chevron_left

メインカテゴリーを選択しなおす

cancel
KYO
フォロー
住所
未設定
出身
未設定
ブログ村参加

2012/05/11

arrow_drop_down
  • 山笑う、飛水峡

    岐阜県美濃加茂市から国道41号を北上して、道の駅美濃白川までドライブに行った。飛騨川がエメラルド色に美しく、うば桜が多かったけれど山ツツジも咲いて、春の景色が楽しかった。七宗町から北は道沿いに飛水峡が続き(中山七里)、子どもの頃、毎年訪れた亡父の故郷の木曽路に似ていて、懐かしさに胸がキューンとなった。山笑う、飛水峡

  • 宮崎駿『君たちはどう生きるか』

    映画は美しく、細部に至るまで迫力が有った。宮崎監督は、自らが知る昭和の日本の(いずれ真に貴重になるであろう)良き風景を、強く作品に残しておきたいのだな、と思った。映画を鑑賞した後に、以前録画したNHKのドキュメンタリー「プロフェッショナル仕事の流儀」を観返した。宮崎監督や高畑勲監督、鈴木敏夫プロデューサーや他のスタッフたちとの(心理的)関係性が何となく分かった。※※※以下はエニアグラム関連です※※※偉大な作品を残す人は、孤高の部分を持つ人だ。高畑監督は、気難しいと評判だった。宮崎監督はそれに比べたら、ずっと人懐こさを感じる。高畑監督は、ややタイプ5に近いタイプ4。宮崎監督は、タイプ9ど真ん中。・・・ではないかなと、私は推測する。日本のアニメは星の数ほどあって、そのどれにもそれぞれにファンはいるだろう。けれ...宮崎駿『君たちはどう生きるか』

  • 母の柚子ジャム

    実母は、今年の夏に米寿を迎える。2年前に父が亡くなった直後、老け込んで小さくなってしまったなと思ったら、重度の骨粗しょう症と、背骨の圧迫骨折が判明した。1年間の治療とリハビリを経て、骨密度が随分上がり元気になった。と喜んでいたら1年前、胆管結石で発熱し、敗血症手前まで行った。その後、胆嚢摘出手術を経て、再びリハビリに精を出し、高額な補聴器も作って、今また元気である。エニアグラムで見れば、典型的なタイプ2(タイプ1寄り)なので、太陽のようにぽかぽか温かく、明るく、優しい人である。農家の出なので、商家出身の父とは異なり、老後の畑仕事も丁寧に、献身的にこなした。日々の煮物やジャム作りも、いまだ手を抜かず丁寧だ。頂き物の柚子で、今年もジャムを作って、お正月に、私たち子や孫にそれぞれくれた。また2月になって新たに作...母の柚子ジャム

  • 映画『生きる』

    一昨日、NHK総合で放送された、黒澤明監督の名作。1952年の映画なのに、胸を衝かれて余韻がすごい。※※※(以下、ネタバレを含みます)※※※主人公は、30年無欠勤の市役所市民課長。早くに妻に先立たれ、男手一つで息子を育てた。しかし同居する息子夫婦は冷たい。胃がんを察した父親のショックにも寄り添わず、話も聞かない。主人公は、絶望のあまり自殺を考えるが死に切れず、初めての酒場で知り合った作家に教えられて放蕩を経験するが、満足できない。心満たされるヒントを与えてくれたのが、明るく健康な若い女性(元部下)。公務員を辞めて、今はおもちゃ工場で働いている。「他愛ないおもちゃでも、どこかの子どもが喜んでくれると思うとやり甲斐が有る。課長も何かを作ってみたら?」この時、自分ができる最大限の何かを、主人公は思い出す。たらい...映画『生きる』

  • 初めての台湾旅行

    12月上旬に、長女と二人で行ってきた。あまり海外旅行に関心が無く、新婚旅行以来36年、日本を出なかった私だが、パスポートが切れる前に、最後に行っておこうかなと、行きたいと思った国が、台湾だった。台中・台南も訪れたかったが、長女が休暇を取れる日数や、私の年齢や体力なども考慮すると、台北のみの3泊4日に落ち着いた。故宮博物院を、ゆっくり自分のペースで鑑賞したかったこともあり、旅行会社ツアーを申し込まず、全て自分たちで調べて手配した。前回書いたとおり、4カ月かけて計画した。Esimって何?から始まり、往復飛行機の押さえ方や出入国手続きなどは海外旅行慣れしている家族に教わりながら、あとはインターネットの様々なサイトを参照して、取り組んだ。パソコンならともかく、スマホに関しては私は一向に不得手なので、途中「もう無理...初めての台湾旅行

  • 旅行前のワクワク

    4カ月前から計画を練っている旅行が、近付いてきた。(と言っても、まだ先だが)ほとんど知識ゼロから、情報蓄積して構築していくパターンはいつものことだが、今回はクリアしなければならない課題も多いため、かなりたくさん集中する時間を割いてきた。そのため、ワクワクも大きい。どうか事件事故なくケガや病いもなく、無事に帰ってこられますように。そう祈りながら、ワクワクと荷造りしている。(出発は、まだ先だが)旅行前のワクワク

  • 谷村新司の眼差し

    アリスがブレイクしたのは、今から44年前だったろうか。当時中学2年生だった妹が、ライブアルバムを毎日聴いて、自らギター片手に歌っていた。(←めっちゃ上手)その妹の付き添いみたいな形で、高校2年生の私は、2人でコンサートに行った。生まれて初めて行ったコンサートが、アリスだった。谷村新司の作品は、ものごとや人間を見つめる眼差しが温かい。映像で観る彼からは、深い包容力が伝わってくる。昴を見つめ、きっと常に見失わなかった人だったのだろう、と思う。数々の名曲は、多くの人の心にずっと響き続けることだろう。谷村新司の眼差し

  • TV朝日ドラマ『ハヤブサ消防団』

    昨年書いたとおり、八百津町に実家がある者として、ドラマ化をたいへん楽しみに待っていた作品。ミステリー展開が原作からどのように変わっていくか、手に汗握って見守っていたが、骨子は変わらず、なおかつ池井戸ドラマらしく熱く、現代社会の問題点を鋭く突きながら、爽快に締めくくられて、良かった。※※※以下、原作のネタバレを含みます※※※原作では町長が展子と血の繋がった兄で、江西住職は養女先の義弟であり、太郎も絡まった糸を解すのに長い月日を要したのだが、ドラマはそのあたりの煩雑さを、すっきり省略して、分かり易くしてあった。その分、カルト宗教の恐ろしさに焦点が当たって、餌食になる人たちの辛さや苦しみが浮き彫りになっていた。ドラマの撮影場所は群馬県で、景観の美しいところだったが、実際の八百津町久田見地区は高原で、もっと深山の...TV朝日ドラマ『ハヤブサ消防団』

  • 毒親か 健全な親か

    本日のYahooニュース記事より>どんな親でも図らずも子どもを傷つけてしまうことはあります。>子育てを完璧にこなせないのは、人間的で、ごくあたり前のことです。>そんなとき健全な親なら、子どもを傷つけてしまったことをひどく後悔します。>自然に湧き起こる罪悪感と自責の念に駆り立てられて、償おうとするでしょう。>間違っても、自分を恥じる気持ちを子どものせいにして、>自分を正当化しようとはしないはずです。>しかし毒家族はそれをします。>脆い心を持った彼らにとっては、自分が嫌な思いをする理由を>誰かになすりつけるほうが楽なのです。>毒親は子どもの無垢な心を捻じ曲げ、何も欲しがらずに大人しくしてさえいれば、>親ももっといい親になってくれるのだと子どもに信じ込ませます。>子どもは親が間違っているとは見抜けません。>自分...毒親か健全な親か

  • トウモロコシの思い出

    昨年亡くなった父は、昭和9年生まれで、信州の木曽福島で生まれ育った。戦争体験の話を訊くと、それは必ず酷かった食糧難の話だった。昼食時には、小学校から走って帰宅し、お粥をかき込んでまた走って学校へ戻った。少しも食べた気がしなかった、という。普段からいつもずっと「食べたいなぁ、食べたいなぁ」という思いでいっぱいだったそうだ。木曽福島の町の中は農家も少なく、戦後も数年、食糧難が続いた。ある時母親(私の祖母)に頼まれて、数駅先の田舎の見知らぬ農家へお使いに行った。夏の暑い真っ盛りだった。背中の風呂敷には、母親が嫁入り時に持ってきて、まだ袖を通していない上質な着物と帯が数組入っていた。それを食糧と交換しに行ったのだが、農家の不愛想な小父さんは、少量のお米(一家6人の1日分程度の)しかくれなかった。折しも、縁側には蒸...トウモロコシの思い出

