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  • バスの後ろの席で

    演台の前に立つと、ものすごい数の人たちが僕を見つめていました。日頃なにかと緊張しがちな自分が、この大舞台で妙に落ち着いているのが不思議でした。何気に本番に強いタイプかも...と余計なことを思いながら、僕はもういちど広い会場を見渡しました。心から言えることだけを言おう。あらためてそう心に決めて。 毎年11月に開催される日本エイズ学会(学術集会)のプログラムには、HIV陽性者が医療従事者に思いや意見を語る「Positive Talk」というセッションがあります。2019年、熊本でおこなわれた第33回大会(http://www.c-linkage.co.jp/aids33/)で、僕はこのPositi…

  • soarにコラムを書きました

    soarにコラムを書きました。これまで歩いてきた道のりとその時々の思いをまとめた、僕にとってちょっとした半生記のような文章になりました。ぜひ読んでみてください。

  • Badi 2019年3月号で紹介いただきました

    ゲイ雑誌「Badi」の2019年3月号で、このブログ「Hirotophy」を紹介いただきました。日ごろHIVに関心がない人に読んでもらいたいという思いで紡いだ言葉が、人の目に留まる機会が増えるのはとても嬉しいです。本当にありがとうございます。

  • 強くもなく偉大でもないあなたへ

    僕は、すべての病気が「母親であり、強く偉大である人だけが受け入れられる病気」ではなくなることを願っています。

  • 母さんの息子

    そのとき、まるで見透かしたかのように母が聞いてきました。 「それで、裕斗はどうなの。何事もなくやってるの」 「うん、特に何もないんだけど……」 「けど?けど何なの?」 僕は、まだ熱いコーヒーをごくりと飲み込みました。今しかない。

  • 僕を構成するのはいろんな当事者ではない

    僕は、以前からこの「当事者」という言葉が苦手です。自分の言葉として使うときも、他人の言葉として聞くときも、どこか違和感を覚えます。何がわかっていないんだろう…?あれこれ考えてみますが、結局よりどころが見つかりません。 たとえば、何か主張をするとき「自分は当事者だ」と言って、それを主張の正当性の根拠にする人がいます。僕はこういう姿勢が好きではありません。ただ、なぜ好きになれないのかは、よくわかりません。

  • やっとただの病気になったのかな

    僕がHIV感染を知ってから二年が経ちました。 二年前の今頃はこんなだったな、あんなだったな…と思い返しながら、たったの二年しか経っていないことをすごく意外に感じています。もっとずっと昔のことに思えます。僕の気持ちが「あの頃」とあまりにも違うからかもしれません。 二年経ってようやく、僕の病気は僕にとって「ただの病気」になりました。 ただの病気というと何やら軽い病気のようですが、治療をやめれば確実に死に至る病気。それを重い軽いの基準にするなら、重い病気です。現状で治ることはなく、それを基準にしてもやはり重い病気です。進行を抑える薬は高価、それを一日一回きまった時間に飲まなければならず、数か月に一度…

  • カミングアウトを受け入れるのは誰か

    LGBTのカミングアウトって、僕らみたいな「平凡な会社員」がやってこそ意味があると思うんです。 バーで隣り合わせた人が、そんなことを言いました。なんで会社員なの?と聞いたら、彼はこう答えました。 アクティビストの人とか、ゲイバーのママみたいな人って、自分の責任で多様な人とつながって仕事してるから、カミングアウトのリスクや敷居がそこまで高くないと思うんです。でも、会社員って一つの組織に依存しつづけなきゃならないじゃないですか。唯一の依存先を失うかもしれないって考えたら、簡単には言い出せない。だからこそ、そんな人たちがカミングアウトして受け入れられることって大切だと思うんです。 なるほどな...と…

  • かなりフツーです

    HIVを持っている人に、強い恐怖心を感じている人もいるみたいです。でも、実際は「自分でHIVを持っていることがわかっている人」について、そんなに...と言いますかまったく怖がる必要ないです、という話を今日は書こうと思います。 自分がHIVを持っているとわかっている人...。この言葉ちょっと長いので、この先は「PLHIV」と略します。People Living with HIV<HIVとともに生きる人たち>の頭文字です。 「そもそも、そんな人周りにいないし、関わったこともない」 そう思っている人もいると思います。 でも、実際には、身近にフツーにいます。あなたは、すでにPLHIVと一緒に暮らしてい…

