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2007/08/04

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  • 黒い錠剤 [book]

    パスカル・エングマン/早川書房/お薦め度 ★★★☆ スウェーデン国家警察ファイル 若い女性が殺された。元恋人で娘の父親、カリムは仮釈放中で、翌日、刑務所に戻って来た。彼の靴底には女性の血液が付着していた。別れ話に逆上したものだ・・・ 事件は解決したも同然、しかし、国家警察殺人捜査課の警部ヴァネッサは狡猾なカリムが証拠を残して刑務所に帰って来たことに疑問を抱く。そんな折り、新聞記者のジャスミナから相談を受けるヴァネッサ。ジャスミナは事件当日、カリムからレイプを受けていた、と。 事件は単純な痴情のもつれではなく、新たな側面を見せ始める。 人気TV司会者、その愛人、路上生活者、元軍人・・が織りなす事件が重層的に描かれ、どこでどう交わるのか先行きが見えない。 事件の終盤、唐突に「インセル」、不本意な禁欲主義者、女性憎悪と結びついた、何万もの男性が匿名掲示板に集う運動、が飛び出し、わたし..

  • 奇妙な絵 [book]

    ジェイソン・レクーラック/早川書房/お薦め度 ★★★☆ ホラーミステリー ドラッグの依存症から抜け出したマロリーは相談役の紹介で、マックスウェル夫妻の面接を受ける。5歳の息子テディのベビーシッターとして・・・ 無事採用され、客用コテージに住み仕事が始まる。ある日、テディがスケッチブックに書いた奇妙な絵、女の死体を引きずっている男、を見てしまう。 それに続きテディの部屋から聞こえる奇妙な話し声、隣人ミッフィに対するマクスウェル夫妻の反応、マロリーが住むコテージを以前アトリエとして使っていた画家の話・・・ テディの絵はますます不気味さを増し、5歳児のものとは思えないリアリティを帯びてきた・・・ 前半はテキストとイラストでホラーたっぷりな展開だが、後半は謎解きへ。 後半はわたし的には少々気に入らない展開になってしまっただけに残念だ。

  • 内なる罪と光 [book]

    ジョアン・トンプキンス/早川書房/お薦め度 ★★★★ MWA賞最優秀新人賞候補作 アイザック、生物教師、の息子ダニエルがアメフトの練習に出たまま行方不明となり、数日後、切り刻まれた死体で見つかる。犯人は遺書を残して自ら命を絶った隣家の長男で幼馴染のジョナだった。 冒頭で明らかになる殺人事件。 アイザックのもとに、エヴァンジェリンと名のる少女があらわれる。妊娠している彼女を自宅に招き入れ、奇妙な共同生活が始まる。 物語はアイザック、エヴァンジェリン、ジョナの視点で語らる。 アイザックは離婚で妻に去られ、話し相手は愛犬だけ。拠り所はクエーカーの教え・・・唯一の友?は校長のピーター。 エヴァンジェリンは娼婦の母親から無一文で放り出され、路上生活・・・ ジョナは心を病み自殺で父親を亡くし、母親ロリーと妹と三人で支えあいながら生きてきた・・・ エヴァンジェリンの父親が誰か?ダニエル..

  • テラ・アルタの憎悪 [book]

    ハビエル・セルスカ/早川書房/お薦め度 ★★★★☆ CWA賞最優秀翻訳小説賞受賞作 主人公メルチョールは、十代の頃、麻薬カルテルの手先として逮捕、投獄されてしまう。獄中で「レ・ミゼラブル」との出会いと母が殺されたことが相まって、警察官を目指す。何と言う設定・・・ 弁護士、娼婦だった母親の客?父親?、ビバレスの協力を得、無事警察官となった。彼を一躍ヒーローにしたのは四人のテロリストを射殺した事件。警察上層部はテロリストの復讐を恐れ、メルチョールを田舎町、テラ・アルタへ異動させた。 事件はそんな田舎町で起こる。町一番の富豪であるアデル美術印刷の社長夫妻が拷問の末、惨殺された。日本でいう帳場がテル・アルタ署にたち、メルチョールも捜査本部に召集される。 ここからメルチョールが「レ・ミゼラブル」と、母親の死から学んだ彼自身の哲学、正義を貫く不屈の闘志、道義を求め悪を忌み嫌う、が捜査に色濃く..

  • ロング・プレイス、ロング・タイム [book]

    ジリアン・マカリスター/小学館/お薦め度 ★★★★ タイムリープ・ミステリー タイムリープ:意識のみが時空を移動する。時空を飛び越える 離婚専門の弁護士のジェン、内装業者の夫ケリー、18歳の息子トッド、平凡で幸せな生活を送っていた。10月30日の深夜、ジェンが窓越しに見たのは、息子が見知らぬ男を刺殺するところだった。 ケリーと現場に駆け付けるジェンはなすすべもなく、トッドは逮捕されてしまう。眠りについたジェン、目覚めると10月28日の朝に戻っていた。 それ以降ジェンは目覚めるたびにタイムリープしていく・・・ 少しづつ事態が飲みこめてくると、何とかして息子の殺人を事前に食い止める事が出来ないかと思案する。 息子の部屋で見つけた警察手帳、行方不明の赤ん坊が載った古い張り紙、プリペイド式携帯電話が事件の鍵を握る。 どこまでタイムリープすれば息子の殺人事件を阻止できるのだろうか? ..

  • ザ・メイデンズ ギリシャ悲劇の殺人 [book]

    アレックス・マイクリーディーズ/早川書房/お薦め度 ★★★☆ ミスリード 心理療法士のマリアナにケンブリッジ大学の学生の姪ゾーイから電話が・・・学友が殺された、と。 マリアナもケンブリッジに通っていたことから早速大学へ向かう。ゾーイから聞く被害者の生前の言動からギリシャ悲劇が専門のフォスカ教授が犯人だと確信する!? しかし、教授にはアリバイ、教え子に講義をしていた、があったが、マリアナの見解は変わらず、関係者に話を聞くうちに次なる犠牲者、教授の取り巻き乙女<メンデンズ>のメンバー、がふたり・・・ 夫を亡くして間もないマリアナの偏執的な精神状態に終始ミスリードされ、最後の最後に思ってもいなかった<ちゃぶ台返し>が待っている。わたし的には気に入らない<ちゃぶ台返し>だった。

  • 幾世の鈴 [book]

    高田郁/角川春樹事務所/お薦め度 ★★★★ あきない世傳 金と銀 特別巻下 四編の短編の主人公は、八代目店主・周助、菊栄、結、幸と賢輔の夫婦・・・ 気がかりだった結のその後を描いた「行合の空」がわたし的にはお気に入り。 音羽屋忠兵衛は重追放と闕所を言い渡され、結も自身番に拘束され、取り調べを受けた。罪人となった夫と別れて、江戸に留まる、という道を選ばなかった。実はその時、お腹に新しい命が宿っていたのだ。 今は生まれ故郷の村とそっくりな播磨国の田舎で「千種屋」という旅籠屋を営む。忠兵衛は釣り三昧、ふたりの子供、姉は十、妹は七つ、が結の手伝いをしている。 いまだに「あのひと」のことを思い浮かべると憎しみと哀しみと惨めさが突き上げてくる。このままこんな田舎で朽ち果てるはわけにはいかぬ、と思い続けている結に再起の味方?があらわれる。 一枚だけ手元に残った型紙、結が持ちだした、を見ても..

  • 契り橋 [book]

    高田郁/角川春樹事務所/お薦め度 ★★★★ あきない世傳 金と銀 特別巻上 シリーズ十三巻を読み終えた読者への贈り物 四編の短編、主人公は惣次、佐助、お竹、賢輔・・・ 「契り橋」は九代目賢輔と七代目幸との秘めた想いの行方がメインなんだろうけど、わたし的には惣次を主人公にした「風を抱く」がお気に入り。 本編では江戸で事あるごとに幸にアドバイスを送っていた惣次の心根の変化が読みとれる。変化のもとは、家族の絆に対する激しい飢えがあったのだが、お家さんの富久、兄、弟、恋女房、幸との間に絆はとうとう築けなかった。その惣次が井筒屋二代目保晴を父に、その娘、雪乃の夫になったことで初めて心が満たされたのだった。

  • 暗闇のサラ [book]

    カリン・スローター/ハーパーBOOKS/お薦め度 ★★★★ ウィル・トレント・シリーズ最新刊 19歳の医学生の運転する車が病院の前で救急車に衝突する。当直医のサラが治療にあたるが息を引き取る。彼女の身体には生々しい暴行の跡が残る。サラが最後に聞いた彼女の言葉は、あいつを止めて・・・ 民事事件の証言台に立つサラ、被告は研修医時代の同僚を父に、先輩の産婦人科医を母にもつ男子学生。被告は刑事事件では無罪を言い渡されていた。 証言を終えたサラと被告の母がトイレで出くわし、母親が妙なことを口走る、15年前に起きたことと、サラのレイプ事件、今回の事件の被害者に起きたことは全部つながっている、と。 サラの婚約者で捜査官のウィル、ウィルのパートナー、フェイスと三人が捜査、上司の承諾を得ず、を開始する。15年前に起きたことの真相とは!? 筆の走る作家故、ついついひとつの章が長くなってしまう。その..

  • 生贄の門 [book]

    マネル・ロウレイロ/新潮社/お薦め度 ★★★★ スパニッシュ・ホラー 脳腫瘍で余命いくばくもない9歳の息子をかかえる治安警備隊の捜査官ラケル。医師から見放されたラケルが最後の頼みの綱は奇跡の呪術医?そのために異動を申し出、小村に移り住む・・・ 事件はその小村で起こる。心臓を抉り取られた娘と作業員の遺体が発見され、転勤早々のラケルとバディを組むファンは現場に赴く。 儀式めいた殺人事件、マドリッドと違い時間がゆっくり流れる田舎、検死報告書もなかなかあがってこない。ラケルとファンは自力で捜査を続けるが、ラケルの周辺で次々とオカルト的な出来事、闇からの囁き、亡霊、長衣の人々、が発生する。 猟奇的な殺人事件がオカルト・ミステリーへ、ラストではアクション・ミステリーへと変貌、読者を飽きさせない。 本書のキー・ワードは「冥界の門」、この世と別次元の接点、黄泉の国、死者の王国。

  • 唐木田探偵社の物理的対応 [book]

    似鳥鶏/KADOKAWA/お薦め度 ★★★★ 怪奇小説!? 似鳥鶏(にたどりけい) 物理的対応とは物理攻撃、銃や刀などの武器で怪異を抹殺すること。怪異の駆除の専門業者、唐木田探偵社。 茶褐色の「偽の月」が見える、大学生の私は怪異に襲われ、唐木田探偵社の面々に助けられると同時にリクルートされてしまう。「偽の月」が見えちまったやつはこれから先、化け物に遭遇する。 大急ぎで戦闘技術と武器を手に入れる訓練が始まる。 物語は都市伝説の怪異との試行、戦闘、活劇、と変態?従業員のemployer's file、「見える者」になった経緯、が交互に語られ、日本全体の危機の淵源、新種の発生源、に唐木田探偵社全員で勝ち込みにいく大活劇のラストへ続く。 TERUの表紙イラストがすべてを物語る・・・

  • 7月のダークライド [book]

    ルー・バーニー/ハーパーBOOKS/お薦め度 ★★★★ 青春ノワール 大学を辞め、遊園地の恐怖体験ゾーンで働く落ちこぼれのハーディ、最低賃金の仕事だが本人は満足している。 そんなハーディが駐車違反の切符を持って市庁舎を訪れたとき、ベンチに座っている姉弟を見つける。ふたりにはタバコの火傷跡と思われる小さな丸い点が・・・ 児童サービスに連絡を試みるハーディだったが、聞く耳を持たない連中ばかり、普段ならかかわりを持たないのだが、問題を抱えている?母子を救うべく闇の中へ突き進んでいく。 ハーディーをとり囲む面々がいい、市庁舎の受付のゴス娘、ハーディと同じ職場で働く高校生、元私立探偵の不動産屋・・・ハーディの視点で進む物語を脇役が盛りたてる。 運命のラストはまさに青春ノワール!?

