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  • 蛇穴を出づ

    『ロニョン刑事とネズミ』 ジュルジュ・シムノン著 宮嶋聡訳 図書館の新刊棚に残っていたので借りる。帯の惹句に「メグレ警視」シリーズの番外編とある。表題にロニョン刑事とあるが、彼が活躍するわけではない。どちらかというと彼は間抜けな役回りで、事件を解決するのはリュカ警視だ。 ネズミと呼ばれる浮浪者が道で大金を拾ったと、届け出る。実は道で拾ったわけではなく、たまたま出会った死体から転がり落ちたものだ。遺失物として届ければ、一年後にはまるまる手に入ると踏んでのことで、死体は無視した。ところが、死体は消えてしまったのかニュースにもならない。殺されたのは誰か。挙動不審なネズミにロニョン刑事がつきまとう。果…

  • 春の海

    しまなみ海道の旅 新幹線 往路 マイナーな駅(岐阜羽島)からマイナーな駅(新尾道)への切符手配に苦労したことは、先に書いた。こだま、のぞみ、こだまと二回も乗り換えがある。乗車時間2時間半。外国人の同乗者が多い。 トンネルをぬけて桜やまた桜 尾道ラーメン 新大阪駅での大慌ての乗り換えの果てにやっと着いた新尾道駅。申し訳ないが岐阜羽島駅より寂しい。駅前でレンタカーを借りて、まずは近くの有名ラーメン店で昼。「尾道ラーメン」は当地の名物とのこと。豚骨スープの醤油味で当方にはすこし辛い。背脂が浮いている濃厚な味で、麺は細麺。正午前だったのですぐに入れたが、出る時には待ち客がかなりあった。 新尾道駅 向島…

  • 紫木蓮

    映画「リトルフォレスト」夏秋冬春を観る 桜は散り初めだが、木蓮はあっという間に若葉に変わってしまった。昨日は大雨になるというので、急遽花がらを片づけた。濡れればへばり付いて手に負えなくなると踏んでのことだ。前もって手伝いを頼まなかったので、仕方なく一人でやる。連れ合いは大量の夏落葉と剪定木の始末をしているので、こんなことまでは頼めない。落花だけで大きな塵袋にいっぱいあった。すっかり変色してはいるが、匂いは甘い。堆肥山に積んで、土に返してやる。まさに、花の盛は短くて・・・である。うちに来て半世紀はなるだろうか。思わぬ大木になって、落ち葉の始末から、剪定と世話が大変だ。リビングのワックスがけをした…

  • 巣立ち鳥

    旅プラン作りとミステリー 来週にも出かける手筈にした。初めは車を使っての近場でもという気もあったが、「もう何回行けるかわからんよ。行きたい所があるなら今のうちだよ。」というTの言葉を受けて新幹線を使っての旅にした。目的地は「しまなみ街道」で、今回は古墳ではない。国宝もあるが、メインは海の景色。晴れでなければつまらないと、ギリギリまで出立予定を思案したが、果たしてどうだろうか。 ふらりと気まかせ足まかせで、大人の旅を楽しむ方も多いと思うが、当方は毎回きっちりと日程を組む習い。どうせなら目いっぱい観てきたいという貧乏根性か、昔の職業意識か、まあ、このプラン作りが楽しみでもあるからだ。あまり予定を詰…

  • 本が読めないときの 『続窓ぎわのトットちゃん』 黒柳徹子 豪雨の一夜が明けた。いつ以来か、リビングの暖房はエアコンだけ、ファンヒーターは点けなかった。今日は暖かさを通り越して暑そう。花粉の飛来も多いようだ。この所ずっと鼻炎がひどく、春の嬉しさの反面、辛い花粉症と、複雑な気分だ。 ちっとも本に集中できないので、編み物に精を出したら、仕上げ段階で失敗。少し解く羽目になってこれもやる気をなくした。 こういう時には、この本を。ベストセラーで予約者が多かったが、順番が巡ってきた。Tが「読書のリハビリかあ」って言ったけど、そうなんだ。読みやすくて考えなくていい。徹子さん、リハビリにしてごめんなさい。 さて…

  • 春の雷

    門出の報告 かなりの雨の中を娘一家の来訪。正月以来だ。今回は下の孫が大学に入ることと、上の孫の就職先が内定したという報告だ。新しい門出はもちろん喜ばしいが、もうそんな歳になったかという感慨も深い。トシヨリの十年は変化に乏しいが、子供の十年は驚くほどの変化だ。十年前といえば、お風呂にお魚釣りを持って入っていたのに・・・。 みんなでお祝いを兼ねた食事後、珍しく二つか三つ雷が鳴った。 門出に(かどいでに)銅鑼打つごとし春の雷 連翹は満開

  • 春疾風(はるはやて)

    祭のごとく過ぎにけり 異変に気づいたのは、朝ネットを繋げた時である。いつものようにまず、アクセス解析を見て驚いた。だいたい朝のうちはほどんど訪問者がないのが普通。ところが、朝から随分の訪問者、思わぬ外国(ウクライナ)からもある。いやいやどうしたのだろうとTに告げる。 それで、はてなのサイトの「きょうのはてなブロブ」に取り上げられたことが判明した。すごい影響力である。俳句と読書感想と時々の外出記録。俳句は月次で取り上げる本はマイナー。どう思っても読んでくださるのは希少な方々と認識している。分けても欠かさずコメントを書いてくださる「ふきのとうさん」のような方は、本当にありがたく貴重な存在。 石田波…

  • 志段味古墳群を見に行く 名古屋市守山区上志段味というエリアには古墳時代を通じて古墳が造られつづけ、66基もある大規模な古墳群となっている。庄内川の河岸段丘上で、この川を利用して勢力を伸ばしたこの地の首長やその配下の人々の墳墓である。 最大なのは「白鳥塚古墳」。墳長115メートルで愛知県下第三位の大型前方後円墳。最も古く4C前半の築成。大半が樹木に覆われているが、後円部に登れる。後円部頂部に石英が敷かれていたが、かっては墳丘全体が石英で覆われていたらしい。「白鳥塚」の呼び名もそこからきたと思われる。 綺麗に整備されているのは「志段味大塚古墳」5C後半の帆立貝式古墳。葺石を貼り付け、円筒埴輪が復元…

  • 春落暉

    映画『パーフェクトディズ』を観る 言わずと知れたヴィム・ヴェンダース監督、役所広司主演の映画である。U-NXTで配信されるのが待ちきれず大雨の中映画館に出かけた。家族揃っての鑑賞で、初めての体験だ。 さて、映画である。文句なくいい映画で、今も劇中の音楽を聞きながら、余韻に浸っている。 毎日早朝に目覚め、日の出とともにトイレ掃除の仕事に出かける。仕事はきっちりと手を抜かず、木漏れ日の写真にこだわり、小さな植物を育てる。テレビやネットの情報に振り回されることもなく、労働の後は少し飲み、就寝前には静かに読書をする。「丈夫な体を持ち 欲はなく 決していからず いつも静かに笑っている。」平山とはそんな人…

  • 『隆明だもの』 ハルノ 宵子著 久しぶり自前で購入した本。ハルノさんの本の面白さは『猫だましい』ですでに納得済みだ。Tと連れ合いと三人で回し読みするつもり。 昨日の朝日の読書欄の平川克美氏の書評に立派なことは書かれいるので、ここではどうでもよい感想だけ触れたいと思う。 私たちの学生時代は、吉本さんは今の「推し」のような存在で、「言語にとって美とはなにか」とか「共同幻想論」とか、随分流行っていた。連れ合いなんかも読んでいたようだが、私はちっともわからなかった。後年、Tが吉本さんの「推し」になり、うちに吉本本が溢れてからはわかりやすいものを多少読んだくらいである。 そんなこんなで吉本さんと言えば、…

  • 雪解

    『むすんでひらいて』 玄侑 宗久著 Tから回してもらったものだが、なかなか難しくて半分もわからなかった。 玄侑さんに、哲学が専門という大竹さんがいろいろたずねるという形式で、書かれた本である。「いのち」とは何か、「死」とはどういうことなのかと、おぼろげながら自分なりの理解が出来た程度で、これでいいのかわからない。わかったことを書けばいいとTに言われて、わかったところまでを記録しておこうと思う。 玄侑さんは戒名の頭に「新帰元」と書かれるという。「元気(生命エネルギーの本体)に元気を与えられて生きてきた器の寿命がつきたので元気に帰っていく」という意味。つまり「死」とは「ある種の生命エネルギーがエネ…

  • 春日和

    『砂のように眠る』 関川 夏央著 関川夏央氏が好きである。岡武さんのブログで知って、図書館の閉架から出してもらった。副題に「むかし『戦後』という時代があった」とある。戦後・・・1950年代後半から70年代始めまでの時代風景の概観である。 小説と評論の抱き合わせで、構成としてはめずらしい。小説は著者自身を投影したような、ややペシミスティックな人物の一人称がたりで、評論の対象となるのは次のものだ。 『山びこ学校』・石坂洋次郎作品・『にあんちゃん』・小田実『何でも見てやろう』高野悦子『二十歳の原点』田中角栄『私の履歴書』 小説も評論対象作品もまずは懐かしかった。 小説では、関川氏とは四歳違いだから、…

  • 二月尽

    『生き物の死にざま はかない命の物語』 稲垣 栄洋著 図書館で自然科学(4類)を借りたのは初めてではないか。以前読んだ『老年の読書』で気になった一冊。 身近な生物(植物も含む)の一生を概観、彼らが「限られた命を懸命に生きる姿を描いた」本である。 切ないのは牛である。子を産んでないメスは最高級の柔らかい肉質で重宝され、子供を産んだメスや乳用牛のメスも役に立たなくなればやはり肉になり、オスは生まれながらに肉用でどんな牛に生まれても最後は肉になる。この本にはないが毎日のようにお世話になっている豚だって同じ運命だ。 動物だけじゃない。この二三日、ガリガリと引っこ抜いた草だって、声はださないが神経めいた…