  • その挑戦は無謀か

    うまく書ける自信がなくて、基本的に時事ネタは書かないことにしている。でも、今回のニュースは僕にとって大切なテーマを含んでいるので、思い切って書いてみることにした。 登山家の栗城史多さんが、エベレスト山の下山途中に亡くなった。専門家の人たちから「あの実力であのルートは無謀」と指摘が出る中での訃報だった。 無謀な挑戦。 僕の好きな言葉に、「プロ野球選手になりたいと思わなかった人で、プロ野球選手になった人はいない」というのがある。 言うまでもなくプロ野球選手になるのはとても難しく、なれる可能性は限られている。ただ、「なりたいと思わなかったけど、プロ野球選手になりました」なんて人は存在しないわけで、プ…

  • このブログのこと

    このブログは、誰にも言えない僕の苦しみや辛さを吐露する場所ではありません。僕がHIVを持っている状況を知っている人たちと知らない人たちが入り混じる中で暮らす僕のエッセイのようなものです。

  • 「HIVに感染したら」で検索している不安でいっぱいのあなたへ

    HIVに感染したかもしれない、と不安を感じている人は、少なからずいると思います。これを読んでいるあなたが、まさにそうかもしれません。 「HIV」 Googleの検索窓に入力すると、「HIV 初期症状」とか「HIVに感染したら」とか、不安が垣間見えるフレーズがたくさんサジェストされます。Google のサジェスト候補は、ユーザーの入力データから自動抽出されるらしいです。つまり、それだけ多くの人がHIV感染に不安を感じて、必死に検索しているわけです。 中には、不安を通り越して、恐怖に震えている人もいるようです。HIV感染が怖くてすっかり焦燥しきった様子のコメントを、ネット上で見かけることも珍しくあ…

  • 「HIVに感染したら」で検索している不安でいっぱいのあなたへ

    HIVに感染したかもしれない、と不安を感じている人は、少なからずいると思います。これを読んでいるあなたが、まさにそうかもしれません。 「HIV」 Googleの検索窓に入力すると、「HIV 初期症状」とか「HIVに感染したら」とか、不安が垣間見えるフレーズがたくさんサジェストされます。Google のサジェスト候補は、ユーザーの入力データから自動抽出されるらしいです。つまり、それだけ多くの人がHIV感染に不安を感じて、必死に検索しているわけです。 中には、不安を通り越して、恐怖に震えている人もいるようです。HIV感染が怖くてすっかり焦燥しきった様子のコメントを、ネット上で見かけることも珍しくあ…

  • ありがとう

    友人が、この世の生を閉じた。

  • 免疫に声をかけたら

    HIVを持っていると知らされてから暫くの間、体調を崩してしまうことが心配だった。なにしろ、一般の人の3分の1しか免疫力がないという。お医者さんにも、体調管理をしっかりするよう釘を刺された。もっとも、その内容は「手洗い・うがいをして、生ものは避けて」という一般的な指示ではあったけれど。

  • 2018年、僕は戻ってきた僕のために走ろう

    はてなブログの今週のお題「2018年の抱負」について書こう。 実のところ、新年の抱負は特にないのだけれど(1年という区切りで個人的な目標を立てることに意味を感じていない…)、あらためて「いま何がしたいんだろう」と考えてみたら、いま最大の関心事は「僕自身」だった。もっと健康で、幸せで、充実した時間を過ごしたいと考えている。 そんなの当たり前だろ!と言われそうだが、僕にとっては当たり前ではないのだ。むしろ、関心が「ただの僕」にきちんと戻ってきたことが興味深くすら感じられる。 一昨年の夏 僕は、自分のHIVステータスが陽性だと知った。そして、いちばんの関心事は自分の病気になった。 正確に言うと、「自…