  • 受験生は謎解きに向かない [book]

    ホリー・ジャクソン/東京創元社/お薦め度 ★★★★ 「自由研究には向かない殺人」の前日譚 高校生のピップにある招待状が届いた。館の主の74回目の誕生日を祝う会で行われるマーダー・ミステリ・ゲームに参加するように、と。ピップの演じる役は裕福な家庭の住み込み家庭教師、館の主の親戚ではあるが、援助を受けていないことを苦々しく思っている。 舞台は1924年、孤島に建つ大富豪の館という設定、参加者はピップの親友2人、同級生3人とその兄の7人。それぞれが演じる役割とブックレット、小冊子、なる指示書が渡された。 ゲーム開始早々、館の主が刺殺死体で発見される。あまり乗り気でなかったピップの探偵魂?に火がつく・・・ ピップの推理とブックレットの回答が違っているところから「自由研究には向かない殺人」に繋がるという設定。合刻して二度美味しい一冊にしてもよかったのでは・・・

  • ザ・ロング・サイド [book]

    ロバート・ベイリー/小学館/お薦め度 ★★★☆ 完結編 テイラー・スウィフトとトラビス・ケルシー(カンザスシティ・チーフス)、東京公演からトラビスを応援するためとんぼ返りしたテイラー、今年のスーパーボウルは「テイラーボウル」。 カレッジフットボールのスーパースター、オデル・シャンパーニュ、地元の人気バンド、フィズのボーカル、ブリタニー・クラッチャーは恋人同士。 オデルは大事な試合で大活躍、ゲームのあとフィズのコンサートが開かれ会場は最高潮・・・しかし、ブリタニーは秘密を抱えていた。自分ひとりだけがメジャーデビューの契約をし、その日の夜、オデル、バンドのメンバーを置いて旅立つことを・・・ ところがブリタニーは、スクールバスの中で遺体で発見され、オデルが容疑者として逮捕されてしまう。 魂の弁護士ボーセフィス(ボー)に弁護の依頼をするオデル、ボーの周りは弁護を引き受けることに反対・・..

  • いのちがけ [book]

    砂原浩太朗/講談社/お薦め度 ★★★★ デビュー作 前田利家と忠臣・村井長頼の生涯 織田信長の勘気をかい、二十二歳で流浪の身となった利家に付き従い、桶狭間、帰参は許されず、翌年の森部の戦いの活躍により帰参を許される、長篠、賤ケ岳・・・名だたる戦場を主君と駆け抜けた長頼。 主君の肩越しに見た信長、秀吉、家康の姿を粛々とした筆致で書き上げたデビュー作。 身近にも範とすべきもののふはいる。言うまでもなく、あるじ利家である。が、だれにもおとらぬつもりで敬愛し、尊んでもいるものの、あまりにもおのれとのちがっていて、手本にするのはどうにもむずかしい。 なればこそ、あこがれる。なればこそ慕わしいのである。 加賀百万石の礎を築いた忠臣・長頼の本分。

  • 誘拐犯 [book]

    シャルロッテ・リンク/東京創元社/お薦め度 ★★★★☆ シリーズ第二弾 亡き父の家を賃貸に出していたが、借主が家の中をめちゃくちゃにし、行方をくらました。そのあと始末、廃棄処分と売り、のため故郷を訪れるケイト、スコットランド・ヤードの巡査部長。 近くのB&Bに宿をとる。そこで思わぬ事件に出くわす。宿を経営する夫婦の娘アメリーがいなくなった。 一年ほど前から行方不明の少女の遺体が発見されたばかりだったので、夫婦はケイトとともに警察に失踪届を出しにいく。 奇妙なことにアメリーは防波堤から飛び込んだところをふたりの男に助けられる形で発見されるが、事件のことは覚えていない、と・・・ 消えた少女がもうひとり、母親との折り合いが悪く、自ら家出をしたのだが、彼女も誘拐犯の手にかかったのか!? ケイトは再び休暇をとり、家を売るために故郷に戻る。退屈を紛らわすためケイレブ警部、前作にも登場、に..

  • 黛家の兄弟 [book]

    砂原浩太朗/講談社/お薦め度 ★★★★ 復讐劇!? 黛家は代々筆頭家老の家柄、長兄・栄之丞、次兄・壮十郎、末弟・新三郎の三兄弟。当主は黛清左衛門。 栄之丞は藩主の次女を嫁に迎え、新三郎は大目付の黒沢家に婿入り。次兄の壮十郎だけが無頼の輩・・・ 次席家老、漆原内記の次男・伊之助も壮十郎と同様、無頼の輩。「雷丸」などと大仰な名のりをあげている。ちなみに壮十郎の徒党は「花吹雪」。 輩同士が刃を向けあい、漆原の次男が壮十郎の刃に倒れる。黛家と漆原家の対立が大々的に表面化する。 壮十郎の裁きは大目付・黒沢家の新三郎の役目とあいなり、何とか次兄を軽罪に処したいと画策するも、漆原内記の絡め手にやられ、次兄に切腹を申しつけるはめとなる。 十三年のときが経ち、新三郎は舅の織部正を名のり、大目付として漆原内記の子飼い?として働き、長兄は清左衛門を継ぎ、次席家老、普請奉行として漆原に反目しながら役..

  • 兇人邸の殺人 [book]

    今村昌弘/東京創元社/お薦め度 ★★★☆ シリーズ第三弾 斑目機関、前作「魔眼の匣の殺人」で登場、の研究資料を奪取を狙う傭兵チームとともに、心霊スポットをテーマにした遊園地の中に建てられた<兇人荘>に向かう剣崎比留子と葉村譲。 斑目機関は様々な研究を行っていた。そのなかのひとつが超人研究、文字通り人間の身体能力を強化する研究だった。 物語はシリーズの御約束ごと、クローズドサークルの<兇人邸>で、驚異的な身体能力と治癒力をもつ隻腕の巨人と出くわし、何人もの死傷者をだしてしまう。 しかも剣崎はひとりはぐれてしまい、葉村からの情報をもとに安楽椅子探偵と化し、謎を解く。 シリーズ第三弾、新しい趣向を凝らそうとする努力は認めますが、隻腕の巨人の登場はわたし的にはいただけません。完結編としましょう!?

  • 一夜 隠蔽捜査10 [book]

    今野敏/新潮社/お薦め度 ★★★★ シリーズ第十弾 著名な作家、北上輝記が誘拐?されたが犯人からの要求はない。そうこうするうち、SNSで誘拐が拡散するが、思ったほどのレスがないことから犯人はマスコミ発表を要求してきた。 そんな折、北上の友人?でミステリー作家の梅林賢が小田原署を訪れる。その対応を竜崎が行う。梅林曰く、北上は誘拐されたのだろう、と・・・ いつもの竜崎らしくない梅林を巻き込んだ一風変わった捜査が始まる。 中盤過ぎに誘拐事件の筋立てはみえてくるのだが、そこに警視庁管内、伊丹刑事部長絡み、で殺人事件が発生、息子、邦彦がポーランドから帰国、大学を辞めたいというサブストリーが追加され物語は進む・・・ 事件以外に、梅林と邦彦の面談をセットしたり、梅林から一杯飲みを誘われる件は竜崎の新境地!?

  • ナッシング・マン [book]

    キャサリン・ライアン・ハワード/新潮社/お薦め度 ★★★★ サスペンス 12歳のとき、連続殺人鬼<ナッシング・マン>に両親、妹を惨殺されたイヴ。 18年のときを経、五件の事件、身体的暴行、性的暴行、身体的および性的暴行、殺害、三人の殺害、を取り上げた犯罪実録「ナッシング・マン 生き残った者による真実を求める調査」を上梓する。 元警官でいまは警備員をしているジムは「ナッシング・マン」を手にする。自分の犯行がどう記されているのか・・・ 作中作として語られる「ナッシング・マン」、それを手にするジムの描写が交互に語られる。最初から犯人が明らかにされ、作中作で経過が語られるトリッキーなプロット!? 一冊の本が犯人を追いつめる、あぶり出すサスペンス。 追伸:最後の最後にちゃぶ台返しが・・・

  • 死刑執行のノート [book]

    ダニヤ・クカフカ/集英社/お薦め度 ★★★★ エドガー賞最終優秀長編賞 四人、少女三人、元妻、の女を殺した死刑囚アンセル・パッカーの死刑執行12時間前から物語は始まる。 残り時間が減っていくアンセルの視点、アンセルに複雑な思いを抱く三人の女たち、アンセルの母親ラヴェンダー、アンセルの元妻の双子の妹ヘイゼル、アンセルと一時期、一緒に里親の家で過ごしたサフィー、ニューヨーク州警察捜査官、の視点で過去と現在が綴られる。 三人の女がそれぞれ夫、子供、姉、義兄、友、そして自分の過去と現在を語らせることでアンセルの虚像と実像を浮き彫りにするところは秀逸だが、全体の色彩が暗く、沈んでいるので読者の気持ちも萎えいでしまう!? 悪人になるのはさほど難しくない。悪とは、見つけたり捕まえたりすることができるものではなく、大事に抱えておくことも追い払うこともできない。悪とはひそやかに目立たず、ほかのもの..

  • 悪なき殺人 [book]

    コラン・ニエル/新潮社/お薦め度 ★★★★☆ 心理サスペンス 五人の語り手、アリス、ソーシャルワーカー→ジョセフ、羊飼い、アリスの不倫相手→マルベ、デザイナーの卵→アルマン、アフリカで「国際ロマンス詐欺」を働く青年→ミシェル、アリスの夫で農場主。 章ごとに語り手が変わり、過去や現在を語っていく。最初の章アリスではジョセフとの不倫劇と資産家の妻の失踪。 ジョセフと資産家妻との孤独な関係→マルベと資産家妻の火遊び!?→アルマンの章で予想もしない展開を見せる→最後のミシェルでバラバラだったピースが収まる。 プロットの際立つフレンチミステリー、拾いものの一冊!?

  • ザ・マッチ [book]

    ハーラン・コーベン/小学館/お薦め度 ★★★★☆ 「森から来た少年」の続編 35年前に森で発見されたワイルド、調査員、生みの親捜しのためDNA鑑定サイトに登録、弁護士、亡き友人の母、ヘスターの協力も得、父親と思われる男を探し出し、会いに行く。 父親には三人の娘がおり、若い頃に空軍に所属し、ヨーロッパの基地に派遣されたことがあった。そのときの一夜限りの情事の相手が八人いたという。つまり母親の手掛かりはなかった。父親の家族の爆弾にはなりたくなかったからすぐ飛行機に乗った。 四ヶ月前のメール、母方の血縁者とおぼしき男PBから、に気づいたワイルドはPBとコンタクトをとろうとする。PBはリアリティ番組のスターだったが、あることで炎上し、行方不明になっていた。 ワイルドはPBの身辺調査を始めるが、思わぬ事件に巻き込まれることになる・・・ 幕間に「ブーメラン」ーセキュリティの高い匿名ネット組..

  • 此の世の果ての殺人 [book]

    荒木あかね/講談社/お薦め度 ★★★★☆ 江戸川乱歩賞受賞作 三か月後に小惑星が地球、世界で最も不幸な場所は熊本県北東部、に衝突する。日本に残っている人間はほとんどいない。まして九州など論外。 そんな大牟田の自動車学校に小春、ハルちゃん、がガソリンを盗みに入ると、最初の教習を担当したイサガワ先生と出くわす。咄嗟に「免許を取りに来ました」と答える・・・こうしてハルは人生最後の数カ月で再び運転を教えてもらうことになったのだ。 高速教習の最中、どうしようもなく強烈な死臭が漏れ出していた。恐る恐るトランクを開けてみると見知らぬ女性の遺体が・・・最寄りの警察署に向かうふたり、運よくイサガワ先生の元部下の市村刑事に出会い、これが三件目の殺人事件であることを知らされる。二件の被害者はどちらも若い男。 終末にもかかわらず正義感の強いイサガワ先生に引きずられるように殺人事件を追うハル。 いじめに..

  • 桜の血族 [book]

    吉川英梨/双葉社/お薦め度 ★★★☆ 女マル暴刑事降臨 仲野賢治と誓、結婚3年、かつての組織犯罪対策四課、マル暴、の同僚、誓は寿退職。銀座の老舗デパートでの待ち合わせ、事件は誓の目の前で起きる。賢治めがけて3発の銃声が・・・ 賢治は一命を取り留めたものの、車イス生活を強いられる。誓は賢治の仇討?のためマル暴に再採用される。 何ともすごい設定。しかも誓の父親は伝説のマル暴刑事、桜庭功、親子二代の筋金入り? 上司の薮哲子と共に内察するのは独立系の向島一家、組長は向島春刀、分裂した日本最大の指定暴力団、吉竹組のどちらにも組していない。 「桜の血族」が本書の肝。ネタバレになるのでこれ以上は言えないが、鍵を握るのは向島春刀、原理任侠主義、こんな言葉があるのかどうかわからないが、どちらの血も流させないというヤクザ、まるで警察の様な・・・ キャロル・オコンネルのキャシー・マロリー・シリーズ..