  • 川瀬巴水の、旅情と郷愁

    名古屋松坂屋美術館へ、川瀬巴水展を観に行ってきた。師匠の鏑木清方に美人画を学んだ人なので、構図そのものも美しいし、風景に溶け込む小さな人物たちに至るまで、皆美しかった。版画の横に、数点写生絵も展示してあり、そのいくつかはたいへん精緻だったので、ぜひ肉筆画展も観たいと思った。大正から関東大震災を経て、太平洋戦争も経て、海外からも高く評価され、求められ続けた多忙な人生。版元の渡辺庄三郎と共に、大正以降の新版画を支えた偉大な才能。日本の浮世絵の、集大成とも言える最後の浮世絵画家。胃がんによる逝去のため、絶筆となり、巴水の死後に庄三郎が完成させた『平泉金色堂』は泣けた。川瀬巴水の、旅情と郷愁

  • 傍流のすすめ

    終戦直後に大蔵大臣を任され、日本経済を支えた経済学者・渋沢敬三(渋沢栄一の直孫)は、一方で優れた民俗文化研究者でもあり、後進の民俗学者にこう語ったという。「主流にはならず、傍流からよく観察することが大切だ。主流になると、どうしても多くのものを見落としてしまう。見落とされた中にある重要なものを発見し、拾い集めて、他人の喜びを自分も本当に喜べるようになることが大切だ」含蓄ある名言だと思う。自分が主流になることばかりを目指して争う、殺伐とした現代社会。本当に世の中を支えているのは、真理を見失わない傍流の視線であろう。そしてその視線こそが、人間社会と自分自身の幸せにも最も近いものではなかろうか。傍流のすすめ

  • 幸せの形様

    2023年のゴールデンウィーク。爽やかな初夏の風とキジの鳴き声に包まれながら、八百津の実家で、庭と畑の除草を、長女としてきた。帰り道、車の中でKingGnu(キングヌー)の音楽と共に、仙台で2日間フェスを楽しんできた話を聞かされながら、母親である私も、幸せを感じていた。幸も不幸も様々あり、運命に泣いたり笑ったり振り回される私たち人間。これからも振り回されながら、泣いたり笑ったりし続けるのだろう――幸せの形様

  • 山紫水明の地 その7

    今年の桜は早かった。満開の桜の中、父の一周忌法要が心地良く終わった。生前も晴男だった父は、永眠から10日間晴天が続いたし、四十九日法要の日も爽やかな五月晴れだったが、今回もまた、曇天予報を覆しての快晴だった。自宅での法事は初めてなので、右往左往しつつも、家族6人で力を合わせて乗り切った。準備も後片付けも、かなり疲労したが、みんなで笑い合う時間が楽しかった。当ブログのタイトルにある『果て』は、この日の「父の一周忌」かも知れないと思った。山紫水明の地その7

  • 野球小僧たちの栄冠

    WBC・日本代表の世界一、本当に嬉しい。大谷翔平やダルビッシュたち大リーガーを始めとする、最強メンバーが一丸となって結束し、感動的な勝利を積み重ねていった。負けそうになっても選手たちを信じ抜いた、栗山監督の采配が素晴らしかった。(特に奏功したのが、準決勝9回ウラの代走、周東だろう)全員で掴んだ栄冠。沢村栄治、川上哲治、長嶋茂雄、王貞治・・・・歴代の名選手たちから、繋がれてきた日本の野球。「ああいう選手になりたい」野球小僧たちが憧れて、成長して大舞台で輝き、またその姿を見た少年少女が夢を膨らませてゆく。本当に素晴らしい。野球小僧たちの栄冠

  • 高田郁「あきない世傳 金と銀」

    6年半に渡ったシリーズ全13巻の完結編(2022年8月発行)を、ようやく読み終えた。初巻から毎回、出ると同時に購入して、読んでは次巻を首長く待つほど好きな作品なのに、最終巻のみ、半年も遅れてしまった。なので、一層ゆっくり味わいながら読んだ。18世紀後半の江戸の浅草界隈は、きっとこんな感じだったろう。主人公・幸(さち)を始め、魅力的な登場人物が多く、創作ながら、菊栄や惣次のような商才の持ち主も、きっと居たんだろうなぁ、と思った。読後見つけた作者のインタビューで、幸にはモデルが実在したことを知り、感動した。3代の店主に嫁いだ後、自ら店主を継ぎ、幾多の災害を乗り越え、被災者支援にも注力した、女性経営者。五鈴屋のような健気な商家が、きっと実在したのだろう。女性店主の元に、主従一致団結し、暴利を貪ることなく、仲間と...高田郁「あきない世傳金と銀」

  • 鎌倉殿の13人

    2022年NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』、1年間本当に楽しませてもらった。感謝している。私が高校3年生の時に、熱心に視聴した『草燃える』の時代と丸々かぶっているのだが、さすが三谷幸喜脚本だけあって、大変分かりやすく軽快で、なおかつ内容が濃厚で、新鮮に感じられた。大勢の登場人物、ほとんど全員に感情移入できた。それはエンタメ上、悪役に描かざるを得なかった人々も含めてである。800年以上昔の鎌倉時代初期を、見事に再現してくれたスタッフたちにも拍手したい。今から42年前のことだが、私が短大入学直後に「日本史上、最も好きな人物は誰か」という課題レポートが出され、私は「北条泰時」と書いた。政子・義時・時房・泰時の4人が人間的にしっかりしていたからこそ、そして大江広元という頭脳的参謀あってこそ、鎌倉幕府が整えられ、...鎌倉殿の13人

  • 三苫選手の1mm

    森保一監督が4年間積み上げてきたことが、W杯本番で、ドイツやスペイン相手に開花して良かった。監督インタビュー「最後の1分くらいにドーハの記憶は出てきた。ちょうどその時に選手が前向きにボールを奪いにいっていて、時代は変わったと、選手たちが新しい時代のプレーをしてくれていると思った」(産経新聞)大会出場メンバーにあえて若手を選出したことが功を奏して、29年前の『ドーハの悲劇』によるトラウマを克服できたとは、一ライトファンに過ぎない私から見ても、感無量だ。大会前「えー原口も大迫も出ないの?」と文句言い、ドイツやスペインにせめて大差で負けないことを祈っていた一ライトファンは、ドイツ戦後半の日本の強さに、文字通りひっくり返って手に汗握った。そしてスペイン戦での、何という感動的な、三苫選手の1mm。諦めずに伸ばした足...三苫選手の1mm

  • 『ハヤブサ消防団』池井戸潤

    ドキドキハラハラしながら読み続け、最後の1ページで落涙して、読み終えた。作者・池井戸潤は、岐阜県加茂郡八百津町の出身である。その自らの出身地を、モデルにして書いたのがこの作品である。実は、私が略歴で書いているY町というのも、八百津町のことである。私の先日亡くなった父が惚れ込み、42年前に永住場所として選んだ「山紫水明の地」である。(ハヤブサ地区とは別の、もっと利便性ある地区だが)そして、略歴にあるように私が行政職員として勤務したのは、八百津町役場本庁だった。池井戸氏が慶応義塾大学進学のため上京したのと、ちょうど入れ違いで、私は長野市の短大寮から、八百津に移り住んだ。だから、移住者の視点も分かる。ハヤブサ地区の知人も10数名いるし、作中の地名がどこを指すかもありありと分かる。小学校で行われる消防団の操法大会...『ハヤブサ消防団』池井戸潤

  • 野田元総理の、追悼演説

    日本中の全ての人が記憶に留めてほしいほど、世紀の名演説だった。(NHKノーカット動画と全文)国民の命と生活がかかっているマイクを握り、日本の未来について、前を向いて訴えている最中に、後ろから銃撃され、命を失うことの無念。皇居の待合室で、勝者と敗者の2人っきりになり、重苦しい沈黙の中、まるでカウンセラーのように温かな慈愛を注いでくれた安倍さん。その優しさは、持病の悪化でわずか1年で首相辞任した無念の経験、初めての大きな挫折と屈辱感によって培われた、力強いものであったことに、後から気付いた―――分刻みのスケジュール。海外出張の高速移動と時差で疲労は蓄積。その毎日は、政治責任を伴う果てなき決断の連続。批判という容赦ない言葉の刃を投げつけられ、在任中、真の意味で心休まる時などなかったはず。第一次政権から数え、通算...野田元総理の、追悼演説