  • 薬物依存症:ケンジ君の疑問、それは僕の疑問

    TOKYO AIDS WEEKSの「ナルコティクス アノニマス・オープンミーティング」に参加してきた。 ナルコティクスアノニマスというのは、薬物依存症の人たちの自助グループの名前だ。通常のミーティングには当事者の人たちが集まるが、今回のオープンミーティングは関心があれば誰でも参加OKということで、足を運んだ。

  • 1番目の90:世界エイズデー

    世の中には「〇〇の日」がごまんとある。その日が近づくとどこかで聞いたような食傷気味のスローガンが叫ばれる。がん検診に行きましょう。戦争は悲惨です。大切な子供たちに愛を。 そんなことわかってる。 僕らは忙しいのだ。すべてのデーに目を向けるなんて無理だし、結論わかりきっている話に興味がわくわけもない。 世界エイズデーは、僕にとってまさにそんな「デー」の一つだった。どうせ検査とコンドームの話でしょ?知ってるよ。そう言って一度も関心を寄せなかった。 そして結局、僕はHIVに感染した。 もちろん僕がエイズデーに関心を持っていたら感染しなかったのかと言われれば、それはわからない。ただ、初めてエイズデーに目…

  • BPM-戦争を知らないHIV陽性者

    TOKYO AIDS WEEKSと日本エイズ学会にはじめて参加しました。 学会が初めてなのは、仕方ないかもしれません。でも、TOKYO AIDS WEEKも初めてというのは、ちょっとはずかしい話です。感染を知るまで如何に僕がHIV・AIDSに無関心だったかを物語っています。 たくさんのプログラムの中で僕が最初に参加したのは、映画「BPM」の試写会でした。BPMは、今年のカンヌ映画祭のグランプリ受賞作品で、第90回アカデミー賞外国語映画部門フランス代表にも選出された話題作です。 舞台は、1989年のフランス・パリ。HIV・AIDSの当事者団体である「Act Up-Paris」の活動と、そこで活動…

  • 小さな町の小さな皮膚科

    僕がHIV陽性の告知を受けたのは、今から1年半前。保健所でも、検査場でも、大病院でもない、町の小さな皮膚科医院でした。 簡易なスクリーニング検査と正確な確定検査の二回の検査を受けたので、本当の告知は二回目の確定検査の結果を聞いたときです。でも、HIVというものが初めて自分事の世界に現れたスクリーニング結果の告知は、明らかに僕の二番目の人生の幕開けでした。 ついさっきまで属していた社会から弾き飛ばされた 皮膚科に行ったのは、左胸に発疹ができたからでした。近所の皮膚科がそろって休診だったので、開いている皮膚科を探して訪問しました。 ひと目で「帯状疱疹」だと診断されました。簡単な問診、薬ですぐ治ると…

  • 1990年のパリの僕 〜 映画「BPM」試写会に応募して

    HIVの感染を知ってからしばらくのあいだは、自分の病気のことで手一杯だった。 なので、HIVといえば、それは「自分のHIV」のことだった。すなわち「2016年に感染を知り、東京の大病院で治療を受けているゲイ男性」としてのHIV。寿命は人並み、毎日元気、病院親切、1日1錠、ゲイ友いっぱい・・・。HIVはそんな病気だった。 でも、いつごろからだろう。あたりを見回す余裕が出てきて新たな実感を感じるようになった。これが唯一のHIVの姿ではないこと。条件が一つ違うだけで、状況が変わることに。 もし僕が違う国に生まれていたら、もし違う性別や性指向を持っていたら、もし違う経路で感染していたら、もし10年前に…

  • 新井先生とアライの話

    先日、バブリングのトークイベントに行き、中学校の国語教師である新井先生の話を聞いた。シュッとした紳士的な身なり、よく響く声でユーモアたっぷりに話す姿はまさに先生然としていて、やはりプロは違うな…と感心しながらトークに耳を傾けた。 新井先生は目が見えない。 教職について数年後、網膜剥離で視力を失い、いちどは職を追われたが、10年をかけて再び中学校の教壇に立ったという。この話は、24時間テレビでもドラマとして取り上げられたので、知っている人も多いだろう。