  • 郊外の探偵たち [book]

    ファビアン・ニシーザ/早川書房/お薦め度 ★★★☆ MWA賞最優秀新人賞候補作 アンドレア・スターン、33歳、クイーンズ育ちのユダヤ人、4人の子持ち、お腹のなかには5人目が、若いころにはFBIのプロファイラーとして難事件を解決した・・・ ケネス・リー、中国系アメリカ人、若いころピューリツァー賞を受賞、将来を嘱望されていたが、その後はキャリア・ダウン、ため息ばかりの日々・・・ 退屈な毎日、心躍るものは何もないスターン、大きなスクープで一発逆転を狙うリー。そんなふたりが人種的、文化的偏見がはびこるアメリカの小さな郊外住宅地で起きた殺人事件を追う物語。「スターン&リー 郊外の探偵たち」。 事件の発端は。一番下の女の子におしっこをさせるためガソリンスタンドに立ち寄る。そこはインド人の従業員が射殺された現場だった。規制線をはろうとしている二人の巡査、女の子は我慢できずおしっこをもらしてしま..

  • 裏切り [book]

    シャルロッテ・リンク/東京創元社/お薦め度 ★★★★☆ シリーズ第一弾 伝説的な警部だった父、その父が自宅で惨殺された。スコットランド・ヤードの刑事ケイト、39歳、独身、恋人なし、友人なし、人づきあいが下手、おまけに仕事もうまくいかないさびしいさびしい人間、は長期休暇をとり実家に戻る。 父の事件捜査責任者はアルコール依存症で治療、復帰したばかりのケレイブ警部。捜査は進展せず、ケイトはイライラを募らせる。加えて一番の容疑者?と目される刑務所帰りの男が行方不明・・・ そんなケイトに父親のことで話があると連絡してきた女性が父同様に惨殺されてしまう。ケイトには捜査権がない。ケイレブとの軋轢を抱えたまま、父のことをもう一度見つめ直す必要に迫られる。 父の同僚の死体が発見されるに至り、3つの事件の起きた順番が大きな鍵を握ることになる・・・ 伏線の回収、ミスリードのサブストーリー、人物設定・..

  • 2023年ベストミステリー 海外編 [book]

    年間「海外編ベスト10」 第一位 「頬に哀しみを刻め」/S・A・コスビー/ハーハーBOOKS 第二位 「真珠湾の冬」/ジェイムズ・ケストレル/早川書房 第三位 「帝国の亡霊 そして殺人」/ヴァシーム・カーン/早川書房 第四位 「愚者の街」/ロス・トーマス/新潮社 第五位 「特捜部Qーカールの罪状ー」/ユッシ・エーズラ・オールスン/早川書房 第六位 「キリング・ヒル」/クリス・オフト/新潮社 第七位 「ミン・スーンが犯した幾千もの罪」/トム・リン/集英社 第八位 「軋み」/エヴァン・ビヨルク・アイイスドッティル/小学館 第九位 「ダーク・アワーズ」/マイクル・コナリー/講談社 第十位 「卒業生には向かない真実」/ホリー・ジャクソン/東京創元社 「ナイフをひねれば」/アンソニー・ホロヴィッツ/東京創元社 今年はすんなり決まりました。一位から六位、わたしのお薦め度..

  • 2023年ベストミステリー 国内編

    年間「国内編」ベスト3 第一位 「木挽町のあだ討ち」/永井沙耶子/新潮社 第二位 「可燃物」/米澤穂信/文藝春秋 第三位 「キツネ狩り」/寺嶌曜/新潮社 永井沙耶子、米澤穂信は秀逸でした。寺嶌曜は新人ながらあっぱれ!

  • 夜に啼く森 [book]

    リサ・ガードナー/小学館/お薦め度 ★★★★ D・D・ウォレン×フローラ、第四弾 15年前に失踪した少女の白骨遺体が山中で見つかる。少女は強姦殺人犯ジェコブ・ネスの初期の被害者ではないかと考えられた!? FBI特別捜査官はボストン市警の部長刑事D・D・ウォレン、ジェイコブに囚われ生還したフローラ、実話犯罪マニアでコンピューター・アナリストのキースを招へいする。 山中大捜索の初日、新たな白骨遺体が見つかる。それも一ヶ所に三つ。それらはジェイコブの犠牲者なのか!? D・Dは町長夫妻が経営するホテルでひとりの少女ボニータと命名、に出会う。脳挫傷で言葉が話せず、学校にも通っていない。十代なかばでメイドとして働かされていることに疑問を感じ、夫妻の目を盗み、コミュニケーションをはかろうとする。 いっぽう、フローラとキースはかつて自身が監禁されていたキャビンをさがすべく、山中をバギーでめぐる..

  • 夜間旅行者 [book]

    ユン・ゴウン/早川書房/お薦め度 ★★★★ CWAトランスレーション・ダガー(最優秀翻訳小説)受賞 コ・ヨナは災害ツアー、火山、地震、戦争、干ばつ、台風、津波など、を企画する「ジャングル」、のトラベルプログラマー、10年以上、災害を探し回り商品化する仕事をしてきた。 セクハラ上司からイエロー・カードを出され、ひと月休暇をやるから、このまま継続するかどうか検討中の商品からひとつを選び、報告書を書くだけでいいと命じられる。ヨナが選んだ商品は”ムイ”、ベトナム、の「砂漠のシルクホール」。 ツアーの参加者はガイドを含め6名、それ以外の旅行者は見当たらない。貸切状態の中、白々しい?イベントが繰り広げられる。ヨナは打ち切りを提案しようとするが・・・ 事件は帰国の途で起きる、ヨナが腹痛のためトイレを探し列車を移動、その間に列車は切り離され、ヨナはひとり取り残されてしまう。スーツケースも、パスポ..

  • キツネ狩り [book]

    寺嶌曜/新潮社/お薦め度 ★★★★☆ 新潮ミステリー大賞受賞作 本よみうり堂で宮部みゆき推しの警察小説。 尾崎冴子は三年前、二人乗りバイクの自損事故?で、運転していた婚約者を亡くす。後ろに乗っていた尾崎も骨折、更に右眼を失明。六年半在籍した刑事課を離れ警務課に配置転換になっていた。 事故後、初めて現場を訪れた尾崎は失明した右眼で事故の状況を具に見て唖然とする。それは故意に起こされた事故、いや事故に偽装した殺人にしか見えない光景だった。 検査の結果、尾崎の左眼は現在の、右眼は三年前の光景を見ていることが判明する。つまり左眼が見ているのと同じ場所の三年前の光景を右眼に見えているということだ。 深澤署長は早速、継続捜査支援室を立ち上げ、かつての指導役、弓削をバックアップにつけ、尾崎の能力を使って事件を再捜査することにする。 支援室の最初の事件は尾崎の右眼で犯行を見ることが出来る時..

  • アンリアル [book]

    長浦京/講談社/お薦め度 ★★★★ スパイ見習い!? 実習期間を残して山王署から本庁・警備部警護課第四係へ異動となった沖野修也、19歳、警護課課長からお前は出向になった。本庁には出社におよばず、国際交流二係へ出勤するように・・・ 国際交流二係とは諜報、防諜を行うスパイ組織。沖野がスカウトされた「特質」は殺意や敵意を悪寒や相手の目の色を通じて感じる能力。しかもその特質いや「異能力」は、明治時代から続く遺伝子の掛け合わせの産物だという・・・ 物語は4つの事件で構成され、組織、手法、国益、自分に「抗いながら」突き進み、CASE4でCASE1の伏線が回収される青春スパイ小説とでも言えばいいのかな!? 来週の予告:「キツネ狩り」/寺嶌曜を紹介します。こちらも左眼で現在、右眼で三年前が見える特質をもった警察官の話・・・

  • ハンティング・タイム [book]

    ジェフリー・ディーヴァー/文藝春秋/お薦め度 ★★★☆ コルター・ショウ・シリーズ第四弾 DVで投獄されていた元夫ジョン、元刑事、が刑期を残して突然出所、元妻アリソン、優秀なエンジニア、と娘ハンナは最小限の荷物を車に積み、仮住まいから逃走する。 ジョンの投獄の原因はアリソンの告発だった。ジョンは出所したらアリソンを殺すと周りに告げていた。 そんな状況下、コルター・ショウはアリソンの雇い主から依頼を受ける。アリソンと娘を救ってほしい、と・・・ 逃げるアリソンと娘、追うジョンと二人組の殺し屋、それにショウも加わり、三者の逃走劇、追跡劇が始まる。 本の帯にはドンデン返し20回越えとあるが、少々物足らない。もっと捻りのあるドンデン返しを期待していたのに・・・「オクトーバー・リスト」のような意欲作を読みたいものだ。

  • 渇きの地 [book]

    クリス・ハマー/早川書房/お薦め度 ★★★★ CWA最優秀新人賞受賞作 一年前に悲惨な事件、牧師が銃を乱射五人を殺害、の後追い取材のため派遣された新聞記者のマーティン。 牧師のバイロンは住民の間では人気があったが、唯一の汚点は小児性愛者として告発されていたことだった。 なぜ牧師が凶悪犯罪人に変貌したのかという動機の解明が不十分なまま一年が経過してしまった。 マーティンの使命は時の経過で住民の心は癒されたのかを記事にすることだった。手始めに牧師を射殺した若い警官のインタビューから町を歩きはじめる。 マーティンは意図しないうちに、さまざな出来事に深くかかわっていた。町の鼻つまみ者を森林火災から救い、交通事故を起こして同乗者を死なせた少年の命を救った。そのあと、警察官を自殺に追いやったと非難され、全国ネットのテレビで晒し者にされた。さらに捜査をかく乱した罪で告発された女性の保釈保証人..

  • グレイラットの殺人 [book]

    M・W・クレイヴン/早川書房/お薦め度 ★★★★☆ 刑事ワシントン・ポー・シリーズ第四弾 サミット開催が迫る中、要人を搬送するヘリコプター会社の社長が売春宿でバットで殴り殺される。テロを警戒する政府、MI5、は、ポーに事件の捜査を命じる。 捜査チームはポー、天才分析官のティリー・ブラッドショー、アメリカは安全確保のため派遣されたFBI特別捜査班のメロディ・リー、MI5の連絡係のハンナ・フィンチの四名。 殺害現場の捜査から暖炉の上に置かれた置物のひとつ、ラット、が持ち去られたと考えるポーは現場にいち早く入ったハンナが犯人だと断定する。勿論、ハンナはチームから外される。 ティリーのアンテナに3年前の貸金庫での殺人事件、犯人らは何も盗らず、ラットの置物と遺体だけを残して去った事件が引っかかる。 誰かが二つの事件が関連していることを示唆しているのだろうか!? 重層し、二転三転する捜査..

  • キリング・ヒル [book]

    クリス・オフット/新潮社/お薦め度 ★★★★☆ CWAゴールド・ダガー候補作 濃密な血縁関係があらゆることの上位にくる片田舎の町で起きた殺人事件、アメリカニンジン採取中の老人が女性の遺体を発見した。 捜査を担当するのは郡保安官のリンダなのだが、町の有力者から見張り役として若いFBI捜査官を押し付けられてしまう。女の保安官は信用ならないと・・・ そこでリンダは帰国中の兄、ミック、米国軍犯罪捜査官、に捜査協力を依頼する。兄は妻との間に大きな問題を抱えていた。 捜査はミック主導で行われるが、一族の結束が強い村社会、人々は口をつぐむ。 アパラチア人は昔ながらの掟に従って生きており、それによって行動を起こすこともある。公然たる侮辱は常に、個人的な問題である。復讐行為は何世代にもわたって引き継がれるのだ。この丘陵地では、不法侵入者は殺した後に許しを乞うたほうが得策だということだった(本書2..

