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  • スタジオ負け犬

    皆さま、お久しぶりです。 お元気ですか? お元気でなくても、生きていますか? 暑いですけど、ご飯を食べていますか? 食べていなくても飲んでいますか? 下町のナポレオンに癒されていますか? たまには遊んでいますか? ボーリングとかやっていますか? 今年はスイカバーを買いましたか? プールに行きましたか? 水面に飛び込みましたか? 遊園地はどうですか? 帰りに欲しくもないキーホルダーとか買いましたか? 夏がくるとソワソワするのは、大人になっても変わらないのだと実感しました。ソワソワするからといって、日常が様変わりするわけではないのですが、太陽の照りが強くなって首筋にジワッと汗をかくようになると、起…

  • おかけになった感情は、現在使われておりません

    日を跨ぐ瞬間は人それぞれ 並ぶ数字に意味はない 誰かにとってのおやすみは 誰かにとってのおはようだ 雨のち晴れの木曜日 メキシコからの着信は無視 セージを焚くのは心のため 気を許すと飲み込まれるから ソファーに座って耳を澄ます 冷蔵庫の音が動く合図 雑音が減ってちょうどいい 深夜過ぎに家を出て 静かになった通りを走る 月が見えなくても問題ない 空にいるのはちゃんと知ってる 帰路を忘れたシーイーグル 食べ残した時間をつついている 暗闇を佇む信号は灯台 三色に光って先を照らす おつかれさん いつもごくろうさん 投げる言葉は挨拶代わり カジノの赤い看板を超え バッツの匂いをくぐり抜け 昼に染み付いた…

  • 祈ってる

    お前が行きたかった国に行くまで祈る お前が欲しがってた車を買うまで祈る お前が撮りたかった映像を撮るまで祈る お前が入れ込んでた女優が売れるまで祈る お前の子供が二十歳になるまで祈る 大丈夫 祈ってる 上がっても下がっても祈ってる 借りパクしたCD はやく返せよ 借りパクした写真集 はやく返せよ また夏が来るぞ 今年もやっぱり帰れそうにない 溶けたスイカバーもお預けだ また夏が来るぞ 今年もベイスターズは優勝しない だったらお前も帰ってこないな 真っ暗な道を歩いてると 蒸し暑い夜を思い出すんだ なかなか燃えない蚊取り線香 生温くなった三ツ矢サイダー サンダル履くのもダルいから 裸足のまんまで寝…

  • 赤い電球にオーバーヘッド

    赤い電球にオーバーヘッド 今から夜をひとつ壊す 赤い電球にオーバーヘッド 隠れた悪意を蹴り飛ばす 期限切れの言葉を連れて 空のない街を歩く コンビニ代わりのフードコート コールドカットを口に頬張る 蔑んだ視線 気にしない 威嚇する罵声 聞こえない ここはペラペラの紙の上 見せかけだけのワンダーランド 誰かの都合でヘイトが生まれ 誰かの都合で美談が生まれる 現代のジャンヌダルクは忙しい カメラの外では動かない 七色の旗に人は集まる 真っ黒な旗にも人は集まる 誰も彼もが拳をかかげ 正義だ平等だと叫んでる セレブに政治家 スポーツ選手 神輿の上で平和を謳う 悲劇にもスポンサーが付くんだよ ファッショ…

  • レット・イット・ビー

    街の七不思議のひとつになるのが、この計画を立てた理由だった。 僕がそう思うに至ったのは、ジャンピングマンの存在が大きい。ジャンピングマンとは、毎夜僕らがタバコを吸う為に集まっていた田んぼ道に現れる男で、ビートルズのレットイットビーを歌いながらジャンプして進むという習性を持っていた。 ジャンピングマンは幽霊とかもののけの類ではない。れっきとした人間だ。最初にその姿を目撃した時は驚いたが、危害を加えてくる人ではないと分かってから、彼の存在はいつも見る風景の一部になった。 ジャンピングマンが飛び跳ねるスポットと僕らがたまる場所は、そんなに離れていない。距離にすると十五メートルくらいだ。彼が道端に座る…

  • 1998年3月某日の深夜、発泡酒をぶっかける

    区切りをつけるという行為は、とても大事なことだ。 今いる場所、状況、従事している事柄から距離を取り、関わり合いを断つ。それは何かを成し遂げた後でも、中途半端な状態でも構わない。とにもかくにも「終わり」と決めて、さよならするのが重要なのだ。 去年の3月から区切りをつけられない毎日を生きている。でもそれはきっと、私だけではないのだろう。 北国特有の長い冬が終わり、街中いたる所に色が付いて木々も青々としてきた。ひと足先に自然界が衣替えを終えても、人間界に住む私は足踏みしたままだ。 半地下にある職場の窓から気持ちよく晴れた日を見上げていると、さまざまな思いが頭に浮かぶ。喜怒哀楽バランス良く湧いてくるの…