  • 蕗味噌

    冷たい雨の一日 雨の日は落ち着いて厨仕事ができる。まあ年中暇人だからいつだってできるのだが…。マーマレードは最近6回目を作ったばかりなので、今日は冷凍をしておいたフィリングでアップルパイをおやつに。昨日笊いっぱいに蕗のとうが採れたので蕗味噌も煮る。蕗味噌を作るとこれが好きだった父のことを思い出す。 あと今日は山田太一さんのドラマ「今朝の秋」を観るつもりだったが、止めた。昔テレビで観て大泣きした記憶があり、躊躇したのだ。代わりにだらだらとネットで宿を調べて、時間を費やした。暖かくなったら出かけよう、今はそれが 目当てだ。 遠慮しつつ父の催促蕗の味噌 勤めと子育てでいつもバタバタしていた娘に、遠慮…

  • 下萌え

    『ペンギンの憂鬱』 アンドレイ・クルコフ作 沼田恭子訳 ウクライナの作家である。この本はロシア語で書かれたらしいが、最近の執筆はウクライナ語に変えたと新聞で読んだ。1996年の作で舞台はソビエト連邦の崩壊後。独立はしたものの国家的には混乱が続き、汚職や腐敗があり、マフィアが暗躍していた時代らしい。 もちろん、この寓話めいた不思議な話は、そんな時代を背景にしている。 憂鬱性のペンギンと暮らす売れない小説家のヴィクトルは、売り込みに訪れた新聞社から、「死亡記事」を書くことを勧められる。そのうちまだ亡くなっていない人の追悼記事をあらかじめ書くという仕事を任され、指定された著名人の追悼記事を書きづづけ…

  • 春一番

    『道長ものがたり』 山本 淳子著 今話題の「藤原道長」についての本である。巻末にきちんと年表も参考文献もついた学者の方の書であるにもかかわらず素人が読んでも実に面白かった。もちろん書かれるのはテレビとは一線を画した道長の実像だ。 道長は藤原兼家の三男だが、左大臣源雅信の倫子(テレビでは黒田華)に婿入りしたことから幸運は始まった。(平安期の結婚は男が女の元に入る婿入り婚)道長自身も「男は妻柄なり」と正直だ。さらに二人の兄の早世や甥たちの不祥事で思いがけなく公卿第一の地位に三十歳で就任、以後着々と階段を登り、栄華を極めた。倫子となした四人の娘はすべて入内させ、三人が中宮となり、三人の天皇の外戚とな…

  • 啓蟄

    陶片と古墳、グラスアートを見に 春めいた陽気に誘われて久しぶりにお出かけ。東濃の土岐市と多治見市である。 土岐市美濃陶磁歴史館が、このたび建て替え前の休館に入るということで、収集の陶片2000点の展示会を行っている。 土岐市の元屋敷という古窯は荒川豊蔵に発見された安土桃山時代の窯跡である。16世紀末から17世紀初頭まで、当時の茶人にもてはやされた「美濃桃山陶」の中心地であった。跡地から出てきた大量な志野、織部、黄瀬戸、瀬戸黒はかってのゴミだが、今や歴史を語る重要文化財である。 失敗作(ゴミ)といってもどこがと思うような完成品もある。花器・茶道具・茶懐石の器がほとんどで渋味の色合い、斬新で飄逸な…

  • 春の風

    近頃観た映画 ヒユーマンドラマというのは、「よかったなあ」と思うだけであまり何かを語りたいものではないが、最近観た二本の映画について記録のためにメモすることにした。 『さいはてにて やさしい香りと待ちながら』 2015年公開の邦画。ただし監督は台湾人のチアン・ショウチョン(女性)、主演は永井博美。 四歳の時父母の離婚で別れた父親を、彼が住んでいた海辺の廃屋を改装したカフェで待ち続けるという話である。観終わって気づいたのだが、ロケ地が石川県珠洲市の木ノ浦海岸。調べると当然ながら今回の地震で大きい被害があった地域のようだ。映画のモデルになったカフェは倒壊を免れたようで、地域の人の憩いになっているら…

  • 春寒し

    『歌枕』 中里 恒子著 岡武さんがブログで取り上げていた本。どんな文脈での紹介だったかは忘れた。 古風な文体と筋書である。初めての言葉がでてきた。肉池とは前後から予想ができたが、黄白とはいったいなんだろう。お金のことを言うそうで、初耳である。麦藁手の本歌というのもあった。麦藁手も本歌もわかるが、麦藁手の本歌となるとわからぬ。本物ということかと勝手に想像する。 骨董に入れ込みすぎて禁治産者となり、本宅から放逐された老年の男と、彼を慕って付いてきた三十も歳の離れた女の話だ。七年という歳月を世間から離れてひっそりと暮らした二人だが、ある日突然出先で男は倒れ、そのまま死んでしまった。当然だが、女は別れ…

  • 春の雪

    『灰色の魂』 フィリップ・クローデル著 高橋啓訳 話は、1917年。ドイツとの国境に近いフランスの片田舎での殺人事件から始まる。川面に浮かんだ被害者は村の料理屋の十歳にも満たぬ末娘。「べっぴんさん」とも「昼顔」と呼ばれた妖精のように美しい少女。 いたいけない少女を殺めたのは誰か。背景には1914年に始まったドイツとの戦争がある。峠の向こうには硝煙が立ち上り、街道には前線に向かう兵士の隊列と送り返される傷病兵が溢れている。 シャトーに閉じこもり、孤独に職務だけを遂行する検察官。欲望にまみれ庶民など糞としか思わぬ判事、出征した前任者に代わり村の小学校の教師になった美しい若い女性。そしてこの物語を一…

  • 春隣

    『日本蒙昧前史』 磯崎憲一郎著 先週今週と、心に引っかかっていた内視鏡検査が終わった。概ね問題はなかったが一部生検があり、詳しい結果を聞くのは今月中旬となる。案じていた胃カメラは鎮静剤の使用を選択したため眠っている間に全て終了、全く苦痛はなかった。むしろ検査当日よりそれまでの食事制限や飲酒制限(さほど酒飲みではないが、毎夕食の少々のワイン習慣)にうんざりした。苛ついている当方からのとばっちりに戦々恐々としていた(?)連れ合いも、まあ、終わってよかったとホッとした様子。 さて、上記の本である。1970年(S45)から1985年(S60)までの蒙昧前史である。前史というのは恐らくバブル時代(198…

  • 『友ありてこそ、五七五 』東京やなぎ句会編 多士済済の東京やなぎ句会も、小三治さんの逝去で2021年に終焉したことは既に触れた。出版当時(2013)はまだお元気の方も多いが、宗匠光石さん(入船亭扇橋)が脳梗塞で入院、翌年には変哲さん(小沢昭一)の逝去と有能メンバーを欠いた状態だ。 この本は、会員のエッセイやら思い出を語りながらの句会、光石さんの全句から好きな句を選んだものなど、お二人への想いを纏めたものだ。会員だけでなく黒田杏子さんや中原道夫さん、金子兜太さん、鷹羽狩行さん、大牧広さん、水原春郎さんの文と選句もある。 句会はいつもながら軽妙洒脱な掛け合いで読んでいて楽しい。こんなにお喋りしてい…

  • 『ガザに地下鉄が走る日』 岡 真理著 一昨日の新聞によれば、ガザ保健省は、2023年10月7日からのイスラエルの攻撃での死者は2万5105人、負傷者は6万2681人となったと発表した。1948年のナクバ(イスラエルの建国でパレスチナ人が国を追われた)以降最大の殺害である。イスラエルはハマースのテロに対する報復だというが、内実はそうでないらしい。去年だけでも6月までに600件のイスラエルによる挑発行為があり、10月までに275人(内子供47人)の殺害があったと岡さんは語る。(IWJの岡さんの緊急講演会)さんざん痛めつけておいて、声を出さざるを得ないように仕向けておいて、殺戮のきっかけにするこの行…

  • 冬木立

    『映画 Dr.コトー診療所』を観る 久しぶりに映画を観る。去年公開した映画だ。知らなかったが漫画が原作で、何年か前に前作が発表されているようだ。これは前作の後日談ということで、前作をしっている視聴者には懐かしさもあろう。一言で言えばヒューマンドラマでハラハラしたが、最終的にはハッピーエンド、ほんわかした気分で見終わった. 岡武さんが先日のブログで、山田太一さんの訃報に関して時任三郎はどうしちゃったと書いておられたが、この作品で久しぶりに顔を見た。ネタバレになるから内容には触れないが、与那国島と思われる南の島の風景がとてもいい。 15度にもなる陽気だからバスで図書館に。今日は収穫大なり。東京やな…

  • 初場所

    『十二支動物誌』 宮地 伝三郎著 その2 ネズミ ねずみ算というがそんなに増えるものではない。食料を漁るうえで排他的なわばり制がネックになる。ネズミの特徴はのみのような門歯で一日で0・5ミリも伸びる。目はは駄目だが、耳は聡く口ひげも敏感。鼻については記述がないが、去年正露丸の臭いで追い払いに成功した。ネコがネズミを捕るのは、本能ではなく、後天的社会学習らしい。ネズミは嫌われてきたが、実験動物としてヒトに貢献している。 ウシ 草食動物ではなく本当は食肉性だという。つまり、草を食べるのはウシの胃の中のバクテリアや原生動物でウシはこれらの微生物やその排泄物を栄養源としているというのだ。日本の神話には…