  • 安倍元総理の国葬

    4日前、リアルタイム中継を、熱心に見た。故人自らが弾くピアノをBGMに、首相時代の経歴を政府がまとめた映像が良かった。岸田首相、菅元首相の弔辞も、それぞれ良かった。特に、菅さんが熱く読み終えた弔辞を式壇に置いた時は、安倍さんの遺影が、にっこり笑って応えたかのようにさえ感じられた。官房長官だった菅さんをあれほどに惚れさせる、安倍さんの人間的魅力が偲ばれた。献花の際に、森・小泉・福田元首相らと並んで、野田元首相が同列だったのも良かった。翌日のニュース映像で、一般献花台に数キロに渡って並ぶ長蛇の列と、街中の巨大スクリーンに黙祷を捧げる人々を見て、日本人に生まれた幸せを感じた。海外メディアには、賛否二分した国葬を通じて、反対者の声ばかりを集めるのではなく、静かに敬虔に安倍首相の魂に合掌する人々の姿を、報道してほし...安倍元総理の国葬

  • 山紫水明の地 その6

    夏が行く。今年は雨が多かったが、夏野菜やスイカ、トウモロコシの他に、ブルーベリーが豊作だった。実家の庭の外れに、父が知人からもらった苗を2本植えたもので、足場の悪い場所にある上、ちょっとした林をかき分けて行かなければならないので、家族の誰からも振り向かれず、数年間放置されていた。それが今年、父が亡くなってから、私の夫がブルーベリー専用肥料を購入して、試験的にまいてみたら、大豊作。鳥に狙われないようネットを被せ、1日置きに小ザル一杯、約1ケ月に渡って収穫できた。夫が週1、私が週2の来訪で、農作業は辛いけど、何とか畑を守っている。売り物ではなく、趣味の野菜作りなのに、やっとこどっこいだ。そして最たる問題は、雑草との戦い。山紫水明の地その6

  • 山紫水明の地 その5

    実家の正面100m先には、こんもりとした低い山の森が連なっており、春夏秋冬、様々な四季の美を一望できる。山桜、藤、つつじ、新緑、深緑、紅葉、冬枯れ、雪景色など。夏盛りの今は、万緑とヒグラシ蝉の風情が素晴らしい。早朝と夕暮れ時には、「カナカナカナカナ・・・・」の大合唱に包まれる。昔、父が「死ぬ時はヒグラシの声を聞きながら逝きたいなぁ。臨終の枕元で録音したのを流してくれ」と冗談半分で言っていたが、その気持ちがよく分かる。山紫水明の地その5

  • 山紫水明の地 その4

    今年の梅雨明けは早く、もう真夏の酷暑がやってきた。実家の畑仕事も、今までは鳥のさえずりや吹き渡る涼風と共に、爽やかにこなすことができたが、最近は、厳しい日差しや虫との戦いが辛くなってきた。容赦なく雑草は伸びるし、しなければならないことは山積している。追肥せよと言われても、菜種油か化成肥料かその混合か、何をどのように施せば良いのやら。土寄せや畝づくりなど、鍬の扱いも苦手だ。今までずっと未知だった、農作業の過酷さに、思いを馳せる。山紫水明の地その4

  • 山紫水明の地 その3

    父の四十九日法要が、無事済んだ。父は地域にとっても、親族の間でも、それなりに大きな存在感の有る人だったが、他界してしまえば、「日々に疎し」なのだろうか。毎日の暮らしに手一杯の現世人にとっては、あの世の人は、もう遠い存在になってゆくのだろう、寂しいことだが。私は、永遠に忘れない。――ものを大切にお金を大切に時間を大切にそして、人の心と命を大切に――そのように言葉ではなく、日常の繰り返しの中で、自らの生き様によって、幼い頃から叩き込まれてきたから。父は社会科教師志望だったが、高3の時に祖母・父・母を相次いで病で亡くし、一気に保護者を失ったため、進学も就職もできないまま、高校を卒業することになった。以降は苦労しながらも、楽しみながら、人生を切り開き、築き上げていった。文学・歴史・地理・文化に造詣深く、自然や動物を愛し...山紫水明の地その3

  • 山紫水明の地 その2

    心臓と肺の病で、2年前から自宅療養をしていた父が、先日永眠した。春の陽気に包まれた、桜満開の日だった。同居する妹が、父と母を自動車に乗せて3人で、花見のドライブに出掛け、満喫して帰宅した直後のことだった。当日の朝、普段通り往診した医師が「桜が見頃になったね」と言い、それを受けて、ちょうど仕事休みだった私の妹が、「ドライブで花見に行こうか」と誘ったのだ。父は車内で上機嫌で、いつもと変わらぬ元気さだったが、「車降りて、お弁当食べる?」と尋ねると、「いや、家で食べる」と答え、帰宅すると元気にいつもの療養場所(居間のテレビ前)に歩いていき、いつも通りに横になった。そして、母がアイスクリームを冷蔵庫に収納に行った僅かな時間に、心筋梗塞を起こし、息を引き取った。その直後に、たまたま私が訪れた。普段と変わらず長閑な訪問のつも...山紫水明の地その2

  • 2人のウラジーミル

    2人のウラジーミルが、世界中の注目を集めている。片や言わずもがなの、プーチン。20年に渡る独裁で、大国を意のままに操るロシア大統領。反対者の微かな気配を感じれば、小さな芽のうちに潰して闇に葬ってしまう。力で脅して、相手を屈服させ続ける。心有る者は、恐ろしくて近付けない。彼の周りに居るのは、意志も表情も無いイエスマンばかり。片や奇しくも同じファーストネームを持つ、ゼレンスキー。大学在学中にコメディ劇団を起ち上げ、やがて制作した政治コメディドラマが大ヒットして、政治家としては素人のまま、ウクライナ大統領に押し上げられた。国土を蹂躙され、暗殺部隊に狙われる毎日の中ても、彼の周りには、若く頼もしいスタッフが複数居て、常に温かく信頼に満ちた微笑が飛び交っている。プーチンは深慮遠謀のできる、タイプ5寄りのタイプ6だろう。弱...2人のウラジーミル

  • 青天の北野天満宮

    (※小さな写真をクリックすると大きくなりますが、プラウザボタンでお戻りください※)私の還暦祝いにと、長女がかねてから計画を練って、京都・北野天満宮への旅行をプレゼントしてくれました。(しょうざんリゾートでの、梅見の宴と京料理付き)雲一つない青天でした。手水に臥牛。梅苑も美しく花開き、薫風が漂っていました。変わった種類なのでしょうか、枝から数輪がまとまって咲いています。離れて眺めると、まるでポップコーンのよう。平日なのに、北野天満宮は大層な人出でした。天神様への受験祈願の人々に加えて、梅花も見頃を迎え、春の陽気に包まれた日だったからでしょう。たいへん幸せなひと時でしたが、戦争脱却と世界平和を、深く強く祈らずにはいられない参拝でした。青天の北野天満宮

  • 北京五輪の感動

    モーグル堀島選手から始まり、スノーボード、ジャンプ、ノルディック複合、フィギュア・スピードスケート、カーリングまで、手に汗握って応援し、毎日たくさん感動した。高木美帆選手の4つの銀と、最後の金メダルが一際眩しい。メダル以外でも、フィギュア三浦&木原ペアには胸打たれた。日本の若者たちの、何という強さと頼もしさだろう。記録や環境、そして自分自身との果てしない戦い。世界中のライバルたちは、みんな共に歩む戦友であり、讃え合いこそすれ、決して蹴落とす相手ではないのだ。チャンイーモウ監督による、開閉会式演出も、実に素晴らしかった。国内のタレントや有名人は一切出演させず、一般人だけで一糸乱れぬ高い芸術性を、世界中に見せてくれた。東京2020開閉会式との大差は、そこだったろう。北京五輪の感動

  • 凛とした個 ~茨木のり子~

    昨夜のNHK「クローズアップ現代」を観た。真摯な魂の美しさに、あらためて敬虔な感動を得た。茨木のり子は、私の最敬最愛の詩人。その作品の数々も、そしてその生き様も。数年前に書いたY先生が恩師であるのと同じように、茨木のり子も、迷える魂を救ってくれた恩人だ。――葬儀もお別れの会も要らない、ただそれぞれに、「ああ、あの人も逝ったか」と、一瞬思ってくれればそれで良い――彼女は、死ぬ前に友人たち一人一人に手紙を書き、死後に郵便で出してほしい、と甥に伝えていたと言う。私の最期も、かくありたいものだと願う。凛とした個~茨木のり子~