  • 明日のHIV特効薬を今日の世界はまだ知らない

    アメリカのNIH(国立衛生研究所)と製薬会社がタッグを組んで、非常に強力なHIV抗体の開発に成功しつつある、というニュースがBBCから飛び込んできていた。

  • CD4に一喜一憂するぞ宣言

    CD4が、病気が分かって以降の最高記録を更新した。CD4というのは免疫の状態を表す指標で、数値が大きいほど免疫力が高いことを示す。健康な人で700~1500くらいの値だが、免疫機能障害になるとこの値がじわじわと下がってきて、通常なら免疫が弾きとばしてくれる細菌やウイルスに勝てなくなってくる。200を切ると通常では発症しないような病気を発症する可能性が高まる。

  • 東京を離れ山奥の温泉で一人きりになったら

    旅行の誘いがあるたびに、仕事が、気持ちが、と自分に言い訳をして話を避けてきた。ときには「行けばいいだけじゃん!」と半ばやけくそでバスターミナルに駆け付けたこともあったが、結局「まあ今日じゃなくてもいいか…」と踵を返した。

  • 伝えない意味、伝える意味|ヒロトのインタビュー(カミングアウトストーリー)

    僕のインタビュー記事が、NPO法人バブリングのウェブサイトに掲載されました。 HIVを持っていることを告知されて1年も経たないころのインタビューで、気持ちの整理もしきれていないし、内容もとりとめがないけれど、その分の生々しさというか、飾らない正直な気持ちが随所ににじみ出たインタビューになっていると思います。 本人としては、かなり照れくさい記事です……。 けっこう長いんですが、ぜひ読んでみてください! npobr.net

  • グレープフルーツ

    久しぶりの外勤。 訪問先との約束まで時間があったので、ランチでも食べようと同僚くんを誘って中華料理屋に入りました。円卓にはすでに中国茶がセットされていて、蓋を開けると茶葉やら穀物やら木の実やら正体不明のいろんなものが中に入っていました。 店員さんがお湯を注ぎます。中国茶の独特な香りが、目の前にあふれ出ました。 「ヒロトさん、これかなり美味しいですね」 同僚くんは、本格的な中国茶にご満悦の様子です。僕も熱くなった椀を手に取り、ひと口だけ飲む「ふり」をしてから、静かにテーブルに戻しました。そう、この手は苦手なのです。一年前から。 僕が飲んでいる抗HIV薬は「トリーメク」といいますが、トリーメクの添…

  • 同窓会

    高校時代の友人たちと酒を飲んだ。数ヶ月に1度、少人数で会っていろんな話をしている。 同窓会というほど大規模でも久々でもないけれど、普段の人間関係とは別のところで繋がっている友人、それも若かった時代を知っている同い年の友人と飲む酒というのは美味しくて、やっぱりただの飲み会とは区別したくなる。 メガネ女子だった友人は、いろいろ経てついに先週離婚届を提出した、ということで乾杯。清楚系女子だった友人は転職を悩み中で、今は人事の仕事をしているサッカー男子だった友人からアドバイスをもらっていた。そのサッカー男子は、政治の話を熱く語り、みんなで喧々諤々の議論を交わす。 今日は話そう。最初からそう決めていた。…

  • ひっそりと咲く花

    二ヶ月ぶりの診察。 インタビューを受ける予定だと雑談で話したことを、主治医の先生は覚えていました。 「インタビューの内容は世に出るんですか」「はい、ウェブ上で公開されます」「社会の認識が進むことにつながるといいですね」 この若い先生は、ときどき「社会」に言及します。何の気なしに言ってみました。 「最近LGBTが流行りじゃないですか」「ああ、話題になってますね」「HIVもあんなふうになってくれるといいかも」 血圧計を腕から外しながら、先生は言いました。 「個人的には、ひっそりと咲いていてくれればいいです。目立たなくても、枯れさえしなければ」 世の中の関心は大きいほど良い。単純にそう思っていた僕に…

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奥井裕斗さん
ブログタイトル
HIROTOPHY—ヒロトの免疫低めブログ
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