  • それは、「未来」という魔法だった

    「未来」という言葉に希望が含まれていた少年時代、ブラウン管の中にはサトームセンのジャガーや、オノデン坊やが息をしていた。 元気があった街の本屋にはジャンプやマガジン、コロコロやファミ通といったカタカナの少年誌が平積みされており、高橋名人や毛利名人が競ってファミコンの腕前を披露していた。 私は、アナログとデジタルの狭間に生まれた。 機種変更やモデルチェンジを含め、今までなかったものが生まれ、そして消えていった様を数多く見てきた。それらは私にとって、「未来」という魔法だった。 ビデオデッキ 世に出た後に、随分遅れて我が家にやってきた未来機器。 一言でいうと、タイムマシーンだった。 どうでもよいCM…

  • 人間と悪魔を分ける線

    寝る前に開いたページで見つけた記事を、放っておくことは出来なかった。 全ての人間が人間のまま生きているとは思えない。実際、人間の皮を被った悪魔を何人も見てきた。「未成年」「未熟さゆえの過ち」「集団心理の暴走」この事件にそれっぽいフレーズは幾らでも付けられると思うが、そんなものは知らない。加害者たちの行動の意味を見つけようとしても、個人的にはそんなものがあるとは思えない。記事で書かれている行為は人間のそれではない。卑劣で残酷で鬼畜な行為。それ以上でも以下でもない。 清廉潔白に生きるべきだなんて考えは持っていない。そんな風に生きてこれなかったし、生きたいとも思わない。マイナススタートでも、紆余曲折…

  • 朝は寝てるから夜しか知らない

    助手席専用の不適合者 左から世界が流れていく 身分書なんて持ってない フレンチクルーラーがご馳走だった 光を浴びろと人は言うけど 朝は寝てるから夜しか知らない 前を向けって人は言うけど 朝は寝てるから夜しか知らない 理想に火をつけて煙を吐き アキレス腱を伸ばして歩く くすぶってるのは社会のせい 「どうでもいい」で今日が溶けてく アルコールに浸かれば壁はバラ色 錠剤と混ぜれば輝く虹色 揺れる景色に手を振って 布団の底に沈んで消える 光を浴びろと人は言うけど 朝は寝てるから夜しか知らない 前を向けって人は言うけど 朝は寝てるから夜しか知らない そんな暮らしを続けていると 誰かが未来を決めつけてくる…

  • 登場人物になれなかった14歳へ

    映画「14歳の栞」予告 -90秒編- トータル4本、合わせて約5分の予告編に、いつかの姿は見つけられなかった。 四角い教室の中ではしゃぐ14歳たち。表と裏、理想と現実、ほんの少しの時間だけであの時に感じた空気を作り上げるカットは心から凄いと思った。背伸びして上から見る角度も、机に突っ伏して眺める角度も、期間限定の単館上映。望むと望まざるとにかかわらず、同じ経験は二度と出来ない。 スクリーンに映し出された登場人物たちの等身大の姿。そこに俺や君のリアルがなくても、14歳という日々は確かにあった。作品の登場人物になれなくても、俺や君もちゃんと存在した。 彼らと同じような「ふつう」を送れなくても、取り…

  • それはそれでめいっぱい抱きしめたいと思う

    夕立を避けて息を殺し 渡り廊下で合図を待つ 見下ろした中庭ではしゃぐ制服 びしょ濡れになって騒げたら 夜は怖くないんだろうな 開けっ放しの窓 ポカリを飲んで空に願掛け 広げた二本の指の間に あなたの帰る道が伸びる 強い炭酸が苦手なのは 切れた口にしみるから 電話番号を教えないのは 続きを聞くのが怖いから 夕焼け色に染まった髪の毛 唇の横に刺さったピアス 原付で国道を飛ばしても 映画のようにはいかなかったね どこから中を覗こうと 白く濁った液ばかり どこから中を覗こうと あの日に嗅いだ匂いばかり 過ぎた時間も流れた場面も 誇れないものにまみれて埋まった あなたのように綺麗じゃないし あなたのよう…

  • ミレニアム前後のセレナーデ

    シーブリーズを首もとにふりかけた女の子が、あぶらとり紙で頬についた98年を拭き取った。クラスで目立つグループに入っていた生徒は、だいたい「よーじや」を使っていて、1、2年前まで愛用していた白いルーズソックスの代わりに、シュッとしたラルフのハイソックスを履いていた。 売れている音楽を悪だと勘違いしていたあの頃の私は、借りてきたアイデンティティにならって3、4番手がイケてるのだと信じて疑わず、シーブリーズでもギャツビーでもなくGymを選んで、暇さえあればプシュープシューとノズルを押していた。 どうしようもなく息苦しくて、嫌なことばかりだった毎日。それでも笑ったり笑われたり、騙したり騙されたりしなが…

  • 赤い爪

    雨が降っても開かない傘 帰れない火曜日に石を投げる 肌色が透ける磨りガラス 必死に動いてバカみたいだね 赤い靴下に真っ赤な下着 足の爪まで朱色に染まった 欲望は美しいって言われたって 子供に分かるわけないだろって チューインガムで貼り付けた似顔絵 ペラペラの薄さでヘラヘラ笑う 鉛筆を回して尖らせた感情 突き刺した紙の目がこっちを見てんだ 消えない影は伸びた髪の毛 しつこく絡んで首を絞める 目を閉じても寝れない真夜中 苦しくなったら鏡を覗きな 目を背けなきゃ会えるから あん時の自分に会えるから 腕を伸ばして手を握ってくれ自分を救えるのは自分だけだ

