのは事実。だから順番は違うけど...

  • 11

    病院に到着すると土曜日の為入り口が閉まっている。つくしは類を案内しながら見舞客用出入り口へ向かい、そして母親の病室へ向かう。するとトイレから車いすに乗った女性が出てきた。「あっ、ママ!」その女性につくしがママと声をかける。類はサッと表情を引き締める。「つくし?」「式も終わったから、類さんと一緒に来たの。類さんもママに挨拶したいからって。」千恵子はつくしの後ろにいる類を見る。「初めまして。」「病室に...

  • 10

    総二郎が戻ってきた。手には額に入った大小の写真がある。「ほいっ。綺麗に撮れてるぜ。」二人はその写真を見る。とても偽装とは思えない雰囲気で撮れている。(類:凄いな。写真だけ見るとほんとに式を挙げたカップルみたいだ。)(つ:うわっ。類さんカッコイイ。この契約が終わったらこの写真貰おう。)「どうして二つ?しかも額に入っているけど?」「一つは牧野さんのお母さんの病室に飾れば良いかなと思ってさ。もう一つはこ...

  • 9

    コーヒーを一口飲んだ後、つくしは口を開いた。「今日は本当にありがとうございました。あたしの無茶なお願いを聞いてくださって感謝しています。」「いや、俺にとってもラッキーだったから。ホント母親には困っていたんだ。」(類:これで嘘ではないことになるし一か月後見合いをしなくて済む。)(つ:お母さんの気持ちもわかるんだけど、何時かは理解してくれると思う。だって総二郎さんって素敵な男性じゃない?男女問わず目に...

  • 8

    食事が終わり、西門の車で類のマンションへ向かうのだが運転手付きの車につくしは驚く。(つ:どういう事?探偵さんって運転手付きなの?)(総:怪しまれてるよな。探偵が運転手付きの車を持っている事が信じられないのも無理はないか。)「彼はプロのドライバー。ほらっ、対象者がタクシーに乗った場合、巻かれないように運転する必要があるだろ?その時、こういう格好をしていればバレないからさ。」「なるほど。という事はこの...

  • 7

    「じゃあ俺のマンションで過ごすとして、、、条件がある。」「なんでしょうか?」「牧野さん以外の人を連れ込まない事。それは男性も女性も同じ。」「はい。分かりました。」(つ:元々二人の愛の巣なんだから第三者に踏み込んでもらいたくないよね。)「俺の部屋には入らない事。」「分かりました。」(つ:何か特殊な道具とかあるのかな?単に黒髪さんとのテリトリーだから見られたくないのかな?そりゃぁあたしだって枕が二つ並...

  • 6

    類とつくしはチャペルで写真を撮っている。「二人共こっちを見て。」あれから類は急いで白のタキシードに着替えた。そしてチャペル内で総二郎に写真を撮ってもらっている。類の申し出につくしは戸惑った物の、チャペル使用時間は限られているし写真さえ撮れば母親に結婚したと思わせることが出来ると強引に押し切った。詳しくはその後でいろいろ話をしようと、とりあえず写真を撮る事にした。「これぐらいで良いんじゃねぇか?」二...

  • 5

    控室に入ると、机を挟みつくしの前に総二郎と類が並んで座る。そこにスタッフがお茶を持ってきた。「新郎が来たらすぐここに連れてきてくれる?それまでちょっと彼女と話をしているから。」「畏まりました。」スタッフは一礼して下がる。それをポカンと見るつくし。「あのっ、あなた方は食事をしに来られたんですよね?」「そうだけど?」「でもスタッフの方がかなり低姿勢でお二方の指示に従っているのはどうしてですか?」総二郎...

  • 4

    土曜日約束通り10時に総二郎は類のマンションのインターホンを押した。『はい。』「用意できたか?行くぞ。」『分かった。直ぐに降りる。』オートロックタイプの為、総二郎は一階で類が降りてくるのを待つ。暫くしてエレベーターから類が降りてきたのだが、大きなあくびをしている事から明らかに寝起きと分かる。「お待たせ。」「お前、さっき起きたところだろ?」「まあね。10分ぐらい前に起きたところ。」「きちんと起きれた...