  • 『十二支動物誌』 宮地 伝三郎著 その1 年始のチコちゃんでの十二支についての新知識によれば、十二支は中国殷代に始まり南アジアや中東、遠くはトルコまで広まっているらしい。十二支の顔ぶれは国々で多少違いベトナムではウサギの代わりがネコだったり、中国ではイノシシではなく豚だったりするという。 この本はもちろん日本の十二支のメンバーについてのお話である。今回は十二のうち六について初めて知ったことを中心にメモしておきたい。 ウマ 原生馬はほとんど絶滅。ただ蒙古野馬が純血に近いといわれる。ロバほどの小馬でこの国の木曽馬や都井岬馬、トカラウマは歴史時代に渡来したこの系統。戦争用に大型化が図られた。『魏志倭…

  • 着ぶくれ

    気が乗らない 図書館から何冊か借りてきた。谷川さんとか井上荒野さんとか、読み始めるが、ちっとも面白くない。読み散らしているうちに、何で読んでいるのだろうと嫌になって放り出してしまう。 Tの本棚から古井由吉自選短編集を出してくる。辛うじて「秋の日」を読み終える。変な話。歯痛から人生を見失った男が二十年ぶりに正気に戻る話だ。何を意味するのか、オバアにはわからない。 着ぶくれて体操らしきことをする 何度も転がしている内にすっかり頭に棲みついてしまったが、私の句ではないはず。しかし、誰の句かわからず。多分朝日新聞俳壇で読んだのかも知れぬ。 今の私にぴったり。毎日🐙体操をしている(連れ合いがそう命名)。…

  • 松の内

    『桃太郎のユーウツ』 玄侑 宗久著 Tに借りて久しぶりの小説読みである。表題作を含めて6編の作品集。玄侑さんに似合わずなかなか毒のある作品集だ。少しまえに読みかけたエッセイ集『禅のアンサンブル』で、「我が身の経営にとって最も重要なのは自分の機嫌の管理だということだ」と書き、鼻歌を奨励した同じ人とは思えない。 6編は比較的穏健な話から始まり(それでも暗い)、山寺での一家惨殺事件を背景にした話、コロナの蔓延から変貌した未来の社会の話、寓話の形をとったテロの話と回を増すごとに重苦しくなる。 確かに東日本大地震からこの方、コロナによるパンデミック、気候変動、世界各地での戦争そしてまたまた能登地方での大…

  • 三日

    元旦のなゐまだつづきはや三日 新年の挨拶も憚られる思いもかけぬ年初めとなりました。被災された方々のことを思うと正月行事も憚られるのですが、昨日は恒例の娘一家との新年会と初詣。今年は孫の就職活動と大学受験ですので、神頼みをしてきました。 写真の龍は当地の郷社の神殿に巻き付く龍で、左右一対あります。350年前の物と言われています。あまりに見事な龍で、川の水を呑みに夜な夜な出かけたという伝説があり、左(飛騨)甚五郎の作と言われています。 今年もよろしくお願いいたします。

  • 去年今年

    『老年の読書』 前田 速夫著 世界各地で争いは続き、いつの間にやら武器輸出、今や戦争は他人事ではなくなりつつあり。一方、この国の相対的地位はあらゆる面で落ち続け、かつての勢いはどこにもない。それでいて、政治は相も変わらず、裏金やら買収やら、日本製品の信頼性はどこに消えたかという大規模不正。小さな暮らしを守るにも、物価は高止まりして、暮らしにくさは、この上なし。 何の力も知恵もないトシヨリだから、せめて自分の領域だけは納得していたいと、暮らしの手抜きを避けてはいるが、寄る歳波にはいかんとも。疲れた疲れたとぼやけば、物事はだいたいでいいのやと宣う。何やかんやで帳尻が合わぬのを、無理に合わせて今年も…

  • 年の瀬

    今年の三冊 だんだん衰えてきたのか、興味が持てなくて本が読めない。今年は何時もの三分のニほどだ。こんなことで「今年の三冊」もないもんだが、自分の記録として書いておこうと思う。以下三冊。 世界は五反田から始まった 星野博美 縄文文化と日本人 佐々木高明 ある補充兵の戦い 大岡昇平 全体としてフィクションは少なく、あまり好みじゃないんだなと思う。昔はこれで文学好きだと思っていたから笑わせる。よっぽど文学より史学をやればよかった。新聞の投書欄に昔購入した筑摩の文学全集70巻を読んでいるという高齢者の投書があった。この文学全集は当方も旧友も持っているが、(古本でも売れないから仕方なく持ってる)お互いに…

  • 柚子湯

    『裏日本的 くらい つらい おもい みたい』 正津 勉著 今朝ー1・7度、この冬一番の冷え込み。奥美濃の積雪は40センチと昨夜のニュース。 奥美濃と隣り合った筆者の産土(福井県大野市)も、多分どっしりとした雪ならん。 「ここがいがいに大陸に近くあって、上代より交易を盛んにおこない、文物また人流を受けいれること、どんなに豊穣な地であったか。・・・それなのにどうして利の無きがごとくされたか。」 著者の苛立ちと土地愛で、ここに紹介された多くの先人たちの「『裏の心の所産たる詩と文』は、もとより惹かれたかの地へのさらなる憧れと興味を掻きたててくれた。 裏日本とあるが、対象は若狭から北越まで。それぞれの土…

  • 風花

    『日本人の源流』 齋藤 成也著 NHKBSで「日本人とは何者なのか」という番組を観た。DNA解析を通じて、日本人のルーツに迫ろうという内容で、とても面白かった。 最初に日本列島に棲み着いた縄文人と稲作文化を伝えた弥生人が混血して現日本人の元になったこと、混血の割合がアイヌや沖縄の人と列島人とでは大きく違うこと、こういうことは今までも聞いていたことだが、今回の番組で初耳だったのは、古墳時代になって大陸からの渡来がさらに進み、そこから現在に繋がる祖先集団が誕生したとする説である。確かに古墳時代頃、大陸からの渡来はかなりの規模ではなかったかと、当地の歴史を概観しても推理できる。(当地の後期古墳の多く…

  • 枯葉

    『またたび』 伊藤 比呂美著 三日ほど前から右側の肩甲骨の下辺りが痛くて、鎮痛剤のお世話になっていたが、どうやら回復。今日は陽気も暖かいからと(異様といっていいほどの暖かさ)窓拭きに奮闘する。下の部屋部屋の窓は、どうにか拭き上げたが、二階は知らない。物置と化している部屋や男性陣の個室までは責任外だ。拭き上げた窓に映る白髪老婆にギョッとするが、紛れもない私。いつも自己認識が甘いと言われるが、不意に映る姿は、正直だ。 さて、上記の本は近頃文庫になったが、初版は2000年。伊藤さんの中年の頃の「食」にまつわる話。いつものように歯切れのいい文章で読ませられる。アメリカ在住の頃なので、白いご飯と明太子や…

  • 時雨

    『入り江の幻影』 辺見 庸著 旧友に薦められて読んだ。エッセイとフィクション、重い内容だ。 去年、タモリさんが「2023年を新しい戦前」と捉えたという話を聞いた時、さすがタモリさんだと感心もし納得もした。著者はそれに触れて、今の覚束ない時代をこのように書いている。 「戦前というからにはこれからが戦争である。それは『便所の蝿のやうなものでも知っている(尾形亀之助)』のだ。恐らく、もう手遅れである。」 ロシアの侵攻に触発されるように安全保障上の懸念という考えはあたりまえになって、今や9条の理念は風前の灯だ。 「平和は一瞬である。その一瞬がいまなのだと思う。」 上記の文章が上梓されたのは、今年の六月…

  • 冬ざるる

    『グレイラットの殺人』 M・W・クレイヴン著 東野さやか訳 新聞の文庫本案内で見つけて読み始めたのはいいが、709ページもあり随分時間がかかってしまった。つまり夢中になるほど面白かったわけではない。 要は復讐譚である。犯罪現場に「グレイラット」の置物を残して置く手口など古典的な雰囲気もある。だが、犯罪者側も捜査側もインターネットを駆使し、背景に首脳国会議やアフガニスタン情勢が描かれるなど、まさに今、現在のミステリーでもある。 これが今のイギリスやアメリカの現状なのかと思ったことだが、捜査の中心者は国家犯罪対策庁のポーだが、彼の天才的アシスタントも、育休中の上司も、共に捜査をする保安庁の職員も、…

  • 毛糸編む

    ベストを編む 去年、身頃を編み上げておいたものの仕上げをする。 もともとカーデガンを編んだのだが、太い毛糸のせいか重くて気に入らなかったので、思い切って編み直したのだ。同じパターンで二着ほど編んでおり、難しい編み方のものではない。チュニック風の長ベストにスヌードを一体化したようなデザインで、とても温かい。 いよいよ寒くなったので出番は多いと思う。 三日ごとに買い出しに出かけているが、物が高くなったのには閉口する。ネットでも定期的に買っていたものが、いつのまにか値上がりしてるではないか。内閣支持率がどんどん下がっているようだが、暮らしにくさが増しているのは確かだ。 毛糸編む消息絶えし友思ふ

  • 木守柿

    厨仕事と映画『ぼけますから、よろしくお願いします〜おかえりお母さん〜』 常備菜用に「花豆」を炊き、新生姜でジンジャーシロップを作る。 「花豆」は初夏に信州に出かけた時、八ヶ岳麓の富士見町の道の駅で求めたものだ。水に浸したらびっくりするほど膨らんで、まるでカブトムシの幼虫(Tの言葉)のようになった。いつものようにふきのとうさんに教えていただいた炊き方で調理すると、白あんの詰まった小粒のおまんじゅうみたいな食べごたえで、満足する。 ジンジャーシロップは、連れ合いの作った生姜の活用。甘酢漬けが好まれないのでシロップにする。炭酸水で割れば、ジンジャーエールだが、お湯割りでホットも美味しい。煮出した後の…