  • Nobody Knows

    Nobody Knows 閉所恐怖症の人はマスクができない。 でもそんなことは、誰も知らない。 先端恐怖症の人は注射が怖くて仕方がない。 でもそんなことは、誰も知らない。 普通の社会は普通に進み、新しい生活様式を強要する。 閉じ込められた苦しさや、針で刺された痛みなど、誰も知らない。 同じ色の服を着た正義の行進。 ファッションマスクで顔を隠した正義の行進。 「普通」という怪物が街を牛耳る。 彼らは至る所に存在し、「普通」以外を監視している。 通常、彼らは優しい。それが彼らの普通だからだ。 しかし、一歩「普通」から外れると、彼らは牙を剥き、異分子を追い詰める。 そんな彼らと上手く付き合う方法はひ…

  • 1998

    「おい、おいっ! シンスケ! ちょっと何やってんだよ! こっち!」 「おぉ」 「『おぉ』じゃねーよ。遅れてきて何ボォーッとしてんだよ」 「ケンジ、お前、元気か?」 「は? 何だそれ? そんなことより、他に何か言うことあんだろ。ほら、昨日のやつ。ちゃんと聴いてたんだろ?」 「お前が元気そうで、本当に良かったよ」 「だから何なんだよそれ。気持ちわりーな。あ、あれか? 俺が先に『殿堂入り』して悔しいんだろ? いやー、気持ちは分かるよ。分かるけど、そこは大人になれって。俺だってお前のが先に読まれた時はマジかって思ったけど、ちゃんとファンタ買って祝ってやったろ? でもさ、昨日のやつ、あれマジで面白かった…

  • 衝動解放活動

    楽しい時間はあっという間に終わる。 本当に同じ尺を使っているのかと疑いたくなるほど、楽しい時とそうでない時の体感差が激しい。それはもちろん集中しているか否か、脳内のナンチャラ成分が分泌されているか否かなどと言ってしまえばそれだけの話なのだが、どうもその説明では素直に納得できない。 まだ私が日本にいた頃、銀色の髪をした恐ろしい人の部屋に閉じ込められたことがある。『閉じ込められた』と言うと表現が強くなってしまうが、拉致や監禁ではなく、軟禁だ。 「お前、エヴァンゲリオン知ってるか?」 地元の駅で数年ぶりに再会してしまった恐ろしい中学の同級生は、銀色の髪をしていた。 「お前、エヴァンゲリオン知ってるか…

  • 無料ダウンロードキャンペーンのお知らせ

    本日5月7日から11日まで、Amazon Kindleストアで販売している電子書籍「じゃあ、またね」の改訂版無料ダウンロードキャンペーンを行います。以下があらすじ、及び、ダウンロードページのリンクです。 ムラセコウタを最後に見たのは、アズマたちに呼び出しを受けなかった「解放日」の帰り道だった。茜橋のたもとでムラセが手を振った日を境に、サエジマワタルの生活から日常が消えた。 『仇を討ってください。僕はこいつらを絶対に許さない』 手渡された文庫本の余白ページに記されたメッセージ。そこに名前が書かれた四人の生徒たちとの関わりを通して、サエジマ、ムラセの母親、そして協力者であるカネコの人生が大きく変わ…

  • 子供の頃に見た正月みたいな風景

    オンタリオ州の緊急事態宣言が発令されてから今日で1ヶ月と18日。4日間の休みが取れたので、念願だった散歩に出た。 政府からの通達に従い、身分証明書を携帯してウォーキングシューズを履く。 天気は雲が散らばる晴れ。気温10度。歩いて5分程の距離にあるメインストリートに着くと、子供の頃に見た正月みたいな風景が広がっていた。 ご覧の通り、繁華街の機能は停止している。辺りに人がいないわけではないが、まばら。なので自動的にソーシャルディスタンスを保てている。 この街に移って13年経つが、こんなにも人が少ない繁華街を見たことがない。 道沿いの店舗は全て閉まっているのにも関わらず、週末は人が来ているという話を…

  • これからって時に、敬語はやめませんか

    「一応確認しますけど、手順は分かってますよね」 「はい」 「準備はできているので大丈夫だと思います」 「色々ありがとうございました」 「あの、あれですよ、約束では『目が覚めちゃったら自分で』ってなってますけど、もしその時に気が変わってたら、いいですよ、逃げちゃって」 「え、いや、逃げませんから」 「もしもの話ですから。これ、けっこう強いやつなんで、起きることはまずないでしょうけど」 「はい」 「とりあえず話しておくことはそれぐらいですかね。何か質問はありますか? 特になければ——」 「あの、ポーク鍋さんは、何で終わらそうと思ったんですか?」 「え?」 「何で、終わらそうって決めたんですか?」 …

  • サラバ、私が見てきた世界よ

    家の近くにあったレンタルビデオ店は、「TSUTAYA」ではなく、「すみや」だった。 店の内装や雰囲気は駅前にあったTSUTAYAの方が洒落ていたが、私はアットホームなすみやが好きだった。 閉店間際に行って映画を3本借り、すぐ横にあったセブンイレブンでチェリオのライフガードと午後の紅茶レモンティー、牛カルビ弁当とおにぎり2つを購入し、国道沿いの自動販売機でタバコを3箱買って帰宅するのが私の定番だった。 映画はもちろんのこと、CDの購入も殆どせずにレンタルばかりを行なっていた私にとって、すみやは巨大なジュークボックスであり、映画館でもあった。 当時の私は、年がら年中行動を共にしていた集まりの影響で…