  • 日本のお正月

    年末年始休暇で帰省した長女を、車で駅まで送りに行った帰り道。普段は混んで殺伐としている道が、いつもと違い、ゆったりとして、長閑で幸せな雰囲気に包まれていた。一年の始まり。みんなが笑顔で、世界の平和や人々の幸福を祈り合う。各自のご先祖に感謝し、ご近所同士で、「明けましておめでとうございます」と寿ぎ合う。日本のお正月こそ、この世に現出した極楽浄土そのものではなかろうか。日本のお正月

  • 保護猫「チビ」

    (※小さな写真をクリックすると大きくなりますが、プラウザボタンでお戻りください※)実家の庭に居ついた子猫を、1年半前、保護しました。2年前の年末に、生後3か月くらいで他の猫にくっついていたので、実家の両親に「チビ」と名付けられました。メス猫だったので、避妊手術をして、保護した時は生後8ケ月くらい。痩せてガリガリでした。我が家で引き取って半年、ふっくらと大きくなりました。(生後1年2ケ月くらい)↑この猫が↑になりました。(生後8ケ月くらい)1年前の写真ですが、クロ(5歳)の1.5倍はある大きさです。デカいけど、名前は「チビ」。保護猫「チビ」

  • V6を語りたい

    私のインターネット発信である、ホームページの始まりは、その名も『V6を語りたい』であった。(画面が分割で見にくくなってしまい、後悔しております)当時V6ファンになりたてだった私は、溢れる愛をアウトプットしたくて、2002年の自分の誕生日に、ホームページエクスプレス(HP作成ソフト)でコツコツと作り始めた。V友(V6ファンの友人)さんたちとの交流など、思い出しても、胸躍る楽しい日々だ。2006年に更新終了した後も、ずっとお茶の間で、私はV6を見守り応援した。V6は、常に私の心のどこかに点る灯火なのだ。一昨日深夜に放送された、NHK「少年俱楽部プレミアム・V6ステージコレクション」を観て、感動を新たにした。一語一音を大切に真心こめて歌い、半拍のリズムさえ生き生きと活かすダンスで、ステージパフォーマンスは圧巻だ。昔の...V6を語りたい

  • 王道を行く心根

    大河ドラマ『青天を衝け』が、最高に面白い。私は小2で見た『天と地と』から記憶にある59歳だが、今までずっとナンバー1大河は、小6で見た『国盗り物語』だった。2位は小5の『新平家物語』で、3位は高1の『花神』だった。だが、いよいよその上を行く大河ドラマが現れたことを確信する。『青天を衝け』は、脚本・演出共に丁寧さと上手さが、今まで私が見てきた大河作品の中では、群を抜いている。主人公も最高だ。本人や周囲の人々の著作や記録が残っている。幕末から昭和までの激動の時代を生き抜き、ヨチヨチ歩きを始めた近代日本の、歩む道を創り続けた渋沢栄一。幼少期から論語を身に着け、生家は商いもする豪農で経済感覚が磨かれ、道が行き止まった時は、知恵を絞って柔軟に他の道を探し出し、心には、常に高く「王道」を掲げる。渋沢本人も、最期まで王道に導...王道を行く心根

  • 「狡さ指数」

    ※以下の数字は、学術的検証に基づく発表ではなく、あくまでも私個人の考察見解に過ぎない仮説であることを、ご了承ください※古来から性善説・性悪説が有るように、人類全体を見渡すと、善・悪・中間というのは、大体3分の1ずつに別れるのではないかと思います。つまり、世界を100人の村に圧縮すると、先天的に善良な気質の人が33人、善良さの欠片もない人が33人、どちらでもない人が34人。善良な33人のうち、時と場合によっては狡くなれる人が半分の17人くらいだとすると、狡くなることに心痛む人が16人。そしてその16人のうち、生か死かに追い詰められても、どうしても狡くなれない気質の人が、5人くらいは居るのではないかと。同様に、善良さの欠片もない33人のうち、教育や後天的な知識によって、善良な考え方を理解できるようになる人が17人。...「狡さ指数」

  • 東京五輪2020

    メダルラッシュもさることながら、アスリートたちの心身の美しさが、一際胸を打つ大会だった。連日の柔道、体操男子、体操女子、ソフトボール、アーチェリー、競泳、卓球、ゴルフ、空手、レスリング、野球、バスケットボール、マラソンなど、毎日が心洗われるような感動の連続だった。新型コロナが次々と変異を繰り返して、鎮静の気配が見えない中、世界中見渡しても、この状況下で五輪開催できる国は、日本をおいて他に無かったろう。無観客で調子が狂う選手もいたかも知れないが、その分、研ぎ澄まされた集中力を、一層強く見せられた。そして勝利後も、勝ち誇ったり驕り高ぶったりする様子は少なく、大会開催されたことへの感謝と、この場に居られる幸福や健闘を称え合う姿や涙が、印象的だった。一際、美しい大会だったと思う。開会式や閉会式の演出の下手さなど、反省点...東京五輪2020

  • 上杉鷹山の、富国安民政策

    1.国は、先祖から子孫へ伝えられるものであり、君主の私物ではない。1.民は、国に属するものであり、君主の私物ではない。1.国や民のために君主が存在するのであり、君主のために国や民が存在するのではない。――明治の版籍奉還まで、上杉家の家訓となった『伝国の辞』――時は江戸時代、18世紀後半。10歳で九州・高鍋藩から、現山形県・米沢藩へ養子に迎えられた後、類まれなリーダーシップと善政により、窮地にあった藩財政を立て直し、35歳の若さで、弟(養父の実子)に家督を譲った上杉鷹山公。冒頭に掲げた『伝国の辞』は、譲る際に申し渡した藩主の心得だ。200数十年経過して、今なお色褪せない、むしろ民主主義国家となった令和の今こそ、ますます鮮やかに輝く、為政者への戒めではなかろうか。鷹山公は、粗衣粗食のため、死ぬ間際まで健康で、70歳...上杉鷹山の、富国安民政策

  • 二心殿?徳川慶喜

    NHKBS「英雄たちの選択」を見て思った。『大日本史』を編纂させた水戸黄門(光圀)の子孫であり、かつ烈公・徳川斉昭という父と、皇族出身の母の間に、徳川御三家水戸藩主の七男として生まれた貴公子。わずか6歳で、論語から「楽水」という言葉を選び、したためられた書の見事さ。明治後は、趣味三昧に暮らし、天寿を全うして、残した写真や油絵などからも、芸術的才能が伺われる。たいへん英邁だが、ヒエラルキー感覚に欠ける彼は、おそらくタイプ4と5の境界線だったろうなぁ、と。つくづく、片腕だった平岡円四郎の暗殺が惜しまれる。二心殿?徳川慶喜

  • 「渋沢栄一、七転八倒の青春」

    NHK「英雄たちの選択」を観た。近代日本の父とも呼べる、偉大な功績を残した渋沢栄一、91年の生涯。その青春時代は、当時の日本列島に溢れた、若者たちの火の玉「尊王攘夷」そのもの。いつ死んでもおかしくない綱渡りの状況であり、実際その気炎の中で、たくさんの非業の死や悲劇的混乱が起きたのだが、栄一を救い上げ、その後の運命を決定付けたのが、(大河ドラマで堤真一が演じる)平岡円四郎との出会いだった。――平岡には、身分に惑わされず、優秀で気骨のある若者だと見抜く目があり、人材を適所に配置して、活かす能力があった――平岡自身も、藤田東湖や川路聖謨から推挙されて、一橋慶喜に仕えた人物であり、東湖も川路も平岡も、天寿全うではなかったという史実に、敬虔に胸を打たれる。人材を見出した彼らの、無私公正なバトンは、渋沢栄一の生涯とその功績...「渋沢栄一、七転八倒の青春」

  • 明智光秀と渋沢栄一

    先月完結したNHK大河ドラマ「麒麟がくる」は、一般視聴者には好評だったのかも知れないが、歴史好きな人たちにとっては、すこぶる歯がゆい脚本だったと思う。織田信長が鮮烈に登場する桶狭間の戦いから、豊臣政権が滅ぶ大坂夏の陣までは、戦国の混沌が収束してゆく、日本史上最も華やかで面白い時代だろう。それにも関わらず、なぜか架空の創作人物ばかりにスポットが当てられ、肝心の明智光秀の生涯や功績、本能寺の変に至るまでの明智家の事情や、一族を巻き込んだ悲劇的末路などについてはほとんど触れない、残念極まる浅薄な内容だった。明智光秀という人は、まるで織田信長を倒して次の時代を開幕させるために、天(大自然)が配剤したような人物だ。聡明な苦労人で、文化教養を重んじ、自領を善政統治して、新しい家臣や領民たちにも慕われた真面目な人間性ゆえに、...明智光秀と渋沢栄一

