「続くもの」

また新しい年が来て あの時から更に遠ざかる 君は覚えているかな あの短いひと時のことを

「ピアノ」

幼い頃の記憶を頼りに 白と黒の鍵盤に指を滑らす

「ごめんね僕は忘れない」

「いい加減その思い手放したらどうかな」 何も知らない君はそう言うけど

「もういいよ」

もういいや 僕いいや

「緑茶」

キーボードを叩いていた指を止め ふと大きく息を吐く

「忘れはしないよ」

今でもふと思い出すんだ 君の下卑た笑い

「新しい世界」

新しい世界はいつも 好きだけど嫌い

「言祝ぎ」

家族の手術は無事に終わったの？と さらりと流された情報を思い出してメールを送る

「金柑」

オレンジ色の小さな果実は 幸福とお日様の象徴のよう

「時の境界」

ひたひたと夜がやってきて 静けさで辺りを包む 家族が寝静まった家の中 そっとテレビの音量を下げる

「きっと幸福」

一緒の時間を過ごしたのは はるか彼方で一瞬で なのにふとした拍子に思い出すよ

「僕を返して」

喜びに輝く人の顔を見ると 叩き潰したくなるのが人の本能 そう思えるようなこと 何度もあったよ

「僕らの中の欲望が」

僕らの中にはいつも欲望が ぐるぐるぐるぐる渦巻いている

「返したいものは」

あの頃の僕はずっと泣いてた 伝わらぬ思いにずっと泣いてた

「言の葉使い」

言の葉を紡いで 僕は世界を操る