  • 反省文

    両耳にかかる水圧。目を閉じてるから光はなくて、とにかく重くて息苦しい。 光を掴んだ気がした。 こじ開けた穴に腕をねじ込み、チャンスの尻尾を掴んだ気がした。 先が見えた。そう実感したから眠くならなかった。ずっと頭が興奮して、睡眠なんて必要なかった。 景色を変えるんだって意気込み、期待を寄せて広げた手のひら。 そこには何にも残ってなかった。 2020年4月2日 状況は何も変わっていない。 何の進展もみえないまま、グルグルその場を回っているうちに世界は変わり、後戻り出来ない事態になった。 オフィスと机が与えられた代償は誰もいない街に向かう行為で、慣れない仕事を頭に詰め込み、消毒液に囲まれて毎日が過ぎ…

  • 恥なんか、多摩川に捨てた

    「なぁ、ダメ元で聞くんだけど、『付かず離れず』って、どんな感じの関係を言ってるのか分かるか?」 「付かず離れず? 何だ急に」 「大したことじゃないんだけど、ちょっと気になってね」 「何の雑誌だ?」 「え?」 「お前が変なこと聞いてくるときは、大体雑誌が出所だ。何の雑誌の情報だ?」 「何って、ホットドッグプレスだけど」 「やめとけ。ホットドッグプレスは素人が手を出す雑誌じゃねぇ」 「何だよそれ」 「お前な、ホットドッグプレスなめんなよ。あっこから正解見つけられんのは、カルバンクラインのトランクス履いてる奴らだけだ。諦めろ」 「諦めるもなにも、まだ何も言ってないだろ」 「『いつの間にやら急接近 付…

  • メープル通りの白樺荘

    白樺は、親父にとって特別な木だった。 小さくて狭い実家の裏庭にあった白樺の木。周囲の景色に馴染まないその様子は、四畳半に寝転がるペルシャ猫のようだった。 「サラサラって葉っぱの音を聞いたら、北海道かどっかの避暑地にいるみたいだろ」 窓を開けられる季節が訪れると、親父は決まってそんなことを口にした。 青が褪せて、くたびれた水色に変わった網戸。私はそのライトブルー越しに、すくっと伸びる白樺を見ていた。 風が吹いて葉音がしても避暑地にいるようには思えなかったが、「避暑地=北海道=別荘=金持ち」という刷り込み教育を受けたおかげで、私の中の白樺の地位は、ヒマワリよりも高かった。 幹が虫に食われているのが…

  • シラフで他人を虐める奴より、キマって揺れてる奴がいい

    透明な枠でもがいてる 自由だ自立だって叫んでも 何かに怯えて後ろを見るんだ 一日の終わりに目を瞑る 十字も切らないし手も合わさない ただ黙って祈りを捧げる 当たり前である事に涙を流し 当たり前である事に苦しさを覚える いつも何かを追ってんだ 降りてきたイメージとか 残って消えない場面とか 麻痺しない感覚が付きまとう 気にならないって強がっても 眠れぬ夜が増えるだけだ 吐き捨てられた声が居座り 思考と行動の邪魔をするから 音楽でそいつを溶かすんだ 何が心を突くんだろう 何が気持ちを急かすのか ルールばかりが街に溢れ 普通の群れが道を塞ぐ 道を外れた感情よりも 同調の方がよっぽど怖い 何だって良い…

  • 「放課後のジェットリー」は眠らない

    「何でその名前なんだよ?」 「何が?」 「ラジオネーム。変だろ、それ」 「変じゃねーよ。ちゃんと計算して付けた名前だぞ」 「『放課後のジェットリー』が?」 「いいか、ラジオネームってのはインパクトが命だ。名前八割、内容二割って言うだろ。そんだけネームは重要なんだよ」 「そんな比率、聞いたことねぇよ」 「考えてみろ。何百枚の応募から選ぶんだ。ジャブを何発撃ってもしょうがねーだろ。はなからストレートだよ」 「そういうもんなのか」 「あぁ、そういうもんだ」 「じゃあ、インパクトはいいとして、何でその名前なんだよ? お前、ジェットリー好きだったっけ?」 「いや、別に」 「だったら何で?」 「好きとか嫌…

  • あんたやあんた達の歌をうたおう

    灰色の壁に投げた石が影になって夜に溶け込む 盗んだ菓子を頬張っても離した思いは戻らない 帰れなかった校庭でお前は何を見ていた 蹴飛ばされた帰り道でお前は何を見ていた 騒がしい国道に消された叫びジェスチャーだけじゃ掴めなかった 首にかけてた銀の鍵パンクしたままの黒い自転車 あんたがいた場面も空気も忘れた瞬間に消えるんだろ だったら俺はここに残って あんたやあんた達の歌をうたおう もう戻らないと家を出て二時間後にはガラスを叩いた 片耳だけで踊るピアス薄れた香水は煙草に負けた 環境のせいだって借金のせいだって暴力のせいだって 癒えない傷を舐め合ってもカサブタにさえならなかった 財布に残った映画の半券…