  • 紅葉

    滋賀 永源寺に紅葉狩 今年の紅葉狩はどこにするかという話になり、半世紀も前に職場の親睦会で訪れた「永源寺の紅葉」を思い出す。 最近行き慣れた隣県でもあり、朝から洗濯二杯をして、その後の出発となる。 「永源寺」は臨済宗永源寺派の本山、愛知川の上流、山懐に寺域をもつ大寺である。いくたびかの戦禍で室町期当初の堂宇は失われ、今は江戸期以降のものがほとんどだ。ヤマモミジの紅葉で名高い。 のっけから百五段の階段で、麓で借りた杖にすがりてやっと登る。思ったよりの人出。なによりも、こんなところでも響く異国語。派手な衣服で大声で騒ぎながら、紅葉を背景にポーズをとっておられる。来ていただいているからというが、どう…

  • 黄落

    『ヤマトコトバの考古学』木村 紀子著 その1 「ヤマトコトバ」とは「大和政権を担った人々の言葉」。万葉集や風土記、記紀などに残った古来の和語と筆者は定義する。いくつかの言語圏との出会いと交わりがあって混成融合したものだという。 今も使う言葉の由来や成り立ちがわかり、なかなか面白い本だが、簡単に読み切れない。三分の一ほど読んだところで、自分用のメモとして記録。 オトコとオンナが対になるまで 最初ヲトコに対するのはヲトメ、うら若い未婚女性をいう。コはヲトコ・ムスコ・ムコというように男性を表し、メはヲトメ・ムスメ・ヨメというように女性を表す。 ヲトコ・ヲトメに対してヲグナ・ヲミナという言い方もあり、…

  • 七五三

    映画『魂のまなざし』を観る 2020年フィンランド映画。フィンランドの国民的女性画家(らしい)ヘレン・シャルフベックの伝記映画。 老齢で頑迷な母親と暮らしながら孤独に独自な創作活動を続けていたヘレン。ある日画商が訪ねてきて、彼女の絵の魅力が発見される。都会での個展、競売、転がり込む大金は家長のものと主張する兄。19世紀の話で、男性優位で抑圧的な社会だ。 そんな中ヘレンは画商が伴ってきた年下の青年、エイナルと親しくなる。彼女の絵のファンであるエイナルとの触れ合いは、描く活力にもなり、密かな恋心も芽生えさせるのだが・・・。 静謐な画面が美しい。斜めに差し込む光に照らし出された画室は、まさにフェルメ…

  • 小六月

    講演『美濃の終末期古墳と群集墓を考える』 中村正幸講師 いつもの市の埋蔵文化財センター主催の講演会である。今回も古墳についてとあって、トシヨリ二人はネット予約をして、出かける。 「古墳とは何か」という定義から始まって、「横穴式石室」、「群集墳」の説明。ついで市内の「群集墳や横穴式石室古墳」の話であった。終末期古墳というので今回話の対象になったのは6C半ばから7C半ばまでぐらい、中央でいえば飛鳥時代、推古帝から聖徳太子の時代だ。 岐阜県(美濃地方)は中央との結びつきが深く、東に伸びる大道(後の東山道)なども通り、墓造りも中央の傾向がすぐに反映されていったらしい。 つまり、墳墓は前方後円墳から円墳…

  • 鹿威し(ししおどし)

    南濃までちょっと 海津市の「アクアワールド水郷パークセンター」のバフウカエデの紅葉が見頃との新聞記事を見て、またまた出かけることに。(遊びに行くのはすぐにまとまる)県内だが南濃なので、高速を使っても一時間はかかる。 アクアワールド水郷パークセンター 国営の木曽三川公園のひとつ。いつ頃できたのだろうか。ちょっと古びてはいるが、立派な施設である。集会場やら宿泊棟が廉価で利用できるようである。もちろん入場料は無料。いい事ずくめに見えてあまり利用されているようには見えない。今日の入場者もトシヨリがちらほら。まあ平日だからそんなもんかと思いつつも、もったいない感しきり。 肝心の紅葉だが、新聞掲載は先週の…

  • 冬に入る

    『さみしいネコ』 早川 良一郎著 池内紀さんの編集による「大人の本棚」の一冊である。能文家の池内さんの折り紙付きだけに、気持ちのいい文章だ。洒脱で軽妙、ユーモアがありしゃれている。 池内さんの「解説」によれば「五十歳を過ぎて文筆に目覚めた人」らしい。大正生まれ、定年間近から定年後の身辺雑記を書き、余生十二年で亡くなった。刊行された二冊の内、これは定年後の日々を眺めたもの。パイプを磨き、銀座をぶらつき、チョビ(愛犬)と散歩して「いつものほほんと澄んだ空気のかたまりのよう」(池内さんの評)に生きた人。 余生十二年とは、今ならいかにも短いではないかと思うが、「長すぎもせず短すぎもせず、わが手本と考え…

  • 文化の日

    映画を二本観る 『キネマの天地』 どちらも女性が主人公だが、時代も映画手法も大きく違うし、鑑賞した手段も違う。しかしどちらも楽しめて★4つといったところか。 『キネマの天地』は昨日、BS映画で放映したもので、ご覧になった方も多いにちがいない。1986年製作の話題の映画。脚本は井上やすしと山田洋次、監督も山田さんである。松竹映画の記念的作品で、往年のスター達が目白押し。こんな方がという人がちょい役で出ていて懐かしいやら驚くやら。 田中小春という下町の少女がスターへの道を駆け上がる話だが、その小春役は有森也実。彼女はともかく助監督と覚しき青年の中井貴一がいい。若い頃の彼の映画を観たことがなかったが…

  • 秋深し

    吉野・飛鳥・奈良紀行 2 キトラ古墳壁画公開の見学 旅の前、ネットを渉猟していて「壁画公開」を知る。早速申し込み、旅の日程に加えた。 キトラ古墳「四神の館」 「キトラ古墳」は「高松塚古墳」に続いて発見された7世紀末の壁画古墳である。艶やかな人物群の高松塚古墳が、外気に触れて黴が出てしまった教訓から、壁画への対処は実に慎重に行われた。今回ここの資料館で見たビデオや展示資料に、その大変な努力が伺われる。最終的に選択されたのは、壁画を描かれた漆喰壁ごと剥がすという方法で、剥がしたものを継ぎ合わせ保存処理したものが公開さているのだ。年4回実施され、今回は北壁玄武で比較的一番はっきりしているものだ。それ…

  • 秋澄む

    吉野・飛鳥・奈良紀行 金峯山寺御開帳 吉野の金峯山寺の本尊蔵王権現三体を拝観したいというのが、長い間思っていたことである。二十三年前の秋にお参りした時は、秘仏のご本尊にお目見えすることは出来なかったが、今回は国宝仁王門の修理に伴い特別公開されるというのだ。前の参拝は近鉄で出かけたのだが、今回は家族に無理を言って車で出かけることにした。疲れも考えて周辺を廻る二日間の予定である。 吉野へは伊賀を経て、大宇陀から入る。宇陀は万葉集にも出てくる阿騎野の地で、人麻呂の著名な歌「東の野にかぎろいの立つ見えて返り見すれば月傾きぬ」が詠まれた土地である。山間に落ち着いた家々が点在し、日本の原風景のような懐かし…

  • 稲の秋

    映画『あなたへ』を観る 高倉健さん最後の映画を観る。お馴染みの降旗康男監督作品(2012年製作)。晩婚で、最愛の妻を亡くした男が、妻の遺言を守ろうと、妻の故郷(長崎県平戸)へ旅をする話だ。旅の途中でさまざまな出会いがある。山頭火の句集をくれた教師上がりという車上狙いの男(ビートたけし)、妻の不倫から逃れるように旅の実演販売に暮らす男(草薙剛)、遭難失踪をして故郷を捨てた男(佐藤浩一)などなど誰もが暗い過去を持ち寂しい。彼(高倉健)もまた、多くを語らなかった妻(田中裕子)の過去に深いわだかまりがある。 健さんはいつものごとく寡黙で真面目な男を抑制的に演じておられる。それにしてもかなり高齢になられ…

  • 秋の暮

    『街道をゆく 耽羅紀行』 司馬 遼太郎著 耽羅とは、済州島の古名である。済州島について読んでみたいと思ったのは、先に朴沙羅さんの『家の歴史を書く』を読んだからである。そこでいくらか知ったが、済州島の歴史や風土に興味ができたからだ。しかし、司馬さんは慎重な人である。隣国の負の歴史ともいうべき悲劇については、あえて避けられた。ゆえにこの紀行文は、沙羅さんの一家の歴史がうまれた騒乱については、全くというほど触れてはいない。 済州島というのは、漢拏山(死火山)という火山が造った火山島だ。見事な裾野をひいた火山が島の中央にある。朝鮮半島と日本列島のほぼ中間点で、暖流に囲まれ穏やかな気候で、広さは香川県ほ…

  • 夜長

    『殺しへのライン』 アンソニー・ホロヴィッツ著 山田 蘭訳 難しい本はちょっと置いておいて、久しぶりにミステリーである。こういう本は同じ500ページでも難なく読める。 今まで読んだ(ホーソーン&ホロヴィッツシリーズ)の一冊である。ホロヴィッツのミステリーは謎解きの面白さはあまりない。読者にいくつかのヒントを提供して、ともに推理していくという展開ではない。最後にふいに意外な真犯人が明らかに成る。それも探偵だけが知り得たヒントで、である。自己を語らないホーソーンという探偵もあまり魅力的とはいえないが、最後に彼の過去に迫る伏線が残されて、これは次に繋がるらしい。 何やかや文句ばかり言っても読了した。…