  • 3

    類は自室へ戻ると急いで総二郎に連絡を入れた。『類か?なんだ?』「あのさ。面倒な事になってさ。あきらの婚約を知り、母親が俺に女性を紹介したいと言い始めたんだ。」『そうなるよなぁ。でも突然婚約とか結婚という訳じゃねぇんだろ?』「その点は大丈夫なんだけど、ただそれすらも鬱陶しくて咄嗟に嘘をついたんだ。SNSでやり取りしている女性がいるから無理ってね。」『はあ?』「そうしたら名前ぐらい教えろとか、かなり食い...

  • 2

    水曜日にはあきらの婚約が報道された。何も知らなかった田村は驚きと同時に急いで類の執務室へ入る。「専務。美作専務が婚約されたそうですがご存知でしたか?」「あぁ。直接本人から聞いた。」「さようでございますか。お付き合いされている方がいらっしゃるとは知らなかったもので驚いたのですが。」「政略結婚だからね。日曜日に突然婚約しろと言われたらしい。あきら自身も驚いてた。」「突然ですか。それはまた、、。」「そう...

  • 1

    月曜日類は急遽あきらに呼び出され20時に古民家風レストランへ向かった。「よぉ!悪いなぁ。」「いや、ただ連絡は早めにして欲しい。」こうして急に呼び出されることもここ数年かなり減っていた。それだけ仕事が忙しく重責を担い、簡単に都合が付けられなくなったのが理由だ。今日もたまたま明日に回せる仕事だったし、どうしても話しておきたいことがあると言われた為なんとか時間を作った。それにたまには気心が知れた親友達と...

  • 28

    司はあきらと総二郎の待つフロアの隅に向かって歩きながら、つくしとの初対面の時の事を必至に思い出す。初対面は俺が幼稚舎へ通っている時だった。突然両親に呼ばれて行った先に、外国人の家族とブラウンが居た。そして紹介されたが、あの時はもうすぐこいつらが遊びに来ることになっていたから、さっさと帰れよ!と思っていて機嫌が悪く、、。ここまで思い出したところでつくしの言葉を思い出す。《あんたのすぐ傍にいる人だった...

  • 27

    英徳の卒業式。司、あきら、総二郎は類の姿を探すがどこにもいない。「あいつまさかさぼりか?」「だろうな。」「まっ、プロムにしか興味が無いんだろうよ。」あきらと総二郎は呆れた口調で話す。「仕方ねぇ。 俺達もプロムに参加するとしよう。」「だな。 二人がどんな姿で登場するか見てぇしな。 司も必ず来いよ。」「俺もか?」「当たり前だ。 ブラウンさんがどんな姿で登場するか見てぇだろ?」「お前も見たいだろ? 許嫁...

  • 26

    ランチルームの一件から、類とつくしの仲の良い姿が学園内で何度も見られる。必ず手を繋ぎ笑いながら何かを話している姿だ。もちろんつくしに意地悪する人は誰もいない。類がつくしの父親の職業を告げた事もあるが、学び舎は沢山の物を学び吸収し交友関係を広げる場と言う言葉が広まったから。そしてバレンタイン当日。つくしは類に小箱を渡す。「日本では女性からチョコを贈るんだってね。 真木子ちゃんから聞いてびっくりした。...

  • 25

    類が注文する姿はレアだ。ホール内は何を注文するか聞き耳を立てている。「あたしはA定食にしよう。 真木子ちゃんもA定食で良い?」「じゃあ俺も同じで。」こうして三人はA定食を頼む。もちろんその後からは皆がA定食を頼むために長い列ができる。三人はそれぞれトレーを手に取り席に座ると、類は早速クラスでの様子を真木子に問う。真木子は言葉を選びながらも些細な虐め、妬み、僻みなどを話す。「類。 虐められていると言って...

  • 24

    つくしは視線を類から司へ移動すると大きな声で告げる。「道明寺! 過去三回しか会った事なかったけど、そのどれもあたしには全く優しく無かったよね。」突然つくしが話しだし、しかもその言葉は敬語でも無く友達に対するような物。こういう言葉遣いをされるのは親友以外初めてだ。しかも先ほど類と話すときは英語なのに対し、自分には日本語だ。つまりホールに居る全員に聞かせたいという気持ちだと分かる。それは先ほど自分が許...