  • アチラとコチラ (完結)

    3つ目 出来過ぎた展開に、都合の良いタイミング。 この話をもし小説として書くのなら、プロットの段階で大幅に修正しなければいけなくなるだろう。 まるで、ご都合主義の王道を行くようなストーリー。3つ目の岐路は、そんな事例の連続で作られていった。 2つ目の岐路で「たまたま」アパートのドアが開いたことにより、コチラの世界にとどまった私は、何とか高校を卒業し、自分を取り巻いていた煩わしさから逃げるようにしてカナダのバンクーバーへと渡った。 バンクーバーでの顛末や、1つ目の岐路となった、私を拾ってくれたグループの詳細などは以下に書かれているので省略します。 はい、宣伝でございます。 五厘クラブ 作者: 高…

  • アチラとコチラ (2つ目)

    2つ目 駅前の公衆トイレ 風が強い静かな夜 階段で見た腕時計 記憶に強く残っている場面がある。 それは匂いや音を伴い、時間が経っても薄れることなく頭の中に存在し続ける。 私が経験した2つ目の人生の岐路は、そういったいくつかの場面の先に用意されていた。 1つ目の岐路を通して拾われたグループに参加するようになっても、学校では変わらず呼び出しを受けていたが、そのことに対する自分の心持ちは変化した。何というか、外側と内側を分けて考えられるようになったのだ。 ヤラレている私だけが、私じゃない。そう思えるようになれたのは、避難所という居場所を確保したことにより、どうしようもない愚か者という役柄以外でいられ…

  • アチラとコチラ (1つ目)

    並行世界、パラレルワールド。 呼び名は何だっていい。滑稽な話に聞こえるかもしれないが、私はそういった世界の存在を信じている。 私が生きている世界、私が生きている別の世界、そして私が死んだ世界。 宗教的な話や非科学的な話をしたいのではない。ただ、そう考えるようになったきっかけが、今まで生きてきた中で3つあった。 不思議な出来事、そこで別れた世界。 1つ目 あの頃、全てが真っ暗でどうしようもなかった。 増えていく上納に、終わらない暴力。どれだけ働いても高校生のバイトでは限界があり、家の金にも手をつけはじめていた。学校、家や街、どこにも居場所はなく、呼び出されることばかり気にして毎日を過ごしていた。…

  • Aの中で、Bを見る

    制限があっても、与えられた中で花を見つける。 まだ大洋ホエールズが生きていた頃、私はコントローラーが絶対に回ってこない「ファミコン応援係」という役を与えられていた。 仲間に入れてもらえるアイテム、ファンタオレンジを献上して、所定の位置に座る毎日。表向きはプレイヤーに声援を送っていたが、頭の中ではブラウン管から流れるゲーム音楽を使って遊んでいた。 当時のお気に入りは、ネズミ警官がトランポリンを使ってはしゃぐ「マッピー」。 AメロとBメロの頭に「ミスするなら 金返せよ」と、夢のない歌詞をつけ、それをループさせて声を出さずに歌った。曲が転調してから「トゥントゥントゥン」と続くメロディラインが気持ちよ…

  • 出し続ければ開くって、本気でそう信じてるよ

    仕事着を通して見渡す街に 暮れも明けも存在しない 夜になったら ただ忙しく 朝になれば ただ煙たい 鏡を見つめて息を吐く 固まった頬を揉みほぐす ウィードが溢れる帰り道 赤い目玉が笑っている こちらを睨んで吠える狼 立てた中指をしまってくれ 憂いを晴らすクリアホワイト 何粒飲めば楽になる? 違う それじゃない 欲しい景色はそこにない メシアもいない 糸も垂れない だから私は書いていく どうやったって消えない思いを 言葉に変えて書いていく *** 皆様、こんにちは。 こちらメープル荘は、二時間前に年が明けました。 2018年は私の書いた文章を読んでくださり、本当にありがとうございました。 深く感…

  • こんにちは

    So this is Xmas And what have you done 何をしたのかと問われれば、「生きてきた」と答えよう。 五匹の猫がヒーターの通気孔を塞いでいる午前三時半。 丑三つ時の四角い部屋には、離婚記念で空を飛んできた義理の母が寝息を立てている。 約一ヶ月の滞在。 長い長い拘束生活から解放されたのだ、是非ともピザやポテト、ハンバーガーなどを頬張ってゆっくりしていって欲しいと思う。 ドアが開き、内へ潜って区切りをつけて、しばらくその場を回った後に、障子を破って部屋を出る。 今年は、そんな一年だった。 新宿から乗って、物思いにふけていたら、もう相模大野。 今年は、そんな速さで過ぎて…