  • 露の世

    滋賀 竹生島へ 秀吉の城は、今の大阪城の地下七メートルに埋もれているのだという。華美を誇ったその城はどんなものだったのか。竹生島に行こうと思ったのは、そこにかの城の遺構が現存するという興味からだ。 竹生島は琵琶湖のまっただ中に浮かぶ小島で、船で行くしかない。ルートは三つほどあるが、私たちは長浜からの船を利用した。前もって予約をしておいたが、意外と乗船客は多い。マイナーな観光地のせいか外国人の姿はない。 島まで三十分。琵琶湖は海だ。 さて、島に着くといきなりの165の急階段。なにしろ湖上に屹立した花崗岩の巖島で、山を登るしかない。ここで老いを痛感させられたが、なんの助け舟もないから手摺を頼りにひ…

  • 秋の風

    『クワトロ・ラガッツィ 上』 若桑 みどり著 天正少年使節と世界帝国 宣教師が訪れた十六世紀半ばの日本は、戦国時代のまっただ中であった。切腹やら首切りなど血なまぐさい混乱した世情で、民は貧しかった。これをどうしようもない野蛮な民族とみた宣教師もあれば、憐れんで救済に努めて、ここに骨を埋めた人物もいた。 後者のひとりがルイス・アルメイダというポルトガル人。若くして交易で莫大な富を築き、その多くを日本での布教に注ぎ込んだ。彼は科学的教育を受けた人物で、日本で初めての病院を開いて西洋的医療を広めたりもした。これを記念した彼の銅像が大分市にあるというんだが、私は全く知らなかった。 有名なのは、フランシ…

  • 鵙猛る

    妄信と言うけれど・・・正露丸とれんこん ひと月ほど前、何年ぶりかに天上裏でネズ公が走った。嫌だなあ、どうするかなあ、そのために猫さんを飼うわけにいかないし。ネットでどうするか検索する。殺鼠剤か業者に頼むかどれも敷居が高い。そんな中で「正露丸」が効くという記事を見つける。紹介している人も確証はもてないというが、正露丸がいいらしいというのである。あの独特の臭いが忌避剤の働きをするということだ。正露丸で効果があれば、値段的にもお安いし、安全面も心配ない。半信半疑だが、天井裏二箇所に設置してみた。それでどうかというのだが、あれ以来走り回らない。どこかにお引取り願ったと信じたい。Tは妄信と笑うが、妄信で…

  • けふの月

    久しぶりの猫ちゃん 夕方散歩に出かけ、久しぶりに猫ちゃんに出会う。外猫には厳しくなったせいかまったくお目にかからなかった。もっともあまりの暑さに私も猫も外歩きをしなかったせいもあるかもしれない。 今年は例年になくきれいにみられた中秋の名月。スマホカメラで撮ってみた。 ビル灯りさはりとなれどけふの月 若桑みどり著『クワトロ・ラガッツイ』読み始める。以前Tに薦められたのだが、あまりの大著で手がでなかった。五百ページを越える上下二巻である。天正少年使節の話だから、結末は悲劇的だとわかっている。

  • 今年米

    『古文書返却の旅』 網野 善彦著 Tの大量の書籍を渉猟しても、なかなか読みたい本が見つからない。何か面白いのない?と聞いても、そんなものはありませんとにべもない。そんなこんなで見つけた一冊、思いの外面白かった。 終戦直後の1949年、国民の大半がまだ空腹に耐えている時、水産庁の肝いりで始まった事業は「漁業制度改革を内実あらしめるためという名目」で全国各地の漁村の古文書を蒐集して資料館・文書館を設立しようという壮大な計画だった。 まず、敗戦直後のこの理想主義的気運に感動する。五年間という短期間ながら「当時としては驚くべき巨額な予算」が付けられたという。網野氏を始め若い研究者たちは、全国各地を訪問…

  • 大根蒔く

    映画『プラン75』を観る 昨年の話題の社会派映画である。カンヌ映画祭でも評価されてカメラドールの次点に選ばれたらしい。(もっともこれがどういう賞なのかは知らない) 高齢化社会に悩む将来の日本が舞台。75歳になったら生死が自由に選べる制度ができる。貧しい高齢者の角田ミチ(倍賞千恵子)は、ホテルの清掃員として働いていたが、高齢を理由に解雇される。再就職の手立ては見つからず、行政の支援を受けるにゆくも敷居が高い。「プラン75」という制度があることを知って、申込みを決意する。申し込みで支給される十万円でつかの間の贅沢、支援員という女性との久しぶりの温かい交流。そして、彼女はすべてを片付けて当日を迎える…

  • 敬老の日

    講演会『旗本徳山秀現の戦国時代』を聴く 入江康太氏(岐阜県歴史資料館・学芸員) 昨日、今日と新聞の折込チラシに葬儀屋のものが目立ち、敬老の日だと気づいた。会員になれば2割引きにしますとの謳い文句。足元を見透かした嫌な奴らだ。ちらりと気にならないでもないが、死ぬときまで節約しなくてもなんとかなるでしょう。そう言えば、姉の経帷子はちょっとお高いものにしたと甥は言っていた。ペラペラの安物だと母さんおこりそうだからなあと言ったので、見栄っ張りの姉の顔を思い浮かべて納得したのだが、私はペラペラでも文句は言いません。 さて、昨日の講演会、「徳山秀現(ひであき)」とは何者かということだが、江戸期の我らの初代…

  • 青林檎

    『無人島のふたり』 山本 文緒著 膵臓癌で4ヶ月の余命宣告を受けた作家の病床日記である。この本は俵万智さんの読書案内で知ったが、(俵さんも最近食道癌で放射線治療を受けられたらしい)寡聞にてこの人のことはよく知らなかった。さまざまな賞を受賞されている直木賞作家らしい。 一昨年の春、体調不良を訴えて受診した彼女を待ち受けていたのは、ステージ4という膵臓がんの宣告。毎年人間ドックも受けておられたのによほど発見の困難な場所であったらしい。手術は無理、すでに転移もあり治療法は抗がん剤の投薬のみとなる。これがとてもつらくて、投薬しても9ヶ月と聞かされた彼女は、一切闘病を諦めて、自宅での緩和ケアだけを選択さ…

  • 露の世

    『家(チベ)の歴史を書く』 朴 沙羅著 この人の本は二冊目である。オーラルヒストリーの形式をとった彼女の一族(祖父母から父の兄弟)の話だ。彼女は在日二世の父と日本人の母との間の子どもだが、父の兄弟や祖父母はどんな経緯で日本に住むことになったのか、彼女の関心はここから始まった。 在日朝鮮人・在日韓国人という人たちが、特定のコロニーを作るほど多いことは知ってはいるが、どうしてそんなに多いのか。漠然と思っていたのは日本が植民地支配をして強制連行をしてきたからで、この国の負の歴史を背負わされた人たちの末裔だと思っていた。 ところがそれだけではなかった。きちんとした歴史は勉強しなけれがわからないが、少な…

  • 残暑

    映画『繕い裁つ人』を観て縫い物をする U-nextで『繕い裁つ人』を観る。こだわりの服づくりをする女性を描いた作品で、どうということはなかったが、ただ使い捨てでなくて、丁寧に着たいなあという気持ちは伝わった。昔から簡単に捨てないで、いいものを長く着たいという気持ちにかわりない。リフォーム、リメイクというのにも不器用ながら挑戦してきたが、最近は着替えて出かけることも少なくなり、加えてこの暑さではミシンにもご無沙汰。 映画に触発され、久しぶりにやりかけていた針仕事をする。母の着物からのチュニックである。「すてきにハンドメイド」からのパターンで、前にも別の布地で一度作った。結構愛用して、経年劣化して…

  • 虫の声

    『スウェーデイッシュ・ブーツ』 ヘニング・マンケル著 柳沢由美子訳 刑事ヴァランダー・シリーズの著者による最後の作品である。以前読んだ『イタリアン・シューズ』の続編でもある。筆者は前作の七年後を想定してほしいと言っている。500ページ近い大部であるが、少しミステリー的要素も入ったエンタメ小説であり、一気に読めた。 主人公は70歳になる元医師のフレドリック。スウェーデンのバルト海の小島で一人暮らしをしている。前作では彼が医師を捨てた理由、癌を患った昔の恋人が訪ねてきて島で亡くなること、二人の間に娘がいたことなどが書かれていた。 今回はいきなり彼の住まいの火事から始まった。就寝中のことで、命は助か…

  • 法師蝉

    「昭和史1926−1945」 半藤 一利著 腹立たしさを通り越し、情けなく悲しさきわまる読後感である。 おおよそは既知の事実だが、三百十万ともいわれる命で購った戦いが、ここまでいい加減な成り行きであったとは。 初めて知ったことだが、幾度も止めるチャンスはあった。無謀な戦争は止めるべきだと主張する人もいた。戦争の結果が、勝利で終わらないという考えは、大方の指導者の認識でもあった。それでも杜撰な楽観的希望的観測で突き進み、あまりにも無残に破れた。 参戦を選んだのは軍部だけではなかった。国民も熱狂し、マスコミも囃し立てた。愚かな興奮の坩堝は敗戦が濃厚となるまで続いた。 半藤さんはこの本のむすびで、歴…

  • 台風

    老人映画 二本観る 最近観た映画より 「八月の鯨」 1987年 アメリカ映画 93歳のリリアン・ギッシュと79歳のベティ・デイヴィスの共演。小さな島で暮らす老姉妹の日常を淡々と描いた作品。昔にも観たが、若い時は退屈だった。今なら老姉妹の寂しさも不安も静けさも懐かしさも分かる。時を経ても変らぬ海辺の景色が美しい。 八月の鯨 [DVD]リリアン・ギッシュAmazon 「幸せなひとりぼっち」 2015年 スウェーデン映画 妻を亡くし職も失い生きる希望をなくした偏屈で孤独な主人公。何度も自殺を試みるが、隣に引っ越してきたイラン人女性とその家族に邪魔をされて失敗。彼女ら家族の騒動に巻き込まれるうちに生き…