  • 死生観の大切さ

    今朝のYahoo記事で、共感できる興味深いものがあったので貼る。「日本人はなぜ『テレビや世間の空気が作った死生観』を真に受けるのか(現代ビジネス)」(7ページ目以降が重要なので、あえて元記事7ページ目も)ホモサピエンスは、イメージの共有や共感能力に長けた種であったがゆえに、巧緻なチームプレイを行うことができ、他の類人猿との生存競争を勝ち残った、という学説を私は信じる。ゆえに我々は、強い者が望む意見を、あたかも自分の意見のように体現化し易いのだろう。第二次世界大戦に象徴される世界史上の様々な悲劇が、それを証言している。しかし本来人間は、一人ひとりが独立して、宇宙から授かった命だ。人間それぞれ全てが、宇宙の分身と言ってもいい。各自の死生観は、決して誰かから強制されるべきものではない。生まれてから死ぬ間際まで、じっく...死生観の大切さ

  • NHKドラマ『ライジング若冲』

    面白かった。特に、再現画の上手さ、巧緻さには目を瞠った。14年前、2007年5月。京都・相国寺で開催された『若冲展』にて、本物の「動植綵絵」と「釈迦三尊像」33幅を鑑賞した時の、あの息を呑むような感動を思い出した。若冲は、森羅万象を愛し、生命を篤く慈しんだ画家。このドラマ以降の、京都大火災後から晩年の彼についても、ドラマ化されたら嬉しい。その後の応挙や、芦雪や蕭白など、日本のルネッサンスとも呼べる18世紀の京都画壇を彩った、天才たちをぜひ登場させてほしいものだ。NHKドラマ『ライジング若冲』

  • 『鬼滅の刃』は希望の光

    炭焼きは大変な重労働だと、昭和一桁生まれの父から聞いたことがある。大正時代にそれを生業として、母と幼い弟妹を笑顔で養う長男。心優しく人望厚かった13歳の少年に、突如襲い掛かった酸鼻極まる運命。物語は、ここから始まる。私は老眼のため、コミックの原作は未読である。だが、原作にとことん忠実だという、アニメ26話までと映画は観た。原作者は30歳そこそこの女性で、大ブームに向かう今年5月に、早々に原作を完結させ、郷里に戻ってしまったという。編集部のごく一部しか、本名はもちろん彼女の顔も知らないままに。作品の在り方が、それだけでも伝説的だと思う。そして、作品の内容もまた深く、日本人の精神美を描出したものだ。おそらくはアニメを観た、男児を子育て中の女性たちを中心に、口コミで大ブームが広がったのではあるまいか。冒頭の主人公・竈...『鬼滅の刃』は希望の光

  • 鬼滅の刃『無限列車』

    原作は読んでいない。ただ先月のフジTV・2週連続特番を観て、『鬼滅の刃』という作品の、日本的スピリットに胸打たれたので、話題の映画を観に行ってきた。朝一番の上映で、70%ほど席が埋まっていただろうか。老若男女、幼児からお年寄りまで、様々な年代の観客が居た。アニメーションの美しさ、空気の緩急、迫力に息を呑み、鬼の禍々しさに腸(はらわた)が煮えくり返り、主人公・炭治郎の健気で苛烈な覚悟に涙する。そして炎柱・煉獄杏寿郎の熱く力強い生き方、戦い様が、くっきりと心に刻印される。「人より力が強いからといって、思い上がってはいけませんよ。その強さは敵から弱い者を守るために使いなさい」「鬼殺隊は、お前たち鬼の活動する真夜中に、正々堂々と戦っている。血を流し体を削られても、たとえ命を失ったとしても。日が昇ったからといって逃げ去る...鬼滅の刃『無限列車』

  • 山口百恵という伝説

    今年は、山口百恵が引退して40年。1980年10月5日に武道館で行われたラストコンサートを、NHK・BSで観て、感動した。私は当時、短大の寮生活で観られなかったため、たいへん嬉しい。デビュー曲『としごろ』以来、私は山口百恵のファンだ。小学6年生で、ちょうど芸能界に憧れる年頃だった。10代前半の少女たちが何人もデビューしていた中で、彼女だけが好きだった。初見で、誠実さというか賢さというか、「この人なら、何もかも分かってくれそう」みたいなシンパシーを抱いたのを覚えている。(それからすぐ実家が商店街へ転居し、書店経営を始めたため、私は本の世界に夢中になり、芸能界への興味はたちまち霧消してしまった。)2曲目の『青い果実』から『ひと夏の経験』まで、友達との話題に上がっても、性的に奥手だった私には全くピンと来なかったし、た...山口百恵という伝説

  • 怪談・考

    海外では、心霊は魔物であり、滅ぼすべき敵と見なされる。一方、日本では幽霊は成仏させるべき、救うべき対象だ。日本の仄かな怪談が、海外のホラーと一線を画すのは、「響き合う心の優しさ」が、そこに内在するからだと思う。NHK『ヒストリア』ガダルカナル戦の真相を観て、「一木支隊」を調べたら、北海道旭川市の怪談に出会った。意気盛んだった歴戦の精鋭部隊が、上層参謀部の無能さのせいで、予想外に凄惨な殲滅の憂き目にあい、隊長以下戦死する。その日の深夜、旭川駐屯地へボロボロの軍旗を掲げ、整然と隊列を組み、彼らの魂だけが帰還した、というものだ。昔、中学時代、玉砕した兵隊さんたちが幽霊となって行進してくる怪談を読んだことがある。当時はただ「怖いね、可哀相だね」と、友達と怖がっただけだったが、さすがに50歳代も末に近づいた今、ガダルカナ...怪談・考

  • TBSドラマ『半沢直樹』ロスジェネの逆襲

    左遷を覚悟した半沢直樹が、最も信頼する部下へ、自分が持っている社会への信念(剣道の構え)を、そっと伝える。1.正しいことを正しいと言えること2.組織の常識と世間の常識が一致していること3.ひたむきに誠実に働いた者が正当に評価されること「客のため世の中のために仕事をするという大原則を忘れた時、自分のためだけに仕事をするようになる。自分のためだけにした仕事は、卑屈で内向きで醜く歪んでくる。それが増えれば、組織が腐ってくる」「お前はこれから、いろんな相手と戦うだろう。だが最初の敵は、いつも自分自身だ。勝敗は時の運だが、決して自分の構えを崩すな」そして最後。栄転で出向先を去っていく半沢が、部下たちへ最後に残したメッセージに、強く胸を打たれた。「大企業に居るから勝ち組なんじゃない。どんな小さな会社に居て、どんな仕事をして...TBSドラマ『半沢直樹』ロスジェネの逆襲

  • レジ袋は悪じゃない!

    今月初めから有料化された、レジ袋について。当初、私もエコバッグを手作りしようと考えて、どんな知恵があるかネットサーフィンしてみた。形状は、折り畳めてかさばらず、しかもたっぷり収納できるレジ袋型が一番良い。素材は、洗いやすく乾きやすく、丈夫で洗濯に耐えるもの。なおかつ作り方があまり難しくないもので・・・・と、重い腰がなかなか上がらないでいる内に、清水化学工業のサイトを見つけた。・ポリエチレンは石油精製した残りものなので、資源的にエコ。・分解して発生するのは、二酸化炭素・水・熱のみで、有害物質を含まない。・ポリ袋は、製造時のエネルギーや必要な水の量、輸送面、ゴミ処理面ほか、あらゆる面において、紙袋よりもエコ。・保存袋やゴミ袋などに、再利用できて便利。海浜に漂着するプラスチックゴミのうち、ポリ袋はわずか0.4%を占め...レジ袋は悪じゃない!