  • 高瀬庄左衛門御留書 [book]

    砂原浩太朗/講談社/お薦め度 ★★★★ 直木賞候補作 何とも洒落た題名、「御留書」、いまで言う備忘録?、とは・・・ 息子、啓一郎、を亡くしてからの二年間を綴った御留書。 物語のクライマックスは郡方、庄佐衛門の管轄地は富地、一方隣村は天領地とはいえ貧地、隣村から強訴が起こり、庄屋屋敷に庄左衛門らが囚われの身となってしまう。 強訴であれば城下に繰り出すのがふつうなので、庄屋屋敷を取り囲むなど聞いたこともない。それに加え、強訴組のなかにかつて道場に通っていた友?の姿が・・・ 旛の政争の具の嵐の現場に立たされる庄左衛門・・・ 最後は大岡裁きと思われる結末を迎え、すべてがあるべきところへ収まる大団円!? ハードな側面ばかりではなく、亡き息子の妻、志穂の恋慕の情が庄左衛門の心をざわつかせる?横糸としては申し分なし。 これを機会に何冊か手に取ってみたい作家。

  • 蒼天の鳥 [book]

    三上幸四郎/講談社/お薦め度 ★★★★ 江戸川乱歩賞受賞作 実在の女流作家、田中古代子、と娘、千鳥、をシャーロックとワトソンにした探偵小説。舞台は大正13年の鳥取。 「探偵奇譚 ジゴマ」、主人公のジゴマは変装名人の大怪盗であり、兇賊。Z組という集団をあやつって、盗み、放火、殺人、あらゆる犯罪を犯し、巴里の街の人々を恐怖のどん底におとしいれる。その兇賊に対するのは、ポーリン。どんな悪漢でも明晰な推理で確保する巴里一番の名探偵。 活動写真を見に行く古代子と千鳥、上映中に火災が発生、兇賊ジゴマがあらわれ、客のひとりを殺す。そのことを見てしまった二人が同じジゴマとZ組に襲われる。その大怪盗が夜光会、コミュニスト、くずれの露亜会の一味で・・・ 時代背景、女性解放、コミュニスト・・・大正13年の鳥取・・・母娘探偵・・・魅力的な設定に映る。しかも小説としては完成度が高い。欲を言うともう少しミス..

  • トゥルー・クライム・ストーリー [book]

    ジョセフ・ノックス/新潮社/お薦め度 ★★★★ サスペンス・ノワール 6年前の女子大生失踪事件、ゾーイ・ノーラン、にとり憑かれるイヴリン・みっちぇrは関係者へのインタビューを通じ、未解決事件の真相を突き止め、一冊の本、トゥルー・クライム・ストリー、にしようとする。 執筆の助言をジョセフ・ノックスに求める。 ほとんどが関係者へのインタビューの文字起こし、その合間にイヴリンとノックスのやり取りが入るという特殊?な構成。イヴリンから送られてきた原稿をもとにしてノックスが事件を推理する? 事件の確固たる証拠を入手後、イヴリンは帰らぬ人に。ノックスが彼女の遺稿を完成させたが・・・ 関係者のインタビューの文字起こしをしているため、視座を変えると全く異なるイメージが浮かび上がると同時に結末らしい結末のない物語になっている。ゾーイに何が起きたか解決を提示できないかぎり、結末のつけようがない。 ..

  • 陽炎の市 [book]

    ドン・ウィンズロウ/ハーパーBOOKS/お薦め度 ★★★★ 三部作の二作目 繋ぎの章? イタリア系マフィアとの抗争に敗れたアイルランド系マフィアのダニー・ライアンは父親、幼い息子、手下と西へ西へと向かう。追手が迫る中、かつて自分を捨てた母、マデリーンの庇護を受けざるを得なくなる。幼い息子のために・・・ 母マデリーンは各界の大物たちの醜聞を武器に確固たる地位?に上りつめていた。その伝手で麻薬取締局と取引、メキシコの麻薬カルテルから現金強奪、に応じ、まんまと成功させる。 その現金をマネーロンダリングさせ、まともな暮らしを得ようとするも、スター・ボーイズの暴走、ハリウッド映画にからむ、を止めるため、ハリウッドに足を踏み入れるが、ミイラ取りがミイラになってしまう。 自分たちを描いた映画、「プロヴィデンス」に資金提供、主演女優と抜き差しならぬ仲になってしまう。 繋ぎの章なのであまり期待..

  • 木曜殺人クラブ 逸れた銃弾 [book]

    リチャード・オスマン/早川書房/お薦め度 ★★★★ シリーズ第三弾 木曜殺人クラブの面々が今回取り上げた未解決事件は、十数年前、女性キャスター、ペサニー・ウェイツが車ごと断崖から落とされたが、遺体は見つかっていない。 まず手始めに、ペサニーと親交のあった有名キャスター、マイク・ワグホーンと対面することに・・・そんな中、エリザベスの携帯に謎のメールが・・・ 更に、エリザベスと夫のスティーヴンは拉致され、メール発信人、バイキング、から諜報員時代の友人、KGB将校、を殺害するように脅される。 ペサニーが死亡?する前に追っていた事件は、VAT、付加価値税、詐欺、複雑に入り組んだ、ビットコインとマネーロンダリング。それとエリザベスの脅迫事件がいつしか交わることに・・・いつもよりエンタメ度は増したが、スッキリしない結末に少々不満が残る!?

  • ナイフをひねれば [book]

    アンソニー・ホロヴィッツ/東京創元社/お薦め度 ★★★★ ホーソーン&ホロヴィッツ・シリーズ最新刊 ホロヴィッツの戯曲の公演が初日を迎える。舞台の評価が気になるホロヴィッツ、出演者たち・・・終演後のパーティの和やかさは、嫌われ者の劇評家ハリエットの登場で一気に台無しになってしまう。 飲み直しに劇場にもどると、出演者のひとりがネットに出た劇評を見て声をあげる。悪意に満ちた酷評に衝撃を受けるホロヴィッツと出演者たち・・・ 一夜明け、二日酔いのホロヴィッツを警官が訪ねる。今朝ハリエットが自宅で刺殺された事を告げる。凶器の短剣はプロデューサーが関係者に配った記念品、それがホロヴィッツのものだったのだ。 留置場で一夜を明かしたホロヴィッツが一回しかかけれない電話の相手に選んだのはホーソーン。後味の悪いすれ違いをしたばかりだったが背に腹は代えられない。 容疑者は劇場で飲み直した六人と楽屋口..

  • 消えた戦友 [book]

    リー・チャイルド/講談社/お薦め度 ★★★★ シリーズ第十四弾 邦訳の順番は支離滅裂?だが、どれから読んでも愉しめるシリーズ。 ATMで現金を引き出そうとしたリーチャー、自分の口座にあるはずのない入金が・・・その額1030ドル。憲兵が応援を要請するときの無線コード、10-30か? 振込をした人物は元同僚のニーグリー、シカゴで民間警備会社の仕事をしている、だと判明、アシスタントいわく、リーチャーに会いたがっていて、ロサンゼルスに向かっている、と。 ニーグリーと再開をはたすリーチャー、ニーグリーから元同僚のフランツが砂漠で死体で発見されたことを告げられる。 リーチャーがかつて指揮をとっていた特別捜査部隊のメンバーは9名、うち1名は交通事故で死亡。ニーグリーはその他の五名に応援を要請しようとしたが、リーチャー以外連絡がつかないという。 戦友たちの消息を確かめようとするふたりを監視、..

  • 虚心 [book]

    吉川英梨/幻冬舎/お薦め度 ★★★★ 警察小説 初めて手にする作家、本よみうり堂で宮部みゆきが推し・・・ 黒部山で土砂崩れが発生、ひとりが行方不明、瓦礫のなかから大量の産業廃棄物が見つかる。埼玉県警捜査一課の奈良も行方不明者の捜索にあたる。 捜一の奈良が捜索に加わる理由は16年前、迷宮入りとなった殺人事件の捜査に加わっていたからだった。 16年前の事件とは、産廃の最終処分場建設をめぐり、町が反対派と賛成派に二分される中、反対派の監視所で起きた殺人、被害者は反対派のリーダー、第一発見者の金文商事のぼんぼん金木大輔が容疑者としてあがるが、決定的な証拠が掴めず、ドイツへの留学を許してしまった・・・ 崩落現場の地権者は14名、そのなかに金本大輔の名前があることから奈良は16年前の続きを完結させるため捜査に執念を燃やす。 昨年、熱海で起きた土砂災害と同じような構図、産廃=悪の刷りこみ?..

  • アオサギの娘 [book]

    ヴァージニア・ハートマン/早川書房/お薦め度 ★★★☆ ミステリーあるある!? スミソニアン自然博物館勤務の鳥類画家のロニ、弟フィルからの電話、母さんが転んだんだ。しばらく滞在するつもりでいてよ、母さん、様子がおかしいんだよ。記憶が・・・ 母親の介護のためフロリダに帰って来たロニ。母親の荷物を片づけている、家を貸すため、と「ボイド、父親、の死についてあなたに話しておかなくてはいけないことがあります」という謎めいたメモを発見する。 ミステリーあるあるの展開!? 父親のボイドは25年前、沼で不審な溺死を遂げていた。 母の荷物を整理しながら当時のことを探り始めるロニに嫌がらせが始まる・・・ ミステリーとしてはs少々物足らないし、家族の物語としてもイマイチ!?ロニの性格に共感できないからだろうか・・・ 残念な一冊。

  • 愚者の街 [book]

    ロス・トーマス/東京創元社/お薦め度 ★★★★☆ クライム・ノベル 上巻はルシファー・C・ダイ、元セクション2の秘密諜報員の来し方の物語。上海爆撃で父親を亡くし、娼館のロシア人女性に拾われ生き延びる。地球を半周、再びアメリカにもどり、セクション2に加わるも、何者かの策略により投獄され失職・・・ 下巻では、ダイに持ち込まれたのは不正と暴力で腐敗した街の再生計画・・・ダイに力を貸してくれるのは元悪徳警官のホーマー・ネセサリと元娼婦のキャロル・サッカティ。 「良くなる前にはもっと悪くならなくてはならない」 賭博、売春を黙認、賄賂を受け取る要人たちを次々に排除、弱体化した街には各地のマフィアが群がる。それらを共食いさせるダイたち。 胡散臭い面々のあつまり、予測不可能な展開、まさにクライム・ノベルだ。 巻末に原尞が、もともとロス・トーマスの小説は少しでも早く読了することが目的であるよう..

  • その罪は描けない [book]

    S・J・ローザン/東京創元社/お薦め度 ★★★★ リディア&ビル・シリーズ十三弾 ビルのもとに奇妙な?依頼が・・・かつて女性を殺し、服役、刑務所で絵の才能をみとめられて仮釈放され、注目を集めている画家のサム、釈放の翌日、イベントの翌日殺された女性の犯人は自分だ。 警察に自首したけれど相手にされなかった・・・自分が犯人であることを証明してほしい、と。 連続殺人の前後に同様の事件がおき、四連続殺人か?ニューヨークのアート事情の裏側を背景に、ビルとリディアの調査は進む。 前半、ビルとサムのかみ合わない会話が続き、少々退屈?ではあるが、リディアが加わると物語は一挙に加速する。 相変わらず愉しめるシリーズ!

  • 珈琲と煙草 [book]

    フェルディナント・フォン・シーラッハ/東京創元社/お薦め度 ★★★★ 観察記録 エッセイ+小説 短い文章のなかのツイスト、さすがシーラッハと言わざるを得ない48のテキスト。 ドイツで死刑が廃止される12日前に斬首刑となった男の実話・・・ ボクサーとの恋の思いでを語る老婦人・・・ 本書は読んでいただくしかありません。

  • 8つの完璧な殺人 [book]

    ピーター・スワンソン/東京創元社/お薦め度 ★★★★ 名作ミステリーへのオマージュ ミステリー専門書店、オールド・デヴィルズ・ブックストア、の店主、マルコムももとをFBI捜査官のグウェンが訪ねる。マルコムが10年前ブログに載せた<完璧なる殺人8選>について詳しく聞きたいと・・・ 8選とは、「赤い館の秘密」、「殺意」、「ABC殺人事件」、「殺人保険」、「見知らぬ乗客」、「溺殺者」、「死の罠」、「シークレット・ヒストリー」・・・ グヴェン曰く、8つの作品に手口が似ている、と。 物語はどう展開するのかと思いきや、マルコム自身が「見知らぬ乗客」の交換殺人の片棒を担いでいることが早々に明かされる。ブログのリストに再び引き戻されたマルコムは交換殺人の相方捜しに執心?する・・・いかにもピーター・スワンソンらしい!? 名作ミステリーへのオマージュではあるが、スワンソンらしい結末かといわれるとそ..