  • 残った欠片との別れ

    雪が降った木曜の朝8時、ブラックももひきをはいた私は、リクライニングチェアーに腰掛けて、口を大きく開いていた。 目の前にはマスクをしたインド系歯科医。 彼のタレ目に見守られ、これでもかとリピートされるクリスマスソングに包まれながら、残り1本になっていた私の前歯は勢いよく引き抜かれた。 たくさん打たれた麻酔のせいで痛みはなかったが、歯がなくなった後、何とも言い表せない寂しさを感じた。 診察が終わってトイレに寄った私は、口をニカッとあけて鏡を見た。 何だかなぁ、という気持ちが心を覆う。 こんな羽目になった原因は分かっている。しかし、その時の私は、30代で全ての前歯とさよならすることになるとは思って…

  • 告知

    Amazon Kindleストアで電子書籍「アーティフィシャル・フラワーズ」を出版しました。 この作品のテーマは、「偽物」「本物」「血の繋がり」そして、「人を好きになること」です。 こちらには、表題作の他にもう一編、自分にとって思い入れの深い作品である「六千百七十二本の物語」を収録しています。 たくさんのものから逃げて、たくさん諦めて、たくさん捨てて、もがいて拾って、怖くて壊して、それでもどうにか作り上げて生きてきました。 込めた思いが多くの人の目に触れてもらえることを祈ります。 読んで頂けたら、幸いです。 よろしくお願い致します。 以下が本のあらすじと、商品ページのリンクになります。 ***…

  • 好きな人はいますか?

    週間予報に見つけた雪マーク。 楓の国は、もう寒い。 コタツが主役の家で育ったせいか、私は寒さに弱い。 なので、出勤時には防寒ジャケットのジップを上まであげ、手袋をしてハンドルを握っている。 こんな調子では、近日中にブラックももひきの姿を拝むことになるだろう。 真冬よろしく着込んで歩く私の目の前を、薄着のカナディアンが横切る。 そんな光景を見かけるたびに、己の生物としての弱さを感じる。 気分はまるで、「ウララァー」と叫んだ未熟超人のようだ。 何で、寒くないのだろう。 何で、ショーツでスケボー乗ってるんだろう。 移住以来ずっとこの疑問と向き合ってきたが、答えが出ないのでその思いをサヨナラボックスに…

  • ユワシャ

    ハロウィンに特別な思い入れはない。 出勤と同時に化けの皮を被っているのであえて仮装する必要はなく、トリックを披露する場も、トリートを配る機会もないので、職場のバスケットに詰め込まれていた甘いチョコ菓子をかじる以外は、いたって普通の水曜日だった。 カナダで口にするチョコ菓子は甘い。 とにかく甘い。 甘すぎるチョコ菓子は、もはやチョコ菓子ではなく、黒くて茶色い砂糖だ。 ちなみにドーナツも甘い。 正確に言うと、甘ったるい。 こんなにも糖分が高いものを食べていたら明らかに体に毒だと思うのだが、こちらの人はピンピンしている。 目を疑うほどに、ピンピン。 じーさんもばーさんも杖やウォーカー、もしくは自動歩…

  • 終わったんです

    気持ちが高まっている。 そんな時は、タイプじゃなくてノートに書き出す。 まとまらなくなるのは分かっている。だからそのまま書かないが、今日は構わずタイプする。 只今、こちらは午前五時二十二分。 サーモスタットのパネルに映し出された気温は、4度だ。 兎にも角にも、どうにか間に合った。 締め切りギリギリは通常運転。小学生から変わっていない。 でも、終わった。 手を合わせて送信ボタンをクリック。 ありがとう、21世紀。 恩にきる、21世紀。 とにかく安心して、気の済むまで床で伸びた後に、机に戻った。 ありがとう。 いくつもの感情が溢れるが、そのどれをも押しのけて出てくるのは、感謝だ。 嫁さん、本当にあ…

  • 13インチの鎮魂歌

    腕を押さえてめくるスウェット 横に走った赤い線 ミミズみたいな赤い線 外に出せずに向けた刃 二個目の蛍光灯が点滅する 為すすべがなくて無言で笑う 楽しくもないのに手を叩く 「縦に引いたらマルバツができる」 勝っても負ける真っ赤なゲーム 角はいつだって埋まったまんま やり切れないって泣くのなら タトゥーを入れて隠そうか 六階で見つけた黒い影 先月より二階も上がってる 足元に溜まったキャスターの吸い殻 今日はここで何分待った? 「遅いよ」って咳き込んで座る 死なない嘘なら大歓迎だ 赤い線を舞うハミングバード 知らないんなら教えてあげる それは癒しを与える幸せのシンボル 錠剤なんか運ばない 肩に激し…

  • 白旗の行進

    月曜の影を踏んでも休息はこない 日曜の券を貯めたってやってこない 口だけで笑うと削られるから しっかりと目を開けて内側を見るんだ 理屈にすがると心が尖るから しっかりと目を開けて内側を見るんだ そうやって息をして 朝がない日々を過ごす 昨日と今日は違うはずなのに 時々同じに見えるんだ 思考が結果を引き寄せるなら 幸せだって毎日叫ぶよ 「行かないで」と言った日を思い出して 「行くな」と言い切ればよかったのだと泣いた 後悔は重い 重くて肩がこる 苦労なしでは蜜にあり付けない そんな思いに縛られるのは嫌だ 何か起こるたびに記憶と繋げる そんな習慣に潰されるのは嫌だ かき集めたマイナスを混ぜ合わせ 浮…