  • 母の月のカーネーション

    三密を避けるため、今年は、母の日が第2日曜日に限定ではなく、5月の丸々1か月間が「母の月」であった。私は、カーネーションの花束を、仏壇にお供えしてある。まだ実母は実家で健在だが、ご先祖の歴代母親である皆様に、感謝を捧げたのだ。出産も子育ても、なんという偉大な重労働であることか――歴代母親の皆様の、健気な献身と豊潤な愛情あってこそ、現代の私たち家族は、生きてここに在ることを、忘れない。母の月のカーネーション

  • 山紫水明の地

    3月の始めに、85歳の実父が、心不全で救急搬送された。幸いにして一命を取り止め、歩けるまで回復して3月末に退院できた。しかし、酸素療法を永久に受けなければならず、活発で行動的な父は、鼻チューブを嫌がって、よく外すので困る。そのため、両親が趣味で野菜を作っている畑を、夫と一緒に手伝っている。広さは、バスケットコートよりやや大きいくらいの畑だ。今までは、実った野菜をありがたく収穫して頂くのみだったが、今年になって初めて土を耕し、穴を掘って肥料を埋め込む土作りなどを体験した。4月の半ばに、夏野菜の様々な苗が一斉に売場に並ぶことも、初めて知った。苗を植えた後は、裁断したワラを敷いたり、透明なポットを被せたり、養生を工夫することも、初めて知った。水与えなどの日々の手入れも、なかなか重労働だ。高齢ながら楽しんで、これをして...山紫水明の地

  • 新型コロナから心を守る

    新型コロナと最前線で戦って下さっている、医療従事者の方々やご家族、生活必需品供給を支えてくれている小売業、流通業の皆さんなど、本来なら最も感謝を捧げ、皆なで守るべき人たちへの、心ない差別が、残念なことに後を絶たないという。命を蝕む流行病の地球規模の蔓延自体は、天災だ。だが、差別偏見など人間一人ひとりの心や尊厳や、社会への絆を破壊する迫害行為は、人災だ。冷静に、理性を取り戻そう。私たち人間は、不安に駆られると愚かになりやすい生き物だけれども、理性と知恵を集結することによって、少しずつ障害を乗り越えてきたことも、人類史上の事実だから。インターネット上に溢れる様々なデマに惑わされず、専門家チームの発信に耳を澄ませ、手洗い・咳エチケット・空間距離を保ち、三密を起こさないように。そして、自分の心も、他人の心も、守ろう。新型コロナから心を守る

  • 公私を分ける脳

    AERAdot.編集部・西岡千史の記事『新型コロナ“神対応”連発で支持率爆上げの台湾IQ180の38歳天才大臣の対策に世界が注目』に、共感した。(リンク先はコメント欄も参考になるため、YAHOOニュース)―――この台湾政府と、日本政府の愕然たる対応力の差。昨夕の安倍総理の会見は、国民へ光(国の姿勢)を示す効果は、有った。でも時期が2週間ほど遅かったし、質疑応答が少なく、満足度は低いものだ。日本政府の対応の遅さの理由は、「純然たる公」の乏しさではあるまいか。残念ながら、現在の日本のトップは、公私が分けられていない。良くも悪くも日本人の国民性かも知れないが、分けるべき所を曖昧で許してしまっている。しかし、昔の優れた総理たち(高橋是清、浜口雄幸など)は、明確に公私を分けていた。と言うよりも、むしろ上記記事のような「公...公私を分ける脳

  • 不安から起こるパニック

    現代ビジネス・原田隆之(筑波大学教授)の『新型肺炎「不安の正体」なぜ人々はパニックに陥っているのか』に、たいへん共感した。理性を失い、感情的に過激なものに飛びつき、生贄に憤懣をぶつける行為の恐ろしさ。新型ウイルス以上に恐ろしいのは、そのようにして起こる集団パニックだ。和歌山県知事のような真摯な情報発信を、国が内閣挙げて、早期からしていれば、日本国民も冷静でいられただろう。しかし、ここまで不安が高まってしまった今は、とにかくできる最善を尽くし、国民の理性を呼び覚ますしかあるまい。マスクもアルコールも入手困難で、検査も受診も容易ではない現状、できることは一体何なのか、光を示してほしい。不安から起こるパニック

  • 新型コロナ肺炎を、正しく恐れる

    昨年末からネットニュースなどでは恐れられていた、武漢市発の新型肺炎。国を挙げての対策が後手後手で、心配しているうちに日本国内での2次3次感染者も顕出し、「あ~あ」という状態になってしまいましたね。『動画が出てきて、感動しました。日本人の知恵は素晴らしい。肌への刺激も優しいし、白いハンカチで作れば、使用後にハイター除菌もできるし、乾燥もしやすいし、洗濯して何度でも繰り返し使えます。マスクには、ウイルス予防効果は低いといいますから、咳エチケットとしてなら、これでも充分ではないでしょうか。過労を防ぎ、免疫力を高めて、罹らないことが一番良い。でも不幸にも罹ってしまったなら、とにかく安静にして栄養を取り、他人へうつさないことが大切。どうか、日本における新型コロナ肺炎、なるべく被害少なく、早期に収束するよう切に祈るばかりで...新型コロナ肺炎を、正しく恐れる

  • ミネルヴァの梟(ふくろう)

    ――ミネルヴァの梟は、黄昏時に飛び立つ――(ドイツの哲学者・ヘーゲル)ひとつの時代が終わり、黄昏を迎える時、知恵の女神ミネルヴァは、その右腕である梟を解き放つ。暗闇の中でも、梟は正確に見聞きし、判断をする。混迷の時代にこそ、人々は、自らの知恵と勇気を試されるのだ。サンデーモーニング『幸せになれない時代~分断と格差深まる世界~』を観た。困難な社会情勢に直面すると、人間関係や世界観の視野が狭くなり、無意識の領域で、心理的退行・幼児化が起きるという。「世界中の人々が成熟成長を拒否して、退行へと、歴史の逆行が始まったのかも知れない」社会心理学者・加藤諦三の指摘は、恐ろしいが的を射ていると思った。混迷を深め、不安を強める世界情勢は、人間を退行させる。情報洪水の中で、真贋を見極めるため必要なものは、全体知。断片的ではなく、...ミネルヴァの梟(ふくろう)

  • 私にとっての2019年とは

    平成が幕を下ろし、令和が始まった今年。私は、57歳になった。この年は、愛別離苦の年であった。永訣を含む様々な別れに、心が何度もダメージを受けた。傷んだ心を癒し、力づけてくれたのは、平日夕方の再放送『ゲゲゲの女房』、大河『いだてん』、TBS『ノーサイド・ゲーム』の、3本のドラマと、ラグビーW杯日本大会だった。鍛え抜かれたラグビー日本代表チームや、裏方の人たちの一丸となって労を惜しまぬ姿には、胸を射貫かれるような感動を受け、どんなに心が温められたことだろうか。新しい年神様を迎えるために、今年も大掃除を終え、家中のカレンダーを付け替えた。2019年に感謝しつつ、2020年のカレンダーを貼る。どうぞ皆様、良いお年をお迎えくださいますように。私にとっての2019年とは

  • 大河ドラマ『いだてん』 近代スポーツと日本

    我が家のHDDを整理していて、今年の年頭に放送された『歴史秘話ヒストリア・東京オリンピックに懸けた男たち』を、久しぶりに観た。たいへん胸が熱くなった。嘉納治五郎、金栗四三、田畑政治という3人に焦点を当てた、今年の大河ドラマは、素材としては非常に新鮮で興味深い、優れたものだったことを、あらためて思った。国民の暮らしや世相の変遷、世界情勢やIOCの姿なども、自ずと背景に浮かび上がってきて、傑作近代史ドラマになったと思う。年間通して、1話も見逃さず『いだてん』を楽しみ、泣いたり笑ったりして、毎週面白かったのは確かだ。だが正直なところ、「なぜあんな素敵なエピソードを、こんな変な描き方する?」とがっかりすることも、多かった。(反対に、意外な実話の鮮やかさに、拍手することも多かった)宮藤官九郎は、自ら大きなテーマに挑んで、...大河ドラマ『いだてん』近代スポーツと日本

  • 恩師への祈り

    私は、小学校から短大まで全て公立だったが、教師に恵まれた。敬愛を持って懐かしく思い出せる先生が、10人ほどいらっしゃる。特に中学卒業時の担任と、高校卒業時の担任、この2人の先生は、今でも年賀状のやり取りが続く、私にとって心の支えである恩師だ。高校3年の時の担任・Y先生は、30代前半の、溌溂とした女性教師だった。聡明で、生徒からの人気が絶大だった。演劇部顧問で、先生の日本史の授業は、劇的解説で面白かった。夏休み前に早々と、明治維新まで終了してしまったのには驚いたが、二学期以降はじっくりと、近現代史を教えてくれた。日本近代史は駆け足が多い戦後の高校教育において、これは、貴重な体験と言えるだろう。進学指導も一人一人に丁寧で、心が込もっていて、私たちはクラス全員で、卒業時に花束を贈り、感謝を捧げた。先生は驚いて、感激の...恩師への祈り