  • 可燃物 [book]

    米澤穂信/文藝春秋/お薦め度 ★★★★☆ 連作短編ミステリー 短編の名手、米澤穂信による初めて?の警察小説。群馬県警本部捜査第一課、葛警部を主人公にした連作短編が五編収録されている。 「崖の下」、凶器は何か? 「ねむけ」、目撃証言の一致? 「命の恩」、保険金証書 「可燃物」、よく燃えてはまずかった放火? 「本物か」、人質立てこもり事件 本格ミステリ×警察、上にも下にも媚びない葛警部、事実をひとつひとつ潰し、真実を暴きだす。一匹狼かといわれれば、そうではないが、部下が育っていない、というより育てていない上司。 シリーズ化されること間違いなし。次作も期待したい。

  • サーチライトと誘蛾灯 [book]

    櫻田智也/東京創元社/お薦め度 ★★★★ シリーズ第一弾 ミステリーズ!新人賞受賞作。第二弾「蝉かえる」は日本推理作家協会賞受賞 昆虫好きなとぼけた?青年・魞沢泉が真相を解き明かす連作短編集。 第一弾より第二弾の方が昆虫好きな青年がより強調されている。題材が蝉、クモ、甲虫、ホタル、蠅、と・・・ 若手作家で短編の名手といえば、「米澤穂信」の名がすぐにあがる。著者もそのあとを追うのかしれない!? 期待して次作を待ちたい。

  • 二度死んだ女 [book]

    レイフ・GW・ペーション/東京創元社/お薦め度 ★★★★ 刑事ベックストレーム・シリーズ第四弾にして完結編 ベックストレームと同じアパートに住む少年、ベックストレームを師と仰ぐ、が夏のキャンプを切り上げ、頭蓋骨を持ち帰る。頭蓋骨のこめかみに小さな穴と銃弾が・・・ 少年が岐路の途中、ネットで調べたところ、年齢は20から40歳、アジア系の女性、死後数年が経過していると思われる。 ベックストレームらの調べが進むうちに、12年前タイで津波によって死んだ女性と判明、スウェーデン人の夫が現地で身元を確認した。人は二度死ねるのか!? シンプルな命題を500頁超の大作にしたのはベックストレームの際立つキャラとマイナスの仕事ぶり!?なんとも癖になってしまう。ベックストレームの共演者もキャラ立ち、読者を飽きさせない。次作が読めないのは残念!

  • 正義の弧 [book]

    マイクル・コナリー/講談社/お薦め度 ★★★★☆ レイネ・バラード&ハリー・ボッシュ・コンビ第四弾 ふたりで探偵稼業を始めるつもりだったが・・・レイネ・バラードはLA市警に復帰、再編成された未解決事件班の責任者になった。 ボッシュをリクルートするため、ボッシュの心残りの未解決事件、ギャラガー一家殺害事件、を餌に?バラードが解決しなければならないLA市議会議員の妹殺害事件をバーターした。 ボッシュが見つけた糸口から議員の妹が殺害された11年後、議員の選挙応援バッジが、同じ犯人に殺された女性の家から発見される。DNAを採取するため罠を仕掛けが、事態は思わぬ展開を見せる。 一方、ギャラガー一家殺人事件にも執念を燃やすボッシュ、犯人の正体と居場所を突き止め、単身で乗り込む。 ボッシュの正義をなす為の道がもたらす結末は自分の命と引き換えとしか思えない。そろそろ終焉が近づいているのか!? ..

  • 卒業生には向かない真実 [book]

    ホリー・ジャクソン/東京創元社/お薦め度 ★★★★☆ 三部作完結編 前作「優等生は探偵に向かない」同様、前作の復習から始まり、現在進行形でマックス・ヘイスティングスから名誉棄損で訴えると言ってきていたが、ピップはマックスの言い分を頑として拒否した。 そんな折り、ピップの身辺で不審な出来事が続いていた。匿名のメール、無言電話、チョークで道路に書かれた頭のない棒人形、首を切られたハト・・・ストーカーがピップを狙っているのか!? 調べを進めるうちに、6年前の連続殺人事件と酷似しているを突き止める。しかし犯人は収監され、事件は解決している・・・ ここからいつものビップらしい調査が始まるのだが、事件はあらぬ方向へ大きく舵を切る。ネタバレになるのでこれ以上は書けないが、チーム・ラヴィ・アンド・ピップの絆が青春小説から恋愛小説に変わって行く完結編。大胆な終わらせ方は賛否両論かも!?

  • 特捜部Q -カールの罪状- [book]

    ユッシ・エーズラ・オールソン/早川書房/お薦め度 ★★★★☆ シリーズ第九弾 殺人捜査課課長ヤコブスンの胸に引っかかっていた32年前の事故?、爆発に巻き込まれて幼い息子を亡くす、の母親が誕生日に自殺した。それを発端に特捜部Qのメンバーが動き出す。 連続殺人が疑われる案件を当たるものの、全く先が見えない。共通点らしきものは現場に残された塩だけ。 事件が形を見せ始めたのは事件が2年ごとに起きているかもしれないという仮説、その仮説に基づいて捜査を進めると、近いうちに事件が起こる可能性が見えてくる。 特捜部Qの捜査と並行して復讐に燃える女たちの集いが語られる。この二つがどうリンクするのかハラハラドキドキ・・・加えて、過去の事件で家宅捜査を受けたカール、屋根裏部屋から見つかった古いスーツケースの中からコカインと高額の現金が出てきた。 新型コロナウィルスによるロックダウン、カールの職務停止..

  • 熱 砂の果て [book]

    C・J・ボックス/東京創元社/お薦め度 ★★★★ ジョー・ピケット・シリーズ ネイトは連邦政府の秘密組織に否応なく・・・ピケットはルーロン州知事の勅命で・・・シェリダン、ピケット家の長女、はルームメイトの誘いで・・・ ネイトはいままでの容疑をすべて消し去る代わりに、テロ計画を探れ、と。計画の首謀者は元新聞記者、駐米サウジアラビア大使の長男、イスラム過激派との接触?しかも鷹匠・・・それゆえネイトに白羽の矢が。 ルーロン州知事の勅命は、ネイトを見つけ出し、連邦政府のやつらがなにをしようとしているのか探り出すこと。 シェリダンはキャンプ用品をもたないルームメイトに誘われ、何の目的かも確認することなく週末をある場所で過ごすことに。 そんな三人がレッド・デザート、熱砂、に引き寄せられる。そこで三人を待っていた謀とは!? 相変わらず愉しめるシリーズ。

  • チョプラ警部の思いがけない相続 [book]

    ヴァシーム・カーン/ハーパーBOOKS/お薦め度 ★★★★☆ CWA賞受賞作家が贈る現代インドミステリー 「ベィビー・ガネーシャ探偵事務所」シリーズ ベィビー・ガネーシャとはチョプラ警部が早期退職の日、放浪癖のある叔父から贈られた?小象のこと。 よりによって警察官人生の最後の日に・・・と思いながら警察署に到着した警部を待っていたのは、少年の死の原因を突き止めてほしいという母親の願い、死因は溺死、司法解剖もされず事故として処理されていた。 違和感を覚えるチョプラは独自で捜査を始めるが、それはインドの裏社会を巻き込んだ大事件に発展する。 ここからはネタバレ、元警部と小象の異色コンビが大都会ムンバイ(旧ポンペイ)を奔走する。前作、CWA賞受賞作「帝国の亡霊、そして殺人」、とうって変わったユーモアミステリー。大型ショッピングモールをチョプラとガネーシャが走る件には笑ってしまう・・・ ..

  • 風配図 WIND ROSE [book]

    皆川博子/河出書房新社/お薦め度 ★★★★ 冒険譚!? ゴッドランド島、スウェーデン、に流れ着いた帆船の積荷、有力農民の一族、オーラヴとソルゲル、は漂流物は発見した者のものだと主張、帆船のただひとりの生き残り、リューベック、ドイツ、の商人は積荷は我々のもの、返してほしい、と・・・ 司祭が仲裁にはいり、決闘裁判が行われる。リューベックの商人は大けがをしているため決闘裁判には参加できない。その代理をかって出たのはオーラヴの娘ヘルガ、一方、農民一族からはソルゲルの親戚のギールスが代闘に立つ。15歳の少女と23歳の青年の戦いとなった。 勝負はヘルガの勝利に終わり、それを機に交易商人を夢見るヘルガはリューベックに渡る。それを見送った義妹アグネもヘルガに憧れる。 ゴッドランド島、リューベック、ノヴゴロド、ロシア、の3拠点を巡る交易商人の覇権争いとノヴゴロドにおける政変を風配図として捉えた意欲..

  • すり替えられた誘拐 [book]

    D・M・ディヴァイン/東京創元社/お薦め度 ★★★★ 最後の未訳小説 資産家の父を持つバーバラ・レッチワース、問題をすべて親の金で解決、今の交際相手はギリシャ語の助講師マイケル・デントン、そんな彼女が何者かに襲撃される。 頭にコブを作っただけで終わったが、良からぬ噂が飛び込んでくる・・・誘拐がくわだてられている、と。 学生たちが主催する集会の最中、計画、誘拐と救出劇というスリル満点のクライマックスが用意された、は実行される。 しかし、夜陰に乗じて、虚言誘拐は本物の誘拐にすり替わった。 思いもよらぬ展開を迎えた誘拐事件がついに殺人事件へと繋がる。 最後の未訳長編、安定感は相変わらず、ファンにとってはたまらない一冊だ!

  • 江戸のキャリアウーマン [book]

    柳谷慶子/吉川弘文館/副読本 奥女中の仕事・出世・老後 江戸の後期、奥女中は将軍家だけでも二五○○人に達していたとみられる。これに二五○家に及んだ大名家の複数の屋敷と、旗本・御家人の屋敷を含めると、江戸の武家屋敷に勤める奥女中の需要はこの当時、少なく見積もっても数万人に上ると言われている。このほか大名の居城には江戸屋敷の半分程度の女中が存在していたとみられる。 今後、時代小説を読むときの副読本としたい。ちなみに、史料の記載から年齢を知る目安として、男女ともに、「老年」や「老体」とあれば五○代から六○代であり、「老壊」とあればおおよそ七○代である。ハ○代以上は「極老」と記される。

  • 盗作小説 [book]

    ジーン・ハンフ・コレリッツ/早川書房/お薦め度 ★★★★☆ THE PLOT かつてのベストセラー「驚異の発明」以来、新作が書けないジェイコブ・フィンチ・ボナー・・・今はある大学の芸術修士課程のシンポジウムで小説講座を受け持ち糊口をしのいでいた。 講座の生徒のなかに不遜な態度と大口をたたくエヴァン・パーカーが語ったプロットはジェイコブをとらえてやまなかった・・・ 三年がたち一向に前に進めないジェイコブ、ふとしたことからエヴァンを検索してると、出会って二か月後に急逝していたことが判明、何者かがジェイコブにささやく、”よい作家は借用し、偉大な作家は盗用する” かくしてジェイコブは前作とは比べ物にならないベストセラー「クリプ」を書きあげる。 そんな彼のもとへ「おまえは盗人だ。それはおたがいに知っている」というメールが届く。作中作の「クリプ」と怯えながら脅迫者探しをするジェイコブが交互..

  • テスカトリポカ [book]

    佐藤究/直木賞受賞作/お薦め度 ★★★★☆ 直木賞受賞作 クライムノベル メキシコの麻薬密売組織ロス・カサソラスを仕切っている四人兄弟に大型ドローンで奇襲をかけたのは敵対するドゴ・カルテル、兄弟を三人殺したが、最後の一人バルミロ・カサラス、<粉>、をまだ仕留めていなかった。 バルミロは冷凍船、コンテナ船を乗り継ぎ、アフリカ、オーストラリア、インドネシアへと姿を消した。復讐と組織再興のための秘策を練る場所はジャカルタだった。 ジャカルタで出会ったひとりの日本人、臓器、腎臓、売買のコーディネーター、心臓血管外科医、末永から臓器ビジネスの新しいアイデアをもらい、二人で日本に渡る。 川崎で育った天涯孤独の少年、土方コシモはバルミロと出会い、その才能?を見いだされ、バルミロらの犯罪組織に引き込まれて行く。 アステカ神話の主要な神のひとり、テスカトリポカに仕えたご先祖さまの血を受け継いで..