  • 23

    「おい! お前だよ! つくし・ブラウン! いや、牧野つくし!」司はいつまでもこちらを向かないつくしにイライラが増している。周囲が全く見えていないし、見えていたところで関係ないという感じだ。つくしはこの場で何を言われるのか分からないがこのままでは不味いとゆっくり顔を向ける。既にフルネームを言われている。この後司から何を言われても、多くの生徒から謂われない言葉が投げかけられると分かる。だがここまで来て...

  • 22

    翌日、つかさは意気揚々と学校に向かった。そしてキョロキョロとつくしの姿を探す。もちろんすぐに見つけだしその場で解消を告げるつもりだ。だがこれだけ似たような女性がいると、誰がつくしか分からない。やべぇなぁ。全く分からねぇ。あきらと総二郎なら見つけ出してくれるだろうから昼休みまで待つか。こうして司はサッサと教室へ向かった。その数分後に総二郎とあきらがやってきた。そして周囲を見回し小声で告げる。「すっげ...

  • 21

    『実はさ、一昨日の日曜日に俺の家に兄と一緒にプレゼントを持ってきやがった。 考えられねぇだろ? 兄と一緒だぜ? 一人で行動できねぇのかよ!』「じゃあ受け取ったんだね?」別に兄と一緒でも良いと思うけど?単に一緒に買い物をしていたかもしれないし、そのついでに寄っただけかもしれないしさ。『ちょうど総二郎とあきらと出かけていたから使用人が受け取りやがった。 俺ならその場で突き返すけどな。 しかも中身はボー...

  • 20

    リアムの表情は真剣だ。先ほどまでの優しい口調ではなく怒りを滲ませた口調でつくしに告げる。『足を見せろ。』『お兄ちゃん。 それセクハラだよ?』『良いから見せろ。』つくしは全て知っていると判断する。それだけ真剣な表情だし心配しているのが分かる。仕方なくつくしは蹴られた方の太ももを見せる。『痛くないか?』『痛いけどシップを貼ったから。』リアムは鞄からシップを取り出すとつくしに渡す。『暫く必要だろ? それ...

  • 19

    数分後、見知らぬ電話番号から着信があり、すぐに通話ボタンを押す。もちろん英語が聞こえてきた。『初めまして。 ルーカス・ブラウンです。 つくしの父親です。 つくしが事件に巻き込まれたとお聞きしたのですが。』『初めまして。 花沢類と申します。 先ほど父親に連絡して、あなたに連絡を取ってもらいました。 後で警察からも連絡があると思いますが私の方から先に経緯を説明しておこうと思い電話致しました。』『花沢物...

  • 18

    あきらと総二郎は道明寺邸で司に報告していた。「ブラウンさんは学校では牧野つくしとして通っている。 その方が溶け込みやすいからだろうなぁ。 しかも父親が社長では無い事に一部の女生徒が蔑んでいるみてぇだ。 確かに社長じゃねぇがその辺の社長よりもかなり格上なんだけど、それをひけらかさねぇ。 目立つことを嫌う性格のようだな。」「勉強はかなり優秀。 海外では飛び級しているようだ。 もちろん自分から自慢したわ...

  • 17

    あれは幼稚舎で司、あきら、総二郎と言う友達が出来た頃だった。何度か司の家に遊びに行っていたがその時もそうだった。見事なバラが咲き誇る中、門を入ったところでバラの垣根に小さな黒い物体を見つけた。猫だと思った。そう思うと、運転手に声をかけた。「止まって。 ここで降りる。」そして車から飛び出すと猫と思われる黒い物体に近づいた。だがすぐに猫では無い事に気づいた。白い服を着ている小さな子供だ。小さく丸まるよ...

  • 16

    『そのままの方が似合ってる。 何でみつあみを?』『さっきも言ったけど、許嫁が言ったから。 目立つなってね。 つまり注目されるなという事でしょ? 日本人はやまとなでしこと言う大人しくて男性の一歩後ろを歩くような女性がいて、きっとそう言う女性が理想なんだと思った訳。 それでネットでやまとなでしこらしい学生の髪型を調べたらカチッとしたみつあみ姿だったって訳。』『へぇ。』やまとなでしこが司の理想?全然違う...