  • ラグビー日本代表“勇気の桜”

    TBSドラマ『ノーサイド・ゲーム』を、毎週楽しみに観た。毎回胸が熱くなり、自ずと涙が溢れてくるドラマだった。私は、まさしくこのドラマの初回冒頭ナレーションの「怖い、危ない、暑苦しい、ルール分からなくてつまらない」という一般人だった。他の球技のような分かり易さや、華々しさがないゆえに、ラグビーを、ひたすら敬遠してきた。けれども、あのドラマのお陰で、いかにラグビーを誤解していたか、いかに紳士的なマナーを重んじ、知的な策略と勇気を要するスポーツであるかを知り、己の今までの愚かさを恥じ入った。「少しは、試合も分かるかな」と恐る恐る観戦始めた、日本開催のW杯。開幕直後の日本vsロシアから、すっかり魅了され、NHKのラグビー特集にも後押しされて、ニュージーランドvs南アフリカ、イングランドvsアメリカと、TV地上波放送の度...ラグビー日本代表“勇気の桜”

  • まりニャンの一生

    (※私の古いHPの中の「ハナとクーの部屋」と「子猫たちのいた夏」を、ご参照くださると幸いです※)まりニャンは、2005年7月6日に、我が家の和室で生まれました。子育て上手な母猫の元で、すくすくと幸せに育ち、成猫後も遊び好きで、たいへん甘え上手でした。純良素直にして慎重な性格で、一度も人間の手を煩わせることも、私が声を荒げて叱ることも、ありませんでした。日に一回は、必ず膝の上に乗って、甘えてきました。家族が楽しそうに団欒していると、必ずどこからかやってきて、さり気なく参加していました。和やかな明るい雰囲気が、大好きだったのでしょう。コミュニケーションの深さは、クーがすごく賢いと思いましたが、まりニャンも10歳過ぎた頃から、同じくらいに並びました。私と、心の深い所で対話できるようでした。飲食拒絶するようになった8/...まりニャンの一生

  • ありがとう、まりニャン

    昨日、朝5時25分、まりニャンが永眠しました。14歳と2か月の生涯でした。お盆頃から食欲が落ち、とうとう丸1日全く食べなかったため、動物病院を受診したのが8/18。夏バテを疑って、点滴と整胃腸剤・食欲促進剤を注射してもらう。「これで治れば良いですが、ダメなら精密検査を受けてください。もう高齢なので、元気に見えても・・・・」と、獣医からも補助スタッフからも、含みのある複雑な表情をされる。「まさか」と、私は全く信じなかった。排便にも異常なく、嘔吐もなく、元気さも普段を10とすれば、7くらいはあったので。しかし、獣医の見立ては正しかった。落ち着いた穏やかな猫なのに、食欲促進剤の影響で、帰宅後はソワソワと落ち着かず、エサは2粒食べただけ。食欲は戻らず、水さえもその日から飲まなくなった。病院に連れて行こうとキャリーバッグ...ありがとう、まりニャン

  • 英雄たちの選択 『渋沢栄一~論語と算盤』

    中田『YouTube大学』で予習後に、NHK『英雄たちの選択』を見た。幕末に生を受け、28歳でパリ留学、明治の新生日本に、著しく貢献した渋沢栄一。「道徳経済合一説」を唱え、日本資本主義経済の父にして、生涯の社会福祉事業家でもあった。当時から、困窮にあえぐ人々を「惰民」と蔑み切り捨てる、冷酷非情な政治家やジャーナリストは、大勢居たらしい。他者への共感能力に欠ける者が、弱者に平然と石を投げるのだ。合理的に、かつ道徳的に、健全な社会を運営していくために、渋沢栄一は知恵を絞り続けた。行政・経済の権力を握るのは、彼のような人物であってほしいものだ。英雄たちの選択『渋沢栄一~論語と算盤』

  • オリエンタルラジオ中田の挑戦

    娘に教えてもらった「中田敦彦のYouTube大学」に、ここ数日嵌っている。世界史・日本史・現代史を始め、文学・偉人伝など、幅広い教養を、興味深く分かり易く解説してくれている。中田のプレゼン能力の高さは、テレビで見ても舌を巻く程だった。それが独壇場となるYouTubeとなれば、まさしく水を得た魚の面白さだ。吉本興業の企業体質がようやく問題視されるようになった昨今だけれど、2年前に、既に中田は指摘していたことを思い出す。大御所であるダウンタウンが「面白い」と言えば、どんなつまらない下っ端芸人でも、テレビでブーム扱いしてもらえる、お笑い界のお寒い現状。反対に「つまらない」と断言されれば、テレビ業界が忖度して、有能な芸人さえ日の目を見ることができない異状。それを指摘した茂木健一郎を、ひとり中田だけが支持した。瞠目すべき...オリエンタルラジオ中田の挑戦

  • 大河ドラマ『いだてん』 大正デモクラシーの眩しさ

    第22話「ヴィーナスの誕生」、感動した。第一次世界大戦の傷跡生々しいヨーロッパにて、女性たちの不屈の姿を見て、女子スポーツの必要性を、強く祖国に感じた金栗四三。現役マラソン選手を引退し、赴任先の竹早高女(東京府立第二高等女学校)にて、その情熱を注ぎ込む。初めは反抗していた生徒たちが、次第にスポーツの楽しさに目覚め、四三を指導者として尊敬し、生き生きと伸び始める。四三の賢妻スヤ、女子体育指導先駆者の二階堂トクヨ、初登場の純真な人見絹枝、そして竹早の女学生たち。そこに、シマちゃんという架空の女性教師を巧妙に絡ませることにより、大正デモクラシーという『ヴィーナス』が、全面に描き出されて眩しかった。「女子が足をさらして何が悪いのか。それを不潔な視線で見る、男の方が間違っている!」と、父兄の圧力に叫ぶ金栗。「女らしさを男...大河ドラマ『いだてん』大正デモクラシーの眩しさ

  • ノートPCの水没

    デスクトップからノートPCに替えて、10年以上。通常では絶対しない、大失敗をしてしまった。夜、シャットダウンをしている最中、急ぎの用で手を伸ばしたその途中に、湯飲みがあった。(普段はシャットダウンが完了するまで、動かず注意深く見守るのに)そして普段は、多量の飲み物はPC付近に置かないよう気を付けていたのに、なぜかその湯飲みには、100ccほどの冷めた白湯が残っていた。白湯(冷たい純水)は、勢いよく左側から、キーボード全体に降りかかってしまい、私は真っ青になって、シャットダウンが終わると同時にケーブルを抜き、タオルで丁寧に水分を拭き取り、スマホで対処法を検索し、液晶に影響しないよう薄めのタオルを挟んで本体をひっくり返し、バッテリーを抜き出した。この間、1時間少しだったろうか。そのまま朝を迎え、念のため修理業者の検...ノートPCの水没

  • 至高の名作、ぽんぽこ

    高畑勲監督の一周忌に、金曜ロードショーで放送された映画『平成狸合戦ぽんぽこ』。久しぶりに観て、涙が止まらない。1994年公開だから、バブルも終わりかけていた頃に作成されたものだろう。日本の最盛期に、世に送り出された哲学的なアニメ映画だ。平成が終わる今だからこそ分かる。この30年間で、私たちが手に入れたもの、失ったもの。時代というもののかけがえなさが、この作品に集約されていたことが。現在と未来の、世界全人類へ向けたメッセージを、高畑勲は、日本人らしい精神文化と共に、この作品に込めた。自らの豊かな知性を濾過させた、澄み切ったメッセージ。私たち生きとし生けるものは皆、大自然から与えられた限られた時間を、限られた資源と共に生きるのだ、という真理―――至高の名作、ぽんぽこ

  • NHK大河ドラマ『いだてん』 明治日本人の挑戦

    近代オリンピックがまだ生まれて間もなく、手探りで体制を整えつつあったという明治の末(1912年)、第5回ストックホルム大会に向けて、日本も初めて選手団を送り出した。選手は、わずか2名。随行員は3名。当時はアマチュアスポーツという概念が無く、身体を育て鍛える体育とは別で、陸上競技は子どもの駆けっこと同一視されていた時代。嘉納治五郎の孤軍奮闘により、大日本体育協会を発足させたものの、国からの支援は一切なく、選手たちが個々に旅費を工面しなければならなかった。選手は、高等師範学校と東京帝国大学、2人の学生。片や、熊本山間部の貧乏農家。片や、貴族院議員で後に日銀総裁となる薩摩士族。家庭の経済状況には、雲泥の差があった。2人とも当初は出場を固辞していたが、「黎明の鐘となってくれ」という嘉納の熱い説得により、このハイリスクな...NHK大河ドラマ『いだてん』明治日本人の挑戦