  • 敗戦忌

    『ある補充兵の戦い』 大岡 昇平著 重く辛い読後感である。 大岡昇平、補充兵として戦地に送られ、奇跡的に生還するまでを記録した短編集である。いくつかの戦記ものを時系列に並べたもので、一番最初に書かれたのは、『捉まるまで』。マラリアで衰弱し、敵兵を撃たんと逡巡し、自死を試み、そして「捉まるまで」、この作品がもっとも衝撃的な一編である。 ことに圧巻は、衰弱して倒れ、今にも死なんとする彼の面前に敵兵が現れた件である。叢を透してしっかりと視野に入ってきた若い米兵、「殺されるまえに殺す」とそう思っていた彼だが、引き金を引くのを逡巡した。その間に別の銃声で踵を返していった相手に、「さて俺はこれでどっかのア…

  • 夜の秋

    映画『東京家族』を観る 2013年製作、山田洋次監督。ご存知『東京物語』のリメイク版である。設定やストーリーなど大筋で『東京物語』を踏まえている。今の時代の普遍的家族物語という面もあって、なかなかよかった。 ただ、『東京物語』とは明らかに差がある。老いに受動的な時代と、現代の違いだろうか。現実を納得して受け入れている笠の父親と、受け入れられない橋爪の父親。笠の父親像には、そこはかとない哀しみが感じられて、それが物語に深みをもたらしていた。 「それでも、わたしらはそこそこいい方ではないか」という呟きも、戦争という大きな災禍を乗り越えてきた笠夫婦がつぶやいてこそ重みがある。 ともかく名作のリメイク…

  • 夏休み

    『いまだ人生を語らず』 四方田 犬彦著 『月島物語』以来、著者は私には縁遠い人である。Tからすごい天才だと聞かされていた。何でも高校に入学した年の春休み、三年間の数学を一気に仕上げ、後は何もしなかったというのである。それだけで、数学に振り回された凡人には敬遠しがちな天才であるし、やや鼻につく自信家でもある。 さて、この本だが、その四方田氏も古希を迎えられたらしい。老人のとば口に立って、心に浮かぶいくつかの命題について今の想いを纏められたもののようだ。 惹かれる文章もあったし、理解し難いところもあった。「もう一度行きたい、外国の街角」のように、軽い気分で読みとばせる章もあった。 ここでは「死につ…

  • 蜥蜴

    『作家の老い方』 草思社 小説家、詩人、歌人、俳人、評論家などなど人生の先達たちの「老い」に関する文章を集めたものだ。 心に残った歌がある。 冬茜褪せて澄みゆく水浅黄 老いの寒さは唇(くち)に乗するな 齋藤 史 このアンソロジーのなかで二度も出てきた歌である。 ひとつは山田太一さんのエッセイ、彼は座右の銘のようにこの歌を掲げて、ときどき老いのボヤキを反省されているらしい。 もうひとつは中村稔さんのエッセイ、俳人と歌人と詩人の老いの作品を比べての話だ。齋藤史さんの作品には、「心身の衰えを嘆いた作」も「自己を憐愍する作」も見出すことはないと感動しておられる。史さん九十歳という年齢においておやである…

  • 蝉しぐれ

    『石垣りんエッセイ集 朝のあかり』 石垣 りん著 一四歳で働きに出て、一生自分の足だけで立ってきた人らしい矜持、確固とした意志と深い思慮に貫かれたエッセイ集である。仮借のない鋭い観察とアイロニー、辛辣な眼差し、一方日の当たらぬ者への優しさ、どちらも彼女の詩にも共通する姿勢である。 長年勤めつづけてきた職場の機関紙にさえ、彼女ははっきりとものを言う。 「私たちの銀行の人たちは大へん良い顔をしている。」「ことにわが子息たちはまことに良い顔をしている。」自分たちのエリート性があからさまな職場新聞内のこういう一文に対して、「いい顔をしている人間の集まりであるという銀行という村落の幸福、というのは一体ど…

  • 熱帯夜

    小津映画を観る 連日の猛暑である。連休を利用して下の孫が受験勉強に来宅、冷房のリビングは終日勉強室である。トシヨリは奥の和室に閉じこもり、暑さで半ボケの頭で映画を観ることに。 小津作品は「東京物語」しか観てなかったが、先日「彼岸花」を観る。この作品はよさがわからず、不遜にも小津作品とはこんなものかと落胆したのだが、今日観た「麦秋」は秀作であった。 「東京物語」と同じように、老夫婦からの視点で描かれた脚本で、トシヨリだけに余計に共感できるところがあったのかもしれぬ。 戦争の災禍を含め、いろいろあったが、自分たちの人生もそこそこ良かったのではないかと二人でうなずき合う述懐は、どちらの作品にもあって…

  • 梅雨深し

    『縄文文化と日本人』 佐々木 高明著 その2 「成熟した採集社会」の東日本に比べ、何かと見劣りしていた西日本に、縄文晩期水田稲作農耕が伝来した。初期は畑作物の渡来で、やや遅れて本格的な水田稲作農耕が伝わったらしい。 もともと雑穀やイモ類を主作物とする焼畑農耕が行われていた照葉樹林文化圏では、水田稲作農耕を受け入れる基盤が形成されていた。北九州からから始まって、二三世代のうちに一気に伊勢湾西岸にまで広がったという。 最初は陸稲的性質と水稲的性質が分化していない種類だったが、後に早生のジャポニカの種類、ウルチ種よりモチ種が伝わったらしい。伝来ルートはいくつか考えられるが、淮河流域や山東半島付近から…

  • 初蝉

    『縄文文化と日本人』 佐々木 高明著 その1 また、縄文である。私には手強い本だが興味深い内容なので、ここで大雑把な紹介を試みてみようと思う。 問題は「日本文化はどのようにして成立したのか」ということである。筆者は「日本文化は単一の稲作文化である」(柳田国男など)という立場には立たない。稲作伝来以前、つまり縄文時代に「すでにいくつかの文化の波がアジア大陸から日本列島に波及し、それらの異質な文化が複合して日本文化を構成した」というのである。 筆者は日本列島の東西の文化的違いに注目する。昔から言われる東日本と西日本の違いである。例えばそれは東日本での囲炉裏での煮炊きや西日本での竈での煮炊き、言語的…

  • 梅雨晴間

    『口訳 古事記』 町田 康訳 町田康による大阪弁(?)の『古事記』である。面白いのなんのって、破天荒な古事記である。例えば、因幡の白兎とオオクニヌシノミコトのやりとりは 「あいつら、騙して渡ったろ、と思ったんですよ。あいつらアホなんで」 「騙す、ってどうすんの」 「まず、海辺に行ってね、『おーい、サメ』って言うんです」 中略 「するとね、サメが怒って、『アホンダラ、わしらの方が多いわい』と言った、そこで僕が、『じゃあ、比べてみようじゃないか。仲間を集め給えよ。』と言うと、アホなんで熱くなって、『集めたら、ぼけ』と言って仲間を集めたんでね、・・・」 この結果がどうなったかは、ご存知のところ。まあ…

  • 京都へ行く 京都国立博物館(京博)の「縄文土器と土偶」展を見に行きたいと家族に提案する。「又、縄文かあ」と半ば呆れられながらの京都行き。暑さを考えて曇天の日にしたのだが、近日中最も蒸し暑い日になった。 京博は2013年のリニューアル以来初めての再訪。特別展ではないので入館料はひとり700円だが、70歳以上と障害者付き添いで全員無料。なんだか申し訳ない気分だ。外国からの訪問者らしき人が多く、Tは早速記念撮影のシャッターを頼まれる。 ロダンの像越しの新館 さて、展示品だが、遮光器土偶(少し破損)・結髪土偶・火焔土器や蛇文様有孔鍔付土器・銅鐸などなかなか見応えがある。連れ合いが感激したのは犬山市の東…

  • 短夜

    映画『生きる』を観る 1952制作 黒澤明監督 カズオ・イシグロ氏の脚本でリメイクされたという記事を読んで、まだ観ていなかった元作品を観た。あらすじについては、周知されているとおりだが、思った以上に社会批判官僚主義批判が前面に出ていて驚いた。だから名作なのだが、単なるヒューマンドラマと思い違いをしていたのを反省したい。 主人公役の志村喬をはじめ、懐かしい俳優さんばかりで、それだけで涙がにじんだ。バックに流れる「ゴンドラの唄」も哀しい。 主人公の秘められた思いがやっと理解され、周りの人々も変わるかなあとおもったのだが、やっぱり何も変らない。こういう日本的な部分は、カズオ・イシグロ作品ではどうなっ…

  • 梔子

    『おやじはニーチェ』 高橋 秀実著 認知症は、長生きすれば、だれにも出てくる症状らしい。(80代後半では41・1%、90代では61%)それでいて有効な特効薬もなく、治療法もない。確立された予防方法もないから、なるかならないかは宝クジのようなものかもしれない。なったらなったときさとTは言うが、なって世話をかけたくはない。 いろいろな認知症例を読んできた。加えて最近映画も観た。(『ファーザー』2020年イギリス・フランス合作)見当識の障害は映画のファーザーも、本のお父さんも一緒だ。映画に比べて、この本のお父さんの症例は、明るいのがいい。いや、明るく描かれているというべきか。 息子は時には兄貴になり…