  • 15

    『じゃああたし達も帰りましょうか? あっ、カヌレ!! 類もカヌレを買うのかな?』類はプッと吹き出す。こんな事がありながら当初の目的のカヌレを思い出す当たり、天然も入っていると感じる。『いや、カヌレはつくしに譲るよ。』『ありがとう。』『でももうしばらく帰れないと思う。 警察に事情を説明しないといけないから。』そこに店員が氷とタオルを持ってきた。店内で売っているパックに入った物だ。「とりあえずこれで冷...

  • 14

    目に飛び込んだのは金庫の中身をバックに詰めている黒ずくめの犯人二人と部屋の隅に両手両足を縛られた店員二人の姿。類が飛び出す前につくしが一歩を出しその後ろから類が追いかける形で手前の犯人をつくしが、後ろの犯人に類が向かった。まさか二人が出てくるとは思わなかった犯人は驚きで動作が遅れる。しかも現金を詰め込む為か拳銃を床に置いていた。つくしは犯人の背中を蹴ると俯けになった犯人の両手を後ろに持っていき、腰...

  • 13

    『立ち上がるよ?』『うん。 お願い。』類はつくしの足をしっかりと持ちゆっくりと立ち上がると通気口の下へ移動する。つくしは両手で通気口をずらす。『足をしっかり持ってくれる? ちょっと覗いてみるから。』『分かった。』つくしは腰を浮かし、立ち上がる格好で通気口の中を覗く。その為、類の顔にスカートが覆い被さり、少し上を向けばパンツまで見える状態だ。こんな体勢、、、何かの罰ゲームだろ?と自分で自分を憐れむほ...

  • 12

    「おい! ここに金を入れろ! 防犯スイッチを押すなよ。」入り口から大きな声が聞こえ二人は同時に入り口を見る。店員はすぐに両手を上げている。すると黒いニット帽を被りサングラスをかけ口元にはマスクをし黒い上下の服を身に纏った男性二人が、手に拳銃のような物を握りしめているのが分かった。犯人の一人はすぐに入り口のドアを閉めるとつくしと類の元へ近づいてきた。類はすぐにつくしの盾になろうと前に立つ。「おい。 ...

  • 11

    月曜日、つくしはいつも通り学校を終えると真木子と一緒に駅へと向かった。「ほんと英徳は車通学が多いよね。」「だね。 専用駐車場まであるしね。 まあ資産家の子供が通う学校だからねぇ。」「アメリカは13歳まで子供を一人で外出させられないのよ。 学校はもちろん習い事も全て親が送迎するかスクールバスを利用。 一人で留守番も禁止。 マンションに住んでいる場合、一階の郵便物を取りに行くのも禁止だよ。」「厳しいね。...

  • 10

    司はあきらと総二郎を引き連れ帰宅した。すると使用人からすぐにプレゼントを渡された。「これをブラウン様が持ってこられました。 司様のお誕生日プレゼントだそうです。」「要らねぇ。」「困ります。 どうか受け取ってくださいませ。」使用人は困り顔だ。そのプレゼントを総二郎が代わりに受け取る。「司に渡しておきますよ。」「んとに余計な事を。 おい、俺の部屋にアルコールと何か摘まみを持ってこい。」「畏まりました。...

  • 9

    休日。つくしは兄のリアムと共に買い物へ出かけた。と言うのも父親のルーカスから司の誕生日にプレゼントを贈ったらどうかと言われたためだ。その時に初めて司の誕生日を知った。知った以上、何かを贈るべきか?と思った物の何を贈って良いのか分からない。趣味の悪い物や気に入らない物を贈ればまた何か言われる可能性があるからだ。その為、兄と相談しながら買う事に決めた。『どんなものを贈るつもりだ?』『あたしからのプレゼ...

  • 8

    翌日。つくしが学校へ行くと女生徒のほとんどが黒髪にみつあみ、そして眼鏡をかけている。昨日真木子が言った通りになっており、そうまでして道明寺に睨まれたいのか?と不思議に思う。だがこれで自分が目立たなくなりラッキーと感じる。そして教室に入ると先に来ていた真木子が駆け寄ってきた。「ねっ? そうなったでしょ?」「うん。 ビックリした。 そんなに道明寺さんに睨まれたいのかな?」「それがファン心理と言う物なの...