  • NHKザ・プロファイラー『嘉納治五郎』

    これは面白く、たいへん興味深い内容だった。「柔よく剛を制す」その意味が、非常によく理解できた。大河ドラマ『いだてん』第一話で、初めて知った人物だが、彼を主人公にした大河ドラマも見たいほど、魅力ある生涯だ。肉体や精神の成長を促す、スポーツが内包する素晴らしさ。世界中に帝国主義が満ちた、軍事一辺倒の時代に、人間が依って立つべき「平和」という理念を、きちんと提示して見せた人。東大卒業時、同級生の多くが官僚や政治家、実業家職に就く中、あえて「百年の計」を求めて、教職を選ぶ信念。虚弱ないじめられっ子だったからこそ、屈強者に勝つ科学的方法を工夫し、柔道を生み出し、しかも世界に普及させることができたのだ。彼もまた、明治の男性の鑑。NHKザ・プロファイラー『嘉納治五郎』

  • 平成30年が行く

    私が上の子を出産したのは、平成元年になる4日前のことだった。生まれた女の子は、もうすぐ30歳になろうとしている。私の育児期と丸々重なって、平成は駆け抜けた。バブルから始まって、多くの天災と経済停滞期を経て、栄枯盛衰を味わいつつ、あと4ヶ月で幕を閉じる平成。象徴が平成天皇ご夫妻であったことが、この上なく幸せなことだったと思う。人間としても夫婦としても、最高の理想を体現してくださったから。天皇皇后両陛下の真心は、苦難に向かう人々にとって、どんなに励みや救いになったことか、推測して余りある。来年以降も、どうか日本が戦禍に巻き込まれることなく、正しくより良い解を発見して、道を切り開いていけますように――新年への祈りと、平成30年間への深い感謝を込めて、どうぞ皆様、良いお年をお迎えくださいませ。平成30年が行く

  • 明治維新150年

    日本史全体を眺めて、最も劇的で、敬虔な思いに打たれるのが、幕末黒船来航(1853年)から、明治維新を経て日露戦争に勝利し、不平等条約を完全に改正する(1911年)までの、先人たちの姿だ。キラ星の如く人材が輩出され、試行錯誤の中で、多くが非業の最期を迎えてもなお、その意志は連綿と後輩に受け継がれ、ついに“日本”を守り抜いた、オールジャパンのチームプレー。あの時代の人々は、老若男女、トップから庶民末端に至るまで、全員がオールジャパンの一員として懸命だった。太平洋戦争時の、言論弾圧で強制された全体主義とは異なる。人間ひとりひとりの根幹から発せられる切実なシグナルによって、自発的に参加したオールジャパンだ。徳川慶喜を新政府の軸とする共和制で良かったとか、戊辰戦争も箱館戦争も必要なかったとか、薩長の下級藩士たちが幕府に取...明治維新150年

  • 北海道旅行3 体感できた北海道

    (※小さな写真をクリックすると大きくなりますが、プラウザボタンでお戻りください※)行きの飛行機で。本州上空はずっと晴れて美しい景色が窓下に繰り広げられていたのに、津軽海峡に入った途端、雲で真っ白、何も見えなくなった。「これはもう、滞在中ずっと雨だな。それよりも、無事に生きて帰れるか否か」旅の目的は、楽しむことよりも無事の生還へと切り替わった。旭川空港に着くと、小雨交じりの曇天。レンタカー営業所員が待機していて、送迎車に乗り込み、30分後にはレンタカーで出発。まずは美瑛、四季彩の丘を目指す。が、どんどん雨が酷くなり、途中渡った美瑛川の水量が今にも溢れそうだったので、帰りに橋が渡れなくなることを危惧し、美瑛駅近くのホテルへ引き返すことにした。大雨は翌朝まで続き、美瑛・富良野観光を断念せざるを得ない。そしてとにかく翌...北海道旅行3体感できた北海道

  • 北海道旅行2 多難な出発

    しかし、当日は天候に恵まれなかった。まず、出発の朝に旭川美瑛地区が豪雨で危険水域とのこと。その後も台風7号延滞に伴う悪天候が予想され、土砂災害も懸念された。当日キャンセル料を算出して、取り止めを検討せざるを得ない。空港で荷物を預ける間際まで、決行か中止か悩み続けた。現地のレンタカー営業所と宿泊先ホテルに電話で問い合わせ、「今朝は豪雨だったが今は止んでいる」という情報を二件ともから得られたので、腹を括ることにした。ほとんどキャンセルされたのだろう、20人ほどしか乗客のいない旭川行き航空機内で、これから先の多難な旅路を、いかに自分で乗り越えていくか考えた。きっと蒼白な顔色をしていたと思う。若いCAさんたちが、みんな優しい笑顔でとびきり親切にしてくれた。北海道旅行2多難な出発

  • 北海道旅行1 北の大地に憧れて

    先日、生まれて初めて、北海道を訪れた。飛行機と現地レンタカーを利用しての3泊4日の1人旅というのも、初めての経験だ。多分、一生のうち二度とないくらい、私にとっては貴重な冒険だったので、自分の覚え書きとして、ここに残しておこう。思い立ったのは3ヶ月前だ。ぼんやりと「北海道に行ってみたいな…」とつぶやいたのを夫が聞き逃さず、「行ってこい」と背を押した。どういうコースで行こうかな?そもそも、行きたい所はどこかな?ええと・・・・北海道と言えば五稜郭、ラベンダー、海鮮どんぶり・・・・その程度の知識しか無かった私は、それから北海道について熱心に調べ始めた。毎日ヤフー地図と首ったけ。えっ?函館と富良野ってこんなに離れているの?でも、両方とも行きたいよ。年配女性のレンタカー1人旅は危険では?との不安もあった。初めての道を1日で...北海道旅行1北の大地に憧れて

  • ハイジとアンと、ぽんぽこ

    日本には、たくさんのアニメが溢れているが、群を抜いて好きな作品が『赤毛のアン』だ。当時、私は高校3年生だった。受験勉強の合間に、日曜夜のこのアニメと、続くNHK大河ドラマ「草燃える」をどんなに楽しみにしていたか知れない。大人になってから、『アルプスの少女ハイジ』を鑑賞し、この2作品が、共に高畑勲監督のものであることに感動した。ともに小学生時代に読んだ原作の児童文学を、はるかに上回るインパクトだった。アニメが、どんな文学や映画よりも、繊細で高尚な芸術表現になり得ることを、高畑勲が教えてくれた。『平成狸合戦ぽんぽこ』は、幼かった息子が、最も好んで観た作品だ。『ホ~ホケキョとなりの山田くん』は、小学校時にまた然り。『かぐや姫の物語』は、就職で巣立つ前年に、一緒に映画館で観た最後の作品。『火垂るの墓』はもちろん、『おも...ハイジとアンと、ぽんぽこ

  • 森友問題に思うこと

    誰かのせいにして、誰かを叩くだけでは何も変わらない。「誰が」悪いのかではなく、「何が」悪いのかを追求してほしい。同時にあくまでも大所高所からの視点で、国家における優先順位を誤らぬように。感情的な大波に押し流されぬように。理性を維持して。――政府にも国民にも、そう願わずにおれない。森友問題に思うこと

  • 平昌五輪の余韻

    国際政治の不愉快さを吹き飛ばすような、アスリートたちの輝きだった。予想を大きく上回る、日本選手の獲得メダルと活躍ぶり。小平奈緒選手や渡部暁斗選手の、人間性の素晴らしさ。羽生結弦選手の王者の意地、高梨沙羅選手が晴らした思い、スケートパシュートチームの団結、高木姉妹がしのぎを削って高め合ったもの、宮原知子選手の精神美あふれる丁寧な演技、北海道北見市カーリング女子チームの笑顔・・・・枚挙にいとまが無い。天候などの不運に見舞われ、実力発揮できない場合はあっても、日本の若者たちが、決してプレッッシャーに弱くはないことを教えられた。手に汗握って祈り、応援し、熱く胸打たれた10日あまりの日々。実に幸せだった。自らとの戦いでベストを尽くした選手の皆さん、ありがとう。平昌五輪の余韻

arrow_drop_down

ブログリーダー」を活用して、KYOさんをフォローしませんか?

ハンドル名
KYOさん
ブログタイトル
果てのある路
フォロー
果てのある路

にほんブログ村 カテゴリー一覧

商用