  • 恐るべき太陽 [book]

    ミシェル・ビュッシ/集英社/お薦め度 ★★★★ アガサ・クリスティーへの挑戦作!? ゴーギャンやジャック・ブレル、歌手、が愛した島に、フランスの人気作家、ピエール=イヴ・フランソワ(PYF)が指導する<創作アトリエ>に5名が選ばれた。野心的な作家志望者、クレマンス・ノヴェル、ベルギーの人気ブロガー、マルティーヌ・ヴァン・ガル、パリ警察署の主任警部、ファレイーヌ・モンサン、黒真珠養殖業者夫人、マリ=アンブル・ランタナ、謎の多い寡黙な美女、エロイーズ・ロンゴ。同行者としてファレーヌの夫で憲兵隊長のヤン・モロ、マリ=アンブルの娘マイマ。 お世話係は<恐るべき太陽>荘のオーナー、タナエ、タナエの娘のポエとモアナ。 <創作アトリエ>ではPYFから課題の通り?PYFが姿を消し、彼女らが次々と死体となって発見される・・・ 五人の書いた手記と憲兵隊長のヤンとマイマ、クレマンスの視点から物語は進行..

  • 悪魔はいつもそこに [book]

    ドナルド・レイ・ポロック/新潮社/お薦め度 ★★★★ ノワール 狂信的な父親のトラウマを抱える息子アーヴィン、説教師と従弟、欲望にまみれた牧師、殺人鬼夫婦、悪徳保安官らが引き起こす暴力の連鎖。群像劇の連鎖。 真っ黒なノワール、暗黒小説。 杉江松恋曰く、ノワールとは中毒者のための小説である。何に。自分の魂に。願望が、欲望が肥大しすぎて他のものが見えなくなった人間は、自分自身であることのみに執着するようになる。一つの道筋を歩くこと以外には何も求めなくなり、やがてはそれ以外のすべてを憎み、世界から消し去ろうとするようになる。 みなさんへのお薦め度は★★★☆だが、ジム・トンプスンのファンとしては★★★★。

  • 鹿狩りの季節 [book]

    エリン・フラナガン/早川書房/お薦め度 ★★★★ エドガー賞最優秀新人賞 ネブラスカ州の田舎町、鹿狩りの季節が始まったばかり、16歳の女子高生ペギーが忽然と姿を消した。家出をしたのか、事件に巻き込まれたのか、憶測が町を飛び交う。 鹿狩りに誘われた知的障害のある青年ハルが血の付いたトラックで帰宅する。しかも車は何かにぶつかった跡が・・・ ハルがペギーに恋心を抱いていたことから、町の人々はハルに疑いの目を向ける。 ハルを受け入れていた農場主のケウライルとスクルールバスの運転手をしているアルマ夫婦、ペギーの12歳の弟マイロの視点から物語は進む。 平穏な田舎町で突然起きた失踪事件で、濃密でややこしい人間関係が様々な形で反応する。ミステリー要素よりも人間関係の反応に重きを置いた一冊。

  • ヴァイオレットだけが知っている [book]

    メリーナ・マーケッタ/東京創元社/お薦め度 ★★★★ 追跡サスペンス 目下停職処分中のロンドンの警官ビッシュ、妻に去られ、娘には愛想をつかされ、酒びたりの日々を送っている。そんな彼に娘の乗ったバス、フランス北部へのバスツアー、が爆破されたとの連絡が入る。 イギリスの子供たちが大勢乗っていたツアー、被害者の父親として現場に向かうビッシュ、娘は無事だったが、三人の生徒と二人の大人が死亡、重傷者は三人・・・ ツアー参加者のひとりがかつて23人を殺した爆弾魔の孫娘ヴァイレットと判明、しかも事情聴取のあと参加者の少年エディと姿をくらました。 爆破事件の現場から消えたふたりを追うビッシュという構図なのだが、それに人種とテロの問題、家族の物語、ティーエイジャーの友情と冒険が絡み物語が大きく膨らむ。 重層するプロットは好感が持てるが、登場人物を整理しながら読みすすめなくてはならないのと結末が意..

  • ホステージ-人質- [book]

    クレア・マッキントッシュ/小学館/お薦め度 ★★★★ 航空パニック・スリラー ロンドンーシドニー直行便の就航記念フライト、353人の乗客、16人の客室乗務員、4人機長、副操縦士を乗せ、20時間の旅が始まった。 娘ソフィアの愛着障害の克服のため、お金のためもあるが仕事に復帰した客室乗務員のミナ、別居中の夫アダム、警察官、にソフィアを預け、このフライトに無理やり参加した。 勤務中のミナのもとに何者かからの手紙が届く。やってもらいたのはこれだけだ。もしこの指示に従えば、娘は助かる。「従わなければ、娘は死ぬ」・・・ ミナ、アダム、ソフィアの夫婦事情と親子事情を綴ったパートと、機内の様子、群像劇、が交互に綴られる、。不穏な出来事がミナを更に襲い、遂に機内で死者が出る。 ミナは娘の命と引き換えにハイジャックに協力することを選択する一方、地上ではアダムとソフィアに魔の手が忍び寄っていた・・・..

  • 蝉かえる [book]

    櫻田智也/東京創元社/お薦め度 ★★★★ 日本推理作家協会賞受賞作 昆虫好きの青年、魞沢泉(いりさわせん)が解く事件の真相。 五編収録の連作短編集。蝉、蜘蛛、ふんころがし、ホタル、蠅、ミステリーの題材としてはユニーク。しかも魞沢以外に一般向けサイエンス雑誌「アビエ」の編集長、糸瓜恭助等が登場することから、科学的な談義?へ発展するところもこれまたユニーク。 間口の広い謎解きのおもしろさがあるとう意味で日本推理作家協会賞を受賞したのか!? 近いうちに、シリーズ第一弾「サーチライトと誘蛾灯」も手にしてみたい。

  • 醜聞の作法 [book]

    佐藤亜紀/講談社/お薦め度 ★★★★ 風刺小説 フランス革命前夜、ある侯爵が養い子のジュリーを放蕩三昧の金持ちに輿入れさせようと企んだ。ジュリーには結婚を誓った音楽教師がいる。侯爵夫人は一計を案じる。 そのためにうだつの上がらない、便利屋の弁護士ルフォンを金で釣り、醜聞、ゴシップ、の代筆屋としてパンフレット、冊子、に誹謗文を載せ、1500部印刷、配らせる。 醜聞はまたたく間に拡散、話に尾ひれがついて増幅する。事実かどうかなんてものはどうでもいい。事実なんていまそこにあってももう見えないし、確かめられもしない・・・ いまならフェイクニュース、SNS・・・で拡散、炎上ということになるるのですが、その時代は代筆屋の腕次第で、更に炎上、その逆で終息となるわけです。 本書は2010年の作品でフランス革命前夜の設定、いまならもっともっと手厳しいしっぺがいしを余儀なくされるのですが、当時はそ..

  • P分署捜査班 寒波 [book]

    マウリツィオ・デ・ジョバンニ/東京創元社/お薦め度 ★★★★ シリーズ第三弾 前作同様の黄金スタイル ロヤコーノとディ・ナルドが追うのは兄妹、兄は科学者、妹はモデル、の二重殺人。ロマーノとカブレーゼは中学校教師から持ち込まれた父親による虐待疑惑。加えて、副署長ピザネッリの自主捜査、”自殺者”の周辺を探って殺し屋を接点をさぐる、の三本立て・・・ 捜査活動と並行して語られる各々の私生活で抱える孤独、苦悩が本書の肝のひとつでもある。 肩の凝らない愉しいシリーズだ。

  • 帝国の亡霊、そして殺人 [book]

    ヴァシーム・カーン/早川書房/お薦め度 ★★★★☆ CWA賞ヒストリカル・ダガー賞受賞作 1949年12月31日、大みそか、インド初の女性刑事、ペルシス・ワディアしかいないマラバール署に一本の電話が、「ジェームズ卿が殺されたのです」。 ジェームズ卿が住むラバーナム館ではパーティーが行われていて、犯行はその最中、凶器は曲がり刃のナイフ、上着のポケットから暗号めいたメモ、金庫は空、不思議なことに死体はズボンをはいていない・・・ インドは1月26日に正式に共和国となる。ジェームズ卿は政府の重要な問題に取り組んでいた。過去の精算はそれまでに解決しなければならないと厳命を受けるペルシス。 ワトソン役はロンドン警視庁付きの犯罪学者、ブラックフィンチ。独立運動、インド、パキスタン、共和国化の混沌の真っ只中を舞台に繰り広げられる歴史ミステリー。 女性警部として生きずらい時代を明晰な頭脳と不屈の..

  • P分署捜査班 誘拐 [book]

    マウリツィオ・デ・ジョバンニ/東京創元社/お薦め度 ★★★★ シリーズ第二弾 コネで入庁したアラゴーナは無能なうえに傍若無人で騒々しい。つかみどころのないディ・ナルドは前任署内で発砲騒ぎを起こしている。無口なロマーノは怒ると自制を失い、容疑者や同僚の首を絞めた前歴を持つ。ロヤコーノはアーモンド形の目を持ち、中国人と呼ばれるシチリア人警部・・・四人のろくでなし刑事の後任は、いずれもほかの分署が嬉々としてお払い箱にしたろくでなし刑事。 ビッフォファルコーネ署長のパルマ、副署長のピザネッリ、<おふくろさん>と呼ばれるカラブレーズを加えた7人が追う事件は、辻褄が合わないことだらけの窃盗事件と入念に仕組まれた児童誘拐事件。加えてピザネッリが単独で調査し続ける自殺案件。 はぐれ者軍団?と思いきや、前作「集結」で初陣を飾り、チームとしての連帯感も生まれる。事件に立ち向かう7人の姿を公私両面から描..

  • 哀惜 [book]

    アン・クリーヴス/早川書房/お薦め度 ★★★★ アガサ賞最優秀長編賞受賞作 海岸で刺殺死体が発見される。死体は精神を病み、アルコールに溺れるホームレス状態で町に来たサイモンだと判明する。最近は複合施設でボランティアをしていた・・・ サイモンが学習障害のあるルーシーとバスに乗り合わせていたことが度々目撃されていた。 捜査に当たるのはバーンスタブル署の警部マシュー、シングルマザーのジェン部長刑事、経験の浅いロス刑事の三人。マシューの夫、同性婚、は複合施設の実質的な運営者。 断片的な情報しか集まらない情況のなか、ルーシーと同じ学習障害をもつクリスティンが誘拐される。後に解放されるのだが、サイモンのフラットに閉じ込められていたことが判明、誘拐と殺人のあいだにつながりがあることもわかっているのだが・・・ サイモンの心の闇は交通事故で子供を死なせたことに起因、立ち直ろうとしていたのに。 ..

  • ロンリー・ファイター [book]

    ハーラン・コーベン/早川書房/お薦め度 ★★★★ マイロン・ポライター・シリーズ第四弾 ウィルにゴルフ界でのエイジェント獲得を勧められたポライターは全米オープンの会場に足を運ぶ。そこでウィるの従姉である女子プロのトップ、リンダから助けを求められる。息子が誘拐されたので救出してほしいと・・・ リンダの夫ジャックは23年前同じ会場で開催された全米オープンで優勝を目前に指示した番手と違うクラブをキャディから渡され勝利を逃し、今日に至るまで低迷していた。そんなジャックが二位に大差をつけ独走中。 千載一遇のチャンスに息子が誘拐されるなんて・・・23年前のことが関係しているのか? しかもウィルは協力しないと宣言、ポライターひとりで事件解決に当たらなくてはならない。つまり「ロンリー・ファイター」・・・ 相変わらず軽妙なジョークと機知で敵に立ち向かうポライターの孤軍奮闘ぶりを愉しんでください。..