  • 五月闇

    『土偶を読むを読む』 望月 明秀編 『土偶を読む』は去年3月12日、このブログでも取り上げた。土偶を形態的特徴からいくつかの食用植物や貝類のフィギュアと見立てた仮説で、面白かったと書いている。 この本はその仮説に対するアンチテーゼである。「皆目検討違い。そんなわけあるかいっ!」と帯にもある。反論を許さないというので、これでもかこれでもかと、手厳しい。 と、いうのも『土偶を読む』がベストセラーになり、著名人をも感心させ、なおかつ「サントリー学芸賞」や「みうらじゅん賞」も、獲得したからである。さらに子どもたち向けの図鑑まで出版されたのでは、黙っていられないということらしい。 もっとも専門家たちは、…

  • 梅雨晴れ間

    夏服を縫う イオンの手芸用品売り場で見つけた時、涼し気な模様にひとめぼれした。ローン地に紺色の金平糖模様だ。夏服を縫いましょうと思ってから、ちょっとたったが、昨日今日で出来上がる。Tシャツ代わりの普段着ブラウスで、毎回同じパターン、今回は襟ぐりはリボンにした。 出来上がってみたら、布地の時とは印象が違う。地味な小花模様で、案外トシヨリくさいのである。失敗したなという気分だが、仕方がない。 大胆な模様や、明るい色の方が、顔の暗さを引き立てると、改めて思った次第。そもそも老いを隠そうとしたところで、まったく自己満足に過ぎないのだ。 梅シロップができる 花梅の梅が大量になったので、初めて「梅シロップ…

  • 紫陽花

    映画『ドライブマイカー』を観る 濱口竜介監督 2021年制作 U-NEXTで無料視聴ができるようになったので観る。評判に違わず、なかなか見ごたえのある作品だった。 妻の死後、妻の浮気相手によって語られた夫の知らない話。妻には夫がすべて知っているのがわかっていた。わかっていても知らないふりの夫に苛立ってもいた。間違いを咎め、動揺してほしかった。 夫は妻とまっすぐ向き合うことを恐れていた。妻の行為を知っても、自分だけが本当の妻の姿を知っていると満足していた。 哀しい気持ちのすれ違い、真実に気づいた時、真っ正直に向き合いたくてもこの世に妻は、すでにいない。深い絶望と喪失感を抱えて、それでも生者は生き…

  • 青梅

    『世界は五反田から始まった』 星野 博美著 渾身の力が入ったノンフィクションである。(第49回大佛次郎賞受賞作品)これまでに読んだことがある星野作品は、例えば『島で免許をとる』など、ユーモラスな自伝的作品だった。 が、これはちょっと違う。始まりは祖父の手記のなのだが、話は星野一家の歴史にとどまらない。戦前から戦中を経て戦後へと、この国の歴史そのものへと大きく広がった。 彼女の祖父は房総半島の港町から出てきて、五反田圏で町工場を起こす。五反田の下町エリアである。その辺り一帯は小さな町工場の集積地であり、そこで製造される品々は、軍需産業を下支えしていた。 星野製作所で作られていたのはゴムホースとそ…

  • 枇杷

    枇杷のコンポート いよいよ梅雨入。五月中の梅雨入りは十年ぶりらしい。つまり早いということ。 雨の無聊で昨日採ってもらった枇杷をコンポートにする。鳥の落とし物の枇杷の木だから、実は小さい。それから大きな種を取り出し、皮を剥くのだから面倒と言えば面倒。畑の隅や川べりに勝手に成らせっぱなしのところが、普通だ。 「ダーウィンがきた」で梅雨時に種を落とす枇杷は、発芽率が高いと言っていた。都会でも思わぬところに生えているらしい。いろんな野生動物に恵みをもたらしているようで、さしずめ我らもその一員。 今年は梅の実が鈴なりなのだが、花梅の実なので「梅干し」にはできない。梅酒づくりは、この頃強いお酒はやめたので…

  • 蛇(くちなは)

    映画『舟を編む』を観る 三浦しおんの同名小説を映画化したものだ。以前小説を読んでいたので、話の展開はわかっていた。ずいぶん前の読書だから、本と比べてどうのこうのは言えないが、様々の賞を受けた作品らしく、辞書編集者の苦労や苦悩がよく出ていて、なかなかおもしろかった。 主演の松田龍平がよかった。寡黙で一途な辞書編集者をよく演じていた。実際この役で主演男優賞を受賞したらしい。恋人が宮崎あおい、あと故人となられた加藤剛や渡辺美佐子、八千草薫、それに割と好きなオダギリジョーが出ていた。最近清純さが売りの黒木華がちょっとハスッパな現代娘だったのも意外だ。 最近紙の辞書はどうなっているのか。『大辞林も』も『…

  • 麦の秋

    『夢見る帝国図書館』 中島 京子著 世間離れした雰囲気で、謎めいた過去をもつ「喜和子」さん。どうやら彼女の過去は、帝国図書館と関連があるらしい。図書館を主人公にした話を書いてほしいと、喜和子さんに頼まれていた私。彼女の死をきっかけに、謎に包まれた彼女の過去を探り始める。 わかってきたのは戦後の上野の図書館界隈、葵部落といわれた生活困窮者の人々の群れと孤児と思われた幼い女の子とその面倒を見る復員兵たち。 ところどころに帝国図書館の物語が、挟まる。乏しい予算の中で、近代国家の体裁のために開館した帝国図書館。軍備増強のために、厳しい運営に終始しながら、それでもさまざまな文化人たちを包容してきた歴史。…

  • 田植

    講演会「坊の塚古墳の前後」を聴く 西村 勝広講師 トシヨリの興味は、未来より過去。旅の疲れもあるが、市の歴史研究会主催の講演会にでかける。 「坊の塚古墳」は4C後半築造の前方後円墳である。前にも書いたが、市内では最大、県下でも二番目の大きさを誇る。(全長120m)。三段築成で、円筒埴輪列を有する。また墳丘祭祀に壺型土器を用い、滑石模造品の副葬が認められる。前者は中央政権のスタイルを真似、後者は在地のスタイルだとレジメにある。 「坊の塚古墳」の話もさることながら、今回興味を引いたのはあたしンちの足元に係る話である。昔、うちの畑を見回っていた研究者の人から、「この辺りは弥生集落でしてね」と言われた…

  • 白日傘

    縄文土器を見にゆく 神社仏閣か美術鑑賞、はたまた歴史探索、うちが出かけるのは、たいていそのいずれかだ。「縄文土器」を見に行く、今回の目当ては、それに尽きる。 そして、期待は裏切られずに、むしろ期待以上だった。縄文人という、遥かな祖先に深い愛しみと尊敬の念すら覚えた。 井戸尻考古博物館 信州の八ヶ岳南麓、縄文時代中期に一千年にわたって花ひらいた縄文文化圏があった。富士見町の井戸尻考古博物館には、当地の発掘された耕作用の石器や土器が豊富に保存されている。現代ものと、形状や用途がよく似ている石器類も驚かされるが、何と言っても見応えのあるのは土器類である。 深鉢も浅鉢も有孔鍔付土器(酒造器だとみられる…

  • 南風

    『長い物語のためのいくつかの短いお話』 ロジェ・グルニエ著 宮下 志朗訳 以前、山田稔さんの訳で『黒いピエロ』を読んだことがある。まんざらでもなかった印象があったので、Tに回してもらう。 「陽気なペシミスト」を自称するグルニエらしく、明るい話はひとつもない。宮下さんではないが、「失意の人々、必ずしも人生がうまくいかない人々に寄り添った」話ばかりだ。 中でも、表題を冠した短編はなかなか読ませた。グルニエ自身の生涯を反映しているような、『黒いピエロ』との関連も思わせる小編だ。 あとがきで、グルニエ翻訳者としての山田稔さんについて触れられている。山田さんに遠慮をしていたが、もう翻訳はしないと言われて…

  • 夏パンツ

    『じゃむパンの日』 赤染 晶子著 面白かった。よくもまあ、こんなにあることないこと書けましたねぇ。いやあ、あることばかりをないことのように書けましたねぇと、感心すべきかしらん。 「新・蝶倶楽部」でYonda?パンダのシールに強迫されながら、審判を待つ話なんて、そうそうあれの発表日のパロディなんでしょ。早世されたが、すごい才能の方だったのだ。確か家にも『乙女の密告』があったから、読んでみましょう。 今日の新聞「新聞記者の文章術」で、あのアロハで猟師さんが書いていた。 「書き言葉でクスッいちばん難しい」って。納得して、久しぶりに切り抜きをしようと、思ったわけ。 それで、ちょっと真似もできれば、いう…

  • 花芍薬

    ゴールデン週間終わる 慌ただしかったゴールデン週間、最終日になり平穏な日常に戻る。 最初は塾時代の最後の教え子の訪問。社会人になって三年目の二人で、一人は大手企業の社員、一人は大学病院の看護師。仕事にも慣れてきて若さいっぱい、しゃべることしゃべること。昼食を挟んで五時間。さすがにトシヨリは疲労困憊した。それにしても子供の頃の成績などというのは、当てにならない。もちろん彼らが高校時代にかなり勉強をしたのは知っているが、勉強よりはコミュ力というか、人間力というか、ともかくトータルでみないとわからない。もっともこれも彼らの今の時点での話で、将来まではわからないのだが。 次の二日間は、下の孫の訪問。模…

  • 風薫る

    『挑発する少女小説』 斎藤 美奈子著 正直、私は少女小説が大好きだった。ここに取り上げられたものの中でも、『若草物語』『赤毛のアン』『あしながおじさん』には特に夢中になった。映画もなんど見ただろう。最近でも「ストーリー・オブ、マイライフ」(若草物語アメリカ2019年制作)、「アンという名の少女」(カナダテレビドラマ)、「赤毛のアン 卒業」(カナダ2017年制作)と、飽きもせずに見ている。何がかくも惹きつけるのか。もちろん郷愁もあるのだが、、それは、総じて元気な女の子たちの成長譚だからといっていいと思う。 ジョーは貧しく(平均以下という程度だが)アンとジュディは孤児院育ちだ。みんな逆境をものとも…