  • 7

    つくしと真木子はホールに居た女生徒に囲まれていた。「F3があなた方をジッと見ておられたんですけど何かしました?」「私もビックリしたんですけど何もしていません。 ねぇ、つくしちゃん。」「はい。 何も。」それは三人の視線をすぐに辿った人たちも同じ気持ちだ。二人は何もしていないのに、F3は二人の方を見ていた。だとすれば、、、「その髪形かしら?」「確かに黒髪にみつあみはあなたしかいないわよね。」「もしかしてそ...

  • 6

    午前の授業が終わり、司とあきらと総二郎は廊下に出た。「んとに何で始業式から授業が行われるんだよ!」「仕方ねぇよ。 そうでもしねぇと授業時間が足りねぇんだろ?」司は舌打ちをする。こんな事なら一日休めばよかったぜ。それをこいつらがあの女の姿が見てぇというし、俺もまあどんな風に接触してくるのか興味もあったんだけどよぉ。だが全然接触しねぇじゃねぇか。何で休み時間の度に廊下に出てあいつが来るのを待ったり、そ...

  • 5

    つくしは担任に案内され教室へ向かう。そして中に入ると同時に皆の視線が集まる。幾度となく転校を繰り返してきたつくしだが、やはり最初は緊張する。「今日からこのクラスの一員になる牧野つくしさんだ。 イギリスから来られたばかりだ。 皆、色々教えてあげて欲しい。 じゃあ自己紹介をしてもらおうか。」「はい。 牧野つくしです。 よろしくお願いします。」「じゃあ席はあそこへ。」「はい。」朝のホームルームとオンライ...

  • 4

    英徳が近づくにつれやけに車が多いと感じるつくし。それが門に向かって続いている事に気づくまでそう時間はかからなかった。左車線を車がのろのろと走り、それがまっすぐ門へと続いている為だ。しかも後部座席には英徳の制服を身にまとった人が乗っている。なんで?つくしはネットで調べた日本の通学風景と違うと感じる。ネットでは日本は小学生から子供達だけで登校していると書かれていた。もちろん帰りも子供達だけで帰る。親が...

  • 3

    1月つくしは英徳の制服に身を包み、髪を二つに分けみつあみにする。それはネットで見つけた「やまとなでしこ髪形」と言う物を参考にした。そして眼鏡をかけた。『ママ。 どう? おかしなところはない?』『おはよう。 えっ? どうしたの?』『やまとなでしこに見える髪型らしいから。』母親のオリビアは驚くものの『やまとなでしこ』と言われたら何も言えない。父親のルーカスの仕事の都合で各国で暮らしてきたブラウン家。そ...

  • 2

    道明寺邸のリビングでは要とルーカス、オリビアが和やかに談笑していた。『それにしてもつくしちゃんはかなり美しく成長したなぁ。 確かにルーカスが自慢するだけの事はある。』『だろう? 自慢の娘なんだ。』『お前から養子を取ると聞いた時は驚いたし、つくしちゃんの姿を見た時の衝撃は今も忘れられない。 年齢の割にかなり小さく細かったし、大人しそうな感じを受けたからなぁ。』『私も同じだった。 だがリアムがどうして...

  • 1

    12月28日つくしは緊張した面持ちで両親の後について道明寺邸の門を潜った。『つくし、覚えているかい? 14年ほど前になるか? この家に来た事があるんだが。』つくしは庭に目を向ける。そこにはバラの花は咲いていない物の、バラと思われる垣根が庭一帯を覆っている。『バラを覚えてる。 お兄ちゃんと一緒にバラを見た記憶がある。』『あの時はつくしを引き取ってまだ10日ほどだったかな? 会話もままならず、兄のリア...

  • 47

    ヒュンッ類は自分のいた2024年11月に戻る。そこにはボックス型のタイムマシンがあるが葵の姿はない。ただ中にメモが残されていた。【パパへ。 机の左の引き出しの中にあるLOVE48という雑誌はあたしが結婚する時にプレゼントしてね。習得したいから。 葵】その文面にフッと笑う。そして無事未来へ戻ったと感じる。その未来の葵に心の中で告げる。――ありがとう。葵。プレゼントするよ。そして自分の腕を見る。そこにあった腕時計型...

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