  • ふたり乗りで行こう

    5:56に目を覚まし 少し祈って襖を開ける シンクに出来た皿の山 尖った先から日が昇る Fコードの音が響く ガスのコンロがリズムを刻み 薄暗い玉子の花を咲かす 透明になるための白いシャツ 用のないコンビニで息をして 8:11の準急に乗る 広告と景色が後ろに流れ 噂と一緒に吸い込まれる 学校に着いても下駄箱は開けない そこには悪意が詰まっているから ゴミ出しの日に消えた人を待たない 欲情に付ける薬はないから 部屋にスペースが増えたけど 寂しい気持ちにならないんだ 橋を越えた住宅団地に 僕を待つ人がいるから 空白で埋まる授業を抜けて 501のジーンズを履く 白線の内側を急いで走り 2:22の準急に…

  • 12年かかって見た景色

    12年かかって見た景色。 12年前。 お金も、仕事も、居場所もなかった。 12年前。 「柱もねぇ、壁もねぇ、床板まともにはまってねぇ」幾三ハウスから始まった生活。 ダンボールをタンスにし、結婚記念日にウェンディーズのバーガーセットを食べていた。 逃げてきた分、1歩1歩が重かった12年。 日が落ちて、人が少なくなった街を歩く。 塔の上ではためくメープルフラッグを眺めている時、頭にあったのは、泣きながら空のスーツケースを投げつけられた日だった。 時間が進まない、病院の長い廊下。 受け取られなかった手紙。 灯りがつかない部屋。 馴染まない水を飲んで、何とか笑顔を浮かべていた日々が浮かんでは消えた。 …

  • 満天の星をみたか

    満天の星をみたか 寒さの産声が響く中 黒を濃くした夜空に浮かぶ 満天の星をみたか 工場から漏れる煙も 街を埋める電波でも覆えない 内なる想いを照らす 満天の星をみたか 俺は見た 真夜中の真ん中に開けた窓から 溢れる星を確かに見た 四方に散らばり輝く星群 そのうちの一つ 東の果てに佇む光が あんたなんだと思った 理由は分からない ただ直感でそう思えた 会えなくなって随分経つけど 忘れたことは一度もない 赤いカバンをかけた背中 当時の景色はかすれていない そっちの空気はどうなんだ? あんたはあんたでいれているか? こっちのことは心配ない 色々もがいて回っているけど 今でも好きで書けているよ ため息…

  • ご報告

    自身の作品である「歩けばいい」が Amazon × よしもとクリエイティブ・エージェンシーが主催する「原作開発プロジェクト」において優秀賞を受賞しました。 ドアが開き、橋がかかった事がとても嬉しいです。 作品を読んでくださった方々、選んでくださった方々、サポートしてくださった方々、そして表紙を描いてくださったミチコオノ氏、その全ての人たちに感謝します。 本当に、ありがとうございました。 受賞の報告を受けた日、結果をまだ知らない自分は仕事帰りに嫁と合流し、テイクアウト専門のチャイニーズレストランへと向かっていました。 その日、普段よりも多くの料理を注文をした理由は、夕食時に残念会をするためでした…

  • この土地は誰のもの?

    メインストリートのコーヒーショップ 右肩に彫られたハイダのイーグル 握手をした友人はもういない 「弓を引く者」 彼はその名を捨てたと言った トライブを抜けた者 居場所を探す者 私も流れてここに来た 「よそ者」レッテルの永住者 私はあなたの敵ではない 「仕事を奪い取る移民者」 私はあなたの敵ではない 立てた中指をしまって欲しい 私はあなたの敵ではないんだ ここで産声をあげてはいないが この国に手を添えている ナショナリズムに愛国心 大きな声は人を惑わす 異なる色を叩かなくとも 生まれ育った国を愛せる 「ここは俺たちの土地だ!」 つまらぬ悪意を埋め込まれた日 コーヒーショップのドアを開けた 壁際の…

  • 今が永遠に続きはしない

    三月になりました。 相変わらず時間は駆け足です。 何というか、誰かに五時間ほどちょろまかされている錯覚に陥ります。 最近、子供の頃よく耳にしていたオノデン(秋葉原にある電気屋さん)のCMソングが頭の中で流れます。 宇宙的な歌詞で電気の世界を紹介している、あれです。 オノデンボーヤが未来と遊んでいる、あれです。 何かきっかけがあったわけではないのに、この曲が脳内でヘビーローテーションされている理由が分かりません。 こういった時の脳のメカニズムが知りたいです。 話は変わりますが、自分がここを離れている間、以前書いた詩を かこ (id:kozikokozirou)さんが漫画にして下さいました。 yo…

  • 自分のケツは、自分で拭きます 〈高岡ヨシ + 大関いずみ〉

    「おーい、君ぃー! 聞こえるかー? そんなとこで、何してるんだー?」 「あっ! お勤めごくろうさまです! あのー! わざわざ来てもらって悪いんですが、間に合ってまーす!」 「いやー、えっ? 間に合ってるって、何だろうなー? とにかくさー、そこ危ないから降りてきなよー!」 「何だかすみませーん! でも、降りる気はないんで、お帰り下さーい!」 「いや、帰らないよー! ねぇ、君ぃー! そこで何をしてるのー?」 「自分のケツを拭こうとしてるんでーす!」 「うん、そうだねー! いや、そうじゃなくて、何でそんなトコにいるのかなー? どうしてそこに便器があるのかなー?」 「あのー! それ説明すると長くなるん…