  • 花うばら

    『じい散歩』 藤野 千夜著 「老い」というのは、当たり前ながら誰にとっても不安な初体験。同年輩の老いざまやら、先輩諸氏の老い方とつい比べてみたり、参考にしてみたくもなるものだ。この話だって、斎藤美奈子殿が「人生の最晩年を明るく生きるシニア小説」(ちくまweb)などと紹介していなければ、読まなかったに違いない。 明石新平は89歳、妻の英子88歳。ちょっと信じられないほど高齢でも元気な夫婦だ。新平は散歩が日課だが、こちとらの田舎散歩と違い、著名な建物を見たり、お茶を飲んだりとなかなか刺激的だ。一方妻は散歩はしないで、毎日出かける夫の浮気を疑っている。ええっ、89歳ですよと思うのだが、英子には少し認…

  • 春の暮

    映画『川っぺりムコリッタ』 荻上 直子脚本・監督 雨の日だから花豆を煮て、映画を観る。前にも書いたが、荻上さんは好きな監督で、結論から言えば、今までの作品で一番良かった。 服役の過去を持った山田(松山ケンイチ)は、出所して塩辛工場に職を得る。事情もわかった社長(緒方直人)は住まいも紹介してくれ、励ましてもくれるが、なかなか心を開くことは出来ない。 ところが、住まいの隣人島田(ムロツヨシ)は、そんな山田の閉ざされた世界に容赦なく踏み込んでくる。ミニマリストと称する彼は、貧乏を切り札に自家製の野菜を手に、風呂を借りに来、食事を食べに来る。一人で食べるより二人のほうが美味しい。採れたての胡瓜を齧る幸…

  • 春闌くる

    講演会「江戸時代に破壊された各務野の古墳 」を聴く 各務原市歴史民俗資料館 長谷健生さん 市の歴史講演会に出かける。今回はとても興味深い古墳の話である。驚いたことには市域には605基の古墳があるという。(平成二年『岐阜県遺跡地図』)もちろん小さな円墳や方墳を含めた数であると思うが、墳長が岐阜県2位の前方後円墳(坊の塚古墳)もある。 さて、昨日の講演で取り上げられたのは、江戸時代に破壊された古墳に付いての話である。当時の記録から伝承された内容の一部を要約すれば、 「寛政十一年(1799)秋、美濃国各務野の古塚約二百基を暴いた。曲玉五百ばかり、紫水晶、いろいろの瑪瑙、白銅の鈴になった曲玉、管玉、珊…

  • 春暑し

    映画『お父さんチビがいなくなりました』を観る 昔々講義で、劇中人物が共感を呼ぶには、普遍的な人間像であることが大切と聞かされたことがあったけ。(なんでこんなひとコマだけ覚えているのかしらん) この映画の夫婦(藤竜也・倍賞千恵子)は、まさに私たち世代の普遍的な夫婦像。この世代の夫は、おおむね、夫婦で会話をきちんとしない。相手を思っていても口に出して言わない。マイペースで思いやりに欠け、妻の気持ちに鈍感。 猫の失踪をきっかけに妻の不満が爆発。ついに離婚を切り出すという展開だ。 最終的には元の鞘に収まるのだが、めでたしめでたしとはならず。認知症など老いの障害が待ち構えていそうな気配で終了だ。 何とい…

  • 春深し

    『風土記博物誌』 三浦 佑之著 現存する『風土記』はすべて写本。不完全なものを入れて五カ国と、後世の書物に引用された逸文が少し。されど「八世紀以前の日本列島のあちこちのすがたを窺い知ることのできる文学記録」であると、三浦さん。 その『風土記』をいくつかの視点で丁寧に読み解いてみようとされたのが、この本だ。 まず興味深いのは「なゐふる」(地震)の話。豊後国風土記には、天武天皇の時代に「大きな地震があり、山や丘は裂け崩れた。」温泉が噴き出し、神秘的な間歇泉の湧出もあったという。 どうも天武帝の時代は、地震の大活動期だったらしく、『日本書紀』には頻繁な地震の記述があり、今憂うる「南海トラフ地震」の最…

  • 牡丹

    映画『ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語 』を観る 2019年に公開されたアメリカ映画。次女のジョーが昔を振り返るかたちで話が進み、過去と今が激しく交差する。もとの展開がわかっているからいいが、初めてなら、かなり混乱するにちがいない。つまり何度もリメイクされた話ならではの描き方。そしてこれはその最新版だ。 『若草物語』は何度観ても、何度読んでも、私にとっては楽しめる物語のひとつ。そういえば『赤毛のアン』などもそのうちのひとつだが、どちらも似たような展開である。貧乏で苦労しながら、明るさを失わず、ものを書き、自立を目指し、教師になる。そんなことをTに話したら、斎藤美奈子さんの本を紹介…

  • 遅き日

    『猫を棄てる』 村上 春樹著 上手い文体だというので、Tから回してもらう。かかりつけ医の待合室ですらすらと読めた詩のような小冊。 過日読んだのが娘たちが書いた父親なら、これは息子の書く、父親との和解の話。父親から受け取った命の連鎖を確かめるもので、誰にとっても、親たちの出会いがなければ、生を受けることもなかった自分を振り返る話でもある。 あたりまえの因縁だが、しみじみ考えると不思議な思いにさせられるもので、反発した親の歴史もまた、「意識の内側で、あるいはまた無意識の内側で、温もりを持つ生きた血となって流れ、次の世代へと否応なく持ち運ばれていくもの」にちがいない。 当代人気の村上春樹だが、『ノル…

  • 春の雨

    『Nさんの机で』 佐伯 一麦著 作家生活三十年めにしてオーダーメイドで机をこしらえられたという。楢材の堅牢な机らしい。その机に向かい、物にからめながら来し方を振り返ったエッセイ。 世間の不条理にハリネズミのように挑みながら、自分の生き方を模索していた『ア・ルース・ボーイ』の青年。彼の行く末を見守らんと密かに応援をしてきたが、今や押しも押されもせぬ大家となられた。取り上げられるもののいくつかは、大家らしいこだわりもある。 私小説の作家が私生活に満足したとき、何を書くのだろう。『山海記』以来、作品を読んでいない。 Nさんの机で作者:佐伯 一麦田畑書店Amazon 書を膝に舟漕ぐばかり春の雨 ムスカ…

  • 花は葉に

    映画『家族を想うとき』 ケン・ローチ監督 雨なので外仕事もできず、この冬11回目のマーマレード作りをする。ひとさまに押し付けたり、冷凍にしたりと作りに作ったが、多分これが最後。もう木にはいくつもなっていない。1回ごとに大ぶりを4個ずつ使ったのだが、それでもなった何分の一か、今になると甘味も増して美味しいのだが、皮をむくのが大変で敬遠される。うちの辺りには結構甘夏があるのだが、落ちるに任せているか、ダンボールに「お好きなだけどうぞ」と出してあるかにしても、はけるようにはみえない。 さて映画だが、社会派監督らしく最後まで救いがなくて、辛かった。 主人公のリッキーはマイホームの夢をかなえるために個人…

  • 春うらら

    『この父ありて 娘たちの歳月』 梯 久美子著 著名な女流作家たちに、父は何を残したか。彼女たちの筆で書き残された、父親たちの姿を紹介した一冊である。登場するのは、渡辺和子、斎藤史、島尾ミホ、石垣りん、茨木のり子、田辺聖子、辺見じゅん、萩原葉子、石牟礼道子。 総じて比較的長命だった娘たちで、(どうしてか母親とは早くに別れた人が多い)父との死別後も長く生き、「書くことによってその関係を更新し続けた」人たちだ。 父親像を浮き彫りにするには、短すぎるところがあるし、父親像というより娘たちの生き方そのものが興味深かった人もある。この何人かのうちで、良いにしろ悪いにしろ、特に父親の影が大きいと思ったのは、…

  • 飛花落花

    花にかまけて うちの桜 うちの桜も満開となり、ときに、はらはらと散り始めた。 一昨日には娘一家と花見に出かけた。といってもこの辺りの桜の名所をぐるりと廻っただけだが。木曽川堤、境川堤といづれも「桜百選」のひとつで、見事な桜並木だ。 友人は自ら「さくら狂い」と称し、毎日のように花巡りをし、昨日は「淡墨桜」まででかけたらしい。平地より遅いと思ったがすでに満開だったとのこと。今年はどこも早い。 飛花落花ものを忘れていく話 Amazonのセールでipadminiを購入。今までの古い型と比べると、いろいろ利点があるようだが、まだ使いこなせていない。広告を遮断するアプリでYouTubeで音楽を聴くのがいち…

  • あさり飯

    丹後への旅 一日目 陽気に誘われれ、今年一回目の旅をする。コロナはまだ終わったわけではなく、まずは車で出かけられる所をと、丹波への旅。いつものようにオバアの勝手な興味に付きあわせて「神社・仏閣+古代史」の旅である。 丹波といえば「天橋立」、オバアはすでに三回目であるが、同行者たちは初めてだ。オバアが最初に訪れたのは、花も恥じらう大学一年生の夏。おバカ女子大生の典型だと連れ合いには腐されたが、ハチャメチャ旅であったような遥かな記憶。その当時と比べれば、お店も人出も多く、何より外国語が耳に入る。 知恩寺山門 知恩寺 多宝塔 まず取り付きの「知恩寺」。日本三大文殊菩薩の寺らしいが、秘仏で拝観はできぬ…

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