  • 木挽町のあだ討ち [book]

    永井沙耶子/新潮社/お薦め度 ★★★★☆ 時代小説ミステリー!? 人情物+ミステリー仕立て+「オーシャンズ11」 芝居小屋の立つ木挽町の裏通りで、菊之助は父親の仇の下男を斬り、本懐を遂げる。この一件は「木挽町の仇討」と呼ばれる。 二年後、菊之助の書状、「この者は某の縁者につき、事の次第やそこもとの来し方など語ってほしい」、を携えた若侍が芝居小屋を訪れる。 幇間の「一八」、元武士、立師の「与三郎」、衣装の支度、繕いの「ほたる」、小道具作りの「久蔵」、戯作者の「金治」の五つの場が描かれる。人情物+ミステリー仕立て・・・ 松井今朝子の「吉原手引草」を彷彿させる。 終幕、「国元屋敷の場」で仇討の真相、「オーシャンズ11」、が明らかになる。 人情物といい、伏線のはり方、回収といい、秀逸な時代小説。

  • ポリス・アット・ザ・ステーション [book]

    エイドリアン・マッキンティ/早川書房/お薦め度 ★★★★☆ ジョン・ダフィー・シリーズ第六弾 麻薬の密売人が相次いでクロスボウの矢で撃たれた事件を捜査するため、休暇を途中で切り上げ現場に向かうダフィー。 今回の事件は二件目、死亡した被害者は前科持ちの売人、ブルガリア人の妻と団地に住んでいた。 犯行声明はどこからも出ていない。 ブルガリア人の妻が麻薬の運び屋ではないかと尋問するが手掛かりはつかめず、高額の保釈金を払い釈放と同時に行方をくらました。 完全に行き詰ったダフィーを救ったのはブルガリア人通訳の紙切れ、そこには車のナンバーが・・・ ここから北アイルランド紛争の続きを交えながら物語は進み、シリーズ最大の危機がダフィーの身に降りかかる。ここから物語は一気に加速、クライマックスになだれ込む。 毒気の強かったダフィーがベスとエマを得、自分たちの将来をぶつかりあいながら描いたり、..

  • ステイト・オブ・テラー [book]

    ヒラリー・R・クリントン/ルイーズ・ペニー/早川書房/お薦め度 ★★★★ 国際政治スリラー 67代国務長官、ヒラリー・R・クリントン、2009年~2013年 国務省南・中アジア局員に届いた奇妙なメール、<19/0717 38/1536 119/1848>・・・ロンドン、パリでバス爆破事件が起こる。 ジャンクメールとしか思えないものは爆発したバスの番号と爆破時間、暗号ではなく警告だった。<119/1848>は8時間後フランクフルトで119番のバスが夕方の6時48分に爆発するを示していた。 新国務長官、エレン・アダムスは新大統領のライバルを支援していたにもかかわらず長官を拝名。前政権の過去4年間の無策ぶりを目の当たりにしてきた。 前政権はパキスタンの武器商人、核物理学者バシル・シャーを釈放し、わずか数カ月の間に、核合意から離脱し、イランに核開発計画、タリバンやアルカイダに、を自由に..

  • 大江戸奇厳城 [book]

    芦辺拓/早川書房/お薦め度 ★★★☆ 伝奇小説!? 頭脳明晰な”ちせ”、男装の”浅茅”、阿蘭陀人との間に生まれた”アフネス”、お家騒動から逃れた”喜火姫”、武芸百般の”野風”・・・ 前半は五人の少女の連作短編、「オーシャンズ11」ならぬ「オーシャンズ5」!? 後半は「宇内混同」、世界征服計画、を目論む巨悪が歪んだ思想のもとに「奇厳城」、フランス国のそれの如く天工の産物にあらず、を一夜して築く。その根城に五人が飛び込み対峙する「ミッション・インポッシブル」!? 前半を受けて後半五人がもっと活躍する姿を読みたかったが、作者の思い込みが大きすぎて状況説明、うんちく、蛇足?に頁が割かれ、五人の影が薄くなってしまった・・・ 「大鞠家殺人事件」の作家がなぜ?と思いながら読み進み、あとがきを読んで、芦辺拓のやりたかったのは「時代劇小説」、「時代劇時代」、考証的に誤りとされるアイテムをあえて選..

  • 警部ヴィスティング 疑念 [book]

    ヨルン・リーエル・ホルスト/小学館/お薦め度 ★★★★ 未解決事件四部作最終 休暇中のヴィスティング、自宅の郵便箱に差出人不明の封書が届いた。中には12-1569/99と書かれた紙が・・・ 1999年に隣接する警察署管内で起きた1569号事件を意味していた。休暇中にもかかわらず、捜査資料を借りだしに動くヴィスティング。 事件の内容は17歳の少女が行方不明になり、二日後絞殺死体で発見された。少女の体内から別れた恋人の体液が検出され、元カレは禁固17年の刑に服していた。 差出人不明の封書は二通、ヴィスティングが担当した事件、三通、捜査資料Noとインターネットアドレス、四通、ある場所を示す緯度と経度、・・・誰かが裏で糸を引いている。 1999年の事件は冤罪事件だったのだろうか!? 定年間近のヴィスティングがひたむきに事件に向き合う姿がうれしい。

  • 頬に哀しみを刻め [book]

    S・A・コスビー/ハーパーBOOKS/お薦め度 ★★★★☆ エドガー賞最優秀長編賞ノミネート 「人は復讐を正義のように語るが、復讐はちょっといいスーツを着た憎しみさ」 同性婚の男性カップル、黒人のアイザイアと白人のデレク、が胸に、顔に銃弾を浴び殺された。 葬儀から二ヶ月、デレクの父バディ・リーはアイザイアの父アイクを訪ねた。遅々として進まぬ警察の捜査に、ふたりで犯人を捜すことを提案する。一端は申し出を断るアイクだったが、何者かがふたりの墓石を破壊した。それを機にアイクはバディー・リーの話に乗ることを決意する。 ふたりともムショ帰り、アイクは自身の歯止めが効かなくなる怖さを知っていた。 自分の息子の同性婚を受け入れることが出来なかったことへの懺悔の家族小説と憎しみの犯罪小説が融合する。 父親たちの”挽歌”・・・しびれる一冊。

  • 嘘と聖域 [book]

    ロバート・ベイリー/小学館/お薦め度 ★★★★ 新シリーズ第一弾 恩師、老弁護士トム、妻ジャズの死からいまだ立ち直れていないボーセフィス・ヘインズが主人公の新シリーズ テネシー州、共和党の地盤、第二十二司法管轄区検事長のヘレン・エヴァンジェリン・ルイスは女子高生レイプ事件の裁判、被告は街の実業家、に臨もうとしていた。 その矢先、元夫、弁護士、<Z銀行>の頭取、の殺人容疑で逮捕されてしまう。ルイスの銃から発射された銃弾、残された指紋、目撃証言・・・すべてがクロであることを示している。 ルイスは弁護をボーに依頼する。当初は固辞していたが、親権問題で祖父母と争っている最中でもあり、再生の足掛かりとすべく弁護を引き受ける。 しかし、事件の裏にはルイスが38年間隠し続けてきたタブーがあった・・・ 驚きの結末が待っているのだが・・・ルイスの後だしジャンケンにまんまとはまるボー、陪審員!?..

  • カムバック・ヒーロー [book]

    ハーラン・コーベン/早川書房/お薦め度 ★★★★☆ マイロン・ポライター・シリーズ第三弾 エドガー賞最優秀ペーパーバック賞受賞作 NBAのチーム・オーナーの依頼は、失踪したかつてのライバル、グレグ・ダウニング、を探しだすため、代役?としてチームに加わることだった。マイロンの報酬は契約金+ドラフト一巡目の選手とのマネジメント契約。 かつての栄光、カレッジバスケットのスター、と現実、10年ぶりにコートに立つ、のかい離に心萎えるマイロン。カムバック・ヒーローなのだが・・・ シリーズとしてどうしても触れておかなければならないマイロンの挫折、プロ入り間もないオープン戦で、ふたりの選手にサンドウイッチされ、膝を痛め、16ヵ月後、歩けるようになったが、コートには戻れず、スポットライトから消えた。 マイロンの失望の闇と”親友”と思っていたかつてのライバルの失踪がリンクするラストは哀しすぎる!?..

  • 死が三人を分かつまで [book]

    ケイティ・グティエレス/UーNEXT/お薦め度 ★★★★ 実録系サスペンス ブログにパートタイムで執筆するキャシー、彼女の目にとまった新聞記事、テキサス州ラレードのモーテルでアンドレス・ルッソの遺体が発見されたのは、ドロレス・リヴィエラとアンドレスが結婚して一年、交際を始めてから三年近くたったころだった。メキシコシティ在住のアンドレスは妻のドロレスを訪ねてラレードに来たのにドロレスの家ではなくモーテルに宿泊したのだろうか。 当初ドロレスが容疑者と目されていたが、まもなく夫のファビアンが最有力容疑者として浮上した・・・ 30年前の事件を掘り起こし、一冊の本にしたいと野望をいだくキャシーはラレードに住むローレ・リヴィエラ(ドロレス・リヴィエラ)を訪ね取材権を獲得する。事件当日のことは語らないという条件で・・・ ローレはラレードで夫ファビアンと双子の息子マテロとガブリエルと、ドロレスは..

  • グッゲンハイムの謎 [book]

    ロビン・スティーヴンス、原案シヴォーン・ダウド/東京創元社/お薦め度 ★★★★ 「ロンドン・アイの謎」の続編 前作とは逆に、テッドは母と姉と一緒にグロリアおばさんとサリムの住むニューヨークへ・・・ おばさんはグッゲンハイム美術館の主任学芸員、そのコネ?で休館日にもかかわらず入館をさせてくれるという。 改装中の館内を見学中、突然白い煙が・・・火事だ!の声にテッドたちは外に避難。煙のもとは発煙筒、みんなが外に出た隙にカンディンスキーの<黒い正方形のなかに>が盗まれてしまった。最後に外に出たおばさんが犯人と疑われて逮捕されてしまう。 テッド、姉カット、いとこのサリムがタッグを組んでおばさんの無実を証明しなければと立ち上がる。前作同様、仮説をたてて、ひとつづつ潰していく。テッドの他の人とは違う能力が冴えわたる。

  • 沈黙のメッセージ [book]

    ハーラン・コーベン/早川書房/お薦め度 ★★★★☆ マイロン・ボライター・シリーズ第一弾 カレッジバスケットボールのスターだったマイロン・ぼライター、プロ入り直後ケガがもとで引退、一時期FBIの捜査官となる。現在はスポーツ・エージェントととしてマネジメント、スカウティングに忙しい。 そんなマイロンがマネジメント契約を結ぶカレッジフットボールのスター、クリスチャンの入団交渉で、オーナー側は恋人キャシーの失踪事件にクリスチャンが関与してるとして契約金のダウンを要求する。 キャシーの失踪、強盗に殺された父親、ポルノ雑誌に掲載されたキャシーの写真・・・契約問題から失踪、殺人事件にまで首を突っ込むことになるマイロン。 マイロンのワトソン役は最新刊「WIN」で活躍したウィン、ロックウッド三世、息の合ったコンビが縦横無尽に暴れまくるシリーズ第一弾。アメリカ・プロスポーツ界の内面を描きながら怪奇..

  • WIN [book]

    ハーラン・コーベン/小学館/お薦め度 ★★★★☆ マイロン・ポライター・シリーズのスピンオフ ハーラン・コーベンがこんなシリーズ書いていたなんて・・・慌ててシリーズ第一作の「沈黙のメッセージ」、アンソニー賞最優秀ペーパーバック賞、を手にする。 本書の主人公はマイロンの親友でもあり頼りになる助っ人ウィン、ウィンザー・ホーン・ロックウッド三世、大金持ちで、テコンドーの達人、その一方で女性の心情や人の生命にはほとんど関心がないという特異なキャラ。 ロックウッド家の盗まれた名画、フェルメールとピカソ、殺人事件、”貯蔵家”、迷宮入りのした学生運動事件、<ジェーン・ストリート・シックス>、一族の謎、叔父の死、いとこの誘拐、を追う。 特異なキャラに加えて、法で罰すことのできない「悪」を自らの手で裁く男でもあるウィル。怒涛の展開にページをめくる手が止まらない。秀逸なノンストップ・エンタメ小説。 ..

  • だからダスティンは死んだ [book]

    ピーター・スワンソン/東京創元社/お薦め度 ★★★★ 超絶サスペンス ブロック・パーティーで知り合った隣人の二組の夫婦、ヘンと夫のロイド、マシューと妻マイラ、ヘンとロイドは引っ越してきて二ヶ月、マイラに招かれディナーを共にする。 部屋を案内され、マシューの書斎でヘンが目にしたのは、二年半前の未解決事件、ダスティン・ミラー殺人事件、で持ち去られた?ジュニアオリンピック、エペ、三位のトロフィーだった・・・ マシューに固執するヘン、その一方でトロフィーを見た時のリアクションで感付いたことを悟るマシュー。 マシューを尾行するヘンが遭遇したのはマシューが男を殴り殺す現場、警察にふたつの事件を話すものの、真剣に話を聞こうとしない警察。ヘンの病状、躁鬱症、とヘンが起こした過去の事件が起因していた。 犯人は明らかなのに・・・殺人者マシューに抱く安心感、夫、浮気をしている、ロイドに抱く不信感、マ..