  • ねぇ、知ってる? 〈高岡ヨシ + ミチコオノ〉

    ねぇ、知ってる? あの子のお母さん、PTAの会長さんとできてるらしいのよ ねぇ、知ってる? あの子の家の弟さん、やっぱり変なんですって ねぇ、知ってる? あの子のお母さんの出処、どうも橋の向こうの地区らしいのよ ねぇ、知ってる? あの子のお父さんの会社、噂通り倒産したんですって ねぇ、知ってる? あなた達の話、全部聞こえているよ ねぇ、知ってる? あなた達が笑ってしている話、全部おかしくも何ともないんだよ おい、知ってる? あいつ、昨日もヤられたんだってよ おい、知ってる? 一緒に殴れば、金がもらえるんだってよ おい、知ってる? あいつ、授業中に血を吐いたらしいぜ ねぇ、知ってる? あなた達の…

  • 七日後の秘密

    「急に呼び出して悪い」 「それはいいけど、誰もいないよね」 「誰もって?」 「ヤマカワさんとか」 「大丈夫。いない、いない」 「本当に? 倉庫なんかに呼び出すから、構えちゃったよ」 「ごめんな」 「いいよ。それよりさ、月曜どうだった? やっぱり新しいことされた?」 「月曜? あぁ、水のやつ?」 「うん。あれ、ひどくない? 着替えなんて持ってないから、ビショビショのまま帰ったよ」 「俺も。すれ違う人にジロジロ見られた」 「あんなの、何が楽しいんだろうね?」 「あいつらが笑ってしてくるやつ、全く理解できない」 「最低だね」 「あぁ、最低だ」 「あのさ、聞くのが怖いんだけど、何か緊急事態あった?」 …

  • ラジオネーム・放課後のジェットリー

    「さっきの電話、意味わかんねぇよ。一応買ってきたけど、何でケーキが必要なの?」 「話した通りだよ。大切なイベントだから、非日常アイテムが必要なんだよ」 「それで、何でケーキなの? お前、甘いもの食えないじゃん」 「いいんだよ、なんだって。雰囲気なんだから」 「だったら、プリングルスとペプシでいいじゃん」 「それじゃあいつもと一緒だろ。今日は特別なんだよ」 「何それ。まぁ、はい。ケーキと、一応いつものも買ってきたよ」 「ありがとう。気が利くねぇ。気が利き過ぎて、怖いよ」 「どーせ後で腹減ったとか言うじゃん。あれ、聞いててうるさいんだよ。あとケーキ選ぶの面倒くさかったから、今日は割り増しで千円な」…

  • 夏をやってない

    ハッとして目を覚まし 通りに近い窓を開ける 緑を覆う色あせた枯れ葉 喉に飛び込む息は冷たい 薄く横に伸びる雲 縦に登れず空を這う 確かにここにあった夏 それなのに 僕は夏をやってない バケツに飛び込む手持ち花火 生み出す音が夜を鎮める 咲き終わりに残る白いライン 暗闇に写す向日葵の花びら もう 何年見ていない? 市営プールの帰り道 夕焼けに交わる塩素の匂い 天に浮かんだ七色の曼荼羅 オレンジの雲は何にでも化ける 灰色へと続く通学路 遠くに見える工場の煙 もう 何年帰っていない? 特別が日常になり 御馳走への距離が縮まる 不便や貧困を崇めない でも スイカに種があったっていい 僕は夏をやっていた…

  • 衝動は、ここにいる

    クリップで留めた感情は 夜を越えない 湧き上がる衝動と会話がしたいから 柔らかいクッションは取っ払った 遠慮なく飛び込む刺激は たまに痛いほどだけど とにかく朝を迎えたかった 喜怒哀楽に 邪と欲 そのままの形で出てきた思いに 自分の全てをぶつけたい 頭を強く揺さぶる曲に 深く引き込まれる文章 ハッと心をえぐる絵に 過去を連れてくる写真 胸の内側が溢れたなら 下手なステップで床を滑ろう 記憶がうまく収まらないなら 意味もなくハイウェイを飛ばそう 何かが背中をつつくなら 家の周りをグルグル回ろう 仕事帰りに見つけた景色を 追いかけたっていいんだ 大丈夫 ご飯の支度が遅れるだけだ 絵が描けないから文…

  • 取っ払う

    枠には入れなかった 入らなかったのではない 入れなかったのだ はじき出されて 何を想う 普通を横目に 何を想う 付いたレッテルはどうでもいい それが意味をなさない事は ここまで生きて身に染みた 付けられたレッテルも気にしない そんなものは 他人にひとときの優越感を与えるだけだ でも 人は忘れていく どんどん気にせず 忘れていく ならば すり寄った時間は幻か 抱えた苦悩は無駄死にか 共存しようと付けた飾りは もはや無用の長物か だったら 枠には収まらない 収まれないのではない 収まらないのだ ネクタイは締めなくていい いつかそれで首を括るのなら 傘は差さないでいい いつかそれで他人を突くのなら …

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