  • 審議官 隠蔽捜査9.5 [book]

    今野敏/集英社/お薦め度 ★★★★☆ シリーズ第十二弾 九編収録のスピンオフ短編集 表題作「審議官」は前作「深花」の後日譚。ご機嫌取りをする?竜崎・・・ 竜崎の家族、妻、長女、長男を主人公とする短編、三作ともいいですね・・・ わたしのお気に入りは竜崎の後任大森警察署長、藍本百合子警視正、美貌の・・・だんだんマイクル・コナリーぽくなってきている今野敏!?新しいキャラクターの出現でシリーズの幅がどんどん広がる・・・ ニヤニヤしながら読了、スピンオフでは出色の出来映え・・・

  • 炎の爪痕 [book]

    アン・クリーヴス/東京創元社/お薦め度 ★★★★ シリーズ第ハ弾にして完結編 ペレス警部を訪ねてきたのは、ファッションデザイナーのヘレナ、シェトランド本島へ一家で移住、買い取った家を修復、島では際立った建物になっていたが、前の持ち主が納屋で縊死して以来、脅迫めいた紙片が舞い込んでいることに悩まされているという相談だった。 具体的な事件が起きているわけではないので、心に留めておく程度の返事しかできないペレスだったが、またしても同じ納屋でヘレンと親しい一家の子守りエマの死体が見つかる。 隠しごとの出来ない島だけに事件に尾ひれがつき、ラウドスピーカーまで登場する始末・・・えまの過去、現在を調べても実像がなかなかつかめない。 エマの交際相手、ラウドスピーカーの彼の母親と姉、エマに想いを寄せるヘレンの夫、エマが住みこみで働く一家の夫婦、子供たち・・・遅々として進まぬ捜査。それを阻害している..

  • ミン・スーが犯した幾千もの罪 [book]

    トム・リン/集英社/お薦め度 ★★★★ カーネギー賞受賞作 200人は殺した中国系アメリカ人の殺し屋、ミン・スー、復讐しなければならないリストにはあと五名、セントラル・パシフィック鉄道の東端から妻?の待つカリフォルニア州サクラメントまで、予知能力を持つ老人、予言者、に導かれ西を目指す。 その途中で奇術ショーの一座に巡り合い、リノまで用心棒兼道案内人を務めることになる。一座は特殊能力?を持つ、火をつけても燃えない炎女、人の記憶を消せるナヴァホ族、テレパシーを使える少年、刺青の異教徒と座長の六人・・・ 鉄道を使えばいいものの、懸賞金がかけられているミン・スイー、鉄道沿いの安全な道を選びながら、馬と馬車で進む。その途中で寄り道をし、リストからひとり、ふたりと削除していく。 奇術ショーの一座の面々との交流、ギャング一味との攻防戦、予言者の導き、シエラ・ネバダ越え、心通わす?クーガーの出現..

  • 軋み [book]

    エヴァ・ビョルク・アイイスドッティル/小学館/お薦め度 ★★★★ CWA賞新人賞受賞作 レイキャヴィーク警察を辞め故郷のアークラネスに戻ったエルマは地元警察に職を得たる。レイキャヴィークと違い人口7000人の魚港町、大した事件は起きないはずだった・・・ 勤務早々、観光名所の灯台付近の海で不審死体が発見される。被害者はエリーサベトという女性パイロット、幼年期をアークラネスで過ごしていた・・・ 現在進行形の捜査とエリーサベトの幼年期が交互に語られる。 一種の村社会、お父さんの名前は?お母さんの名前は?みんながみんなを知っている。エルマも然り、エリーサベトも然り・・・ただ、エリーサベトはアークラネスを嫌い、避けていた。それがなぜアークラネスで殺されたのか? 血のつながりが濃いがゆえに事件は混とんとする。アイスランドが色濃く反映されたミステリー!?わたし的には好きだな。

  • 黒石 新宿鮫Ⅻ [book]

    大沢在昌/光文社/お薦め度 ★★★★ シリーズ第十二弾 前作から阿坂課長を向かえ、新組織でスタートを切った新宿鮫 後ろ盾の桃井課長を亡くした鮫島の変貌ぶり、独断専行の捜査からチームワン阿坂課長、矢崎、藪、そして鮫島、での捜査には驚かされる!? シリーズもここまで来ると書き手としてもなかなか辛いものがあることはわかるが、シリーズを続ける以上、アイデアを出さなければならない。マイクル・コナリーのハリー・ボッシュ・シリーズはリンカーン弁護士やナイト・ショーのレイネ・バラードを登場させ、常に活性化をはかり、読者を飽きさせない。 <新宿鮫>は鮫島の際立ったキャラと独断専行の捜査が持ち味のシリーズだった。そこに何を加えるか?現時点ではワンチームと底を見せない阿坂課長・・・レイネ・バラード的な存在が本書では公安のスパイだった矢崎なのか? わたし的には優等生になった鮫島は見たくない。延々と語ら..

  • 木曜殺人クラブ 二度死んだ男 [book]

    リチャード・オスマン/早川書房/お薦め度 ★★★★ シリーズ第二弾 因縁のある男、元夫でMI5の諜報員、から招待状をもらうエリザベス、その要件とは、二千万ポンド相当のダイヤを調査対象者から盗み、ニューヨークのマフィアとコロンビアのドラッグカルテルから追われているので助けてほしい、と・・・ 一方、<木曜殺人クラブ>のメンバーであるイブラハムが路上強盗にあい、スマホを盗られ、暴行を受けたのだ。容疑者はすぐにあがったが、証拠がなく警察も逮捕が出来ない。事件のお陰でイブラハムはひきこもりになってしまう。 木曜殺人クラブのメンバー、クリスとドナの警察コンビ、前作にも登場、MI5の諜報員スーとランス、ビジネスマン、ドラッグディーラー、マフィア・・・多彩なメンバーが登場、風呂敷を広げ、あちこちへ蛇行しながら物語は進む。 わたし的にはちょっとついていけない!?会話は健在。ここがいいという人たちも..

  • 真珠湾の冬 [book]

    ジェイムズ・ケストレル/早川書房/お薦め度 ★★★★☆ エドガー賞最優秀長編賞受賞作 1941年、太平洋戦争前夜、ホノルル、白人男性と日本人女性が惨殺された怪奇な事件が起きる。ホノルル警察の刑事、マクレディが捜査にあたる。彼はハワイ人ではなく、大卒、陸軍あがり・・・ 捜査に新たな進展が・・・ウェーク島で酷似の事件が発生する。犯人は香港方面に向かったと思われた。戦局が危うい中、出張を命じられ、ウェーク島、香港に赴くマクレディ。 香港で犯人の罠にかかり、警察に逮捕され、12月7日、開戦を迎える。日本軍の攻撃で陥落する香港、マクレディは捕虜となり日本へ・・・ 日本に連れて行かれたことには外務省第一秘書管、高橋の思惑が働いていた。これ以上は書けませんが、戦後、事件の捜査を再開するマクレディが辿る数奇な運命は読み応えあり・・・スケールの大きなエドガー賞受賞作。

  • 大鞠家殺人事件 [book]

    芦辺拓/東京創元社/お薦め度 ★★★★☆ 「ミステリーが読みたい!2023年版」国内編第三位 戦火の昭和18年、大阪船場、化粧品販売で富を築いた大鞠百薬館の長男、軍医として出征、に嫁いだ軍人の娘、美禰子は、夫の帰りを大姑、小姑のいる大鞠家で待つことを選択する。 大鞠家の二代目である千太郎は明治39年、パノラマ館から忽然と姿を消し、妹の喜代江が丁稚を婿さんに迎えた。その長男が軍医、三代目を継ぐ予定の二男、茂彦は長男同様出征中、長女、月子と二女、文子がいる。 大鞠家で起きる惨劇、長女の月子が刺され、一命を取り留めたが、なぜか血のりを塗られ発見される。それに続き二代目の婿さんが縊死?祖母の死、酒樽の中で溺死する義母・・・ 大鞠家から一人減り、二人減り、三人減り・・・横溝正史ばりのおどろおしさはないが、淡々とした筆致に好感がもてる。わたし的には初めて手にする作家だが、お薦め度は高い。 ..

  • ダーク・アワーズ [book]

    マイクル・コナリー/講談社/お薦め度 ★★★★ レイネ・バラード&ハリー・ボッシュ・シリーズ第三弾 2020年→2021年の大みそか、ロス市警総動員の警戒体制、ハリウッド分署のバラードは性犯罪課のムーア刑事をバディに警邏中、ふたりが追っている”ミッドナイト・メン”、連続暴行事件、の警戒も含まれていた。 新年を迎えるころ、あるパーティーで参加者が銃を空に向けて撃ったと同時にパーティーの主催者でもある修理店のオーナーが頭を撃ち抜かれて死んだのだった。 現場に残された薬莢から10年前の未解決事件で使用された銃であることがわかる。10年前の捜査責任者はなんとボッシュだった。バラードはボッシュの支援を受け、二つの事件を不眠不休で追う。 ブラック・ライヴズ・マター運動とコロナ禍が色濃く反映されている作品でもある。全米各地で抗議デモがおこり、警察官の過剰な暴力行為に対して不信感を抱くようになる..

  • 入れ子細工の夜 [book]

    阿津川辰海/光文社/お薦め度 ★★★☆ 本格国内ミステリ2022 第7位 四編収録の短編集 著者あとがきにあるように、豊富な読書量からインスパイアされ、アイデアをもらい出来あがった短編。本人的には愉しんでいる作品!?ではあるが、それが読者にとってどうかは別問題・・・ いろんな形式でやってみることを実践している。 「危険な賭け~私立探偵・若槻晴海~」、「2021年度入試という題の推理小説」はいらいらするばかり。表題の「入れ子細工の夜」、「六人の激昂するマスクマン」でいらいらが収まる。相性の悪い作家は健在なり!? 表題作は最近多い作中作、劇中劇、をもうひと捻りした作品。 四編ともコロナ禍を意識したものだが、コロナ禍のミステリーといえば「56日間」/キャサリン・リンダ・ハワード/新潮社が断然お薦め!

  • 愚者の階梯 [book]

    松井今朝子/集英社/お薦め度 ★★★☆ 時代ミステリー 昭和十年、翌年ニ・ニ六事件勃発、木挽座に満州国溥儀皇帝陛下をお迎え、勧進帳を演目に据えた。そのセリフが<不敬>にあたると亀鶴興行を糾弾する国士があらわれ、対応は専務の川端が窓口となった。 その後も同様の糾弾が続き、木挽座で川端が縊死?する事件が起こる。事件はすんなり片がついたように見えたが・・・川端から相談を受けた手前、桜木治郎、大学講師、は責任の一端を感じつつ、捜査に協力することに・・・ 警察はなかなか自殺で事件を処理することなく継続捜査を続ける。そうこうするうち、木挽座の大道具方を束ねる棟梁が殺され、事件の混迷度を増すばかり。二つの事件は関連があるのか? 作者十八番の歌舞伎と時代に指示されつつあるキネマを対比させながら物語をは進む。 急速に右傾化する日本を作者は、「いつの間にかこの国には深い闇が垂れ込めてきているようだ..

  • 2022年ベストミステリー 海外編 [book]

    年間「海外編ベスト10」 第一位 「われら闇より天を見る」/クリス・ウィタカー/早川書房 第二位 「キュレーターの殺人」/M・W・クレイヴン/早川書房 第三位 「優等生は探偵に向かない」/ホリー・ジャクソン/東京創元社 第四位 「殺しへのライン」/アンソニーホロヴィッツ/東京創元社 第五位 「悪い弁護士は死んだ」/レイフ・GW・ペーション/東京創元社 第六位 「スクイズ・プレー」/ポール・ベンジャミン/新潮社 第七位 「魔王の島」/ジェローム・ルブリ/文藝春秋 第八位 「ロンドン・アイの謎」/シヴォーン・ダウド/東京創元社 第九位 「死まで139歩」/ポール・アルテ/早川書房 第十位 「天使の傷」/マイケル・ロボサム/早川書房 「われら闇より天を見る」はミステリーの範疇を超えた秀逸な作品。第二位から第五位まではシリーズもの、とりわけ癖になったのは「悪い弁護士は死んだ」..

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